日本国内において、ロボット掃除機と言えば、ほとんどの人がまず「ああ、『ルンバ』ね」と答えるでしょう。そのくらい年齢・性別を問わず、とにかく認知度が高いのが、アイロボットの「ルンバ」シリーズです。
ただ、ここ数年は中国メーカー製ロボット掃除機の進化が著しく、ぶっちゃけた話、その認知度の高さに比べると性能的にはやや物足りなさがあったのは否めません。
そんななか、2025年春、「ルンバ」は史上初となるフルラインアップ刷新を実行。これまでになかったさまざまな機能を搭載した新モデル群を一気にリリースしたことで、今勢いのある“中華ロボット掃除機”に対し、巻き返しを図っています。
今回はそのなかでも、“場所をほとんど取らずに設置可能&ゴミ回収の手間を可能な限り省略できる”ことで、一人暮らしに最適化されたiRobotの低価格モデル「ルンバ 205 DustCompactor Combo」を実際に試してみました。これ、思ったよりもかなり面白い機能を積んでいます。
iRobot「ルンバ 205 DustCompactor Combo ロボット」。「ブラック」もあり。●本体サイズ:35.8(幅)×35.9(奥行)×10.1(高さ)cm●「充電ステーション」のサイズ:13.4(幅)×14.6(奥行)×8.8(高さ)cm
まず、今回のラインアップ刷新で注目すべきポイントは2つ。
1つは一部のハイスペックモデルを除いた全機種で、「水拭き+吸引」のW清掃を可能にしたこと。もう1つは「ClearView LiDAR」と呼ばれるレーザーセンサーが搭載され、マッピングや障害物回避が可能になったことです。
どちらも今や高級機なら当たり前に搭載している機能で、今回の刷新「ルンバ」シリーズではほぼ全機種に搭載されているんですが、なかでも低価格モデルはそのありがたみが強いわけです。
今回紹介する「ルンバ 205 DustCompactor Combo ロボット」(以下、「ルンバ205」)は、新「ルンバ」シリーズの中では「低価格ラインでちょっといいほう」という立ち位置。筆者の感覚では、価格と性能のバランス的にお買い得感が強いモデルだと感じています。
ステーションにゴミ収集機能は搭載されていないですが、ゴミ回収の手間が大幅減のiRobot「ルンバ 205 DustCompactor Combo」
設置に必要なのは充電ステーションだけ。上位機に付属するような大きな全自動ステーションに場所を取られないので、狭めの部屋にも気軽に導入できます
何より面白いのが、ワンルームから狭めの1LDKぐらいの部屋に設置しやすいコンパクトさと、それを実現する「ゴミ圧縮(DustCompactor)」機能です。
昨今のロボット掃除機では、ロボット本体が掃き集めたゴミを、充電台を兼ねた全自動ステーションで回収するのが一般的です。これだと、人の手によるゴミの片付けが大体60〜90日に一度で済むため、とてもラク。
しかし、ゴミを集めておくためには、ステーションのサイズがそれなりに必要。つまり、それだけステーションが大型化するので、狭い部屋だと設置しただけでかなり圧迫感もあったりして。
そこで「ルンバ205」は、ステーションは充電機能だけに絞って小型化するいっぽう、本体のダストカップを大型化し、さらに吸引したゴミを圧縮する機能を搭載しました。
吸引したゴミを溜めるダストカップは、なんと本体の約1/3ほどもある超ビッグサイズ
本体のダストカップ内では、フラップが左右に動いてゴミをギュッと圧縮。これでゴミ捨ての手間をグッと減らせます
このゴミ圧縮機能は、ゴミを吸引するたびにダストカップ内部のパドルがゴミを左右にギュッ、ギュッと押し固めるように圧縮。これによって極力吸引力を落とさないようにしつつ、約60日分のゴミを集めておけるようになったんです。
試しに綿を吸わせ、どれぐらい圧縮されているかをチェック
ほかのゴミも吸って見た目がよくないのでモザイクをかけていますが、大量の綿がかなりギュッと押し込められていました。「60日間ゴミ捨て不要」は決して大げさではなさそう
ダストカップが大きい分だけ本体にも少し厚みが出ていますが、とはいえステーションが充電のみの小さなものなので、置き場に困りづらいのはとても大きなポイントでしょう。それでいて、ゴミ回収ステーション搭載モデルのように、ゴミ捨ての回数が2か月に1回まで減らせるんですから、これは価値のある機能と言えます。
もちろん、基本的な性能も価格から考えれば必要十分という感じ。
まずうれしいのは、従来モデル(ルンバ600シリーズ)の最大70倍という吸引力と、シート型モップパッドによる水拭きのW清掃が可能な点。フローリングやクッションフロアが主な間取りならば、やはり水拭き機能はあったほうが圧倒的に助かります。
ウェットシートモップを使った手作業の床水拭きも仕上がりは気持ちいいんですが、それを毎日やるとなるとやはり面倒くさい。仕事に行っている間にロボットが勝手に床をサラサラ・サッパリさせてくれると思えば、価値は高いでしょう。
水拭きは半月状のシートモップで行います
シートベースは水タンクと兼用。ここに水を補充したら本体にセットします。部屋面積にもよりますが、補充は割とこまめに行うことになりそう
拭き上げの際に、本体がスイングするように前進・後退を繰り返して拭く「スマート・スクラブ」もなかなかに面白い機能。イメージとしては人の手でゴシゴシとしっかりめに雑巾がけするようなもので、「ちょっと床がベタつくな……」というときに使うと、なかなかに効果的でした。
ただし、こまめに前進・後退をするため、清掃に時間がかかったり、全体を掃除しきれずに充電しに戻ったりするケースもありえます。したがって、汚れを強めに感じるときにピンポイントで使うのがよさそう。
左右に細かくスイング&前進・後退を繰り返して強力に拭き上げる「スマート・スクラブ」。ただし、動きが複雑化する分だけ、掃除の時間はかかります
ちなみに、水タンクに入れて水拭きの効果を高めるルンバ専用「iRobot 床用洗剤」(マジックリン)を併用するのがおすすめです。
拭いたあとの床のサッパリ感が気持ちいいので、専用洗剤の使用はおすすめ
シートモップタイプの弱点は、段差を越えるのがちょっと苦手なこと。古い家屋だと、敷居に引っかかる恐れはあります
そして何より、冒頭で述べたレーザーセンサー「ClearView LiDAR」が本当にありがたい。
最近は、10万円前後以下のモデルなら当たり前に搭載されていますが、それでも5万円台のモデルでの搭載はなかなかにお得感があります。
というのも、「LiDAR」のあるなしでロボット掃除機の使い勝手って、めちゃくちゃ変わってくるから!
前面に広く開いたスリットの中に「ClearView LiDAR」を搭載。レーザーを照射し、細かくマッピングしてくれます
作成したマップを基に、アプリから掃除させたい場所を指示できるのも便利
まず「LiDAR」があると、部屋のマッピングが圧倒的に正確性を増します。
従来の非搭載モデルだと、間取り全体をひとまとめにした漠然としたエリア情報から「大体このあたりを掃除して」というザックリ指示しかできなかったんですが、「LiDAR」による精密マップがあれば、アプリから「リビングと寝室を掃除して」という具体的な指示ができるんです。
さらに、移動しながら障害物を検知する機能も精度が高まるため、壁や家具に「ガン!」とぶつかることはなく、回避はスムーズです。
「LiDAR」で前面の障害物を検知し、華麗に家具を回避
「ルンバ205」はコスパ優先のモデルですから、性能的にいろいろと削られている部分があるのも事実です。
水拭きのモップシートは汚れたら人間が洗う必要があるし、水の補充ももちろん手作業です(上位機なら、全自動ステーションがモップ洗浄や水の補充もしてくれます)。そういったメンテナンスの手間は発生するんですが、とはいえ日常の掃除をロボットが勝手に代行してくれると、ストレスが相当軽減されます。仕事から帰ってくると、床がピカピカになってるの、めちゃくちゃうれしいですよ。
特にこの「ルンバ205」はゴミ捨ての手間が少ないのに、省スペースで設置しやすいというアドバンテージが大きい。一人暮らしや狭めの部屋に導入するなら、選ぶ価値はあると思います。