災害時の備えやキャンプ、車中泊などの用途で注目されているポータブル電源だが、いざ導入しようとすると、価格が高かったり、重量が大きかったりして購入をためらう人も少なくない。もっと低価格で軽量なポータブル電源が欲しい、と考える人もいるだろう。そんなニーズに応えて、アイリスオーヤマから発売されたのが「バッテリーステーション」だ。ポータブル電源としてはユニークな製品コンセプトを持つ本製品だが、実際にどれくらい活用できるか試してみた。
ポータブル電源の価格帯は幅広いが、人気の容量1,000Wクラスの製品は最新モデルで10万〜15万円程度が相場だ。災害時の備えとしてポータブル電源があると安心だが、初めて購入する人にとって10万円以上という価格は、購入のハードルが高い。重量についても、1,000Wクラスとなると10kg以上の重さになるので、外出時の持ち運びが大変だ。
これに対して、必要最低限のスペックにして価格を抑え、小型・軽量化を追求したポータブル電源が「バッテリーステーション」だ。価格.com最安価格は17,440円。一見するとポータブル電源とは思えないほどコンパクトだが、これを可能にした最大のポイントは、思い切ってACポートを省いたことにある。
災害の規模や被害の状況にもよるが、災害発生時にはまず、外部と連絡を取ったり、避難警報などを確認したりするために、スマートフォンなどのバッテリーを蓄えておくことが欠かせない。
避難生活が長引けば、調理機器や冷暖房機器が必要になることもあるが、これらは、カセットコンロやカイロなどで代用できる。それなら、ACポートがなくても、複数のUSBポートが使えて、持ち運びやすいポータブル電源のほうが便利な場合もある。
「バッテリーステーション」の本体サイズと重量は、約77(幅)×82.5(奥行)×155.8mmで、約1.36kg。高さで比較すると、写真左の500mLの紙パック容器と写真右の600mLペットボトルの中間くらいだ。小型・軽量なため、本体の両側面に付いている持ち手を掴めば軽々と運べる
本体がコンパクトなので、バックパックにもすっぽりと入る。ポータブル電源をバッグで携行できるというのは、本製品ならではの魅力だ
「バッテリーステーション」にはACポートが搭載されていないが、そのほかの装備はポータブル電源として不足がない。本体上面にUSBポートと電源/LEDボタン、前面上部に液晶ディスプレイ、背面上部にLEDライトを装備。IP54準拠の防塵防水性能により、屋内外で気軽に使える。
本体上面にUSB-Type Aポート×3とUSB-Type Cポート×3を装備。USBポートの下のボタンは電源のオン/オフとLEDライトのオン/オフ/明るさ調整に対応している
液晶ディスプレイの表示は、左がバッテリー残量(%)、右上が電圧(V)、右下が電流(A)を示している。本体から給電中は、バッテリー残量の上に「OUT」、本体に充電中は「IN」と表示される。なお、本体に充電中は、バッテリー残量の下一桁が点滅する
本体背面にあるLEDは、3段階の明るさ調整に対応。明るさを最大にすると、暗闇で細かい文字も読めるほど明るい
「バッテリーステーション」の容量は60,000mAh(222Wh)で最大出力は100W。給電の目安として、スマートフォン(3,000mAh)なら約13回、ノートPC(70Wh)なら約2回、モバイルプロジェクター(10,000mAh)なら約4回の満充電が可能だ。また、USB給電タイプの電気毛布(10Wh)なら約83時間、USB給電のサーキュレーター(12Wh)なら約15時間の連続使用に対応する。
そこで実際に、「バッテリーステーション」から身の回りにある家電に給電してみた。
図書館やワークスペースに移動して、リモートワークを行いたいときなど、デスクの上に省スペースで置ける「バッテリーステーション」は便利だ
部屋の空気を循環させるサーキュレーターは、設置場所を変えることで空調効果を高められる。バッテリーステーションから給電すれば、ACコンセントが近くになくても使えるため、より温度ムラの少ない快適な室内空間にできる
USB電気毛布は3日以上使えるため、災害時に暖を取りたいときにも実用的だ。もちろん、くつろぐ部屋を変えたときに、近くにコンセントがない場合にも使用できる
手持ちのモバイルプロジェクターに給電し、壁面に投映してみた。キャンプなどで盛り上がりそうだ
ポータブル電源本体を充電しながら、外部の機器に給電するパススルーにも対応する
「バッテリーステーション」の特徴は、入出力端子をUSBポートのみにまとめることで、小型・軽量ボディと実用的なパワーを両立させ、さらに価格を抑えていることにある。これにより、扱いやすさや買いやすさが高められており、他メーカーにはあまりないユニークな魅力を備えた製品に仕上がっている。
考えてみると、災害発生時は別として、日常生活のなかで、ポータブル電源のACポートが必要になるケースはそれほど多くなく、ACポートを持て余してしまう場合もある。むしろ、身の回りにはUSBポートを備えた製品があふれており、普段使いにポータブル電源を使うのであれば、「バッテリーステーション」のような製品のほうが使い出があるのではないかと感じた。
本製品は、ポータブル電源の入門機を探している人にも、モバイルバッテリーでは災害時の備えとして心許ないと感じている人にも適した製品であり、使用頻度が高くなりそうなことを考えればコスパもよさそうだ。気になった人は、ぜひ試してみてはいかがだろうか。