ZTEのゲーミングスマートフォンなどを販売する「REDMAGIC」ブランドから、Androidタブレット「REDMAGIC Novaゲーミングタブレット」が登場。11月13日に発売され、直販サイトでの価格は92,800円(税込)から。製品名からわかるようにゲームの適性は高いが、10インチクラスのハイエンドAndroidタブレットとしてもきわめて魅力的な製品だ。そんな製品のレビューをお届けしよう。
REDMAGIC「REDMAGIC Novaゲーミングタブレット」、2024年11月13日発売、92,800円(税込)〜
Androidタブレットにはゲーム用途を重視したゲーミングタブレットと呼ばれる一群がある。日本ではなじみが薄いが 、正規販売はされていないレノボのゲーミングタブレット「Legion Y700」シリーズはガジェット好きなら知る人ぞ知る製品だ。「REDMAGIC Novaゲーミングタブレット」は、正規輸入品として初めて国内に投入されるゲーミングタブレットである。
「REDMAGIC Novaゲーミングタブレット」は、画面サイズ10.9インチの、いわゆる10インチタブレットに分類される。ゲーム用途ではディスプレイの性能がかなり重要なため、スペックは高い。解像度は2880×1800の16:10、リフレッシュレートは最大144Hz、タッチサンプリングレートは最大840Hz、最大輝度は550nitsとなっている。
画面解像度とサイズのバランスはいい。表示も美しく、NetflixやAmazonプライムなどの映像配信も高画質で楽しめる
解像度が高いうえにリフレッシュレート、タッチサンプリングレートについてもゲーミングらしい高スペックだ。なお、リフレッシュレートは先ごろグローバルで発表された「ROG Phone 9」が185Hzという超高速性能を実現しているので、本機は最高性能ではない。
しかし、Androidスマートフォンやタブレット向けゲームの場合、高速リフレッシュレートを利用するにはゲームアプリが対応している必要がある。現状のゲームアプリの多くが標準性能の60Hz対応。本機が想定するようなアクションゲームなら120Hz対応のものも増えているが、それ以上のリフレッシュレート対応はほとんどないのが現状だ。
いっぽう、タッチサンプリングレートはアプリの対応は特に必要はない。タッチサンプリングレートが高いと、俊敏で繊細な操作への反応が高まる。なお、550nitsの輝度はそれほど高くはない。屋内で使うことを主に想定したものだろう。そうした環境でのゲームや動画視聴なら不満のない性能だ。
サウンド機能も強力。左右の短辺にそれぞれ2個、合計4個のスピーカーを搭載。「DTS:X Ultra」に対応しており、音響を重視したゲームや映画の視聴、音楽ライブを楽しむといったシーンにも重宝する。なお、ヘッドホン端子は搭載されない。有線のヘッドホンを使う場合、変換アダプターが別途必要になる。なお、手元にあったDACを内蔵しない変換アダプターが利用できた。
背面は特徴的なデザインで、一部がスケルトン風のデザインになっている。ただし、実際に透けているわけではなく、ファン、プロセッサー、カメラ、冷却機構を表現しているらしい。ゲーミングデバイスならではの派手なイルミネーション演出も楽しめる。背面はファンの部分が4色に光る演出に加え、「REDMAGIC」のロゴにLEDが埋め込まれて、通知などの際に光らせることができる。音に合わせて明滅するシーンはなかなか派手だ。こうしたイルミネーションはもちろんオフにもできる。
ファンはカメラの横にあり、カラフルに光る
スケルトン風の背面デザイン
ゲーミングスマホやタブレットがこだわるのは冷却性能だ。「REDMAGIC Novaゲーミングタブレット」は、タブレットとしては世界初という触れ込みの20000RPMの大型ファンに、空気の通り道を確保した3D内循環エアダクト、3Dヒートパイプ技術などを組み合わせた、合計9層の冷却システム「ICE Pad 2.0」を備え、効率的で効果的な冷却を実現したとしている。
背面と側面のフレームをアルミ素材で形成。89114mm2のボディ全体の表面積を使って放熱を行う
高速で回転するファンの騒音がどれほどか気になるところだ。ベンチマークテストや充電中に確かにファンの音が聞こえるが、特段大きな音ではないため、ゲームのBGMやサウンドに影響することはないだろう。また、ファンの動作はユーザーが選択でき、重量級のゲームを長時間する場合など、状況を見て活用するとよさそうだ。
後述するが、搭載されるSoC「Snapdragon 8 Gen 3リーディングバージョン」はクロックアップ版なので、発熱は多い。実際、同じSoCを使ったスマートフォン「REDMAGIC 9S Pro」は持ち続けるのが苦痛なほどの熱だ。しかし、本機の場合、背面は多少温かくなるものの、連続してベンチマークをしてもパフォーマンスに影響がほとんど見られない。このあたりは冷却機能「ICE Pad 2.0」に加えて、ボディ内部の空間に余裕があるタブレットであることも影響しているだろう。
前述のとおり、SoCは「Snapdragon 8 Gen 3リーディングバージョン」。2024年夏に発売されたスマートフォン「REDMAGIC 9S Pro」にも搭載されているもので、通常の「Snapdragon 8 Gen 3」から、CPUのプライムコアの動作クロックを3.3GHzから3.4GHzに、GPUの動作クロックを903MHzから1GHzに引き上げている。
メモリーはLPDDR5X規格、ストレージはUFS4.0規格で、12GBメモリー+256GBストレージと、16GBメモリー+512GBストレージの2モデルが用意される。なお、microSDメモリーカードスロットは非搭載。Android 14をもとにしたOS「REDMAGIC OS」 9.5がインストールされている。
何種類かのベンチマークテストを実施した。3D描画性能を測定するアプリ「3DMark」はWild Life Extremeが5397、Solar Bayが9167。CPUの処理性能を計測するアプリ「PCMark」は21115、同じくCPUの計測に使われる「GeekBench 6」はSingle-Coreが2300、Multi-Coreが7182。「AnTuTuベンチマーク」は2156062などといった結果だった。
3DMarkのWild Life Extremeのテスト結果。スコアは5397で、フレームレートの平均値は32.32FPS
Android機器では影響の大きい「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)」のテスト結果。210万以上のスコアは、現在国内で販売されているAndroidスマホ・タブレットでは最高レベル
手持ちの「Snapdragon 8 Gen 3」搭載機であるフォルダブルスマートフォン「Galaxy Z Fold6」と比較したが、一部スコアが逆転しているテストはあるものの、トータルでは「REDMAGIC Novaゲーミングタブレット」のほうが良好な数値になった。
なお、「Galaxy Z Fold6」に搭載される「Snapdragon 8 Gen 3」はサムスン向けのクロックアップ版なので、本機のSoCとは近い関係にある。ただし、筆者が常用している端末なのでバックグラウンドアプリなどの影響も考えられることは留意していただきたい。
しかし、これだけ差が現れた理由のひとつは、やはり放熱性能の違いだろう。フォルダブルスマートフォンのボディは大きいが、放熱に使えるのはSoCを搭載する側のボディの半分だけ。放熱に必要なスペースがそもそも少ない。
メーカーによると「崩壊:スターレイル」を最高画質+60fpsで180分間プレイした際の平均フレームレートは60.2FPSで、フレームレート平均偏差が0.7、デバイス表面温度が42.8度となっている。
「原神」を長時間プレイしてみたが、途中で引っかかりを感じることもなく、戦闘も快適に動作していた。ゲーミングデバイスらしくスペックに関しては最高クラスで、快適に動作する。特にファンなどの冷却性能の高さによって長時間の利用でもパフォーマンス劣化が少ないというのは大きな特徴と言えるだろう。
本機が、最もゲーミングデバイスらしいのはスペックよりもむしろソフトウェアだろう。その代表が、総合的なゲーム管理機能「Game Space」だ。単純にゲームのランチャーとしてだけでなく、ゲームプレイ時に画面の左右からゲーム用の設定を表示することも可能。誤タッチ防止や充電しながらのゲームプレイでのパススルー充電する充電分離、仮想ジョイスティック、リフレッシュレートの固定などといった設定に加え、マクロ機能なども利用できる。
「Game Space」ではインストールしたアプリが表示される
ゲーム操作を向上させる各種のプラグインも用意
ゲームごとにGPUの設定やタッチのサンプリングレートの調整、パフォーマンス、ファンのオン、オフなども設定可能
マウスやキーボードを接続してゲームプレイをするための仮想キーの設定も可能
メインカメラは5000万画素でピクセルビニングに対応。カメラは1つだけなのでズームはデジタルズームになる。なお、インカメラは2000万画素だ。
あまりタブレットで外出先の写真を撮るということは少なそうだが、メモ代わり程度でなら十分な画質
2倍ズームでの撮影。画質劣化は比較的抑えられている
画質面では特別なものはなく、過度な期待は持たないほうがよさそうだ。なお、インカメラの画質もそれなりで解像度もフルHD止まりだが、オンライン会議などで困ることはないだろう。
値上がりしている「iPad」に対し、Androidタブレットは高性能機であっても割安であることが選ばれる大きな理由だ。
しかし、Androidのハイエンドタブレットは機種が乏しい。なかでも「Snapdragon 8 Gen 3」やそれに近い世代の最強クラスの製品は、本機のほかにサムスンの「Galaxy Tab S10」シリーズや、1世代前の「Snapdragon 8 Gen 2」を使用するシャオミ「Xiaomi Pad 6s Pro 12.4」だけになる。
しかし、これらはいずれも12インチ以上の大型モデルであり、主流の10インチクラスの製品は本機しかない。加えて、大きなボディを生かした冷却性能のおかげで熱だれも起こしにくい。動画のレンダリングを出先で行うといった場合でも役に立ちそうだ。それでいて、12GBメモリー+256GBストレージモデルなら9万円台前半。これは「Snapdragon 8 Gen 3」搭載機としてもほとんど最安クラスである。
ディスプレイも高性能でサウンド性能も高く、イルミネーションを使わなければ大人が使っても問題ないデザインに落ち着いている。カメラ回りにコスト削減を感じるが、オンライン会議、テキストやQRコードの読み取り、顔認証程度なら十分だろう。
ゲームだけでなく、ハイエンドタブレットの選択肢としても十分に魅力を感じる。国内では導入が見送られているキーボードやペンといったアクセサリーが投入されればさらに魅力が高まるだろう。
グローバルで用意されるペンやキーボードがあれば、さらに魅力を増すだろう。ソフトウェア側ではその準備はされているようだ