長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第37回は、暑くなるにつれて盛り上がってくる、涼を取るための強い味方、扇風機の最新トレンドについて見てみよう。
【図1】価格.com「扇風機・サーキュレーター」カテゴリーの閲覧者推移(過去2年)
扇風機という家電製品は当然ながら、気温が高くなる夏期に使われる季節家電だ。図1に示した価格.com「扇風機・サーキュレーター」カテゴリーの過去2年における閲覧者推移を見ても、気温が上がる7月くらいをピークとして、およそ5〜8月の4か月間くらいにかけて盛り上がるカテゴリーであることがわかる。ちなみに、2023年よりも2022年のほうがピークは大きいが、これは特に気温に関係しているわけではない。
【図2】価格.com「扇風機・サーキュレーター」カテゴリーの閲覧者推移(過去3か月)
今年に関しては、4月下旬時点でまだそこまで暑い日が続いているわけではないので、ゆるやかな上がり方とはなっているが(図2)、それでも気温が上がってきた4月末にかけて閲覧者数がグンと伸びてきていることがわかる。例年通りでいけば、5月のゴールデンウィーク以降、この数はさらに大きく伸びてくることが予想される。
【図3】価格.com「扇風機・サーキュレーター」カテゴリーにおける主要メーカー別閲覧者推移(過去3か月)
図3は、価格.com「扇風機・サーキュレーター」カテゴリーにおける、直近3か月の主要5メーカー別の閲覧者数推移を示したもの。これを見ると、直近で特に上がり方が大きいのは、アイリスオーヤマ、シャープ、YAMAZENの3社であることがわかる。ただし、アイリスオーヤマとYAMAZENに関しては、メイン商材がサーキュレーターであるため、純粋に扇風機製造メーカーと考えた場合は、シャープが最上位で、次いで三菱電機、ダイソンという順番になるかと思う。なお、4月下旬のシャープの盛り上がりは、2024年4月18日に発売されたシャープ初のサーキュレーター「PK-18S01」の人気上昇によるところが大きいので、そのあたりは差し引いて考える必要があるが、それを抜いてもシャープの首位は揺るがないところだろう。また、ダイソンの製品は、ヒーター機能を搭載した製品は「ヒーター・ストーブ」カテゴリーに分類されているので、そのあたりもご容赦いただきたい。
【図4】価格.com「扇風機・サーキュレーター」カテゴリーにおける人気5モデルの閲覧者推移(過去3か月)
では、純粋に扇風機だけの人気モデルの状況を見てみると、図4のとおりになる。首位はやはりシャープの「PJ-R3DS-W」で、こちらが圧倒的な人気を誇る。なお、こちらの製品は、2023年4月発売の旧モデルではあるが、2023年の「価格.comプロダクトアワード」にて、当カテゴリーの銅賞を受賞した人気モデルだ。さらに2位以下は、首位とはだいぶ差が開くが、ユアサプライムス「YT-D3754EFR(W)」、三菱電機「SEASONS R30J-DMB」、東芝「TF-30AL26(H)」、ダイソン「Dyson Purifier Cool Gen1 TP10 WW」が続く。以上のベスト5製品を見ると、東芝「TF-30AL26(H)」のみがACモーター搭載機で、あとはすべてDCモーター搭載機となっている。
ACモーターとDCモーターの違いは、ひと言で言えば、モーターを回転させるトルク(力)の強さにある。従来より広く扇風機に用いられてきたACモーターは、それほどトルクがないため、羽根をゆっくり回すのは苦手。それなりに高速回転が必要なため、風切り音も大きくなりがちだ。これに対して、DCモーターはトルクが強いため、低速でゆっくり羽根を回すのが得意。風切り音も少なく、消費電力も抑えられるという特徴がある。ただし、モーター自体の価格が高めなので、従来のACモーター搭載機と比べると、本体価格が倍くらいに高くなることが多い。
【図5】価格.com「扇風機・サーキュレーター」カテゴリーにおける人気5モデルの最安価格推移(過去3か月)
図5は、上記5モデルの最安価格推移を示したものだが、空気清浄機能も搭載したダイソンの「Dyson Purifier Cool Gen1 TP10 WW」が4万円オーバーなのを除けば、DCモーター搭載機のシャープ「PJ-R3DS-W」と三菱電機「SEASONS R30J-DMB」がおよそ2万円前後で推移しており、ACモーター搭載機の東芝「TF-30AL26(H)」がおよそ1万円前後で推移していることがわかる。その価格差はおよそ2倍だ。なお、ユアサプライムスの「YT-D3754EFR(W)」はDCモーター搭載機ではあるが、東芝「TF-30AL26(H)」を下回る1万円以下の低価格で販売されており、コストパフォーマンス的には相当に高いが、これはほぼ例外で、一般的にはACモーター機とDCモーター機の価格差は2倍近くになる。
【図6】価格.com「扇風機・サーキュレーター」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯割合グラフ(2024年3月時点)
図6は、価格.com「扇風機・サーキュレーター」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯割合を示したグラフだ。これを見ると、半数以上の52.75%が「14,001円以上」となっており、そのほとんどが1万円以下であるACモーター搭載の扇風機よりも、高価なDCモーター搭載機(ダイソン製品含む)が人気であることがわかる。このように、価格差としては、ACモーター搭載機の2倍ほどになるDCモーター搭載機ではあるが、価格以上の価値を多くの消費者が認めていることがわかるだろう。予算的に余裕があるなら、DCモーター搭載の扇風機を購入したほうが、購入後の満足感も高まるはずだ。
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2024年4月30日 時点のものです。
価格.com最安価格:17,979円
発売日:2023年4月発売
ユーザー満足度・評価:★4.45(6人)
2023年発売のシャープの主力扇風機。モーターにDCモーターを採用するほか、海を渡り数千キロも旅をする「アサギマダラ蝶」の羽根の形状からヒントを得た形状の7枚羽根「ネイチャーウィング」を採用。羽根の先端と中央部で二重の軌跡を描くように円を描くことで、ムラの少ない滑らか風を届けるのが特徴。風量の微調整も可能で、全32段階という細かな調整が行える。また、同社独自の「プラズマクラスター7000」の発生ユニットも搭載。部屋の消臭や、洗濯物の部屋干しにおける生乾き臭の抑制にも効果が期待できる。そのほか、首を上向き50度の角度に向けることもでき、サーキュレーター代わりに使用することも可能だ。リモコン付属。最大9時間のオン/オフタイマーも搭載する。
価格.com最安価格:18,800円
発売日:2022年4月15日発売
ユーザー満足度・評価:★4.20(7人)
三菱電機が2022年に発売したDCモーター採用の扇風機。航空機などの低騒音化対策としても応用されているウィングレット形状の7枚羽根を採用し、最小12dBという低騒音での動作が可能。また、風の拡散を抑える独自のファンガード形状によって、直進性の高い風を部屋の奥まで届けることもでき、真上まで向けられる「仰角90°」設定と併用して使えば、サーキュレーター代わりにも十分活用できる。また、左右の首振り角度が180度とワイドなのも特徴で、家族が集まるリビングなどでも風を広く届けることも可能だ。風量は5段階で調整可能。リモコン付属。最大6時間のオン/オフタイマーも搭載する。
価格.com最安価格:6,383円
発売日:2022年5月発売
ユーザー満足度・評価:★5.00(1人)
DCモーター搭載機としては破格とも言える6,000円台から購入できる高コストパフォーマンスモデル。DCモーターならではの静音性と、トルクの太さを生かした超微風を手軽に体験できる。リモコンが付属するが、操作パネルが台座部ではなく、モーター部の上部にあるので、立ったままでも操作しやすい。風量は8段階で調整可能。最大6時間のオフタイマーも搭載する。
価格.com最安価格:8,780円
発売日:2024年3月中旬発売
ユーザー満足度・評価:★4.00(1人)
高コスパ製品で人気のYAMAZENが2024年3月に発売したばかりの最新モデル。DCモーターを採用しつつ、9,000円を切る低価格が魅力で、DCモーターならではの静音性と、トルクの太さを生かした超微風を手軽に体験できる。風量は9段階で調整可能。リモコンも付属。最大6時間のオンタイマーと最大4時間のオフタイマー(8時間で自動電源オフ機能)も搭載する。