ファーウェイから「中国・深センにある本社や研究・開発施設を見学しませんか?」と誘われたので取材に行ってきました。中国に本社がある通信機器メーカー、という甘い認識でのこのこ出張してきたのですが、「スゴすぎて、意味がわからん」と感じるほどスケールの大きさでした。
スケールが大きすぎたファーウェイのオフィス見学
日本から約6時間、飛行機に乗って中国の深セン空港に到着したのが夜中の1時。そこからバスで1時間ほど揺られて、宿泊するホテルに案内されました。ホテルのロビーは非常に豪華で「めちゃくちゃイイ4つ星ホテルじゃん!」とテンションが上がったところに、「こちらはファーウェイが運営するホテルでございます」と案内され、深夜到着の眠気が吹っ飛びました。
宿泊したのはファーウェイが運営するホテル
シャンデリアが飾られている豪華なロビー
ファーウェイは中国全土だけではなく、世界中にオフィスや研究施設があり、さらには来客も世界中からやってくるということで、そういった人たちが泊まるための施設が、今回宿泊したホテルだそうです。かつ、こういったホテルが深センに複数あると言います。
大きな規模のホテルらしく、ホテル内にはレストラン、バー、コンビニなどひと通りの施設が用意されています。朝食は中華から洋風まで揃ったバイキング方式。ここぞとばかりに食べまくってしまった筆者ですが、ささっと済ませて仕事に向かうような人が多かったです。
宿泊中にお世話になった朝食の会場。同じものがホテルの1階と2階に用意されています
ファーウェイ運営のホテルに衝撃を受けたところで、最初に取材したのがファーウェイの本社です。深セン市内にあり、オフィスではなくキャンパスと呼ばれています。大きなビルからモダンな建築までが立ち並び、その規模はまさに大学のようです。
深セン市内にあるファーウェイの本社。キャンパスと呼ばれています
敷地が広大すぎるため、キャンパスから付近の地下鉄の駅まで直通の地下道が用意されています
敷地内には、オフィスのほかに社員用の食堂がいくつも用意されています。その大きさも、大きな大学の食堂クラスです。ここでは約5.5万人の社員が勤務しており、この数の人が一斉に食堂に向かうと混雑しすぎるということで、複数の大規模食堂があるとのことです。
ファーウェイの社食。席数はわかりませんが、総合大学の食堂くらいの大きさはゆうにあります。これがキャンパス内にいくつも用意されています
食事も、中国の地方それぞれの料理から洋風の食事まで多種多様。さらには、こちらにも来客用(ファーウェイ社員も有料で利用可能)のレストランがいくつも用意されていて、その種類もさまざま。建物が豪華でどこかのショッピングセンターと比べてもそん色はありません。ここでも、もちろん必要以上に食べたことは、言うまでもないでしょう。
来客用のレストランが入った建物
建物の中に入ると、大きな通路の両脇に中華や和食などのレストランが並びます
食事をとったレストランは、私たち以外にも多くの来客でにぎわっていました。ファーウェイクラスの規模の会社だと、来客も相当数いるようです
このキャンパスにて「ダーウィン展示センター」という施設を取材したのですが、残念ながら写真はNGだったので、ざっくりと説明しますね。この施設では、来客にファーウェイがどういった事業を展開しているのか、どういった技術開発に望んでいるのかを紹介するための施設です。
「ファーウェイってこういう会社ですよ」という、会社説明的な施設だと思ってください。来客のグループごとにアテンダントが付き添い、それぞれをがっつり説明。施設内も、波打つようなディスプレイに森林が映し出されており、さながら森の中で優雅に事業説明を受けているかのような体験でした。
「ダーウィン展示センター」があるビル
日本では、ファーウェイと言えばスマートウォッチやイヤホンなどの総合家電メーカーのイメージが強いと思います。しかし、根幹は通信技術のソリューション(ICTソリューション)を提供する企業であり、安定、かつ、高速の通信技術ということを何度も強調していました。
つまり、中国本土では通信を必要とする多くの事業に、ファーウェイの技術が使われているということ。さらに、中国国外のプロジェクトにも参画しており、単なる“メーカー”ではないのです。OSやチップの開発も自社で行っており、「そりゃ自社施設への投資も莫大なわけか」と、ひとりで納得してしまいました。
ファーウェイは2022年の売上高の25%という、とてつもない金額を研究・開発に投資しています。世界中に研究・開発施設を所有しており、そのひとつが今回取材した松山湖キャンパスです。以下の動画は、松山湖キャンパスの様子をまとめたもの。その全貌のいったんがわかるかと思います。
オフィスの概念がバグりそうになった松山湖キャンパス。ちなみに、この建物はイベントなどの使用するホールとのこと
夜になるとライトアップされます。控えめに言って絶景
湖の向こう側に巨大な欧風の建物が鎮座する風景は、もはやハリー・ポッターの世界
ヨーロッパの各都市を再現した街並みにオフィスの建物が並びます。この中では社員が普通にPCに向かってお仕事中。なかなか想像しがたいですよね
東京ドーム25個分という、想像もできない広大な敷地には、ソフトウェアからハードウェアまでさまざまな分野の研究・開発施設が並んでいます。各エリアは、欧米の都市をイメージして建設され、巨大なアーチや石像、神殿のような建物まで揃っており、「私はどこにいるのだろうか」と頭がくらくらするほどでした。
広大な敷地を移動するには時間がかかるため、移動用の電車が走っています。もはやテーマパークのようです。「研究や開発に携わる社員には自然豊かな場所で仕事をしてもらいたい」という考え方に基づいているということで、時折すれ違う社員の人たちも、どこかしらのびのびと仕事をしていそうな雰囲気でした。
敷地内には移動のための電車が走っています
こちらは路線図です。施設全体を走る路線と、一部を走る路線が2つ、合計3つの路線が配備されています
駅も豪華。カフェも完備されていました
イタリアの大広場とかにでてきそうな階段
エリアとエリアの間にそびえ立つ門も荘厳です
ちなみに、ここには約2.7万人の社員が勤務しており、そのうちの約5000人はレストランや清掃などのスタッフとのこと。地域の雇用にも貢献しているそうです。
センサーや運動アルゴリズムの研究・開発といった分野は、ウェアラブル製品が収集するユーザーデータの精度を決める大きな要素です。この「HUAWEIヘルスラボ」は、運動アルゴリズムの研究や開発を主に、ハードウェア開発、技術開発、スポーツとヘルスデータの研究、製品テストなどを行う施設です。わりと、日本のユーザーにも何を行っているかイメージしやすい場所かと思います。
「HUAWEIヘルスラボ」(写真右側)
この施設には、専門的な研究を行う研究エリア、エコシステムの開発や認証を行うエコシステムエリア、各スポーツとヘルスのシーンのインキュベーションを行うインキュベーションエリア、80種類以上の専門的なテストを行えるテストエリアの4つで構成されています。
主に見学したのは、80種類以上の専門的なテストを行うエリア。このエリアの中央にはプロの試合で使用されるものと同じサイズのバスケットコートがあります。このコートの周囲には、28機の赤外線ハイスピードカメラを設置し、ミリ秒単位で運動者の動きをモニタリング。このデータを用いて、3Dで動きを再現するとのことです。
施設内は広い体育館のようになっており、中央にバスケットコートがあります。その横に卓球台やバドミントンのコートを配備
バスケットコートの周囲に設置された赤外線ハイスピードカメラ。これで運動者をモニタリングして解析
このバスケットコートを囲むようにさまざまな専門テストを行う場所を設置。高原血中酸素レベルモニタリングを研究するための高原模擬室は、温度、湿度、気圧、海抜などさまざまな天候条件をシミュレートし、製品やセンサーが正常に動作するか測定する施設です。
ランニングをテストするエリアは、心拍運動負荷試験装置、胸部ベルト式心拍計、トレッドミル、ランニング分析台、立体測定エリアなど広範囲に及びます。多種多様なマシンにより、さまざまな角度からランニングのテストが行われており、力が入れられている種目だと感じました。
たとえば、ランニング分析台は、コース上に7000以上のセンサーを設置。高精度な圧力分布測定技術により、足底の圧力分布により直立時と運動時のバランスデータを測定することが可能。これにより精確なランニング時の姿勢を測定できるとのこと。こういったマシンから収集したデータを使って、専門家が日々アルゴリズムの改良や製品開発にいそしんでいるとのことです。
ファーウェイのスマートウォッチの中でも特に機能性が高いランニング(屋内外)に関しては、複数の設備やマシンで研究されています
このほかにも、クライミング、スイミング、卓球、ゴルフ、サイクリングにヨガ、ダンス、太極拳まで、本当に幅広いスポーツの研究エリアが用意されています。ファーウェイのスマートウォッチは、100種類以上のスポーツに対応というのがうたい文句ですが、その陰にはこういった研究・開発が生きているというわけです。
クライミング研究エリア
卓球研究エリア。ロボットのアームを使って、球のさまざまな回転を再現可能です
いかがでしたでしょうか。個人的には、さまざまな施設のスケールの大きさに驚きつつも、研究や開発へ巨額の投資を行っていることが、ファーウェイ製品が持つ製品力の高さに直結しているのだとも感じました。
アメリカとの貿易摩擦の問題でよくないイメージが先行している一面もありますが、ファーウェイの製品は使ってみると技術力の高さがうかがい知れるイイ製品であることも事実。アメリカによる規制でスマートフォンやタブレットでGoogle系のサービスが使えなくなったり、5G通信が使えなかったりしたものの、こういった問題でさえ「独自OSの開発などの技術開発の促進につながった」(同社PR責任者)とポジティブなコメントを残していたのが印象的です。日本でも、ファーウェイの技術に触れられる端末が増えるといいですね。
取材協力:HUAWEI