ミーレ・ジャパンはこのほど、ビルトインタイプのオーブン、および食器洗い機の新製品を発表しました。ビルトイン機器では5年ぶり、食器洗い機では6年ぶりのフルラインアップ刷新となり、ミーレでは「120年の歴史の中で最大級のローンチ」としています。そんな大げさな……とお思いでしょうが、新製品の中身を見てみると、なるほどそう来たか! これは便利! 新しい! そうそうそれが欲しかったんだ! と、感嘆符が続くような内容です。
今回紹介するのは、“史上最大にして最高のシリーズ「Generation7000」”の中から、2020年12月3日に発売するオーブン5モデル7機種と、食器洗い機6モデル11機種。同シリーズからは今後、スチームオーブンやコーヒーマシン、IHクッキングヒーターなどが順次発売されます。
「Generation7000」シリーズの調理家電。ここでは、2020年12月3日発売のフラグシップオーブン「H7860 BP」を紹介します
まずはオーブンから見ていきましょう。ビルトイン調理器は、2つのデザインラインが導入されます。従来のステンレスを多用した「PureLine」と、グラファイトグレーカラーで高級感を醸し出す「VitroLine」。デザインの違いだけで機能・性能は同じです。価格は、最上位モデルの「PureLine H7860 BP」が75万円(税別)、「VitroLine H7860 BP」が77万円(同)。オーブンはこのほかに2機種発売しますが、以下は最上位モデルについて解説します。
PureLine(左)とVitroLine(右)のデザインの違い
進化ひとつめ、操作パネルがタッチ式になりました。メニューアイコンにタッチするだけで、上加熱やコンベクションなどの調理方法がすぐに選べます。最上位モデルのH7860 BPはさらにタッチ式液晶ディスプレイを採用し、より直感的に操作が可能。温度や調理時間も指スライドやソフトキーボード入力で素早く設定できます。
液晶ディスプレイは一定時間が経過すると消灯しますが、近接センサーの搭載により、人が前を通ると自動的に液晶ディスプレイが点灯。同時に庫内ライトも点灯するので、現在の調理状況と庫内の食材状況がひと目で把握できます。
H7860BPは操作系がタッチパネル式になり、スマホのように操作できます
温度設定は画面をスワイプ、調理時間設定はソフトキーボード入力で簡単
またWi-Fi対応となったことで、使い慣れたスマートフォンでも操作できるようになりました。専用アプリ「Miele@mobile」により、調理メニューの設定だけでなく、遠隔で調理時間や設定温度の変更も可能。さらに、庫内に搭載されたFoodViewカメラが1分ごとにアプリに庫内画像を送ってくるので、自分好みの調理加減で運転を止めることができます。
焼き過ぎないように調理を止めよう、もう少し焼き色を付けたいから1分延長しよう、ということが扉を開けずに手元のスマホで判断・操作できるのはとても便利。なお「Miele@mobile」アプリは、食洗機および洗濯乾燥機と共通のもので、このアプリひとつでミーレ製品を一括管理できます。
スマホやタブレットからオーブンの操作ができるのは画期的!
1分ごとにFoodViewカメラが食材の様子を写真に撮ってアプリに送信します
オーブン内部の天井に搭載されているFoodViewカメラ
さらに、これはイイ!と思ったのが、新搭載の「TasteControl」機能。調理終了後に自動的にドアがわずかに開き、ファンがフルパワーで回転して庫内を急速冷却するものです。パンやクッキー、焼き魚、ローストビーフといった、火が入りすぎるのを嫌う調理は数多く、これまではオーブンが止まったらすぐに扉を開けて食材を取り出す必要がありましたが、これからは放ったらかしでいいのです! 冷ます温度はユーザーが設定できるので、設定温度まで庫内が下がったら自動的にドアを閉めて保温もできます。保温もほったらかしなのです。なお、この時の隙間には子供の指すらも入らないほど狭いので安全です。
下の動画は、TasteControl機能で扉が開く様子。
扉が開くのはごくわずかなので、指を挟む心配はありません
ファンが強回転して扉の隙間から外気を取り込み、庫内の温度を下げる仕組み
いっぽう、食器洗い機もオーブンと同じように、ディスプレイがタッチ式になり、アプリ対応となりましたが、それよりも大きな進化が2つあります。ひとつは、世界初となる洗剤自動投入機能「AutoDos」機能。洗濯機の洗剤・柔軟剤自動投入機能が徐々に浸透し始めている現在、同じ洗浄系家電の食洗機が洗剤自動投入を搭載するのは当然といえば当然。その流れを、世界で初めてミーレが作るのです。
新製品は、ドア材やコントロールパネルの種類によって、バリエーションを用意しています。すべて横幅60cm。AutoDos搭載モデルは38万円〜67万円
AutoDosは、専用洗剤「PowerDisk」の搭載によって実現しました。PowerDiskの中には粉末洗剤のほかに、酵素、グラス・銀製品保護成分、乾燥仕上げ剤も配合されており、AutoDosが、運転プログラムや食器の汚れ度合いによって洗剤の投入量を自動調整します。PowerDisk 1個の内容量は400gで約1か月分。価格は1個あたり1,800円で、6個入りセットが9,800円です。なお、新製品は市販のキューブ型洗浄剤・粉末洗剤も使用できますが、その場合、自動投入設定はできません。
洗剤・酵素・グラスおよび銀製品保護成分・乾燥仕上材が入ったPowerDisk。これ1個で約1か月分
扉の内側にPowerDiskを設置するAutoDosを搭載。その横にあるのが従来型の洗剤投入口
今回アプリ対応となったことで、スマホ上で洗浄の開始時間または終了時間が細かく設定できるタイマー機能を利用できるほか、曜日ごとに自動的に稼働時間を設定できるスケジュール機能も搭載しました。多くの家庭では電気代が安くなる深夜に食洗機を稼働しているので、スケジュール機能により、毎日いちいちタイマー設定するめんどうが省けます。またその時、洗剤も自動投入できるのはかなり便利です。さらに、タイマー設定忘れ・洗剤投入忘れも防げます。食洗機は一度使ったら二度と手放せなくなる便利な家電製品ですが、スケジュール化と洗剤自動投入により、ますます手放せなくなりそうです。
アプリで自動投入、運転モード、運転時間を設定できます。毎日決まった時間にスタートするスケジュール機能も搭載
食器洗い機に音楽を鳴らしたスマホを入れてふたをしてみたところ。音漏れもありませんでした。静音性が高いため、夜中の運転にも適しています。
もうひとつの大きな進化が、アジア仕様のバスケットの導入です。ミーレはドイツのメーカーのため、これまで、食洗機内部のバスケットも欧米仕様でした。欧米はお皿とナイフ・フォークの文化であり、お椀や丼、鉢といった深さがある器や箸を多用しません。欧米仕様のバスケットでもお椀や丼を逆さまに被せて置くことで洗浄可能ですが、問題となるのが高台部分。欧米のカップの底には高台がないので、逆さまに食洗機に置いても水は少量しか貯まりませんが、アジアのお椀・丼の高台は深いため、洗浄後に大量の水が高台に貯まってしまいます。
今回、初めて導入されたアジア専用バスケットは、上段にお椀・丼を斜めに設置できるボウルラックを採用したほか、下段には高さと幅を変えたピンや曲がったピンでお椀・丼を斜めまたは垂直に安定して設置できるようにしました。角皿や醤油皿など、特に日本の食器は高台が付いているものが多いので、大きい食器も小さい食器も安定して収められ、高台の水の残りがなくなるのはうれしいことです。
また、最上段には最大32本の箸をセットできる箸ホルダーを備えており、長い菜箸やオタマはそのセンター部分にセット可能。このほか、ワイングラスの中までしっかりと洗えるホルダー、タッパーや鍋のふたを斜めにホールドしてきれいに洗えるホルダーも搭載しています。
アジアの食文化事情に合わせて、アジア専用のバスケットを開発しました
最上段には大人用・子ども用合わせて箸32本、菜箸、小さなカップを収められます
お椀を斜めに置くことで高台の水切りができます
欧米仕様はピンの高さ・幅が均等ですが、アジア仕様はピンの高さと幅を変え、曲がったピンも搭載することで、深さが異なる大小さまざまな椀・鉢を安定して設置できます
プラスチック製の軽い小鉢のふたも挟んで留められるので、しっかり汚れが落とせます
麦茶ポットや水筒を立てて設置できる長いピンも搭載
ワイングラスを斜めにホールド、底までしっかり水流を当てられます
ミーレは誰もが一度は憧れる海外ブランドですが、それはデザイン性だけでなく、ユーザーが本当に欲しいと思ったものを絶妙なタイミングで導入する、その先進性も大きな魅力となっているからでしょう。オーブン、食器洗い機ともにビルトインタイプなので、新築時かキッチンリフォーム時にしか導入できませんが、ミーレ欲しさにリフォームするのもアリかも?(笑)
1966年生まれ、福島県出身。大学では考古学を専攻。主に生活家電を中心に執筆活動する家電&デジタルライター。レビューや検証記事では、オジさん目線を大切にしている。得意分野は家電流通・家電量販店。趣味は、ゴルフ、ギター、山登り、アニメ、漫画、歴史、猫。