VAIO(バイオ)から、“定番”を追求した注目のノートパソコン「VAIO F14(VJF142)」(以下、「VAIO F14」)が登場しました。デザインから操作性、パフォーマンス、ソフトまで特徴を詳しくレビューします。
※記事内の価格は2025年6月9日時点のものです。
VAIO「F14 VJF142 Core 5搭載 2025年6月発売モデル」、199,800円(税込/価格.com最安価格)、2025年6月13日発売
元々はソニーのPCブランドだったVAIOですが、2014年からVAIO株式会社として独立。現在は長野県安曇野に本社工場を構え、メイドインジャパンPCとして個人向け・法人向けに展開しています。2025年1月にはノジマがVAIOを買収し、プロダクト事業の傘下にあります。
VAIOは売り上げのほとんどが法人向けを占めているのも特徴です。設計と生産を国内で行っている安心感や、何かあったときのサポートも日本国内で完結できる点などは法人にとってありがたい点でしょう。言い換えると、数多の企業が認める確かな品質を誇るのがVAIOのPC。その信頼に裏打ちされたデザインや仕様は、個人で利用したとしても強みとなるはずです。
そんなVAIOが「厳選機能の“定番”PC」とし、一般向けに量販店などでも展開するのが「VAIO F14」なんです。
「VAIO F14」の同梱物は、パソコン本体と充電アダプターのシンプルな組み合わせです。カラーバリエーションはネイビーブルー、サテンゴールド、サテンシルバーの3色がラインアップ。今回はサテンシルバーをチョイスしました。
本体の重量は約1.23kgで、最厚部は19.7mm。14インチノートとしては標準的なサイズ感です。
同梱物の一覧
外部インターフェイスは、USB Type-C×2、USB Type-A×2、HDMI端子、LAN端子、3.5mmヘッドホンジャック。USB Type-C端子はDisplayPortにも対応し、パソコン本体への給電にも用います(65W給電)。
写真上は右側面、写真下は左側面
天板は樹脂製ですが、その滑らかな手触りからアルミと勘違いしそうになるほど。アルミと違い、押すとたわみを感じます。
VAIOロゴは鏡面仕様
キーボードエリアはヘアライン加工のアルミ一枚板を使用し、高級電卓のようなたたずまい。ネイビーブルーやサテンゴールドはパームレストとキーボードが近い色味になっていますが、サテンシルバーは黒いキーキャップを採用したことでコントラストがはっきりと出るデザインに。右上の電源ボタンは指紋認証も兼ねています。
キーボードは日本語配列のみ
パームレストは手触りがよく、タイピングも快適。このあたりの細やかな仕上げがVAIOらしいと感じる人もいるでしょう。
VAIOロゴの刻印
ディスプレイは16:9の14インチワイド。解像度は1920×1080ドットで、全モデル非光沢仕上げ。
ベゼル幅はまずまず細い仕上がりです
Webカメラは「Windows Hello顔認証」対応。物理的にカメラを遮るプライバシーシャッターを搭載しています。シャッターを閉じると白くなるので視認性も良好です。
ディスプレイ上部にWebカメラを内蔵
ディスプレイは180度まで展開し、資料などを対面相手に見せやすい設計です。
180度開くので対面にも画面を見せやすいです
PCブランドとして足掛け25年以上の歴史を持つ老舗であり、それゆえの落ち着いた魅力こそVAIOの持ち味。上でも触れましたが、「厳選機能の“定番”PC」と今回の製品を称しています。
その言葉どおり、本機は超高精細なディスプレイや爆速のポートといった、飛び抜けた個性はないものの、普段使いに欲しい機能はひと通り収めています。
上位モデルにも採用された静音キーボードを搭載
見やすい非光沢ディスプレイに打鍵感のよいキーボード、指紋認証と顔認証によるダブルセキュリティ。今回のモデルからはUSB Type-Cによる充電が可能になったので、市販の小さなUSB充電器を使えるようになったのも助かります。「安曇野FINISH」と呼ばれる高いビルドクオリティーも、ユーザーとしては信頼できる点でしょう。
ディスプレイを展開すると底面が浮き上がって自然な角度が付き、手首の負担をやわらげてくれる「チルトアップヒンジ機構」もうれしいところ。底面の給気口が広がるだけでなく、Webカメラの位置も上がって顔が見やすくなるなど、この仕掛けは個人的に推しポイントです。
底面が上がることで自然な角度でキーボードが打てます
本機のバッテリー時間は動画再生時で約7.7時間(JEITAバッテリー動作時間測定法Ver.3.0に基づく駆動時間)。実際に筆者宅でYouTubeの4K動画を全画面で再生し続けたところ、7時間半ほどで充電が切れました。ほぼほぼ公称値どおりでしょう。
公称値とほとんど違いがないバッテリー時間
基本スペックは、CPUがインテル「Core 5 120U」、メモリーが16GB。どれほどの性能なのか、ここからはベンチマークで測定してみましょう。
「Geekbench 6」の測定結果
「Geekbench 6」の測定結果は、シングルスコアが2396、マルチスコアが7462、GPUスコアが12289。シングルスコアは「Snapdragon X」に比肩しますが、マルチタスクやグラフィック性能はあまり高いとは言えない結果に。
続いては「PCMark10」でベンチマークを実施。「PCMark10」で測定できるのは以下の3つです。
・「Essentials(簡単な作業を行うための一般的なPC向け)」
・「Productivity(一般的なオフィス作業や簡単なメディアコンテンツ制作向け)」
・「Digital Content Creation(写真、動画、そのほかのデジタルコンテンツ編集向け)」
結果は
・「Essential」が[目安]4100以上推奨に対し9590。
・「Productivity」が[目安]4500以上推奨に対し7362。
・「Digital Contents Creation」が[目安]3450以上推奨に対し5893と出ました。
いずれも目安のスコアを超えていますが、グラフィック性能が関わってくる「Digital Contents Creation」はそこまで伸びていないという印象です。
「PCMark10」の測定結果。目安としてはEssentialが4100、Productivityが4500、Digital Contents Creationが3450以上とされています
実際の操作感でも、ブラウジングやフォルダー管理などは快適でしたが、動画編集は厳しい印象。本機は“定番”をうたっていることからも、事務作業や動画視聴などの域を超えた専門的な作業をこなすモデルではないと割り切ったほうがよいかもしれませんね。もし筆者が本機を使うなら、出張や取材などのフットワーク重視な仕事の相棒に選びたいところです。
メーカーPCにはそのメーカー独自のソフトウェアがインストールされているのが一般的ですが、正直なところ利用する機会は多くありません。ですが、今回のVAIOの場合はよい意味で裏切られました。
専用ソフトはタスクバーにあらかじめ用意されています
それが、「VAIOの設定」と「VAIOオンライン会話設定」というソフト。名前もそのままで非常にわかりやすいです。
「VAIOの設定」を起動した様子
たとえば「VAIOの設定」では、PCのシステム構成やバッテリー状況が確認できます。パフォーマンスと電力のバランスも設定もできますが、先述のベンチマーク時はこのソフトでパフォーマンス優先に設定してから行いました。Windowsの設定は項目がどんどん煩雑になっていっているため、必要な項目のみをピックアップしたこのソフトは非常に便利。レビュー中もよくお世話になりました。
「VAIOオンライン会話設定」はキーボードからも一発起動が可能
もうひとつの専用ソフト「VAIOオンライン会話設定」は、Web会議などで便利なソフト。カメラやマイクを一元管理できるようになっており、これもまたWindowsの設定からアクセスするよりも簡単。歯車アイコンを選べばさらに深い設定(バーチャル背景やAIノイズキャンセリング)に進むこともできます。
このあたりの「ユーザーが本当にアクセスしたい項目」に対するアンテナは、さすが国産メーカーらしい配慮かなと。メーカーの「使って欲しい欲」を優先するのではなく、本当に求められている機能を提供することで差別化を図る。なるほど、この性格は法人に好まれそうです。
定番のTシャツ、定番の音楽、定番のメニューなどなど……。「定番を追求し、さらなる進化を目指して」をコンセプトとした2025年モデルのVAIOですが、そもそも定番とは何なのか。VAIOはこれを「変化する生活への対応」「PCの当たり前の見直し」「VAIOが培った価値継続」からなるものと発表しています。
筆者としては、期待に対してどれくらい応えられるかが、定番の重要な要素なのではと感じました。
ディスプレイも外部インターフェイスも、過不足なく使える。ビジネスだけでなく普段使いにおいても「これくらい使えれば問題ない」のラインをクリアできているのが、VAIOのバランス感と言えるでしょう。デザインも落ち着いていて、部屋に置いても悪目立ちしないのが個人的に気に入った点です。堅牢性も高くライフスタイルが変わって持ち運ぶようになっても問題ないでしょう。
ミニマルなデザインでインテリアとしても美観を損ねません
いっぽうで、動画編集やゲームなどの一芸を求めている人にとっては、定番では物足りないのも事実。メーカー公式で181,800円(税込)〜という価格は、スペックに対してやや高額だと感じました。ハイエンドモデルと同様の品試験をクリアする堅牢性であったり、貴重なメイドインジャパンだったりと、諸々の要素を考慮すれば極端に割高というわけではないとも思いますが。
日常生活でのデータ管理や簡単な文書作成など、デジタルの業務をこなす道具としてのパソコンと見れば、突き抜けたスペックは不必要。「思い出の写真を管理できれば十分」「オンライン会議やプレゼン制作ができれば十分」など、作業ベースで現実的なスペックを求める人にとって、定番を選べば間違いないというバランスをVAIOはしっかり提供できています。この絶妙なバランス感こそ、VAIOが長年信頼されている証左かと感じます。