ThinkPadはどこへ向かうのか? レノボが技術説明会「大和TechTalk」開催

「ThinkPad X1 Yoga」の有機ELモデルは今夏登場! 価格は323,000円(税別)

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レノボ・ジャパンは2016年6月30日、「大和TechTalk」と題した報道陣向けの技術説明会を開催し、ThinkPad開発の歴史と今後の取り組みや、先日発売した最新のフラッグシップモデル「ThinkPad X1 Carbon」「ThinkPad X1 Yoga」の開発の裏側などを詳しく説明した。また、発売日が未定だったThinkPad X1 Yogaの有機ELディスプレイ(OLED)モデルを今年の夏に発売することを明らかにした。

横浜と米沢でパソコンの技術開発を牽引

冒頭にThinkPadの生みの親であり、同社の取締役副社長の内藤在正氏がThinkPadの歴史と今後の取り組みを説明した。1992年にThinkPadの最初のモデル「ThinkPad 700c」が登場して以来、ThinkPadはどこでもオフィスと同等の生産性を提供できるビジネスツールとして開発されてきた。2005年にIBMからレノボグループに移り、研究所も大和市から横浜市のみなとみらいに移転。さらに、2011年にはNECとPC事業を統合し、NECレノボグループとなるなど、この10年はThinkPadにとって大きな変革期だった。環境が激変する中でも、開発コンセプトは変えず、すぐれた堅牢性や使い勝手を追求し、利用者のビジネスを成功に導くビジネスツールとして磨きをかけてきた。

今後については、「横浜とNECパーソナルコンピュータの開発拠点である米沢の2拠点をJAPAN TEAMとして、レノボのパソコンの技術開発を牽引していきたい」とした。また、内藤氏は、「パソコンだけをやっていては次の時代に対応できない。新しい技術分野へのスキルの拡張が欠かせない」と述べ、IoTやスマートオフィス、スマートホーム分野への意欲も示した。

ThinkPadの生みの親として知られる内藤氏

ThinkPadの生みの親として知られる内藤氏

ThinkPadの歴史

ThinkPadの歴史

ThinkPad X1 Carbon/X1 Yogaの開発の裏側

続いて、先日発売された最新のフラッグシップモデル、ThinkPad X1 CarbonとThinkPad X1 Yogaについて、開発の指揮をとった大和研究所 先進システム開発 部長/ディレクターの互井秀行氏が開発の裏側を詳しく説明した。

ThinkPad X1 Yogaの有機ELディスプレイモデル。今年の夏発売予定で、直販価格は323,000円(税別)

ThinkPad X1 Yogaの有機ELディスプレイモデル。今年の夏発売予定で、直販価格は323,000円(税別)

2008年にアップルが「MacBook Air」を発売したことをきっかけに、スリムでスマートなノートパソコンへの要望が高まったのを受け、同社は2011年に初代の「ThinkPad X1」を発表。ただし、初代モデルは厚さが23.1mm、重量が1.69kgもあり、「見た目は頑張ったが、厚さと重さは満足できるレベルではなかった」(互井氏)。ThinkPad基準の堅牢性を維持しながら、より薄く、軽くするために2012年モデルでは外装にカーボンファイバーを使用し、厚さ18.8mm、重量1.36kgを実現した。その後も薄型化と軽量化を進め、最新モデルは、前モデルより10%の軽量化と8%の薄型化を実現している。

歴代のThinkPad X1 Carbon。2012年モデルで、カーボンファイバーを使うことで、軽量化と薄型化を実現

歴代のThinkPad X1 Carbon。2012年モデルで、カーボンファイバーを使うことで、軽量化と薄型化を実現

互井氏が開発秘話として説明したのは、「キーボード」「筐体の素材」「熱設計」「インテリジェントセンシング」「有機ELディスプレイ」の5点。

キーボードは主にThinkPad X1 Yogaに関するもので、「Lift'n'Lockキーボード」を採用することによる重量増を、すべての部品を見直すことで防いたという。Lift'n'Lockキーボードは、ディスプレイ部分が360度回転する、同社のヨガモデルすべてに採用しているも。タブレットにした場合にキーボードの周囲が上昇し、手に持ったときにキーボードの凹凸がなくなり持ちやすくなる。

また、トラックポイントも苦労した点の1つ。本体を薄くするために、通常高さ6.5mmのところを5.5mmの背の低いものを採用。高さは、トラックポイントの使い勝手を大きく左右する点で、0.1mm単位で試作品を作って操作性を損なわない高さを探して、この5.5mmにたどりついた。また、スピル(防滴)対策に関しては、Lift'n'Lockキーボードにすると、溝ができて、この溝に水が集まってしまう。そこでメイン基盤に穴を開けて対応しているが、メイン基盤に穴を開けるのは非常に苦労したという。1か月かけて基盤の配線をずらして、左右に10個の穴を設けることで、最大1リットルもの水に耐えられる構造を実現した。

Lift'n'Lockキーボード。キーボードフレームが上昇し凹凸がなくなる機構だ

Lift'n'Lockキーボード。キーボードフレームが上昇し凹凸がなくなる

筐体の素材は、薄型化と軽量化のため、キーボードフレームと底面カバーに、レアアースを数%含有するスーパーマグネシウムを採用し、60g程度の軽量化を実現。スーパーマグネシウムは携帯電話などに使われていたが、携帯電話よりも大きなパソコンに用いると、歪んでしまうという問題が発生し、「供給業者からは“できません“とも言われた」(互井氏)。それでも歪みの問題を何とか克服して製品化にこぎつけた。なお、素材選定の段階では、同じグループのNECパーソナルコンピュータの「LaVie Z」が使用しているマグネシウムリチウム合金を使うことも考えたが、生産量の多いThinkPadでは、調達が難しく断念したという。

熱設計は、ThinkPad共通の第9世代Owl(ふくろう)ファン、新開発の階段フィン、放熱塗料、インテリジェントクーリング(使用環境を検知して、最適な熱制御を実施する機能)で実現しているが、なかでも苦労したのが階段フィンだったという。ThinkPad X1 CarbonおよびThinkPad X1 Yogaは、薄型・軽量ボディのせいで、広い排気口が設置できず、内部を冷やすのが難しかった。底面などに排気口を設けようとしたが、デザイン上の見た目が悪くなることから断念。そこで抵抗を最適化し、風をコントローできる階段フィンを新たに開発。フィンからの放熱効率を最適化することで、この問題をクリアした。

ThinkPad X1 Carbonの内部

ThinkPad X1 Carbonの内部

インテリジェントセンシングは、「ThinkPadが空気を読む」ことを目指したもので、担当者によると、「機械のことは機械が世話をして、人間に余計な手間をとらせない」という考えに基づいているという。具体的には、各種センサーを使って、手に持って歩いていると検知すればディスプレイをオフにして無駄な電力消費を抑えたり、画面を閲覧している間は勝手にスリープにならないようにしたりする、ちょっと便利な機能だ。センサーを使った機能のため検出精度を確かめるために、センサーデータとテストユーザーの行動を同時に録画できる評価システムを構築し、海外のエンジニアの協力のもと数百件のデータをもとに高い検出精度を実現している。また、無駄な電力を消費しないように、センシングの要不要時を見分けて最大90%以上を削減する工夫も盛り込んでいる。

ThinkPad X1 Yogaの有機EL ディスプレイモデルは、ThinkPad初の有機EL ディスプレイモデルとして、今年のCESでの発表時から注目されていた。今回、国内発売が今年の夏に決まり、価格が323,000円(ダイレクト価格、税別)であることが明らかにされた。

14型の有機ELディスプレイの解像度は2560×1440。タッチとペンの機能もサポートする。画質面では、Adobe RGBカバー率100%の色域を実現。1台ごとにキャリブレーションして出荷しており、パネルにデータを入れているので、OSを変えても影響はないという。100万対1の高コントラスト比や1ミリ/秒以下の高応答速度、広視野角なのも特徴だ。

ただ、毎自発光の有機ELディスプレイには「焼き付き」という問題がある。この問題は不可避だが、ピクセルごとに表示履歴を記録し、その情報をもとに色や明るさを補正することで、見た目が気にならないレベルにする工夫が盛り込まれている。消費電力に関しては、黒や色の濃い画面を表示するときには有利だが、逆にOfficeなど白い画面が多いと電力を消費する。そこで、白背景のときは輝度を下げるなど、積極的に省電力化する機能を盛り込んでいる。バッテリー駆動は、JEITA2.0で最大13時間以上を達成。LCDの場合は10時間以上と3時間以上も長い。そのほか、有機ELディスプレイの特性を活かすソフトウエアを搭載。カラー設定は、補正なし、AdobeRGB、sRGB、DCI-P3、ブルーライト低減、カスタムモードを用意。作業中にそれほど使用しないタスクバーやバックグラウンドの輝度を低減する省電力化機能も備える。高価格帯の製品で、上級者やクリエイター向けモデルではあるが、有機ELディスプレイならではの鮮やかさは一見の価値ありだ。

ThinkPad X1 Yogaの有機ELディスプレイユニット

ThinkPad X1 Yogaの有機ELディスプレイユニット

左がLCDモデル、右が有機ELディスプレイモデル。有機ELディスプレイモデルのほうが視野角が広く、コントラストが高いのがわかる

有機ELディスプレイの焼き付き対策。メニュー部分などはどうしても焼き付いてしまうが、ピクセルごとの表示履歴を記憶し、色や明るさを補正することで、見た目の焼き付き視認を低減している

三浦善弘(編集部)

三浦善弘(編集部)

パソコン関連を担当する双子の兄。守備範囲の広さ(浅いけど)が長所。最近、鉄道の魅力にハマりつつあります。

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2017.8.20 更新
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