取材協力:EcoFlowTechnology Japan、菅沼キャンプ村
アウトドアや災害・停電対策用に、大量の電気を蓄えておけるポータブル電源が推奨されているが、「導入しても本当に役に立つのか」と半信半疑の人も少なくないだろう。異常気象による自然災害が多発しているこの時期だからこそ、前向きに検討したいものだ。そこで今回は、ポータブル電源がいかに実用的かを試すために、電力が供給されていないキャンプ場で試してみた。
まず、ポータブル電源とは何かをおさらいしておこう。ポータブル電源とは、バッテリーを内蔵した持ち運べる電源のこと。ソーラーパネルや家庭などのACコンセントから充電して、バーベキューやキャンプなどに持ち出したり、万が一の災害用に常設しておいたり、自宅の庭やガレージで電動工具を用いて作業を行ったりするときに活用できる。
ポータブル電源は容量500〜1,000Wh程度の製品が売れ筋で、大容量のものでは4,000Wh超のモデルもある。最近の傾向として、アウトドアブームや、災害への備えとして、より大容量の製品が人気を集めるようになっている。
ポータブル電源を選ぶうえでは、実際の用途をイメージすることが重要だ。そこで今回は、オフグリッド生活、つまり、ポータブル電源を使用して、どれくらいの時間生活できるかを体験することに。ポータブル電源メーカー大手のEcoFlow Technology Japanの協力を得て、群馬県・片品村にある「菅沼キャンプ村」にポータブル電源やソーラーパネル、家電などを持ち込んだ。
日光に近い菅沼キャンプ村は、群馬県利根郡片品村の菅沼湖畔にある。日光よりさらに山深い場所にあり、真夏でも最高気温が25度程度と涼しい。菅沼湖は非常に透明度が高く、手つかずの自然に囲まれて非日常的な時間を過ごせる
菅沼キャンプ村では、事前予約制でポータブル電源の無料レンタルを実施している。「電気があればキャンプも手軽に楽しめるので、ぜひポータブル電源を活用してほしい」と、菅沼キャンプ村の狩野孝典村長。なお、今回の実験で持ち込んだ「EcoFlow DELTA 2」や「EcoFlow RIVER 2 Pro」に加え、「EcoFlow RIVER 2 Max」は在庫がないそうだ
今回参加したのは、大人3名。食材を事前に買い込んでおき、菅沼湖畔にテントを張り、朝から夕方まで過ごしたあと、コテージに移動した。午前中にポータブル電源を満充電の状態にしておき、そこからバッテリーの減り具合を確認していった。
使用したポータブル電源は、価格.comでも人気の「EcoFlow DELTA 2」と「EcoFlow RIVER 2 Pro」の2つ。「EcoFlow DELTA 2」をメインで使い、「EcoFlow RIVER 2 Pro」はサブとして使用した。生活に用いる家電は、ホットプレート、電気ケトル、プロジェクター、ノートPC、スマートフォン、タブレットなど。以下に使用機材とそのスペックをまとめよう。
定格容量1,024Whの「EcoFlow DELTA 2」(写真右)と、予備用に同768Whの「EcoFlow RIVER 2 Pro」(写真左)を持ち込んで使用した
【ポータブル電源のスペック】
「EcoFlow DELTA 2」
バッテリー容量:1,024Wh
バッテリー:リン酸鉄リチウムイオン(LFP)
AC出力:ACコンセント×6 (定格1,500W/瞬間最大1,900W・100V・50Hz/60Hz)
USB出力:USB Type-Aポート×4、USB Type-Cポート×2
DC出力:シガーソケット×1
搭載機能:X-Boost(最大出力1,900W)、Bluetoothなど
本体サイズ・重量:約40(幅)×21.1(奥行)×28.1(高さ)cm・約12kg
「EcoFlow RIVER 2 Pro」
バッテリー容量:768Wh
バッテリー:リン酸鉄リチウムイオン
AC出力:ACコンセント×4 (定格800W/瞬間最大1,600W・100V・50Hz/60Hz)
USB出力:USB Type-Aポート×3、USB Type-Cポート×1
DC出力:シガーソケット、DC端子×2
搭載機能:X-Boost(最大出力1,000W)、Bluetoothなど
本体サイズ・重量:約26.9(幅)×22.6(奥行)×25.9(高さ)cm・約7.8kg
【ソーラーパネルのスペック】
定格出力:160W
電力変換効率:21〜22%
本体サイズ(展開時/折り畳み時)・重量:約68×157×2.4/68×42×2.4 cm・約7kg
【使用した家電など】
ホットプレート(消費電力:1,200W)、電気ケトル(同:1,000W)、ポータブルプロジェクター(同:90W)、ノートPC(同:60W)、タブレット(同:45W)、スマートフォン(同:15W)
早朝にソーラーパネルを設置し、正午までにポータブル電源を満充電にしておいた。1日分の食材を買い込み、これで準備完了。
現地に着いてから、160Wのソーラーパネルであらかじめ充電しておいた。高地は日差しが強いので、ソーラーパネルが役に立つ
大量に買い込んでおいた肉類や野菜をホットプレートで調理。ホットプレートのような熱の出る家電は大きな電力を必要とするが、定格出力1,400W超の電気製品の動作電圧を下げ、消費電力を定格出力1,400W以下に抑えて稼働させるX-Boost機能を搭載した「EcoFlow DELTA 2」なら、難なく調理ができた。30分ほど調理して昼食をとったあと、バッテリー残量を確認すると84%もあった。
肉類や野菜などをホットプレートで調理。ホットプレートは消費電力1,200Wとやや高出力な製品を使用したが、EcoFlow独自のX-Boost機能を活用したため、問題なく使用できた
X-Boost機能は、スマートフォンアプリでオン・オフの操作が可能。EcoFlowのポータブル電源は、そのほかにもさまざま設定がスマートフォンアプリで行える
30分ほどホットプレートで調理をしたが、バッテリー残量は84%もあった。調理するメニューにもよるが、朝・昼・夕食の3食を調理してもバッテリーは持ちそうだ
バーベキューを存分に楽しんだあとは、3時間ほど休憩。昼食の間にスマートフォン、タブレット、ノートPCなどを充電しておき、タブレットにダウンロードしておいた動画をしばらく鑑賞。その後は、美しい湖を眺め、森林のマイナスイオンをいっぱいに浴びながら、キャンプ場内を散策した。
「EcoFlow RIVER 2 Pro」は「EcoFlow DELTA 2」の予備として使用。昼食中に、ノートPCやタブレット、スマートフォンなどを充電しておいた
昼食のあとのリラックスタイムは、タブレットにダウンロードしておいた動画を鑑賞して楽しんだ
キャンプ場内を散策してお腹をすかせたあとは、おやつタイム。厚めに焼いたパンケーキと、温かいジャスミンティーで一服した。パンケーキを6枚焼くのに20分程度、電気ケトルで1Lのお湯を沸かすのに2分程度かかったが、高熱を使用する家電に給電したために、バッテリー残量は32%まで減った。
厚めのパンケーキを焼くのに20分程度かかった。同じ熱を使った調理でも、パンケーキの表面を焼くためにホットプレートの温度を上げる必要があったため、バーベキューより多くの熱が必要になった
パンケーキを焼いてお湯を沸かしたところ、バッテリー残量は32%まで減った
厚めのパンケーキはふんわりとした食感に焼き上がった。1,000Whクラスのポータブル電源を使えば、屋外でも大人が食べるのに十分な量の食事が調理できる
コンパクトプロジェクターで映像を鑑賞しながら、ワイワイ食事を楽しんだ
午後9時頃になるとあたりは真っ暗。菅沼キャンプ村には通信環境がないので、5分ほど山を下った場所でスマートフォンをインターネットに接続し、メールをチェック。スマートフォンはそのままコテージに持ち込み、懐中電灯として使用した。
この夜はそれほど冷え込まなかったので、電気毛布などは特に使用せずに布団で就寝した。この時点で「EcoFlow DELTA 2」のバッテリー残量は10%以上残っており、翌朝の朝食くらいなら調理ができそうだった。
キャンプ終了時点で、メインで使用した「EcoFlow DELTA 2」のバッテリー残量は10%以上あった。このことからも、大人3人や、大人2人と子ども2人くらいのファミリーなら、1,000Whクラスのポータブル電源で朝・昼・夕食の調理に対応できそうだ。アウトドアと非常用の両方を兼ねるなら、このくらいの容量は欲しいところだ。
ポータブル電源の市場は新規に参入するメーカーが多く、続々と新製品が発売されているため、大容量の製品も価格が手ごろになっている。タイミングによっては、型落ちのモデルがセールで安く手に入ることも。これまでは、価格がハードルになって手を出せなかったという人にも、いよいよ買いどきが到来しているのだ。
特にここ数年は、災害や異常気象による停電など、予期せぬタイミングで電気が必要になるケースが増えている。ポータブル電源が買いやすくなってきた今だからこそ、普段は災害や停電時の緊急用として常設しておき、仲間が集まったときには、クルマに積み込んで出かける。そんな使い方を提案したい。