Google初の折りたたみAndroidスマートフォン「Google Pixel Fold」(以下、Pixel Fold)が、Google Storeのほかキャリア各社から2023年7月中旬〜下旬に発売されます。折りたたみスマホ(フォルダブルスマホ)自体は、日本ではサムスンが2019年に初代「Galaxy Fold」を発売し、現在では4世代目にあたる「Galaxy Z Fold4」(以下、Fold4)が販売されており、5世代目の発表もそろそろだと噂されています。
今回は「Pixel Fold」のレビューをメインにしつつ、「Fold4」との違いについても細かくチェックします。
左が「Pixel Fold」、右が「Fold4」。「Pixel Fold」はGoogleならではのAI技術が、「Fold4」は4世代で積み重ねてきたハードとソフトの熟成が強みです
「Pixel Fold」はOSに「Android 13」、SoCに自社開発の「Google Tensor G2」を採用。メモリーは12GB、ストレージは256GBを搭載しています。
折りたたみのメインディスプレイは7.6インチの有機EL(2208×1840ドット、380ppi、6:5、120Hz)、閉じているときに使用するカバーディスプレイは5.8インチの有機EL(2092×1080ドット、408ppi、17.4:9、120Hz)を採用。リアカメラは48MP広角(F1.7、82度)、10.8MP超広角(F2.2、121.1度)、10.8MP望遠(F3.05、光学5倍)、フロントカメラは8MP(F2.0)、カバーディスプレイカメラは9.5MP(F2.2)を搭載しています。
細かなスペックは下記表をご覧いただきたいのですが、この時点で注目なのが「Pixel Fold」と「Fold4」のスペックがかなり似ていること。使い勝手を大きく左右する違いは下記の3つです。
・メインディスプレイの画面比率(「Pixel Fold」が横長、「Fold4」が縦長)
・カバーディスプレイの画面比率
・ペン(「Pixel Fold」が非対応、「Fold4」が対応)
細かく見ていけば、カメラのスペックやバッテリー容量・駆動時間なども違いますが、体験を変えるほどではないと言えるでしょう
パッケージには、本体、1mのUSB-C-USB-Cケーブル(USB 2.0)、クイックスタートガイド、クイックスイッチアダプター、SIMツールが同梱
メインディスプレイは保護プラスチック層を組み込んだ超薄型ガラスでカバー
カバーディスプレイは「Corning Gorilla Glass Victus」で保護
ボディーはポリッシュ仕上げのアルミニウム製フレーム。ヒンジはステンレススチール製です
下面にはUSB Type-C 3.2 Gen 2とnanoSIMカードトレイを配置
右側面には指紋認証センサー一体型電源ボタンとボリュームボタンを用意
「Pixel Fold」を最初に手に持ったときにまず感じたのは、普通のスマホとしての使い勝手のよさ。カバーディスプレイのアスペクト比は17.4:9で、一般的なスマホに近いです。
対して「Fold4」はガラケー時代のストレート端末のように握りやすいですが、横幅が狭いことで見づらく感じることがありました。「Pixel Fold」は多くの用途をカバーディスプレイでこなせます。
左が「Pixel Fold」で、右が「Fold4」。前後の見通しは「Fold4」のほうがよいですが、画像は「Pixel Fold」のほうが大きく表示でき、また1行の文字数も多いです
いっぽう、メインディスプレイについては好みが分かれます。メインディスプレイが「Pixel Fold」は横長、「Fold4」は縦長。動画をよく見る人は「Pixel Fold」、電子書籍をたくさん読む人は「Fold 4」のほうが向いていると思います。
もっとも、どちらも画面を回転できるので持ち方を変えれば済むのですが、筆者は横向きに寝そべりながらコンテンツを鑑賞することが多いので、普段は画面回転にロックをかけています。そしてマンガは基本的に1ページずつ読むので、「Fold4」の縦長画面のほうが好みですね。
画面を開いた直後は、「Pixel Fold」(左)が横長、「Fold4」(右)が縦長です
画面を回転させないのであれば、「Pixel Fold」(左)は動画コンテンツ、「Fold4」(右)はマンガなどの電子書籍に向いています(※鈴木みそ氏「ナナのリテラシー1」より)
※掲載許可をいただいています
見開きでマンガを読むなら、紙の本のように持てる「Pixel Fold」のほうがよいですね
メインディスプレイとカバーディスプレイのホーム画面のレイアウトも両機種で異なっています。
「Pixel Fold」はメインとカバーでホーム画面のレイアウトが共通化されていますが、「Fold4」はデフォルトではメインとカバーでそれぞれ異なるレイアウトを使います。メインとカバーでレイアウトを変えたいのなら、「Fold4」が適しています。なお、「Fold4」も「ホーム画面→カバー画面共有」を有効化すれば、メインとカバーのホーム画面のレイアウトを共通化が可能です。
「Pixel Fold」はカバーディスプレイの2画面分のホーム画面を、メインディスプレイに表示しています
「Fold4」はメインとカバーでホーム画面を異なるレイアウトで管理可能です
フォルダブルスマホに付きもののメインディスプレイの折り目ですが、「Pixel Fold」のほうが凹みは少ないですね。見た目でも、指の感触でもわかります。とはいえ、メインディスプレイを点灯して正面から見る限り、折り目はどちらも気になりませんね。
左が「Pixel Fold」で、右が「Fold4」。「Pixel Fold」のほうが凹みは少ないです。ただし、サムスンも次期フォルダブルスマホで折り目を目立たなくする改善を加えてくるでしょう
フォルダブルスマホのアドバンテージのひとつが「テーブルトップカメラ」機能。三脚などを使わなくてもヒンジを曲げることで、撮影時に手軽に設置可能です。
両機種とも本機能が実装されていますが、「Fold4」では直前に撮影した写真が大きく表示されるのが便利です。ただ、「Pixel Fold」は色温度、明るさ、コントラストのスライダーが常時表示されます。この違いも好みが分かれるかもしれません。
「Pixel Fold」の「テーブルトップカメラ」モード。直前に撮影した写真は表示されませんが、色温度、明るさ、コントラストを素早く調整できます
「Fold4」の「テーブルトップカメラ」モード。直前の写真を確認しながら撮影を進められます。多くの機能アイコンも配置されていますが、筆者の太い指ではちょっと操作しにくいです
両機種の違いで押さえておきたいのはペン。「Pixel Fold」はペンに非対応ですが、「Fold4」は別売の「Sペン」を利用可能です。ただ、ペンを使うならもう少し大きなデバイスのほうが使いやすいのと、「Fold4」は本体に「Sペン」を収納できないのが気になりました(筆者はそれらが理由で「Fold4」では「Sペン」を買いませんでした)。同じような考えの人なら、「Pixel Fold」にペンがないことはデメリットにはならないでしょう。
「Fold4」のメインディスプレイはカバーディスプレイに比べるとやわらかいので、傷を付けるのが怖い……というのも「Sペン」を買わなかった理由です
「Pixel Fold」と「Fold4」はフォルダブルスマホということで端末の厚みに制限があります。しかし、リアには広角、超広角、望遠のトリプルカメラが搭載されています。
今回両機種でテスト撮影を行いましたが、「Pixel Fold」のほうが実際の色に忠実で、「Fold4」は鮮やかな印象を受けました。どちらがいいかは好みが分かれますが、後からエフェクトをかけて写真を編集するのであれば、「Pixel Fold」のほうが使いやすいと言えるでしょう。
もうひとつ「Pixel Fold」がすぐれていると感じたのが望遠カメラの画質。「Pixel Fold」は光学5倍、「Fold4」は光学3倍の望遠カメラを搭載しているので、20倍の超解像ズームの写真を見比べると、「Pixel Fold」のほうがディテールは細かいです。
夜景については、広角カメラの画角が「Pixel Fold」は82度(35mm判換算で焦点距離24mm相当)、「Fold4」は85度(同23mm相当)と微妙に違うので単純に比較はできませんが、どちらも強い光源を抑えつつも、暗部についても滑らかな階調をとらえていると思います。以前は「Galaxy」のほうが夜景モードは一枚上だと考えていましたが、両者の差はかなり接近しています。
「Pixel Fold」で撮影(0.6倍)
撮影写真:4000×3000、4.75MB
「Fold4」で撮影(0.6倍)
撮影写真:4000×3000、5.15MB
「Pixel Fold」で撮影(1倍)
撮影写真:4000×3000、4.39MB
「Fold4」で撮影(1倍)
撮影写真:4000×3000、5.0MB
「Pixel Fold」で撮影(2倍)
撮影写真:4000×3000、2.59MB
「Fold4」で撮影(3倍)
撮影写真:4000×3000、3.67MB
「Pixel Fold」で撮影(5倍)
撮影写真:4000×3000、2.51MB
「Pixel Fold」で撮影(20倍)
撮影写真:4000×3000、1.6MB
「Fold4」で撮影(20倍)
撮影写真:4000×3000、1.28MB
「Fold4」で撮影(30倍)
撮影写真:4000×3000、1.23MB
「Pixel Fold」で撮影(1倍)
撮影写真:4000×3000、2.24MB
「Fold4」で撮影(1倍)
撮影写真:4000×3000、2.46MB
「Pixel Fold」で撮影(1倍)
撮影写真:4000×3000、4.42MB
「Fold4」で撮影(1倍)
撮影写真:4000×3000、4.67MB
「Pixel Fold」で撮影(1倍、夜景モード)
撮影写真:4000×3000、1.29MB
「Fold4」で撮影(1倍、夜景モード)
撮影写真:4000×3000、3.32MB
「Pixel Fold」はSoCに「Google Tensor G2」、「Fold4」は「Snapdragon 8+ Gen 1」を搭載しています。ベンチマークテストを実施したところ、「Pixel Fold」は「AnTuTu Benchmark V10」の総合スコアは795114、「Geekbench 6」のMulti-Core Scoreは3486、「3DMark Wild Life Extreme」のスコアは1858、「AI Benchmark」の総合スコアは578.4となりました。
「Pixel Fold」は「Fold4」に対して、「AnTuTu Benchmark V10」は約66%、「Geekbench 6」は約80%、「3DMark Wild Life Extreme」は約57%、「AI Benchmark」は約44%相当のスコアにとどまったことになります。
ただし、これはあくまでもベンチマークの結果であり、実際の使用感を反映しているわけではありません。今回、両機種を交互に使っていても、動作速度にベンチマークほどの差を感じることはなかったです。また、「Pixel Fold」は発売前までにファームウェアがバージョンアップされ、パフォーマンスが最適化される可能性があります。今回のスコアは、発売前の試用機による結果として、参考にとどめてください。
「Pixel Fold」の「AnTuTu Benchmark V10」の総合スコアは795114
「Fold4」の「AnTuTu Benchmark V10」の総合スコアは1201789
「Pixel Fold」の「Geekbench 6」のSingle-Core Scoreは1492、Multi-Core Scoreは3486
「Fold4」の「Geekbench 6」のSingle-Core Scoreは1791、Multi-Core Scoreは4379
「Pixel Fold」の「3DMark Wild Life Extreme」のスコアは1858
「Fold4」の「3DMark Wild Life Extreme」のスコアは2761
「Pixel Fold」の「AI Benchmark」の総合スコアは578.4
「Fold4」の「AI Benchmark」の総合スコアは1328
「Pixel Fold」と「Fold4」を使い比べてみましたが、現時点での機能性は「Fold4」のほうが上です。「Fold4」は約1年前に発売された製品ですが、ペンに対応していたり、メインディスプレイのフロントカメラがアンダーディスプレイタイプであったりと、「Pixel Fold」より多機能です。
そのいっぽうで、「Pixel Fold」は折りたたんだ状態で「Fold4」より薄く、またカバーディスプレイの画面比率も一般的なスマホに近く使いやすいです。「Pixel」シリーズに搭載されている「消しゴムマジック」や「ボケ補正」などのさまざまなAI技術を利用できるのも大きなアドバンテージです。
今年後半にリリースされる「Android 14」で、「Pixel Fold」はメインとカバーディスプレイの両方に翻訳内容を表示する「デュアルスクリーン通訳」機能が搭載されます
ただ、「Fold4」が日本で発売されたのが去年2022年の9月29日。これまでどおりであれば5世代目が発表、発売されるのもそう遠くはありません。
GoogleのAI技術による独自機能に魅力を感じているのであれば、「Pixel Fold」は最適なフォルダブルスマホです。ただ、さらに進化したフォルダブルスマホを手に入れたいと考えているのなら、サムスンの発表を待ってからでも遅くはないと考えます。
レビューした製品を高確率で買ってしまう物欲系ITライター。守備範囲はPC、スマホ、VRがメイン。ゲーム、デジタルトイも大好き。最近サバゲにはまっています。愛車はスイフトスポーツで、断然マニュアル派です。