電動アシスト自転車でもっとも売れ筋である“子乗せタイプ”に、パナソニックから注目の新モデル「ギュット・クルーム」が登場。ベビーカーなどを手がけるコンビとタッグを組んで開発されただけあり、快適性と安全性の高さは群を抜く完成度だ。発表会で見てきた詳細と、いち早く試乗してきた所感をお伝えしよう。
パナソニックがこれまで展開してきた子乗せタイプの電動アシスト自転車は、チャイルドシートも自社で開発したものを搭載していたが、もっと快適で安全なモデルを作りたいという思いから、ベビー用品メーカー「コンビ」に協力依頼。コンビのベビーカーにも使用されている衝撃吸収素材「エッグショック」を子どもの頭部を包み込むように配置したチャイルドシート「クルームシート」は、まるで母親の腕の中にいるような座り心地を実現したという。もちろん、子どもの落下を防ぐベルトやガードも装備し、衝撃が加わった際にも痛くないよう工夫されている。
従来のチャイルドシートにはない丸みを帯びた形状は、ベビーカーやゆりかごのようだ
頭が当たる部分には、クッション素材「エッグショック」を装備。エッグショックは2mほどの高さから卵を落としても割れないほどの衝撃吸収力を持つ(下の動画参照)
座面にはエッグショックは装備されていないが、衝撃を緩和する「シートクッション」が装着されているので走行中の振動でお尻が痛くなることはないだろう
もちろん、チャイルドシートのクッションは取り外して洗濯可能。このようにクッション性や通気性が高く、かつ、衛生面にも配慮されたカバーは他メーカーのチャイルドシートには装着されていないという
カバーを外したところにある「EVAクッション」(茶色い部分)も弾力があるので、子どもの快適性はより高まる
手前にあるガードもやわらかい素材でできているので、衝撃で子どもが頭をぶつけても安心。それでいてある程度の硬さは備えているので、子どもが捕まっても問題ない
子どもが振り落とされないように守るベルトは、安全性の高い5点式
子どもの足をおおう「フットカバー」や、日差しや雨から子どもをガードする「日よけ&レインカバー」といったアクセサリーも用意されている。これまでのパナソニックにはなかったラインアップだ
このチャイルドシートには、子どものためだけではなく、乗せる人にも役立つ工夫が満載されている。子どもの乗せ降ろしがしやすいように開口部が大きい設計とされたほか、自転車用のチャイルドシートとしては初めての機能となる立体的に持ち上がるベルトや、簡単に子どもの体にベルトをフィットさせられる機構などを搭載。常に子どもに注意を払いながら作業するうえで、スムーズに準備が完了できるのは非常にありがたい。
ベルトをゆるめるには、シート下のボタンを押しながらベルトを引っ張り上げるだけ! 瞬時に緩められるので、子どもを乗せる準備は素早く整う。驚くほど簡単なその操作は、下の動画で確認してほしい
子どもの腕を通す部分は、写真のように立ち上がった状態をキープするのもポイントだ。子どもを乗せた際に、子どもの下敷きになったベルトを引っ張り出す手間がないのは便利
もちろん、ベルト部のカバーも取り外して洗濯できる
そして、子どもを乗せてベルトを締める時にはシート下から延びるベルトを引っ張ればOK!(下の動画参照)
安全性や使い勝手を高めるための工夫はチャイルドシートだけでなく、車体にも施されている。その中でもっとも注目したいのが、リアタイヤの施錠解除システム。スマートキーを身に着けて、ハンドルに装備された操作部の電源ボタンを押せばロックが解除されるのだ。解錠をし忘れ、子どもを乗せてから解錠しようとすると、いったんハンドルから手を放さなければならず、自転車が転倒してしまうおそれも。この機能があれば、ハンドルに手を置いたまま解錠できるので安心だ。このほか、またぐ部分を低く設計するとともに従来モデルより8%広く確保したフレーム形状や、テコの原理を応用し、足で踏んだだけで立てられるスタンドなど、基本設計の配慮も万全。
アシストモードなどを変更する操作部の電源ボタンを押すと、リアタイヤのロックが解除される(下の動画参照)。なお、スマートキー(左手に持っているもの)を、自分が着ている服のポケットやかばんに入れるなど、近くに置いておかないと解錠されない
またぐ部分が広く、低いので、ロングスカートでも引っかからず足を通せる
チェーンはカバーでおおわれているので、漕ぐ人の服を巻き込む心配がない。また、子どもがチェーンに触れてしまうというトラブルも防げる
スタンドを立てる動作は、足で踏むという感覚。車体を手で持ち上げる必要はない
サドル後方にグリップがあるので、駐輪した後に少し位置をズラすのもラクに行える
ブレーキレバーと一体となったベルの配置は、いいアイデア! とても使いやすい
このような構造の「ギュット・クルーム」は、乗り心地も非常にいい。これまでのパナソニックの子乗せタイプの電動アシスト自転車は踏み出しからガツンとアシストされるフィーリングだったが、「ギュット・クルーム」には漕ぎ出しが少し抑えめのアシストになる「オートマチック」モードが用意された。実際に試乗してみたが、非常になめらかな走り出しで、これなら電動アシスト自転車に慣れていない人も安心だろう。
アシストモードは「パワーモード」「オートマチックモード」「ロングモード」の3種類が搭載されており、パワーモードは50km、オートマチックモードは60km、ロングモードは80km走行できる
バッテリー容量は16Ahで、残量ゼロの状態から満充電までは約5時間かかる
子どもの代わりに、少し軽めだが約5kgの重量のバッグをチャイルドシートに乗せて走ってみた。オートマチックモードのアシストは漕ぎ出しこそほかのモードより弱めだが、走行中はしっかりアシストされる。非常になめらかで、気持ちいい乗り心地だ
ある程度の重さをフロントに積んでいたが、ハンドが振られることもなし。カーブを曲がる際も非常に自然だ
長時間乗っていてもお尻が痛くならなそうな厚みのあるサドルも◎。上質なデザインは女性に好まれそう
「ギュット・クルーム」には、上位モデル「EX」と下位モデルの「DX」がラインアップされている。基本的な部分は同じだが、「DX」には、電源ボタンで解除できるロック機能(ラクイック機能)や座面の「シートクッション」が装備されていない。どちらも2018年12月3日発売予定となっている。
左2台が「ギュット・クルーム EX」(メーカー希望小売価格16万5800円/税別)で、右1台が「ギュット・クルーム DX」(メーカー希望小売価格14万5800円/税別)。「EX」には5色、「DX」には6色のカラーバリエーションが揃えられている
標準で装備されているチャイルドシートはフロントのみだが、リアキャリアにも取り付け可能。幼児2人乗せにも対応する