フォルダブルスマートフォン「Galaxy Z Fold」シリーズの第6世代モデル、「Galaxy Z Fold6」をレビュー。ボディは軽く薄くなり着実に進化している。シリーズのリピーターに強くアピールしそうな1台だ。
サムスン「Galaxy Z Fold6」、SIMフリーモデル(直販):249,800円〜、NTTドコモ版:275,990円、au版:269,800円
※本記事中の価格は税込で統一している
2019年に初代「Galaxy Fold」が登場して以来、毎年モデルチェンジが行われているサムスンの横折フォルダブルスマートフォン。「Galaxy Z Fold6」はその最新機種で、NTTドコモとauの通信キャリアおよび、一般流通モデルが2024年7月31日より発売されている。
「Galaxy Z Fold6」のディスプレイを広げた際のサイズは、約153.5(幅)×132.6(高さ)×5.6(厚さ)mm、重量は239g。特に重量はタフネススマホやゲーミングスマホのような高機能型のハイエンドスマホに近い。5.6mmの厚さも手にすると軽い驚きを感じるほどだ。しかも、折りたたんだ状態でも前モデル「Galaxy Z Fold5」よりも1.3mmも薄い12.1mmに抑えられている。歴代の「Galaxy Z Fold」シリーズを触れたことがあるなら、6年の進化を実感できるだろう。
薄く軽く仕上がったボディは機械としての洗練度も向上している
ボディの細部を見ると、ヒンジやディスプレイの折り目の端に生じるすき間が小さいことに気づく。こうしたすき間は小さいほど、異物混入のトラブルが起こりにくくなる。設計が洗練されていることを感じられるポイントだろう。
ディスプレイの折り目の端に生じるすき間がほとんどない。異物が入り込みにくくなるので耐久性向上につながる
ヒンジ部分の出っ張りも小さくなった
メインディスプレイを囲むベゼルの段差も低い
なお、IPX5等級の防水仕様とIP4Xの防塵仕様をクリア、「おサイフケータイ」対応、Qi規格(1.3.3)のワイヤレス充電対応など機能面もそつがない。カラーバリエーションはネイビーとシルバーシャドウの2色に加えて、サムスンの直販サイト専用カラーとしてとクラフテッド ブラックホワイトの2色も用意される。明るい色が選べることも歓迎できる。
計4色のカラーバリエーションを用意する。なお、右側の2色(クラフテッドブラックとホワイト)はサムスン直販サイト限定となる
サウンド機能を見ると、ステレオスピーカーを搭載、Dolby Atmosにも対応している。なお、イヤホン端子は非搭載だ。
薄型、軽量化とともに注目したいのがAI機能の強化だ。画面に表示された任意の映像やテキストを丸く囲んで検索する「かこって検索」や、音声の文字起こしから内容の要約、電話着信の通訳機能などビジネスシーンにおける生産性が向上。また、画像の編集や生成などにも利用できて楽しい。
ボイスレコーダーの文字起こし機能は、実用になるレベルで日本語の話者を識別してくれるほか、キーワードの抽出などが可能。会議や会談の議事録作成で効率アップにつながりそうだ。
映像の編集は、物体の削除や移動などが生成AIで行える。左の写真のひまわりの一輪を除去してみた
ボイスレコーダーの文字起こし機能は、話者を識別できる。しかも要約を箇条書きでまとめてくれる
写真に落書きのような絵を追加するとAIが清書してくれる
メインディスプレイはフォルダブルの約7.6インチ、サブディスプレイは約6.3インチ。いずれも120Hz駆動とHDRに対応した有機ELディスプレイだ。メインディススプレイは前モデル「Galaxy Z Fold5」と一見変わってないようだが、解像度が2176×1812から2160×1856にわずかに変更されている。それにともなってサイズも縦が約3mm短くなりつつ、横幅は約1.1mm広がった(KDDIの公開している技術情報を参照)。
サブディスプレイも「Galaxy Z Fold5」から0.1インチだけ大きくなり、解像度も2316×904から2376×968に少し向上、フルHD+を少し下回る程度の解像度だ。このサブディスプレイは、小型スマホレベルのサイズのうえに、HDRと120Hz駆動対応なので、動画やゲームでも不足は感じない。
メインディスプレイのUDCは、明るめの映像を映すと存在が浮かび上がる
搭載されるSoCは「Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxy」。通常版の「Snapdragon 8 Gen 3」と比較すると、CPUのプレミアムコアの動作クロックが3.3GHzから3.4GHz、GPUの動作クロックも900MHzから1GHzに高められている。メモリーは12GBを備え、仮想メモリーによる拡張も可能だ。ストレージは256GBのほか、512GBと1TB搭載モデルが用意されている。いっぽうで、microSDXCメモリーカードスロットは搭載されない。
プリインストールされるOSはAndroid 14。公表しているサムスンの方針によって、7世代のOSバージョンアップと、発売後7年となる2031年までセキュリティアップデートなどソフトウェアサポートが行われる。長く使うつもりならこの手厚いサポートは魅力的だ。
人気のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)で処理性能を計測したところ、総合スコアは1742617となった。同じSoCを搭載する「Galaxy S24 Ultra」の総合スコア、2075120と比べると控えめな結果だ。
なお、こちらも定番のベンチマークアプリである「GeekBench 6」の結果はシングルコアが2221、マルチコア6919で、「Galaxy S24 Ultra」のシングルコア2307、マルチコア7272という結果と比べると伸び悩んでいる。また、グラフィック性能専用のベンチマークアプリ「3DMark」の「Wild Life Extreme」のスコアは4822で、「Galaxy S24 Ultra」のスコアである5110と比べると、こちらも今ひとつだった。(数値は価格.comマガジン調査のもの。)
「AnTuTuベンチマーク」の結果は1742617。200万越えが珍しくない「Snapdragon 8 Gen 3」搭載機としては振るわない結果だった
「GeekBench 6」のスコアは「Snapdragon 8 Gen 3」搭載機として順当な結果だった
「3DMark」の「Wild Life Extreme」のスコアは4822。同じSoCを搭載する「Galaxy S24 Ultra」の5110と比較すると1割ほど低い結果だ
ベンチマークテスト結果は、同じSoCを搭載する「Galaxy S24 Ultra」と比較しても総じて伸び悩んでいる。その原因として熱処理の違いが指摘できる。冒頭で触れたように本機のボディはかなり薄く、折りたたみ構造のため、ヒートシンクやベイパーチャンバーの面積を確保しにくい。
一般的なアプリの動作で違いを実感できるほどではないが、グラフィック性能が重要なゲームアプリでは、1世代前の「Snapdragon 8 Gen 2」搭載機と同じシーンで同じようなコマ落ちが現れる。処理性能で妥協したくないなら「Galaxy S24 Ultra」など冷却性能の高い製品を選ぶとよいだろう。
メインカメラは、約5000万画素の広角カメラ(35mm換算の焦点距離は約23mm)、約1200万画素の超広角カメラ(同焦点距離で約13mm)、約1000万画素の望遠カメラ(同焦点距離で約66mm)。フロントカメラは、メインディスプレイ側は約1000万画素(同焦点距離で約22.6mm)、サブディスプレイ側は630万画素(同焦点距離で約25mm)となっている。なお、広角カメラはデジタルズームを使った2倍のズーム撮影にも使われる。搭載されるカメラは「Galaxy S24 Ultra」ほどの望遠撮影には対応していない。
メインカメラは、広角カメラ、超広角カメラ、広角カメラを基準にした約3倍の望遠カメラのトリプルカメラ。
以下に、メインカメラを使った静止画の作例を掲載する。いずれも初期設定のままシャッターを押すだけのカメラ任せで撮影を行っている。
超広角らしい広がりのある構図になった。構図周辺まで安定した画質を維持する点がハイエンドクラスらしい
広角カメラで撮影。より精細な印象になる。青空の鮮やかさが強調されており、夏の日差しの印象を高めている
ピクセルビニングを解除したうえで、デジタルズームを行うことで画質の劣化を抑えている。画質も十分だ
望遠カメラに切り替えて撮影。青空に浮かぶひまわりが印象的で、中望遠のため広角主体の通常のスマートフォンとは印象の異なる構図になる
明るめの夜景を超広角カメラで撮影。解像感を維持しつつノイズは抑えており、自然に感じられる画質だ
敷石の解像感が高まっている。ハイライトの処理もうまく、街路樹の暗部もつぶれていない。10ショットほど撮影したが、どれも安定した画質だった
夜景撮影が苦手な望遠カメラだが、光学式手ブレ補正機構があるため手持ちでも十分撮影できる。3台のカメラを切り替えても色調はほとんど変わらない
先行発売中の「Galaxy S24 Ultra」ほどカメラを重視しているわけではないが、搭載されるカメラは性能が高く、手ぶれや被写体ブレなどの撮影の失敗はかなり抑えられており、安定している。ミドルやエントリー機のように余計に撮影しなくてもきれいな写真が簡単に撮れる。スマートフォンで重視される性能を備えたカメラだ。
バッテリー周辺を見てみよう。搭載するバッテリーは容量4400mAh。auの公表するスペックを見ると、連続通話時間が約2580分、連続待受時間は約350時間となっている。前モデル「Galaxy Z Fold5」では、連続通話時間が約2530分、連続待受時間が340時間なので、大きな違いはないようだ。
実際のバッテリー持ちだが、ゲームを行わず、カメラ撮影や動画視聴、AIを活用したビジネス利用が主体ならフル充電から24時間が経過した時点でバッテリーの残量は3割ほどだった。充電器を持ち歩かなくても1日は持ちそうだが、泊りの旅行では充電器かモバイルバッテリーが欲しい。
なお、急速充電は汎用規格のUSB PDと、サムスン独自のSFC(25W)に対応にとどまっている。充電時間は、45Wの出力に対応しているNTTドコモの「ACアダプタ08」を使用した場合で約85分、KDDIの「TypeC共通ACアダプタ02」やNTTドコモの「ACアダプタ 07」といった27Wの出力に対応するものでは約110分だ。
6世代目の「Galaxy Z Fold6」は、薄く軽くなって断然持ちやすくなったうえに、ヒンジの作りが洗練され、機械として熟成されている。「Galaxy Z Fold」シリーズのリピーターならきっと、その魅力にすぐ気づくだろう。また、初めてのフォルダブルスマホとして検討する場合も、このサイズは好印象だろう。
本機のライバルとなるのは、Goolgeのフォルダブルスマホ「Pixel 9 Pro Fold」だ。ただ、「Pixel 9 Pro Fold」はオプションとしてもペン入力デバイスを用意していない。また、SoCの「Tensor G4」はAI処理に使用するNPUを強化しているがGPUはほどほどで、ハイエンド機としてはゲームの適性は高くない。両機の目指すものは意外と異なっており、汎用性を評価軸にした場合、本機に優位があると判断できる。