スマホとおカネの気になるハナシ

Androidスマホの地殻変動! ハイエンドはSIMフリーで買う時代へ?

スマートフォンやモバイル通信とお金にまつわる話題を解説していく「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回は、近ごろほとんど時間差なしで発売される海外メーカーのAndroidスマートフォンを解説しよう。その背景に振るわないキャリア販売など時代の変化が見えてくる。

最新スマホを積極的に投入する海外メーカーが増えている

さる2025年3月13日、中国のメーカーであるシャオミは新製品発表イベントを実施し、多数の新製品を発表した。その中にはスマートフォンもいくつか含まれており、特に注目を集めたのは、やはり同社の最新フラッグシップモデル「Xiaomi 15」シリーズである。

同社製のフラッグシップモデルは、ライカカメラと共同開発したカメラを搭載し、非常に高いカメラ性能を実現していることで知られている。2024年に日本で発売された「Xiaomi 14 Ultra」は非常に高いカメラ性能が高い評判を得ていただけに、2025年もその後継となる「Xiaomi 15 Ultra」の発売が発表されている。

ライカカメラと共同開発したカメラを搭載した「Xiaomi 15 Ultra」。2億画素のイメージセンサーを搭載し、望遠性能をより強化しているのが大きなポイントだ

ライカカメラと共同開発したカメラを搭載した「Xiaomi 15 Ultra」。2億画素のイメージセンサーを搭載し、望遠性能をより強化しているのが大きなポイントだ

だがシャオミは今回、これまで日本で投入してこなかったスタンダードモデルの「Xiaomi 15」の発売も発表した。こちらは6.36インチのディスプレイを搭載するなど本体がよりコンパクトながら、カメラ性能は「Xiaomi 15 Ultra」には及ばないものの、ライカカメラと共同開発したカメラを搭載しており非常に高いカメラ性能を誇る。

スタンダードタイプのフラッグシップモデル「Xiaomi 15」も国内初投入。本体サイズは「Xiaomi 15 Ultra」よりコンパクトだが、こちらもライカカメラと共同開発したカメラを搭載している

スタンダードタイプのフラッグシップモデル「Xiaomi 15」も国内初投入。本体サイズは「Xiaomi 15 Ultra」よりコンパクトだが、こちらもライカカメラと共同開発したカメラを搭載している

それでいて両機種はシャオミらしい非常にお得な価格を実現しており、「Xiaomi 15」は123,000円(税込)から、「Xiaomi 15 Ultra」は179,800円(税込)からと、最近のハイエンドモデルとしてはかなりお得な部類に入る。だが、価格よりも、両機種ともに海外での発売が発表されてからほぼ間を置かずに日本での発売が決定したことに驚く人も少なくなかった。

世界発表直後に国内で発売されるスマホが増えた

実際、「Xiaomi 15」シリーズは、スペイン・バルセロナで実施された携帯電話の見本市イベント「MWC Barcelona 2025」に合わせ、現地時間の2025年3月2日に世界展開の発表がなされたものである。それから10日程度で国内発売が発表されているのだ。

「Xiaomi 15」シリーズは2025年3月2日に、スペインで世界展開の発表がなされたばかり。それから10日程度で国内での発売が発表されている

「Xiaomi 15」シリーズは2025年3月2日に、スペインで世界展開の発表がなされたばかり。それから10日程度で国内での発売が発表されている

「Xiaomi 14 Ultra」も2024年のMWC Barcelona開催に合わせて同年の2月26日に世界展開が発表された。しかし、日本での発売発表は5月9日。海外発表から国内投入発表までおよそ2か月のタイムラグがあった。それだけに、いかに「Xiaomi 15」シリーズの国内投入が早まっているかが理解できるだろう。

そして実はここ最近シャオミに限らず、海外メーカーがスマートフォンの世界展開からあまり間を置かずに、日本での発売を発表するケースが増えている。たとえば、中国のメーカーであるオッポが2024年11月29日に国内発売を発表した「OPPO Find X8」は、そのおよそ1週間前となる11月21日に世界展開が発表されたばかりだった。

オッポが2024年に国内で発売した「OPPO Find X8」。ハッセルブラッドと共同開発したカメラを搭載するハイエンドモデルで、世界展開の発表から約1週間で国内発売が発表されている

オッポが2024年に国内で発売した「OPPO Find X8」。ハッセルブラッドと共同開発したカメラを搭載するハイエンドモデルで、世界展開の発表から約1週間で国内発売が発表されている

直販なら発売時期を自由に決められる

メーカー側からしてみれば、やはり話題性のあるうちに新機種を販売したほうが売上を伸ばしやすい。最近では海外のメディアやSNSなどを通じて、海外で販売されるスマートフォンの情報も伝わりやすくなっている。そのため、スマートフォンに強い興味を示す人達の関心を引き付けるうえでも、最新モデルを国内でもなるべく早く投入する動きが強まっているものと考えられる。

ただ、メーカーが最新機種を早期投入できるようになったことには2つ理由がある。1つはメーカー自身が直接販路を持ったことだ。日本のスマートフォンの主な販路は携帯電話会社のショップだが、携帯電話会社経由でスマートフォンを販売するとなると、販売時期はどうしても携帯各社の販売戦略に左右されてしまうし、事前の検査や調整にも一定の時間を要するのでどうしても時間がかかってしまう。

だが最近はEコマースなどを活用し、スマートフォンメーカーが直接スマートフォンを販売するケースが増えていることから、その販路を活用することで最新スマートフォンの早期販売を実現しやすくなっている。とりわけシャオミは2025年3月22日のイオンモール浦和美園店開店を皮切りとして、日本でも常設の店舗を積極展開していくことを明らかにしており、今後自社店舗を活用して最新スマートフォンを積極販売していくことになると考えられる。

シャオミはオンラインショップだけでなく実店舗の開拓にも乗り出しており、2025年3月22日にはイオンモール浦和美園店に国内初のショップをオープンしている

シャオミはオンラインショップだけでなく実店舗の開拓にも乗り出しており、2025年3月22日にはイオンモール浦和美園店に国内初のショップをオープンしている

ローカライズをやめて早期販売を優先

そして、早期投入の実現に大きく影響している2つ目の理由が端末のローカライズ(カスタマイズ)だ。携帯電話会社から販売されるスマートフォンは、国内での利便性を向上するためのカスタマイズが求められることが多い。日本では電子マネーに用いられているが海外ではほぼ使われていない「FeliCa」の搭載や、NTTドコモが使用している5Gの4.5GHz帯(バンドn79)など、世界的にはあまり使われていない周波数帯への対応などがその代表例だ。

カスタマイズを施せば、その分販売までに時間がかかってしまう。だが、メーカーが直接端末を販売すれば、携帯電話会社の望むローカライズをカットして早期販売することが可能になる。実際、先にあげた「Xiaomi 15」シリーズや「OPPO Find X8」はいずれも携帯電話会社からの販売がない。それゆえ、FeliCaにも対応していない。

より思い切った割り切りをしているのが、英Nothing Technologyが2024年10月に発売した「CMF Phone 1」である。この端末は同社の中では背面のパネルを交換して“着せ替え”ができるなど、デザイン的に尖った特徴の低価格帯スマートフォンなのだ。だが、その仕様を見るとなんと、NTTドコモとKDDIが使用している4Gの800MHz帯(バンド18、バンド19)に対応していないのだ。

背面のパネルを交換してカスタマイズできる「CMF Phone 1」だが、実は国内販売に当たってもNTTドコモとKDDIのプラチナバンドである800MHz帯への対応がなされていない

背面のパネルを交換してカスタマイズできる「CMF Phone 1」だが、実は国内販売に当たってもNTTドコモとKDDIのプラチナバンドである800MHz帯への対応がなされていない

800MHz帯はいわゆる「プラチナバンド」の中でも、2社が4Gで最も広いエリアをカバーするのに用いている、最重要と言っても過言ではない周波数帯。加えてKDDIの800MHz帯は、ローミングによって楽天モバイルのローミングにも活用され地方や都市部の一部エリアを補っている。そのため、800MHz帯非対応の「CMF Phone 1」は国内携帯4社のうち、3社のネットワークでエリアの制約が生じやすい。

いっぽうで、日本の800MHz帯は世界的に見るとやや特殊な割り当てがなされており、バンド18やバンド19は日本以外であまり使われていない。それゆえ低価格に重点を置いた「CMF Phone 1」は元々バンド18やバンド19に対応していない。しかし、非常に尖った特徴的なモデルだけに、早期販売すればローカライズをカットしても売れるとNothing Technologyは判断したのではないかと考えられる。

キャリアが扱えないような個性的な製品を出せる

もちろん、ローカライズが施されていないスマートフォンであっても、使い方さえ工夫すれば快適に利用すること自体は可能だ。たとえばFeliCaを搭載していなくても、QRコード決済やクレジットカードのタッチ決済である程度は代替できる。5Gの4.5GHz帯や4Gの800MHz帯に対応していない端末でも、現状それらを使用していないソフトバンク回線を使えば影響を受けることはない。

だが、そうした使い方ができるのは、スマートフォンにある程度詳しい人達に限られる。それだけにメーカーが早期販売に力を入れるのは、そうした人達が興味を持ちやすい、ハイエンドモデルを中心に何らかの際立った特徴を持つ機種が対象に選ばれやすい。しかも、そうした端末は円安の影響や政府の規制で高額となり、携帯電話会社では売りにくくなってしまった。

しかし、特徴あるスマートフォンの需要は残されたままだ。そうしたスマートフォン先進層の不満を、メーカー側が自社販路の活用で応えるのが今の状況と言える。値上がりしながらも堅実に売れ続けるiPhoneは例外だが、「いち早く投入されるがローカライズはしないAndroidスマートフォン」は今後増えそうな雲行きだ。

佐野正弘
Writer
佐野正弘
福島県出身。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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