2024年は、例年以上にロボット掃除機のニュースが飛び交っていますが、なかでも上半期に話題となったのが、10万円を切る価格ながら最上位モデルに肉薄した機能を持つAnker(アンカー)「Eufy X10 Pro Omni」です。
必要な機能がほぼ全部盛り、かつ吸引力も8,000Paとトップクラスの性能。これで価格帯としてはミドルクラスですから、正直「アンカーの次のハイエンドモデルってどうなるの? 自分でハードル上げすぎじゃね?」と、他人事ながら心配になったほど……。
さて、そのアンカーのハイエンドモデルとして、この夏ついに発売されたのが「Eufy Robot Vacuum Omni S1 Pro」(以下、「S1 Pro」)です。
アンカー「Eufy Robot Vacuum Omni S1 Pro」。公式サイト価格は199,900円(税込)
同モデルは、従来のロボット掃除機とは一線を画す清潔な水拭きモップ機構をはじめ、自動生成オゾン水による徹底した除菌システム、さらにデザイン家電のようにスマートな全自動ステーションなどと、話を聞くだけでもインパクトは強めなんですが……。はたして、これらの新機能にどれほどの効果があるのか? そのあたりを実際に1か月ほど使い込んで確認してみました。
まず気になるのが、「S1 Pro」のルックスでしょう。
なんといっても、全自動ステーションがいい意味で“ロボット掃除機らしくない”というか、生活感の薄いシンプル&スマートなタワー型デザインで、とにかくかっこいい。できれば、タワマンの30畳ぐらいあるリビングルームに置きたい(てか、住みたい)という感じですが、このスリムさのおかげで、狭小木造築50年の我が家にも思ったよりフィットします。これなら、まず置き場所に悩むことはなさそう。
ブラックが基調の本モデルは、木目調の床や家具ともうまくマッチしました
全自動ステーションの裏側には、電源ケーブルを巻き取って収納できます。ケーブルがむだに伸びず、見た目はスッキリ。デザイン家電っぽい気遣いです
全自動ステーション上部の透明部分は浄水タンク、その裏側が排水タンクという構造。全高が約670mmあるタワー型なので、タンクを取り外すたびにいちいち腰をかがめる必要がないのは、腰痛持ちの筆者にとってはめちゃくちゃありがたい!
立ったままサッと浄水タンクが取り外せるのは、腰痛持ちの人に絶対的に推せる機能
さらに上面には、LCDディスプレイが設置されており、充電状態や現在の作業状況を知らせてくれます。モップ乾燥中であれば、乾燥完了までの進捗具合をプログレスバーで表示してくれるなど、細かく気がきいてるな〜という印象です。
他モデルだと「モップ乾燥、まだ終わらないの!?」といつも感じていたので、終わりが可視化されると精神衛生的にありがたいかも
浄水タンクを眺めていると、たまに内部でシュワーッと細かな泡が立っているのが見えます。実はなんと、このタンク内では「Eco-Clean Ozone」という機能によって、除菌効果の高いオゾン水が生成されており、全自動ステーションでのモップ洗浄や、ロボット掃除機本体による水拭き、本体内でのモップ洗浄(後述)に使用されているんです。
ただし、今回の試用中、「Eco-Clean Ozone」が稼動しているときに、若干のオゾン臭を感じることはありました。これは苦手な人もいるかもしれないので、事前に確認したほうがよいでしょう。
浄水タンク内でオゾン水生成中。ちなみに、エラー発生時は中央のリングライトが赤く灯って知らせてくれます
全自動ステーションのディスプレイで掃除機を即時起動できます。これが思った以上に効率的!
近年のロボット掃除機では、全自動ステーションでゴミ収集やモップの洗浄/温風乾燥、洗剤の自動投入などをこなしてくれるのはもはや当たり前になってきていますが、本モデルでありがたいのは、上面のLCDディスプレイを1タップするだけで掃除スタートなどの指示が出せること。スマホでアプリを立ち上げるより手間が少ないし、スマートスピーカー経由で呼びかけて起動するよりも手っ取り早い。この機能は、個人的にもかなり使いやすいと感じました。
ロボット掃除機本体は、正方形に近い丸みのあるシルエットが特徴的。従来モデルであれば、カメラやセンサーのユニットが上面にポコッと突き出すように配置されているモデルもありましたが、本モデルはなし。全体的に“生物的な滑らかさ”が感じられます。
筆者の妻は「なんかテントウムシっぽくてかわいいわね」と気に入ったようでした。
「S1 Pro」本体。前部のリングライトは稼動中にゆっくりと回転点灯します。機能的には特に意味はないけれど、未来っぽくてかっこいい
吸引清掃を司るメインのシングルゴムブラシと、左右のデュアルサイドブラシ。大きめのゴミもしっかり掃き取ってくれました
吸引清掃に関しては、最大8,000Paの吸引力+シングルゴムブラシ+デュアルサイドブラシで、ハイエンドモデルとしてもまず不満を感じようのないレベル。実際、ゴミの掃き残しは部屋の四隅まで含めてほぼゼロでしたし、カーペットもそれを検知して吸引にブーストをかける機能により、毛足の奥まできちんと掃除されていました。
吸引パワーに関してはまったく不満なし。カーペットの奥に入り込んだペットの毛もきれいに掃き取れたようでした
水拭きを担うのは、本体の横幅いっぱい(幅290mm)まで伸びた長いローラーモップ。約1kgの加圧式で、広い面を一気に力強く水拭きしてくれるんですが、さらにユニークなのが床の水拭きと同時にモップ自体も洗浄する機能「Always-Clean Mop」です。
これはロボット掃除機本体にも浄水タンクと汚水タンクが搭載されており、床の水拭き掃除をしながら同時に浄水でモップも洗浄するという機能(モップから出た汚水は本体内の汚水タンクに溜まります)。つまり、いちいちステーションに戻って洗浄しなくても、水拭きモップが常にきれい! ということです。これにより、モップが拭き取った汚れを周囲に塗り広げることがないため、床にこぼれてベトベトしてしまう調味料類や、香りの強いコーヒーなども安心して拭き掃除を任せられるんじゃないでしょうか。
超ロングな加圧式ローラーモップ。広い面を一気にムラなくモップがけしてくれるため、モップがけにかかる時間も他モデルよりちょっと短いような……
モップをジャブジャブ洗いながら拭くから、汚れを塗り広げる心配がありません
しかも、先述したように、水拭き用の水もモップ洗浄用の水も、どちらもステーションで生成された除菌オゾン水ですから、清潔さはダントツ。床を除菌しながら拭いてくれるわけですから、特に小さな子どもがいる家庭では、かなり安心して使えるんじゃないでしょうか。
コロナウイルスはもちろん、ノロウイルスなどのアルコールだけでは除菌しきれないタイプのウイルスにもオゾン水は有効とのことで、これから秋冬にかけて感染症が増えるシーズンの床掃除にも効果を発揮しそう。それでいて、ランニングコストがかからないのも、ありがたいところです。
除菌力などは目に見えないので体感しづらいけど、効果は多少なりともあるはず。清潔なイメージもあってか、床のサッパリ感は強めに感じられました
ただ、ローラーモップの構造的な弱点として、壁際ギリギリまで攻めた水拭きがしにくいのは、致し方ない感じ。
昨今のロボット掃除機で人気の軸移動型回転モップのように、壁際ギリギリ、かつ部屋の四隅までしっかり拭き取るのは、やっぱり難しいようです。このあたりは清潔な「Always-Clean Mop」とのトレードオフになるので、自宅の掃除に何が必要かで検討する必要があるでしょう。
全自動ステーションや清潔なモップはもちろんスゴいんですが、今回の試用で最も驚かされたのは、実は高性能すぎる物体回避です。
進路上にある障害物を避けるぐらいは今や当たり前の機能ですが、その挙動がとてもミニマム。障害物を前にいちいち大きくコース取りを変えるのではなく、最低限の動きで軽くヒョイと避ける感じは、人間が操縦しているみたい! と感じてしまうぐらい。なんというか、動きがとにかく賢いという印象です。
掃除機が体当たりすると周囲が水浸しになるペット用水皿も、スレスレをきれいにスルーッと回避。本当に人間が操縦しているような動きです
その賢い動きを司っているのが、ドローンや自動運転車などに使われている3D技術を応用した「3D Matrix Eye」。本体前面に搭載した赤外線ユニット、左右二眼のカメラユニット、そしてAIカメラを組み合わせることで、視界内にある物体の大きさや距離感を正確に把握し、高精度な回避行動がとれるようになっています。
この回避動作のスムーズさは一見の価値ありで、なんなら掃除中にずっとついて歩いていっても楽しめるかと思います(ヒマかよ)。
AIカメラと深度センサー(赤外線ユニット+デュアルカメラ)で、回避力は過去最高レベル
ちなみに、部屋のマッピングに関しては、前面のカメラ上部にあるレーザー(dToF LiDAR)で行います。アプリで確認する限り、精度は申し分なし。初回のマッピング一発で、ほぼ文句のないマップが完成していました。
1か月使ってみた感想としてまずあげたいのは、とにかく水拭きのサッパリ感が強いということ。ローラーモップによる広範囲の加圧拭き上げは思っていたよりも力強く、汚れの落ち具合も見事。ロボット掃除機に水拭きを期待するのであれば、本モデルを選ぶ価値は大いにあると思います。
モップを常時洗浄する「Always-Clean Mop」は見た目で効果を体感しにくいだろうな……と予想していたんですが、汚れを拭き取る能力の高さだけ取ってみても、他社モデルに勝る効果は期待できちゃいそうです。
裸足で歩く機会が多いだけに、除菌されているとうれしい洗面台周りや脱衣所。清潔感重視なら「S1 Pro」は選ぶ価値ありかも
前モデルの「X10 Pro Omni」が全方位にほどよく万能タイプだったのに対し、「S1 Pro」はいろんな部分が突き抜けたピーキーさが魅力です。なにより、除菌オゾン水の生成機能や、全自動ステーションのルックスと使い勝手など、「S1 Pro」だけの独自機能が山盛りなわけですから、気になったならもう他社製品と比較する意味もあまりなさそう。「これ買っちゃうしかない!」という感じかもしれません。