PFUは2023年10月25日、小型キーボード「Happy Hacking Keyboard」(HHKB)の新モデル「HHKB Studio」を同日に発売すると発表した。「All-in-One」をコンセプトとした新しいHHKBで、「ポインティングスティック」と「ジャスチャーパッド」を搭載。マウスやトラックパッドなしで、パソコンやタブレットなどさまざまなデバイスをキーボードのみで操作できる。
また、キースイッチにはHHKBシリーズ初のホットスワップ対応のメカニカルスイッチを採用。自由度が増した「キーマップ変更ツール」と組み合わせて、自分好みにカスタマイズできる。
「HHKB Studio」。カラーは「墨」の1色展開。PFUダイレクトにて販売する
英語配列と日本語配列をラインアップし、PFUダイレクトでの価格はどちらも44,000円(税込)。
「HHKB Studio」のコンセプトは「All-in-One」。「ポインティングスティック」と「ジャスチャーパッド」を搭載することで、カーソルを動かすマウスやトラックパッドなどが不要となり、「HHKB Studio」だけで操作が完了する。
「ポインティングスティック」は、スティック型でキーボード中央に搭載。人さし指でマウスカーソルを操作できる。ThinkPadの「トラックポイント」と同じだ。カーソルの移動速度はキーボードのみで調整可能。ホームポジションから手を離すことなく、操作できるのがメリットだ。マウスが不要な分、コンパクトなスペースで作業ができるので、外出先でも使いやすい。
キーボード中央に「ポインティングスティック」を搭載しており、これでカーソルを動かせる。スペースキーの下にはマウスキーがあり、ホームポジションから手を移動させることなくマウス操作が可能
「ジェスチャーパッド」は、左右側面と手前の左右の4か所にタッチセンサーを搭載し、指でなぞることで、画面のスクロールやボリュームの調整などができる。機能の割り当ては専用ソフトウエア「キーマップ変更ツール」で変更可能。スクロールの速さなどはキーボードのみで調整できる。映像や画像編集でも重宝しそうな機能だ。
「ジェスチャーパッド」は側面の4か所に配置されている。写真の黒い部分が操作可能エリア
操作は写真のように指でなぞるだけ。標準ではスクロールや上下左右の矢印キーなどが割り当てられているが、写真や動画編集の各種調整などに割り当てれば、直感的な操作が行える
「キーマップ変更ツール」では「ポインティングスティック」のタップ機能のオン・オフが選択可能。各キーに好みのキーを割り当てたり、複数キーを使うショートカットを割り当てたり、細かくカスタマイズできる
「HHKB」のキースイッチといえば静電容量無接点方式を長年採用してきたが、本モデルはHHKBシリーズで初めてメカニカルスイッチを採用。Kailhと共同開発したリニアタイプの静音メカニカルスイッチ(押下圧45g)を搭載する。ホットスワップに対応しており、Cherry MX互換スイッチにハンダ付けせずに交換することが可能。キーキャップも交換できるが、一部キーは「ポインティングスティック」と干渉するため、削るなどの加工が必要だ。これを考慮して、来年3月にはキーキャップの3Dデータを公開するという。
打鍵感は静電容量無接点方式に寄せている感じはしたが、静電容量無接点方式とは少し違う印象だった。
メカニカルスイッチはホットスワップに対応しており、Cherry MX互換スイッチに簡単に付け替え可能。カスタマイズ性だけでなく、メンテナンス性にもすぐれている
本体サイズは308(幅)×132(奥行)×41(高さ)mm、重量は840g(英語配列)/830g(日本語配列)。「HHKB Professional」と比べると約300g重くなった。電源は単3形乾電池×4本(またはUSBコネクターからの給電)、サポートOSはWindows 10(64ビット)以降/macOS 11以降/Android 9以降/iOS 13.7以降/iPadOS 13.0以降。
横から見るとゆるやかにU字で後ろ側が高いシリンドリカルステップスカルプチャ構造を踏襲
電池ボックスが飛び出なくなったおかげで見た目がスマートになった。電源はスライド式に変更されるなど、細かい部分の変更点が多い
同日に開催された発表イベントではコンセプトや開発背景などが説明された。
「HHKB Studio」を披露するPFUの清水康也執行役員常務
「HHKB Studio」の開発には約4年を要したという。企画は日本ではなく、PFU America,Inc.が主導するなど、四半世紀ぶりの大型進化というだけあり、気合いの入ったモデルだ。デザインはアクションカム「Go Pro」などを手掛けるHuge Designの協力を得ている。
PFU America,Inc.が企画を主導し、デザインは「Go Pro」のデザインなどを手掛けるHuge Designの協力を得た
パソコンからスマートフォン、タブレットとキーボードを使うデバイスに合わせて、接続方式などを変えてきたHHKB。「HHKB Studio」では、合理的なキー配列とコンパクトボディは、これまでのHHKBと変わらないが、それ以外の部分が大きく変わっている。
特にメカニカルスイッチを採用したことには驚いた。これまでは、どちらかというとユーザーがHHKBに合わせる必要があったが、「HHKB Studio」ではユーザーが好みにカスタマイズできるようになった。これは時代に合わせた大きな変化と言える。
もちろん、既存の「HHKB Professional」は併売される。伝統を守りつつ、「HHKB Studio」で新しい挑戦に挑む。