最近のポータブルゲーミングPCには、ゲーム専用機型、キーボードスライド型、コントローラー脱着型などさまざまな種類があります。そのなかでも筆者が気に入っているのがQWERTYキーボードの奥にゲームコントローラーを装備したタイプ。基本的にはゲーム専用機として活用しつつ、親指入力でサクッと短いメッセージを送れるのが便利なんですよね。
GPD「GPD WIN Mini 2025」、Ryzen7 8840U/16GB/1TB版:142,000円、Ryzen AI 9 HX 370/32GB/2TB版:228,000円、2025年3月上旬
というわけで今回は、まさにそのスタイルの最新ポータブルゲーミングPC「GPD WIN Mini 2025」の実機レビューをお届けします。
「GPD WIN Mini 2025」はCPUがAMD「Ryzen 7 8840U」と「Ryzen AI 9 HX 370」を採用する2モデルがラインアップ。ふたつのプロセッサーはCPU、GPU性能も差別化されていますが、AIアプリを処理するためのNPUの性能が大きく異なります。メモリーとストレージは、Ryzen7 8840U版が16GB/1TB、Ryzen AI 9 HX 370版が32GB/2TBを搭載しています。
ディスプレイは 7インチ フルHD液晶を採用。インターフェイスは、USB4×1、USB 3.2 Gen2 Type-C×1、USB Type-A(10Gbps)×1、microSDメモリーカードスロット×1、イヤホンジャック×1を用意します。
本体サイズは約172(幅)×109(高さ)×27(厚さ)mm、重量は約555g。バッテリー駆動時間は処理の重いゲームや作業で3時間程度、普通程度のゲームや作業で6〜8時間程、処理の軽いゲームや作業で14時間程度と謳われています。
「GPD WIN Mini 2025」に用意されているのは3モデル。Ryzen7 8840U版がブラックのみで142,000円、Ryzen AI 9版がブラックとホワイトの2色展開で228,000円です。
現時点ではゲーム分野においてどのぐらいNPUが活用されるか未知数ですが、AIアプリを利用する機会が多いのであればRyzen AI 9 HX 370搭載機が有力な選択肢となります。
本体天面。カラーはブラックとホワイトの2色を用意
本体内部には高熱伝導性素材と新設計を採用した新型ファンを内蔵。TDP 35Wでの動作が可能
ディスプレイはフルHD表示、リフレッシュレート最大120Hz駆動対応
キーボード上部には左/右ジョイスティック、方向パッド、ABXYボタンなどゲームパッドのボタンを配置
背面にはポート類のほかL1/L2、R1/R2ボタンも設けられています
本製品のキーボードはFキーとJキーにホームポジションの目印となる突起がありますが、本体が小さいため両手の指をすべて使ったタッチタイピングはよっぽど器用な人以外は無理ですね。
しかし、キーピッチは実測10mmが確保されており、クリック感は良好。ボディの両サイドを握った「親指入力」であれば、それなりの速度で文字入力可能です。ゲーム中のチャットや、メールやメッセージへの返信、SNSの投稿ぐらいであれば快適にこなせるでしょう。
物理QWERTYキーボードは親指であればそれなりの速度で文字入力可能です
キーボードバックライトは輝度を2段階で調整できます
GPDはこれまで多くのポータブルゲーミングPCを手がけているだけに、コントローラーの操作感は良好です。左/右ジョイスティック、方向パッド、ABXYボタンも心地よく操作できると感じました。左/右ジョイスティックはディスプレイに当たらないように奥まっていますが、凹みが大きく確保されているので特に違和感はありません。
本製品の売りのひとつは、7インチの液晶が最大120Hzのリフレッシュレートに対応していること。軽めのゲームであれば、ハイフレームレートに設定して滑らかなグラフィック表示でプレイできるわけです。
ジョイスティックは一般的なゲームコントローラーより低めですが、すぐに慣れます
ディスプレイはほぼ180度まで展開可能
「GPD WIN Mini 2025」は、冷却効率を向上させるためにシャーシを新設計。ヒートシンクを拡大するなどの改良を加えることで、TDPを35Wまで設定可能となりました。今回は、試用したRyzen AI 9 HX 370版のTDP Limitを35Wに設定して、CPUベンチマークを実施してみました。
結果は以下のとおりです。
「CINEBENCH R23」のマルチコア18425pts、シングルコアは2018pts
「CINEBENCH 2024」のマルチコアは1025pts、CPUシングルコアは116pts
CPUベンチマークの結果を見る限り、本製品はコンパクトなポータブルゲーミングPCですが、クリエイティブ系アプリを快適に動作させられるだけのCPU性能を備えています。
ストレージはリード、ライトともに4000MB/sを超えており、体感的な反応のよさにも恩恵を受けられるはずです。
「CrystalDiskMark 8.0.5」のテスト結果
GPU性能については、いま大注目の「モンスターハンターワイルズ」のベンチマークを実施してみたのですが、興味深い結果となりました。TDP Limitを35Wに設定したときよりも、30Wに設定したときのほうがスコア、フレームレートが高かったのです。
具体的には、TDP Limitを35Wから30Wに変更すると、「Monster Hunter Wilds Benchmark」のスコアは117〜136%、フレームレートは116〜135%相当に向上しました。「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー ベンチマーク Ver. 1.1」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」でも同様の傾向です。
原因としてはTDP Limitを高く設定することで、プロセッサー全体の温度が上昇し、動作周波数が低下した可能性があります。高負荷なゲームをプレイする際には、35W設定、30W設定の両方を試したほうがよさそうですね。
TDP Limitを35Wから30Wに変更すると、「Monster Hunter Wilds Benchmark」のスコアは117〜136%、フレームレートは116〜135%相当に向上します
「Monster Hunter Wilds Benchmark」のテスト結果
「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」のスコア
「ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー ベンチマーク Ver. 1.1」のスコア
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」のスコア
バッテリー駆動時間については、ディスプレイ輝度、ボリューム40%、TDP Limitを15Wに設定したうえで、「Monster Hunter Wilds Benchmark」を実行したところ、バッテリー残量5%まで1時間43分54秒動作しました。長時間出先でゲームしたいのであれば、モバイルバッテリーを携帯することをオススメします。
「GPD WIN Mini 2025」は、最新マシンならではのハイスペックを実現。特に、試用したRyzen AI 9 HX 370搭載モデルは、ゲームだけでなくクリエイティブ系アプリにも適しており、将来的にはAIアプリを高速に処理できることも期待できます。
また、ハイフレームレートでゲームをプレイできるのも見逃せないポイントです。いっぽう、バッテリー駆動時間については、従来のポータブルゲーミングPCと同等。外出時にはモバイルバッテリーを組み合わせたほうがよいですね。
「GPD WIN Mini 2025」は、「モンスターハンターワイルズ」などの最新ゲームをプレイできるコンパクトなモバイルゲーミングPCを探している人に強くおすすめできる1台です。