Googleが久しぶりに投入したAndroidタブレット「Google Pixel Tablet」(以下、「Pixel Tablet」)。約11インチのタブレット端末ながらも、付属品の充電スピーカーホルダーと組み合わせることで、スピーカーを備えるスマートディスプレイとしても使えるマルチなデバイスです。
2週間ほど使い込んだところ、得意な部分、得意でない部分が見えてきたので、そのあたりを中心にレビューしていきます。率直な感想としては、小さなお子さんがいる子育て世代には、かなり刺さる製品だと思いました。
お子さんがいる家庭に推したい「Pixel Tablet」。公式ストアの販売価格は128GBモデルが79,800円(税込)、256GBモデルが92,800円(税込)
まずは、タブレットとしての基本性能を見ていきましょう。「Pixel Tablet」は約11インチのLCDディスプレイを搭載。有機ELディスプレイには表示性能が劣るものの、大きな画面はアプリからWebブラウジングまで快適に操作できます。ただし、タブレット向けに最適化されてないアプリは、アプリの両側に黒帯が入ってちょっともったいないですね。
最適化されていないアプリでも、縦向きで表示すると、いつものスマートフォンで見ているのと同様の表示になります。横向きにこだわりがなければ、特に気にしないでもいいかと感じました。
「Pixel Tablet」でGoogle Chromeを開いたところ。基本的にPC版のページが表示されます
Webブラウジングをするなら、横より縦向きのほうが情報量が多くて見やすいですね
これは設定を開いたところ。タブレットに最適化されているので、左にメインメニュー、右に選択した設定の詳細が表示されます。「Gメール」とかも同様で、スマートフォンよりはるかに見やすいです
Twitterなど最適化されていないアプリを表示すると、左右に黒帯が入ります
縦向きだと全画面表示。これはスマートフォンと一緒ですね。縦スクロールを使うSNS系のアプリは縦向きのほうが見やすいですね
このサイズですと、やはり動画鑑賞がはかどりまくりです。Netflix、Amazonプライムでシネスコサイズの映画を見る場合は上下に黒帯が入りますが、それでもスマートフォンよりかなり見やすいと感じました。個人的に最強はYouTube。アスペクト比的にもピッタリです。あと、縦向きだと、インスタライブ(Instagram Live)やTikTokを見るのにもすごく快適でした。
個人的な相性が最強なのはYouTube。やっぱり大画面で動画を見ると、いつも見ているスマートフォンが「ちっさい!」と感じてしまいます
シネスコサイズの映画を表示するとこう。上下の黒帯がちょっと気になりますが、個人的には許容範囲です
自宅でくつろいでいるときにスマートフォンで動画を見るのが習慣でしたが、「Pixel Tablet」をレビューしている間はスマートフォンで動画を見るのをやめてしまったほどです。やっぱり、動画は大画面が正義なんです。
あと、「Pixel Tablet」はChromecastに対応しているので、スマートフォンやPCで見ている動画を数タップで「Pixel Tablet」に映すことができます。ただ、個人的には、スマートフォンでYouTubeを見ていても、「Pixel Tablet」でYouTubeを開いて履歴を見れば直前に見ていた動画にすぐたどり着けるのであまり使わなかったです。
ちなみに、端末のアンロックは電源ボタンの指紋認証で行えます。認証スピードも高速でイイ感じ。ただし、重量が493gもあるので、片手で端末を持ち続けるのは結構キツいかなという印象でした。
電源ボタンでの指紋認証ができるので、端末のアンロックは非常に快適です
Googleから専用のケースが発売されていて、これの使い勝手が抜群です。ケースにスタンドが付いていて、テーブルに置いたまま操作したり、動画を見たりできるんですよ。縦向きでの設置も対応しています。
専用ケースは背面に金属製のスタンドが付いています。ちなみに、このスタンドは後述する充電スピーカーホルダーにもぴたっと収まるサイズになっています
縦向きでの設置することも可能。これでインスタライブなどを見るのも、めちゃくちゃ楽になります
気になるのは公式ストアでの販売価格が12,800円(税込)と、ケースとしてはかなり高額な点です。サードパーティー製の低価格なケースもあるんですが、後述するスピーカーホルダーへの接続に対応していないんですよね。
対応しているのは純正の高価なケースだけで……。でも、「Pixel Tablet」の使い勝手を100%にするには絶対必要。そのためなら出費を惜しまないという人は、専用ケースを購入するほうが幸せになれます。
ちなみに、「Pixel Tablet」は、Googleのハイエンドスマートフォン「Pixel 7」シリーズと同様のSoC「Google Tensor G2」を搭載しているので、処理性能的な心配はありません。メモリーは8GB。アプリの切り替えやマルチタスクで動作が引っ掛かるようなことはなかったので安心してください。
処理性能はGoogleのハイエンドスマートフォン「Pixel 7」と同様
1点注意していただきたいのは、「Pixel Tablet」は専用のキーボードやペンデバイスは販売されていません。いちおう、Bluetooth 5.2とUSI 2.0スタイラスペンに対応しています。今回は試していませんが、サードパーティー製のBluetoothキーボードやペンデバイスは使えるはずです。ただ、あくまでも“はず”なので、その点はご了承ください。
タブレットで書類を作成したり、画像を編集したりする場合、つまり事務作業やクリエイティブな作業を行う際には、キーボード付きケースやペンデバイスがないと不便です。Googleから純正の製品が販売されていないところを鑑みると、現状では仕事などの用途を想定した製品ではないのかなという印象です。
タブレットと言えば大きな画面を使ったマルチタスクが便利ですよね。「Pixel Tablet」は最大2個までのアプリをスプリットスクリーンで起動できます。スマートフォンより表示領域が大きいので、アプリを2つ起動しても使い勝手は非常にいいです。
Google Chromeのタブを並べて表示したり、Twitterを見ながら気になったことをGoogle Chromeで調べたり、YouTubeを見ながらSNSをチェックしたりなど、いろんな使い方ができます。
左にTwitter、右にGoogle Chrome
縦向きだとこんな感じに表示されます。おそらく、Twitterが最適化されていないためだと思われますが、マルチタスクを行うときは横向きのほうが便利だと感じました
Google Chromeのタブを左右に並べたところ。マルチタスクだと、コピペをする際に画面を切り替えなくて済むので、めちゃくちゃ楽です
ちなみにですが、GメールとGoogleフォトを開き、Googleフォトの写真をタップ&ホールドでGメールに移動すると、作成中のメールに写真が自動で添付されます。これもなかなか便利ですね。
Twitter&Googleフォトで同じことを試しましたが、こちらでは自動添付はされず。この操作は非常に楽なので、多くのアプリで対応してもらいたいところです。
Gメールの場合は、右側のGoogleフォトから写真をタップ&ホールドで移動させるだけで添付できるのですが、Twitterではできませんでした。かなり便利な機能なので、全アプリで対応してほしいです
もうひとつ優秀なのがタスクバーですね。画面の下部中央をちょっとだけ上向きにスワイプすると、タスクバーにアプリが複数個表示されて、これをタップすれば起動しますし、タップ&ホールドしたまま画面の右か左に持って行くと、スプリットスクリーンに切り替わります。
このタスクバーに表示できるアプリは、ユーザーのルーティンに基づいて自動で選択されますが、自分で固定表示するアプリを選ぶことも可能。どちらかと言うと、よく使うアプリを固定しておくのが便利です。
アプリを探して開く、あの手間を省いてくれるタスクバー。アプリなどを開いている場合でも、わざわざホーム画面やアプリ一覧を開かずに済みます
ここまでは「Pixel Tablet」のタブレットとしての性能をレビューしてきましたが、「いやいや、これはほかのタブレットでもできるし、むしろほかのタブレットは専用のキーボードとペンが用意されている」と思った人もいることでしょう。
私も、この意見におおむね同意なんですが、セットになっている充電スピーカーホルダーを使うことで、「Pixel Tablet」はほかのタブレットとは別次元の製品に変身します。
「Pixel Tablet」と充電スピーカーホルダーはマグネットで装着する仕組みで、パチッとはめるだけで充電ができるんですよね。ケーブルを探してあーだこーだしなくていいのは、スゴく快適です。
充電スピーカーホルダーは小型のBluetoothスピーカーくらいの大きさ
充電スピーカーホルダーと「Pixel Tablet」の端子同士を合わせるように装着
マグネットの強さは「Pixel Tablet」を支えるのには十分。不意の落下などは心配なし
また、充電スピーカーホルダーに装着すると、画面が「ハブモード」に切り替わります。この「ハブモード」中はタブレットからスマートディスプレイへと切り替わるので、「OK、Google」の音声アシスタントを使って、天気などちょっと知りたいことを手軽に調べたり、Bluetootスピーカーのように音楽を再生したりできます。また、「Googleフォト」のアルバムから写真を表示するデジタルフォトフレームとしても使えますし、スマートホーム製品をひとまとめに管理、操作することもできます。
「ハブモード」中のスマートホーム管理画面(「Google Home」)、このほか「Googleフォト」の写真を表示するデジタルフォトフレームなどとしても使えます
残念なのは、肝心のスピーカーがモノラルのため、音の広がりが感じられず、音楽鑑賞にはちょっと物足りない点です。低音もこもったような感じで、高音質を求める人はがっかりするかもしれません。音声アシスタントの回答を聞いたり、動画を見たりするくらいなら問題ないですが、迫力あるサウンドで音楽を聴きたいという要望を満たすのは厳しいでしょう。
音楽再生に関してはめちゃくちゃ得意というわけではありません
スピーカーの性能こそいまいちですが、タブレットとスマートディスプレイの性質を両方とも備える、これこそが「Pixel Tablet」の大きな魅力であり、他社製品と差別化しているポイントだと個人的に感じます。
タイトルにもあるとおり、「Pixel Tablet」は、小さなお子さんがいる子育て世代にぜひとも使ってほしいデバイスです。特に「ハブモード」の機能が子育てに便利なんです。
最初に推したいのがデジタルフォトフレームとして機能です。「Googleフォト」で家族の共有アルバムを作り、そこに子どもの顔を設定しておくと、家族で撮った子どもの写真が自動で保存されていきます。
このアルバムを「Pixel Tablet」に指定すると、最新の写真が自動で追加されていくインテリジェントデジタルフォトフレームのできあがりです。
家族の思い出がランダムに表示されるデジタルフォトフレームの機能
スマートフォンで写真をたくさん撮っても、後からじっくり見返すことってそこまで多くないですよね? 1回か2回見返すと、もうアルバムの奥底で眠っているなんてこともあるでしょう。しかし、「Pixel Tablet」をデジタルフォトフレームにすると、過去から現在までいろんな写真をランダムで表示してくれて、めちゃくちゃありがたいんです。
これが子育て世代に使って欲しい第1の理由です。
もうひとつ、推したいポイントがあります。これは、特に赤ちゃんから4歳くらいまでのお母さん、お父さんに便利なんですが、子どもを寝かしつけた後はリビングでゆっくりしたいですよね? でも、子どもがいつ起きるかわからないので、寝室からの音(泣き声)に最新の注意を払う必要があって、心から落ち着くことってなかなか難しくないですか?
そんなときに便利なのが、見守りカメラです。ベッドに見守りカメラをセットして、その映像をスマートフォンに映しておくと、何かあってもすぐ気づくことができるので、精神的に安定した状態でくつろげるんです。
しかし、見守りカメラの映像を映していると、スマートフォンでほかのことができませんし、加えて、スマートフォンのバッテリーをめちゃくちゃ消費するんですよ。
「Pixel Tablet」は、この問題を全部解決してくれます。ハブモードにして見守りカメラの映像を映しておけば、手元のスマートフォンで好きなことができますし、「Pixel Tablet」も充電スピーカーホルダーから充電されているので、バッテリーのことを心配する必要もなし。まさに最強なんです。
見守りカメラ「Nest Cam」の映像を「Pixel Tablet」に表示
特に、Googleの見守りカメラ「Nest Cam」は「Pixel Tablet」との相性は抜群。もちろん、ほかのメーカーの見守りカメラでも問題ないでしょう。
あと、「Pixel Tablet」に複数のアカウントを登録できるので、家族で共有できる点もいいですね。特に、子ども用アカウントにAndroidの子ども向け機能「キッズスペース」を設定すれば、子どもの年齢に合わせたアプリや動画、書籍にアクセスできる子ども用タブレットに早変わりします。
複数アカウントや子どもの向けモードは、ほかのタブレットでも利用できるのですが、「Pixel Tablet」はタブレットに加えて、スマートディスプレイという2つのデバイスがひとつに集約されているのがポイントです。
しいて言えば、子どもがお絵描きアプリなどで遊ぶための公式ペンデバイスが欲しいところです。今後の展開に期待しましょう。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。