サムスンはAndroidタブレット「Galaxy Tab S9」シリーズの3モデルを2023年9月1日に発売しました。Androidタブレットは、エントリー〜ミドルレンジのSoCを搭載するモデルが多いですが、本シリーズはAndroid向けとして最新・最速の「Snapdragon 8 Gen 2 Mobile Platform for Galaxy」を採用したハイエンドモデルです。
本記事では、標準モデルとなる11インチの「Galaxy Tab S9」を試し、スペックや使い勝手、パフォーマンスなどについてレビューしていきましょう。
サムスン「Galaxy Tab S9」をレビュー
「Galaxy Tab S9」シリーズには、11インチの「Galaxy Tab S9」(直販価格124,799円、税込・以下同)、12.4インチの「Galaxy Tab S9+」(162,599円)、14.6インチの「Galaxy Tab S9 Ultra」(同209,799円)の3モデルがラインアップされています。それぞれ、標準モデル、上位モデル、最上位モデルという位置づけです。
SoCは前述のとおり「Snapdragon 8 Gen 2 Mobile Platform for Galaxy」を採用。このSoCは「for Galaxy」と名付けられているとおりGalaxy専用品で、クロック周波数が最大3.36GHzに引き上げられています。
・主要スペック
Galaxy Tab S9
約11インチ/ストレージ128GB/メモリー8GB/8400mAh/
Galaxy Tab S9+
約12.4インチ/ストレージ256GB/メモリー12GB/10090mAh/
Galaxy Tab S9 Ultra
約14.6インチ/ストレージ512GB/メモリー12GB/11200mAh/
ディスプレイは、それぞれでサイズこそ違いますが、「Dynamic AMOLED 2X」と呼ばれる有機ELディスプレイを搭載。HDRコンテンツへの対応(HDR10+)、最大120Hzのリフレッシュレート、スタイラスペン「Sペン」などのスペックについては同じ。単純に画面サイズだけで選べるわけです。
カメラは「Galaxy Tab S9」が1300万画素広角カメラ(背面)/1200万画素超広角カメラ(フロント)、「Galaxy Tab S9+」が1300万画素広角カメラ+800万画素超広角カメラ(背面)/1200万画素超広角カメラ(フロント)、「Galaxy Tab S9 Ultra」が1300万画素広角カメラ+800万画素超広角カメラ(背面)/1200万画素広角カメラ+1200万画素超広角カメラ(フロント)を搭載。単純に上位モデルになると搭載するカメラが多いというわけです。
サイズ/重量は「Galaxy Tab S9」が165.8(幅)×254.3(奥行き)×5.9(厚さ)mm/498g、Galaxy Tab S9+が185.4(幅)×285.4(奥行き)×5.7(厚さ)mm/581g、「Galaxy Tab S9 Ultra」が208.6(幅)×326.4(奥行き)×5.5(厚さ)mm/732g。バッテリー容量、バッテリー駆動時間は下記のとおりです。
Galaxy Tab S9
8400mAh/ネット使用:最大10時間、ビデオ再生:最大15時間、音楽再生:最大149時間
Galaxy Tab S9+
10090mAh/ネット使用:最大10時間、ビデオ再生:最大16時間、音楽再生:最大154時間
Galaxy Tab S9 Ultra
11200mAh/ネット使用:最大10時間、ビデオ再生:最大16時間、音楽再生:最大218時間
3モデルで異なっているのはディスプレイサイズだけでなく、ストレージ、メモリー、バッテリー、カメラ構成と多岐にわたっています。写真、動画をタブレットで撮影する機会が多いのであれば「Galaxy Tab S9+」「Galaxy Tab S9 Ultra」のいずれかを選ぶことをおすすめします。
今回試用したのは「Galaxy Tab S9」。画面は約11インチと3モデルの中で最も小さいですが、HDRコンテンツの再生、最大120Hz駆動のリフレッシュレート、スタイラスペン対応などスペックは上位モデルと同等です
サンドブラスト加工が施された、シンプルな背面
microSDカードスロットを備えており、最大1TBのmicroSDメモリーカードを装着可能
スタイラスペン「Sペン」は本体に同梱。IP68の防水防塵に対応しています
Sペンは本体背面の専用スペースに磁力で貼り付け可能。セットすると自動的に充電されます
「Galaxy Tab S9」を使ってみて最初に驚かされるのがディスプレイの鮮やかさ。「Dynamic AMOLED 2X」と名付けられた有機ELディスプレイには、階調豊かな映像が映し出されます。画素密度が274ppiと細かいので、精細感も文句なし。ゲーム、動画、読書にもってこいのディスプレイと言えます。
なお、サウンドに関しても、オーディオメーカーのAKGと協業した立体音響「Dolby Atmos」対応クアッドスピーカーシステムを搭載。サイズ以上の音量、臨場感で音楽やミュージックビデオを楽しめます。持ち歩ける動画プレーヤーとして映像、音ともに文句なしのクオリティーです。
色のグラデーションは非常に滑らかで、黒も締まっています。スマホで撮った写真を「Galaxy Tab S9」で見ると、より美しく感じられそうです
「Netflix」や「YouTube」などでHDR対応コンテンツを臨場感豊かに表示可能。立体的に感じられるほどの迫力で映像が楽しめます
画素密度が274ppiと細かいので、電子書籍を見開きで表示しても解像度に物足りなさは感じません(鈴木みそ氏「ナナのリテラシー1」より)
YouTubeアプリで「強風オールバック」を最大ボリュームで再生したところ、最大音圧は82.7dBAを記録。ちょっとしたオーディオコンポ代わりになる音量です
「Galaxy Tab S9シリーズ」最大のアドバンテージはスタイラスペン「Sペン」の使い勝手のよさです。
「Sペン」の機能はほかのスタイラスペンと大差ありませんが、ポイントはGalaxy独自の「Sペン」向けソフトウェアです。サムスンは「Galaxy Note」シリーズで「Sペン」を採用して以降、ソフトウェアの改良を続けており、本製品にはその最新版が搭載されています。画面上の任意の位置に配置できる折りたたみメニュー「エアコマンド」からは、Sペン向け機能に素早くアクセスできるなど、細かいところの使い勝手にもすぐれます。
なお、今回は同梱の「Sペン」を試用しましたが、新型の「S Pen Creator Edition」が発売されており、こちらにはブラシや傾きのオプションが追加。ペン先も2種類から選べ、グリップも改良されています。イラストを本格的に描きたいのなら、新しい「S Pen Creator Edition」がおすすめです。
折りたたみメニュー「エアコマンド」からは、「ノートを作成」「全てのノートを表示」「スマート選択」「キャプチャ手描き」「ライブメッセージ」「AR手描き」「翻訳」「PENUP」などの機能にアクセスできます
「Sペン」には1種類のペン先しか用意されていませんが、やわらかめのペン先には適度な摩擦感が備わっており、アナログ筆記具のような書き味を実現しています
Galaxy端末で使える「エッジパネル」も用意。これは、よく使うアプリに素早くアクセスするためのショートカット機能です
2つのアプリを並べて表示しても、11インチだと余裕があります。「Sペン」と組み合わせると、マルチタスクなども非常にはかどりそうです
本製品のもうひとつのウリはカメラ機能。「Galaxy」シリーズはカメラ画質に定評がありますが、今回の「Galaxy Tab S9」でも非常に鮮やかな写真、動画を撮影可能です。1300万画素の広角カメラは、画素数こそそれほど高くありませんが、「Galaxy」のスマホと同等の描写力を備えています。カメラ画質を重視してタブレットを選ぶのなら、「Galaxy Tab S9」シリーズが有力候補であることは間違いありません。
「Galaxy Tab S9」の広角カメラで実際に撮影した写真です。色調がやや鮮やかすぎますが、「映え」目的であれば歓迎する人は多いのではないでしょうか
さて、最後に「Galaxy Tab S9」のパフォーマンスをチェックしましょう。主要ベンチマークソフトウェアでテストを実施したところ、「AnTuTu Benchmark V10」の総合スコアは1516056となりました。
記事執筆時点の「AnTuTu Benchmark」のランキングを見てみると、1位は「Snapdragon 8 Gen 2」を搭載する「OnePlus Ace 2 Pro」で、スコアは1648735です。つまり、「Galaxy Tab S9」は最高スコアの約92%相当と、Androidスマホのフラッグシップモデルに迫るスコアを記録したわけです。
なお、バッテリー駆動時間については、ディスプレイ輝度、ボリュームを50%に設定してYouTube動画を2時間連続再生したところ、バッテリー残量は79%となりました。単純計算で、バッテリー残量0%までであれば9時間31分動作することになります。実用上十分なバッテリー駆動時間だと言えますね。
「AnTuTu Benchmark V10」の総合スコアは1516056、「Geekbench 6」のMulti-Core Scoreは5566、Single-Core Scoreは2103、「3DMark」のWild Life Extremeは3937、「AI Benchmark」の総合スコアは2107
「AnTuTu Benchmark V10」実行中の背面温度は最大41.6度(室温26.9度で測定)。ボディが大きいおかげか、発熱は比較的低めに抑えられています
これは「原神」の冒頭シーン。ハイパフォーマンスなプロセッサーと、高画質かつ大きな有機ELディスプレイにより、「Galaxy Tab S9」はモバイルゲーム機としても優秀です
「Galaxy Tab S9」シリーズの違いは前述のとおり多岐にわたっていますが、動画視聴やゲームプレイなどタブレット本来の使い方を重視するのであれば、画面サイズで選んで構わないと思います。カメラ構成も大きく差別化されていますが、正直なところ写真や動画を撮影するのならコンパクトなスマホのほうがお手軽です。
悩ましいのがストレージ容量ですね。数多くのゲームをインストールするのであれば、「Galaxy Tab S9」の128GBだと容量が不足する可能性があります。個人的には「Galaxy Tab S9」にも256GBモデルを用意してほしかったところです。
とはいえ、「Galaxy Tab S9」の124,799円という直販価格はお買い得感が非常に高いです。定期的にアプリやデータを整理すれば、128GBでも運用は十分可能。処理性能とディスプレイ、そして何よりも携帯性を重視して選ぶのであれば、「Galaxy Tab S9」は魅力的な1台と言えるでしょう。