長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第51回は、年末の大掃除シーズンに向けて需要が高まっている掃除機、なかでも人気のコードレススティック掃除機について、その最新トレンドを解説しよう。
【図1】価格.com「掃除機」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)
いよいよ12月に入り、年の瀬も押し迫ってきた。日本の年末の風物詩と言えば「大掃除」だが、実はこの時期に掃除機を購入・買い換えるという人は多いようで、価格.comの「掃除機」カテゴリーの閲覧者数推移(図1)を見ても、全体としてはやや右肩下がりとなっているものの、ほぼ毎年12月にピークを迎えている。そんなわけで、今回は12月に需要が増加する掃除機について、その最新トレンドを見てみたいと思う。
現在の掃除機の主流は、充電式で扱いやすい「コードレススティック掃除機」だ。価格.comの「掃除機」カテゴリーにおいても、現在アクティブな全登録製品のうち、製品タイプで「スティック」(528)と「ハンディ」(623)を足した数は1,151で、「キャニスター」(310)や「ロボット」(141)を大きく上回る。人気売れ筋ランキングの上位製品を見ても、ベスト10中7製品、ベスト20中16製品が、コードレススティック掃除機で占められている。欠点であった吸引力やバッテリー駆動時間が改良され、取り扱いがしやすいことから、コードレススティック掃除機は今や圧倒的な人気で購入されているのだ。
【図2】価格.com「掃除機」カテゴリーにおける主要メーカー別の閲覧者数推移(過去3年)
そんなコードレススティック掃除機全盛の現在だが、どんなメーカーの製品が人気なのだろうか。図2は、過去3年における、価格.com「掃除機」カテゴリーの主要メーカー別閲覧者数推移を示したものだが、これを見ると、ここ数年では日立が頭ひとつ抜けて人気となっており、これをダイソン、パナソニックが追う展開となっている。4位グループでは、シャープとSharkが互角くらいの人気で争っている。ただし、この5メーカーの差は直近ではかなり縮まってきており、トップの日立がやや順位を落とすいっぽうで、やや人気を落としていたダイソンがここへ来て調子を上げてきているなど、混戦模様となってきている。
この変化は、消費者のコードレススティック掃除機に対するニーズの変化にほぼ合致している。元々コードレススティック掃除機は、ダイソンがブームを引き起こしたジャンルで、国内メーカーはひたすらその後塵を拝するしかない、という状況が長く続いた。それくらい、ダイソンのコードレススティック掃除機は、パワー、使いやすさ、デザインといった点で、まだキャニスタータイプが主流だった国内メーカーの掃除機を圧倒していたのだ。しかし、ダイソンにも欠点がないわけではない。特に本体の重さは、主婦層などにはやや不満が多かったのも事実だ。
そんなおり、日本の国内メーカーが相次いで、重量が1kg程度の軽量コードレススティック掃除機を発売し、これが大いに当たった。その代表格とも言えるのが、本体重量が1kgを切る、日立の「すごかるスティック」であり、シャープの「RACTIVE Air」であったのだ。これらのメーカーが作る軽量コードレススティック掃除機は、その扱いやすさから徐々に人気を呼び、ついには「ダイソン一強」とも思われていた市場に風穴を開けた。
しかし、これらの軽量モデルにも弱点はあった。ボディを軽くするには、どうしてもモーターを小型にしたり、バッテリーを小型にしたりするしかない。そのため、掃除機にとって重要な吸引力やバッテリー駆動時間が、上位機種に比べるとどうしても劣ってしまうのだ。いわば、軽さとパワーの天秤でどちらを取るかという状況になった結果、そのいずれもある程度高いところでバランスする中級モデルに注目が集まるようになった。日立であれば、軽量モデルの「すごかるスティック」から、よりパワーの強い「パワかるスティック」へ、シャープであれば「RACTIVE Air」から「RACTIVE Air POWER」へというように、重量は500g程度増すものの、パワーが強く掃除がしやすい中級機へのシフトが見られるようになったのだ。
そのいっぽうで、本体重量が2kgを超えるのが普通だったダイソンのコードレススティック掃除機のラインアップでは、1.5kg程度の軽量モデルが登場し、そのパワフルさと軽さで人気を増していった。その結果、これら総重量1.5kg前後で、比較的パワフルかつロングバッテリーの中級モデルにどのメーカーも人気が収れんしていったのだ。図2のグラフはまさにその流れを表しており、軽さとパワーのバランスが取れた中級モデルがどのメーカーでも人気ということを示している。
【図3】価格.com「掃除機」カテゴリーにおける人気モデル別の閲覧者数推移(過去半年)
では、具体的な人気モデルの閲覧者数推移(図3)を見てみよう。今年の9月くらいまでは、いずれのモデルもそれほど大きな差はなく混戦状態だったが、9月以降に、まず日立の「すごかるスティック PV-BS1L(W)」の人気が上がり、次いでダイソンの「Dyson V12 Detect Slim Fluffy SV46 FF」の人気が上がってきた。さらに、11月に入ると、日立の「パワかるスティック PV-BL50L(N)」の人気が急激に上がってきて、ダントツの1位となっている。11月後半からは、ダイソンの「Dyson Micro Origin SV33 FF OR」や、Sharkの「Shark EVOPOWER SYSTEM STD+ CS150JAE」も人気が上がってきており、1位の「パワかるスティック PV-BL50L(N)」を除き、4機種が入り乱れる混戦状態となっている。
上記製品のうち、いわゆる中級機に当たるのが、日立「パワかるスティック PV-BL50L(N)」と、ダイソン「Dyson Micro Origin SV33 FF OR」の2モデルだ。ダイソン「Dyson V12 Detect Slim Fluffy SV46 FF」はパワー重視の上級モデル、日立「すごかるスティック PV-BS1L(W)」とShark「Shark EVOPOWER SYSTEM STD+ CS150JAE」は、軽量のエントリーモデルという具合に、人気のモデルのプロフィールはさまざまだが、なかでも日立「パワかるスティック PV-BL50L(N) 」のような中級モデルが大きな人気となりやすいのが、最近のトレンドと言える。
【図4】価格.com「掃除機」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯分布(2024年10月時点)
ちなみに、売れ筋製品の価格帯がどうなっているかというと、図4で示したように、中心価格帯は3万円台(23.39%)で、次が2万円台(17.3%)、次いで4万円台(14.15%)となっている。このうち、2万円台の掃除機の多くは軽量のコードレススティック掃除機であることが多く、3万円台、4万円台では、軽さとパワーのバランスが取れた中級機であることが多い。このように、売れ筋製品の価格分布からも、今の最新トレンドとしては、中級機のコードレススティック掃除機が人気の中心であることがわかる。
※当記事のデータは、「価格.com DataCompass」を使って作成しています。
「価格.com DataCompass」とは、価格.comのビッグデータを基に購入検討ユーザーの動向を分析できる法人向けのマーケティングサービスです
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2024年12月3日 時点のものです
価格.com最安価格:41,000円
発売日:2023年12月上旬
ユーザー満足度・評価:★4.90(6人)
日立のラインアップでは中級機に当たるコードレススティック掃除機。標準質量1.4kgという軽さと、約40分というバッテリー駆動時間、独自の小型「ジェット3Dファンモーター」によるパワーを高次元でバランスさせた人気モデルだ。ヘッドには軽い力ですいすい押せる「パワフルスマートヘッド」を採用。ヘッド前方に緑色のLEDライトが付いているので、ゴミが見えやすく、掃除がはかどる。付属品も、スタンド式充電台や交換ブラシなど数多く、お買い得感も強い。後継モデル「パワかるスティック PV-BL50M」も12月に発売予定だが、価格差が倍ほどあるので、今なら本モデルを選ぶのがいいだろう。
価格.com最安価格:46,500円
発売日:2024年4月5日
ユーザー満足度・評価:★4.64(21人)
ダイソンの軽量モデル「Dyson Micro」に、専用充電スタンド「Floor Dok」と4種類のヘッド/ノズルをセットにしたお買い得パッケージ。標準質量1.54kgと、ダイソン製品としてはかなり軽いのが特徴で、ダイソンらしいパワフルな吸引力ももちろん健在だ。付属する「Fluffy Opticクリーナーヘッド」は、ヘッド脇に緑色LEDを搭載し、ゴミをくっきりと浮かび上がらせる。バッテリー駆動時間は25分で、エコモードなら最長30分使用可能だ。これだけの内容で5万円を切る価格はかなり魅力的。
価格.com最安価格:57,999円
発売日:2024年9月2日
ユーザー満足度・評価:★4.53(3人)
Sharkのコードレススティック掃除機ラインアップの中では上級に当たるモデル。標準質量1.7kgとやや重いが、吸引力はかなり強く、独自のヘッド「ハイブリッドパワークリーン」と組み合わせて、パワフルにゴミやホコリを吸い込む。ゴミの量に応じて吸引力を自動調整する「iQセンサー」や、検知した床タイプに応じてブラシの回転スピードを自動調整する「フロアセンサー」、壁際や部屋の角を識別し吸引力を最大2.5倍にアップする「エッジセンサー」を備えるなど、上級機ならではの機能性が特徴。さらに、ゴミを自動的に吸引する「マルチフロア対応/自動ゴミ収集ドック」が付属。この内容で5万円台はお買い得だ。
価格.com最安価格:37,800円
発売日:2023年8月24日
ユーザー満足度・評価:★4.52(21人)
軽量コードレススティック掃除機で人気のシャープが昨年発売した中級モデル。標準質量は1.7kgとやや重めではあるが、独自の軽量高出力モーターの搭載により、RACTIVE Air史上最強のパワーを実現。最長45分のロングバッテリーも搭載し、使いやすい設計となっている。本機で注目すべきはその静音性。モーターや遮音カバーを工夫することで、耳障りなピーク音をカットし、運転時の騒音を60dBに抑えることに成功。実感音としては、前モデルに比べて約37%もカットされ、夜間や早朝のお掃除にも向いた仕様となっている。付属品も複数のヘッド/ノズルのほか、スタンドも付属するなど充実の内容だ。