NECパーソナルコンピュータのAndroidタブレット「LAVIE Tab T9」(2024年春モデル) が、2024年2月15日に発売された。8.8インチのディスプレイを搭載する小型モデルだが、ハイパフォーマンスを追求した、近ごろ見かけないタイプのタブレットだ。今回は実際にレビューして、その実力に迫りつつ、適した用途を探っていこう。
片手でも持てるコンパクトなボディながら高性能なタブレット「LAVIE Tab T9」のレビューをお届けしよう
タブレットは画面のサイズでジャンル分けされることが多い。そのなかでも画面サイズが8インチクラスのAndroidタブレットは、価格優先で低価格な製品が目立つ。しかし、今回取り上げる「LAVIE Tab T9」は、コンパクトクラスではあるが、メモリー8GB+ストレージ128GBモデルで83,775円、メモリー12GB+ストレージ256GBを備えた直販モデルで109,780円と、かなり高価な部類に入る(いずれも2024年4月1日時点における価格.com最安価格)。
8.8型のタブレットで、スペックとしてはハイエンド
高価なぶん、基本スペックはハイエンド仕様になっていて、性能を左右するSoCには2022年後半に登場したハイエンド向けSoC「Snapdragon 8+ Gen 1」が採用されている。2024年の今となっては2世代前の設計になるが、高いGPU性能を備え今でも十分な実力を備えるSoCであり、国内で正規に入手できるAndroidタブレットの中では屈指の高性能機と言ってよいだろう。
本体背面はフラットでシンプルなボディ
ボディサイズは、約129.5(幅)×208.5(高さ)×7.6(厚さ)mm、重量は約365g。画面の面積と重量はスマホのおよそ倍だが、片手で持てるサイズだ。ただし、防水防塵には対応していないので、水回りやお風呂で利用することはできない。この点は少々残念だ。
外部インターフェイスを見てみよう。面白いのは、側面に2つのUSB Type-Cポートを備えている点だ。本機にはイヤホンジャックがないが、この2つのUSB Type-Cポートを利用して、USB Type-C接続の有線イヤホンをつなぎながら同時に充電も行える。また、DPオルタネートモードの映像出力も可能なので、充電しながら外部モニターに映像を映し出すことも可能だ。加えて、外部電源で直接駆動する「バイパス給電」を備えているため、バッテリーの劣化を心配せずに長時間の外部電源駆動が行える。
長辺の下側面。薄型のデザインでmicroSDメモリーカードスロットを装備。こちらにUSB Type-Cポートを備える
短辺にもUSB Type-Cポートを配置する。片方にアダプターを介して有線イヤホン、もう片方に充電ケーブルをつなげるのが一般的な使い方だろう
なお、側面には2つのスピーカーを搭載し、ステレオ出力が可能。Dolby Atmosの立体音響にも対応している。音質は良好で、ゲーム、動画や音楽の視聴にまったく問題は感じなかった。ハイエンド機らしく、ボリュームを上げても音が割れることもない。
スピーカーは左右に配置されており、ステレオ再生が可能だ
カメラは約200万画素のマクロ機能搭載カメラと約1300万画素のメインカメラ。被写体に近づいてメモを取る、といった用途にも使えそうだ。ただし、画質はハイエンドのスマートフォンには及ばない
ベンチマークテストを実施して本機の大きな魅力である処理性能に迫ろう。
CPU性能を中心にアプリの処理性能をチェックする「PCMark」のWork 3.0テスト結果は18162。GPU性能を計測するアプリ「3Dmark」ではWild Life Extremeテスト結果が2830だった。
3Dmarkの検査項目「Wild Life Extreme」のテスト結果は2830だった
「PCMark」のWork 3.0テストの結果は18162
CPU とGPUの性能をチェックする「Geekbench」では、CPUのシングルコアが1855、マルチコアが4748だった。なお、本機と比較的価格帯の近いミドルクラスの折りたたみスマホであるZTE「Libero Flip 5G」のスコアはシングルコアが1038、マルチコアが2808なので、2世代前の設計でもハイエンドSoCの性能は高い。
ベンチマークの結果ではグラフィック性能が高いことがわかり、「原神」のような重量級のゲームで真価を発揮できるし、動画編集の効率化も望めるだろう。
8.8インチというサイズがもたらす高い機動力と、ハイエンドSoCによるハイパフォーマンスを生かすことで、場所を選ばずに高負荷な作業が行えるというのが本機最大の魅力だ。
次はディスプレイチェックしよう。ディスプレイの解像度は2560×1600、ドットピッチ343ppiの高精細表示が可能だ。色域はDCI-P3比で98%、輝度は500nitsとなっており、動画や静止画の視聴で不足はない。また、リフレッシュレートは最大144Hz駆動に対応しているためゲームプレイにも適している。
明るく高画質のディスプレイ。最大144Hz駆動対応なのでゲームとの相性がいい
ゲームをより快適に楽しめるゲームアシスタント機能を搭載。ゲームを起動すると画面の左側に常駐し、スワイプで引き出すことで各種設定や操作にアクセスできる
「LAVIE Tab T9」はOSにはAndroid 13を採用。ホーム画面下部にはタスクバーが表示され、登録した最大7つのアプリを素早く起動できるほか、フォルダを登録して複数アプリを保管できる。タスクバーの右端にあるアプリ一覧からはすべてのアプリにアクセス可能だ。
ホーム画面下にあるのがタスクバー。最大7つのアプリを登録でき、右端にあるのがアプリ一覧。ホーム画面に戻らずとも、お気に入りのアプリを素早く起動できる
タスクバーは普段は隠れているが、画面下部を下から上にスワイプすることで表示される。そのため、いちいちホーム画面に戻ってアプリを起動するといった操作が不要になる。加えて、アプリを全画面表示中にタスクバーからアプリを長押ししてドラッグすれば、フローティングウィンドウや分割画面での起動も行える。
画面下部を下から上にスワイプしてタスクバーを表示した後、そのまま指を止めずにさらに上にスワイプするとウィンドウ切り替えの画面になる
フローティングウィンドウは複数のアプリを同時に起動できる機能。ただし、たくさん起動すると使いづらい。分割画面は、画面の上下分割と左右分割のいずれかのパターンで2つのアプリの同時起動が可能だ。
PCのように複数のアプリを独立して表示できるフローティングウィンドウ
画面分割で左右に2つのアプリを表示。右のアプリから画像やテキストをドラッグ&ドロップで左のアプリに移動させるといった便利な小技も利用できる
タブレット向けに強化されたAndroid 13により、複数アプリを同時起動する場合の使い勝手が高くなっている。また、スマホ向けの縦画面でしか起動しないアプリを横画面で表示できる「スマート画面回転」など便利な機能も満載だ。
使い勝手を高めるのに一緒に使用したいのがアナログ入力対応の「デジタルペン3(別売り。公式サイト販売価格11,880円)とフリップカバー「タブレットカバー」(別売り。公式サイト販売価格5,478円)だ。
オプションの「デジタルペン3」。鉛筆的なデザインと形状、そして筆記用具として自然な太さであるため持ちやすい
「デジタルペン3」は4096段階の筆圧感知に対応する高機能なデジタルペン。本体とはBluetoothで接続する。メモアプリを起動してすぐさま手書きメモを取ったり、拡大鏡を表示したり、といった機能を備えている。また、「デジタルペン3」でカメラやスライドショーを操作することも可能だ。別の大画面ディスプレイに出力してスライドを操作するなどビジネスシーンでも役立つ使い方もできる。
筆者は、ペン入力の性能で定評のあるサムスン「Galaxy Z Fold5」のSペンを私用しているが、それと比べても違和感がないくらい「デジタルペン3」の手書き入力の精度は高い。絵心に欠ける筆者の印象ではあるが、イラスト制作も可能かもしれない。
Googleの検索窓など、テキスト入力欄にいきなり手書きで書き込んでも、自動でテキスト変換してくれる
カメラを使用した際には「デジタルペン3」をリモコンとして使える(左画面)。ビデオの再生操作も可能だ(右画面)
「デジタルペン3」は内蔵のマグネットで、後述する「タブレットカバー」に装着可能。磁力が強くないため簡単に外れるのは残念な点だ。
オプションのタブレットカバー。どこかアーミーな雰囲気があるが、スリットから本体背面が見えていて、熱がこもることはなさそうだ
本機専用のカバー「タブレットカバー」は、スリットの空いたデザインが特徴。立てかけて設置できるほか、上記の「デジタルペン3」を取り付けることもできる。折り曲げて自立させることもできるので、ハンズフリーで動画を見たり作業を行ったりする場合には購入しておきたいアイテムだ。
フラップを折り曲げることで自立させられる
「LAVIE Tab T9」は、高性能を生かした動画編集、「デジタルペン3」を使ったメモやラフスケッチ、撮影した写真に書き込んだり切り抜いたりして資料を作成するといった使い方もでき、プライベートからビジネスまで幅広く対応できる製品だ。海外で一定の人気があるゲーミングタブレットに近い特徴もあり、ゲーマーにとっても注目だろう。
もちろん、8〜10万円という価格は、Androidタブレットとしては高価だ。ただし、本機の画面サイズと基本性能が近い製品は、サムスン「Galaxy Z Fold」シリーズや、Google「Pixel Fold」のような20万円クラスのハイエンド折りたたみスマホになってしまう。これらと比べると半額に近い価格であり、割安と考えることもできるだろう。