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今回は、今エアコンの買い換えを検討している方が決して無視できない「エアコン2027年問題」がテーマ。2027年4月に刷新される新たな省エネ基準によって、これまで当たり前のように買えていた5万円前後の「格安機」が市場から姿を消し、実質的な大幅値上げとなる可能性が浮上している。「今買うのが本当におトクなのか」という疑問に答えつつ、在庫があるうちに確保しておきたい高コスパな現行モデルを厳選して紹介する。
「エアコン2027年問題」という言葉を最近よく耳にするようになった。これは、2027年4月からエアコンの「省エネ基準(トップランナー制度)」が変わることに由来する。新基準では現行の基準よりも目標値が高くなり、基準に満たない製品を出し続けることはメーカーにとって目標(加重平均)達成の大きな負担となる。
なかでも、省エネ性能としては比較的低めな低価格製品(各メーカーのベーシックラインなど)がその影響を大きく受けると言われている。現状ではかなり安く買える製品も、来年以降はメーカーからの出荷が順次終了していく見通しで、これまでのような価格帯で購入することは事実上難しくなると見られる。これを受けて、新基準が適用されない今年のうちに安めの製品を購入しておこうという、駆け込み需要的な動きがすでに始まっている。
【図1】エアコン主要メーカーのベーシックライン2025年モデル(おもに6畳用)の最安価格推移
では今、具体的にどの程度エアコンの価格が上がっているのだろうか。図1は、価格.com「エアコン・クーラー」カテゴリーの中でも人気が高い、主要メーカーのエアコン・ベーシックライン(おもに6畳用)における2025年モデルの最安価格推移を示したもの。こちらを見ると、昨年末まではほぼ4万円台で購入できた製品が、2月以降どんどん値上がりしていっているのがわかる。
4月末時点では、かつて4万円台前半で購入できた日立やパナソニックの製品が45,000〜48,000円に、45,000円台で購入できた三菱電機の製品が約58,000円に、49,000円台で購入できたダイキンの製品が約65,000円に値上がりしており、メーカーによっても異なるが、10〜30%ほどの値上がりを示している。
例年であれば、エアコンの旧モデルの価格がここまで上がるのは6〜7月の需要期を迎えてからのことなので、それと比べても今年のエアコン需要はかなり早く立ち上がっており、エアコン2027年問題に向けた駆け込み需要はすでに始まっていると言える。
【図2】エアコン主要メーカーのベーシックライン2025年モデル(おもに6畳用)の最安価格推移
ちなみに、今年2026年モデルの販売価格はどのようになっているのだろうか。図2は、上記各メーカーのエアコン・ベーシックライン(おもに6畳用)における2026年モデルの最安価格の推移を示したもの。メーカー・製品によって大きく差は出ているものの、現状の最安価格はおよそ6万〜8万円といったところ。
まだ2025年の旧モデルが多く流通しているため、なかなか価格が下がってこないが、旧モデルが品薄になってくる需要期の6月以降はこちらの販売価格も大きく下がってくると思われる。ただし、例年のように、4万円台くらいまで下がる可能性は低く、最安価格は5万円前後で落ち着くのではないかと思われる。
では、2027年4月以降、エアコンの販売価格はどのようになっていくのだろうか。その前に、そもそもエアコンの省エネ基準について簡単に説明しておく必要があるだろう。
出典:経済産業省資源エネルギー庁)">【図3】家電製品の省エネ性を示す「統一省エネラベル」(出典:経済産業省資源エネルギー庁)
エアコンの省エネ基準は「APF(通年エネルギー消費効率)」という数値で表され、これが大きいほど省エネ性が高いことを意味している。APFの算出式は「(A)1年間で使用する冷暖房能力の総和(kWh)÷(B)期間消費電力量(kWh)」で求められる。(A)については、エアコンの出力クラスによって固定値が定められているので、製品によって違いは出ない。いっぽう(B)については、製品ごとに費やす電力量が異なる。当然ながら、分母である(B)の値が小さければ小さいほど、つまり消費電力量が低ければ低いほど、APFの数値は大きくなるというわけだ。
一例として、2025年モデルの日立「白くまくん RAS-AJ2225S(W)」のAPFを求めると次のようになる。
(A)4161(出力2.2kWの製品の定数)÷(B)717(kWh)=5.80(APF)
問題は、この「5.80」というAPFが高いのか低いのかということだ。
従来の「2010年省エネ基準」では、エアコンのAPFの目標基準値は以下のように決まっていた。
【図4】「2010年省エネ基準」における壁掛け型ルームエアコンのAPF目標基準値(出典:経済産業省資源エネルギー庁)
例にあげた「白くまくん RAS-AJ2225S(W)」のように出力2.2kWのエアコンは寸法規定タイプの「区分A」で、APFの目標基準値は「5.8」だった。つまり、達成率にすると100%である。これが2027年基準のAPF目標基準値では、下記のように改められた。
【図5】「2027年省エネ基準」における壁掛け型ルームエアコンのAPF目標基準値(出典:経済産業省資源エネルギー庁)
出力2.2kWのエアコン(寒冷地仕様以外)は「区分I」で、APFの目標基準値は「6.6」となる。上記の日立「白くまくん RAS-AJ2225S(W)」の例で言えば、新たな2027年基準での達成率は約87%にとどまる計算だ。メーカーは全体の平均で目標を達成(加重平均)する必要があるため、このように基準値の100%に満たない製品は、2027年4月以降、事実上の出荷終了を迎える見通しだ。こうしたわけで、現状売られている省エネ性能が低めなエアコンは、市場から姿を消すことになるのである。
【図6】2027年省エネ基準では、日立「白くまくん RAS-AJ2225S(W)」の省エネ基準達成率は87%に
では、これに対して、メーカーはどのような対応を取っているのだろうか。上記の日立の例で言えば、新たに2027年度の省エネ基準に対応した新ベーシックラインとして「BJシリーズ」がリニューアル。出力2.2kW(おもに6畳用)の製品は「白くまくん RAS-BJ2226S(W)」だが、こちらの製品のAPFは「6.6」。2027年の新基準でのAPF達成率は100%で、基準をクリアしている。
問題はその販売価格だが、現状その販売価格は約13万円台からと、かなり高めだ。従来の「AJシリーズ」の2026年モデル「白くまくん RAS-AJ2226S(W)」は57,000円〜と半額程度で購入可能なので、このまま「AJシリーズ」が廃版になってしまうと、ベーシックラインの価格は2倍程度まで跳ね上がってしまうことになる。もちろん、来年「AJシリーズ」を引き継ぐ新たなベーシックラインが登場することも考えられなくはないが、それでも今のような価格では購入できなくなる可能性が高い。少なくとも1.5倍〜2倍くらいの価格設定になることも想定される。低価格で購入できるベーシックラインのエアコンを購入するのであれば、これから約1年が最後のチャンスというわけなのだ。
【図7】日立製エアコンのベーシックライン各モデルによる最安価格比較
ただし、これはすべてのエアコンに当てはまる話ではない。すでに、ある程度省エネ性能の高い(価格帯も高めだが)中級・上級のエアコンの場合、2027年の新基準でも省エネ達成率が100%を下回ることはまずないため、2027年4月以降もさほどの値上がりにはならないと考えられる。省エネ性能の高い中上級機の購入・買い換えを考えているのであれば、今それほどあわてて購入する必要はないだろう。
もちろん、この省エネ基準の引き上げは悪いことばかりではない。今より省エネ性が高いエアコンが市場に出回ることで、当然ながらエアコンを動かすのに必要な電気も少なくて済むようになる。エアコンの消費電力は全家電製品の中でもトップクラスなので、それだけ家庭における電気代も抑えられ、家計の助けにもなる。
たとえば、上記の日立のベーシックラインの場合、2027年省エネ基準で100%を達成した「白くまくん RAS-BJ2226S(W)」の場合、年間消費電力量は従来機の717kWhから630kWhまで下がっており、年間電気代も19,359円から17,010円まで下がっている。通常の利用ペースで年間2,000円以上は節約できることになる。今後、電気料金が高騰するようなことがあれば、より節約効果は高まるだろう。
しかしそれでも、現状の新旧エアコン本体の価格差が2倍程度(5〜6万円)あることを考慮すると、電気代の節約額は10年使っても2万円程度なので、なかなかペイできるレベルとは言えない。ベーシックラインの製品に限って言えば、ランニングコストを含めたトータルコストを考えても、今購入できる低価格製品を購入しておいたほうがおトクだと言える。
また、ベーシックラインのエアコンでも、省エネ性を上げるために、より大型の熱交換器やコンプレッサーを採用するケースも増えてくることが予想されるが、その結果、室外機のサイズが若干大きくなるのではないかという懸念もある。意外と見過ごされがちだが、今室外機を設置できているスペースに、今後エアコンを買い換えた時に設置できなくなるという恐れもなくはないので、そういう状況の方も、今在庫があるうちに旧製品を購入したほうがよいだろう。
むしろ、省エネ性を考慮するならば、中級より上のグレードの省エネ性能が高いモデルを検討したほうがよいかもしれない。これまでは、同じ出力でもベーシックラインと中級モデル以上の製品との価格差がかなり開いていたが、今後はそこまで大きな開きはなくなってくるだろう。そうなれば、省エネ性能がギリギリ新基準に合致しているようなベーシックモデルを狙うよりも、より節電効果が高く、その他の機能なども豊富な中級以上のモデルを検討するのも悪くない選択肢だと言えそうだ。
日立のベーシックライン「AJシリーズ」の2025年モデル。安いときは4万円で購入できることもあるなど、高コスパで人気を集めた製品だ。機能はシンプルだが、夏場の冷房運転時に熱交換器に付着する結露を乾かし、カビの発生を抑制する「内部送風乾燥運転」などを備える。2026年モデルの「RAS-AJ2226S(W)」もすでに6万円前後まで最安価格が下がっており、予算次第では新型も十分に射程圏内だ。
パナソニックのベーシックライン「DFLシリーズ」の2025年モデル。こちらも安いときは4万円前後で購入できることもあり、高コスパで人気を集めた。機能はシンプルだが、エアコン内部を加熱乾燥する「内部クリーン」運転で、カビの発生を抑制できる。2026年モデルの後継機「CS-226DFL-W」はまだ8万円台と高値止まりしているため、こちらを購入したほうがおトクと言えそうだ。
東芝のベーシックライン「Mシリーズ」の2025年モデル。日立、パナソニックなどのメーカーの製品の価格が上がっていくなかで、割安な価格で注目を集めている。機能はシンプルだが、熱交換器の汚れを浮かせて洗い流すコーティングが施された「マジック洗浄熱交換器フィン」を搭載する。2026年モデルの「RAS-V221M(W)」は現状7万円前後するので、コストパフォーマンスを最優先するなら、この2025年モデルが本命になるだろう。
富士通ゼネラル「ノクリア」シリーズのベーシックライン「Cシリーズ」の2025年モデル。機能はシンプルながら、熱交換器を55度以上に加熱して除菌を行う「熱交換器加熱除菌」を搭載し、高めのカビの抑制効果が期待できる。2026年モデルの「AS-C226T」は現状9万円台と高止まりしており、こちらを購入したほうがおトクと言えそうだ。
三菱電機「霧ヶ峰」シリーズのベーシックライン「GVシリーズ」の2025年モデル。熱交換器の表面をドレン水で洗浄し、その後熱で乾燥させる「お任せボディ」を採用しており、クリーン機能においては同クラスでも頭ひとつ抜けた存在だ。以前は4.5万円ほどで購入できたが、すでに6万円台まで最安価格が上昇中。それでもまだ安いほうだろう。2026年モデルの「MSZ-GV2226-W」も価格差がなくなってきており、在庫状況を見ながら新旧どちらにするか判断したい。
ダイキンのベーシックライン「Eシリーズ」の2025年モデル。結露水を使って熱交換器を洗浄する「水内部クリーン」および、洗浄後にストリーマ照射を行うことで、カビの発生を強力に抑制。クラス随一の機能を持つだけに価格は高めだが、この価格で買えることは今後なくなるかもしれないため、今も人気が高い。2026年モデルの「S226ATES-W」も7万円台まで最安価格が下がっており、あわせて検討したい。