PCと組み合わせた普段使いやゲーミング用に自発光デバイスである有機ELを使用した小型のディスプレイが欲しい−−そんな高画質マニアのニーズに応えてくれる1台が、LGエレクトロニクスから登場した。それが、2023年4月に発売となった26.5型ゲーミングモニター「UltraGear 27GR95QE-B」だ。
LGエレクトロニクス「UltraGear 27GR95QE-B」。26.5型WQHDの有機ELゲーミングモニターだ
PCディスプレイやゲーミングモニターを名乗る有機ELパネル採用の製品はこれまでも存在はしていたが、テレビ用パネルを流用した42V型以上の大型サイズや60Hzパネルの機種がほとんど。そんな中、26.5型、2,560×1,440ドット(WQHD)、240Hz駆動、応答速度0.03ms(GtoG)とPCゲーマー向けのスペックをしっかりと押さえてきた「UltraGear 27GR95QE-B」。有機ELパネル採用で、画質面にも期待が持てる。僕はガチのゲーマーではないが、さっそく自宅のデスクトップPCのメイン環境に「UltraGear 27GR95QE-B」を導入、その実力を確かめてみた。
まず、「UltraGear 27GR95QE-B」の設置性の部分から紹介していこう。本体は26.5型とごくごく一般的な画面サイズで、デスクトップ環境に無理なく設置できる大きさ。ゲーミングモニターらしくイルミネーション機能はあるが、比較的控えめなので、現在使っているディスプレイからの置き換えでも違和感なく移行できそうだ。スタンド部分は上下高さ可変、前後5度のチルト対応、左右10度のスイーベルに対応と全方位調整可能なイマドキの仕様だ。ちなみに、VESA100マウントとなっているので、スタンドを市販のものに交換することもできる。
スタンドは全方向の調整に対応。ゲーミングモニターらしく、側面にはライティング機能も用意されている
OSDの操作は同社製品でおなじみのジョイスティック。1ボタン式で使いやすくはないが、ボタンの充実したリモコンが付属しているので、基本的にリモコン操作前提で本体ボタンはあくまでオマケといったところか。
本体下のジョイスティック操作はやや難しい
メニュー呼び出し、画質モードや音量調整などをダイレクトに操作できるリモコンが付属
接続端子はDisplayPort×1、HDMI×2で、すべての端子が240Hz信号の入力に対応。ゲーミングヘッドセットのマイクも利用可能な4極のヘッドホン端子、光デジタル出力なども用意されている。ちなみに本機にスピーカーは内蔵していないので注意してほしい。
本体背面にDisplayPort×1、HDMI×2、光デジタル出力、USB 3.0のアップストリーム×1、ダウンストリーム×2などが用意されている。なお、4極のヘッドホン端子は正面からアクセスしやすいように本体下部に配置されている
それでは、さっそく気になる画質周りを詳しくチェックしていこう。「UltraGear 27GR95QE-B」のパネルは、2,560×1,440ドット(WQHD)、240Hz駆動の有機ELパネルで、応答速度は0.03ms、色再現は約10.7億色、輝度は基準値で200カンデラ/平方メートル、ピーク時で800カンデラ/平方メートル、色域はDCI-P3 98.5%カバー。このスペックを見る限り、相当にハイスペックな物なのは間違いない。
だが、実際に「UltraGear 27GR95QE-B」をWindows PCに接続して使い始めると……セットアップ直後に画面を見ながら設定に悩んでしまった。ゲームプレイを体験する前に、それらをまずは共有しておきたい。
「UltraGear 27GR95QE-B」の有機ELパネルによる画質は、Windows PC環境で使っていると、キレイさがわかりにくいのだ。理由は複数あって、まず「UltraGear 27GR95QE-B」の表面が非光沢のアンチグレア(ノングレア)仕様であることがあげられる。このアンチグレア処理は外光反射を強力に防いでくれるのだが、クリアパネルと比べて普通のWindowsのデスクトップや文字のクッキリ度がやや落ちるのだ。
Windows PCを接続して画質をチェック
また、Windowsの文字表示にも癖があった。「UltraGear 27GR95QE-B」でWebサイトなどを表示してもらうとわかるが、文字に滲みが生じたり、強くシャープネスをかけたような弊害が出たり……。これはグラフィックボード側のソフト(NVIDIA コントロールパネル)でデスクトップ解像度を2,560×1,440ドット、リフレッシュレート240Hzに固定すると概ね解決した。「Adaptive-Sync」(NVIDIA G-SYNC、およびAMD FreeSync Premium対応機能。テスト環境はNVIDIA G-SYNC Compatible)も、オンにすると画質トラブルが起きるようでオフが推奨だ。それでも文字の表示にはジャギーが強く、これはWindowsの「ClearTypeテキストの調整」をいじっても解消しきれなかった。ただ、同一設定でも現れ具合に波があるようだ。
通常の文字表示はガタ付きや滲みが出やすいため、設定の追い込みを推奨
本体側の映像設定機能は、明るさやコントラスト、シャープネス、ガンマ、色温度調整はもちろん、「Adaptive-Sync」や「DAS(Dynamic Action Sync)」の調整、ゲーミング向けの「ブラックスタビライザー」「クロスヘア」となかなか充実している。映像モードのプリセットも、ゲーム全般に利用できるモードや、FPSやRTSに特化してチューニングされたモード、鮮やかさ重視のモードやブルーライト低減モードなど、用途に合わせたものが揃っている。
「UltraGear 27GR95QE-B」の色再現はとても優秀だ。コントラスト比1,500,000:1で漆黒の再現もしっかりと出ているし、DCI-P3 98.5%カバーということで、発色もとても豊かだ。ゲーミング用途以外だと、sRGBのプリセットが扱いやすいのも好印象。写真や動画などを扱うクリエイター向けだと、「LG Calibration Studio」によるハードウェアキャリブレーションが利用できる点もうれしいところ。
映像モードなどの切り替えはリモコンから操作するのが便利
DCI-P3 98.5%をカバー。鮮やかだが派手すぎない色再現が好印象
暗部も潰れず表現でき、階調性能もなかなか優秀だ
続いて、実際のゲームタイトルや映像コンテンツを使って、その見え方をチェックしてみた。まずは、FPSゲーム『Apex Legends』から。PCスペックの都合もあり、最大240fps張り付きとはいかなかったが、160〜240fpsの状態でプレイしてみても、動きのキレのよさがしっかりと確認することができた。イメージとしては動きがヌルヌルというより残像がなくキレキレというのが近く、カメラを動かした際に画面全体の止まりが極めて優秀だった。なお、「Adaptive-Sync」は全体の動作が重くなるため、オフのほうがゲームプレイ自体は安定していた。
240Hz駆動のゲームプレイはとにかくキレのよさが魅力
スマホのライトを使って映り込み具合も確認。プレイしている自分はほぼ見えないレベルだ
ちなみに、有機ELをPCで使うと焼き付きは大丈夫?と心配する人もいるだろう。
「UltraGear 27GR95QE-B」には焼き付き防止機能「OLEDケア」が搭載され、焼き付き防止策がしっかりと講じられている。万が一、PCを付けっぱなしで放置してしまった時も、表示内容が変わらない状態で10分放置すると自動でスクリーンセーバー(電源オフ)になる。また、デスクトップやゲームUIなど、特定の箇所に同じ画面表示が続く際の焼き付き対策として、画面を一定間隔でわずかに移動させる(ずらす)機能「画面移動」が用意されており、焼き付きが起こりにくくなっている。
有機ELパネルの焼き付き対策機能もばっちり搭載
僕も普通に数時間連続して「UltraGear 27GR95QE-B」を使用してみたが、焼き付いた様子はなさそうだった。ちなみに、有機ELパネルの焼き付き対策用のメンテナンス機能「画像のクリーニング」「画素のクリーニング」というものも用意されている。これらは仕組みとしては劣化した画素に合わせてほかの画素を調整するもの。「画像のクリーニング」は4時間ごと、「画素のクリーニング」は500時間ごとに電源を切った際に自動で実行されるため、特別意識しなくてもよいだろう。
最後にサウンドについても軽く触れておこう。「UltraGear 27GR95QE-B」はスピーカーは内蔵していないが、4極ヘッドホン出力/マイク入力、および光デジタル(S/PDIF)端子によるサウンド出力にも対応している。さらに、このヘッドホン端子は「DTS Headphone:X」対応となっており、バーチャルサラウンド機能を有効にできる。実際にゲーミングヘッドセットを接続してゲームプレイ時にバーチャルサラウンド機能を有効化してみたが、「DTS Headphone:X」はバーチャルサラウンドのため若干の響きがともなうものの、音空間の広がりをしっかりと感じられることができた。
ヘッドホン端子は「DTS Headphone:X」にも対応。4極対応なので、マイク付きのゲーミングヘッドセットを接続するのにも便利だ
ゲーミングモニターとして登場したLGエレクトロニクス「UltraGear 27GR95QE-B」。PC接続時の見え方で一部予想外のところがあり、設定の追い込みにやや苦労したが、WQHD表示対応の26.5型有機ELゲーミングモニターはとても貴重だし、なにより240Hz駆動や0.03msの応答速度、コントラスト比1,500,000:1というスペックはゲーミングモニターとしてかなりハイスペックだ。発色もしっかりとしているし、画質的には写真や動画の編集作業にも十分使えるポテンシャルなので、ゲーム以外の用途でも活用できそう。有機ELパネルを使用した27型前後の比較的コンパクトなサイズのゲーミングモニターを探している人は、ぜひ「UltraGear 27GR95QE-B」を試してみてほしい。
PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。