実践主義! 高橋庄太郎の山道具コレクト
3つのマグなど計8点がセットで1万円以下

重ねれば保温マグに! ソロ向けクッカーSOTO「サーモスタッククッカーコンボ」がおもしろい


自分で持ち込んだ食材を調理し、のんびりとお茶やコーヒーを味わうのは、山の楽しみのひとつだ。自炊前提のテント泊で手の込んだ料理をするのもおもしろいが、日帰り登山であっても、山頂でお湯を沸かしてカップラーメンを作るだけで充実した気分になれるのは不思議なことである。

異なる素材のマグがセットになった小型調理器具

今回テストしたのは、SOTO「サーモスタッククッカーコンボ」という小型の調理器具。主にソロ向けに開発されたものである。これがどういうものかといえば、商品名がすべてを言い表している。サーモ(温度)、スタック(重ねる)、クッカー(調理器具)、コンボ(組み合わせ)という感じで、確かに、高い保温性と“複数組み重ねての収納性”に特徴を持つ製品なのだ。そんなサーモスタッククッカーコンボの構成は「マグ(クッカー)3点」「マグリッド(フタ)2点」「コジー(保温ケース)」「ジョイント」「リフター」の8点で、総重量は310gとなる。

左上の黒いものから時計回りに、コジー、マグ400ml、マグ750ml、マグ350ml、ジョイント、リフター、マグリッド小(350ml&400ml兼用)、マグリッド大(750ml用)

この中で注目すべきは、やはり「本体」とも言うべきマグである。もっとも大きいものの容量は750ml、中くらいが400ml、1番小さいものが350mlとなっているが、ユニークなのはそれぞれ素材が異なること。750mlはアルミで、400mlはチタン、350mlはステンレスと作り分けられているのだ。複数セットになったクッカーはめずらしくもないが、素材で作り分けたものを組み合わせた製品はこれまでに見たことがない。それだけでも相当に個性的な存在なのである。

素材は、マグ750mlがアルミ(84g)、マグ400mlがチタン(50g)、マグ350mlがステンレス(80g)。同じ金属でも色が明確に違い、一目で見分けられる

マグにかぶせて使用するマグリッドには小さな飲み口(写真では下の部分)のほか、湯切りにも使える小孔(写真では上の部分)も付いている。750ml用のマグリッドの小孔は5つも並んでいるので、ショートパスタなどを茹でて湯切りする際などに便利だ

3つのマグはそれぞれ単体で火にかけて調理できるが、樹脂製のマグリッドは耐熱性が高くないため、かぶせたままでは加熱できない。

組み合わせでより便利に使える用具に変身!

「サーモスタッククッカーコンボ」は飲み物やスープを入れてカップとしても利用できるが、組み合わせることでより便利になるのがおもしろい。そのいくつかの例を紹介しよう。

【組み合わせ方1】
マグ400ml+ジョイント+マグ350ml+マグリッド(350ml&400ml兼用)

ここまで「ジョイント」のくわしい説明をしてこなかったが、これはマグ2つを重ねて使う時に活躍するものだ。マグ350mlはよく見ると上部が少し広く、中央から下部の口径が狭くなっているが、この狭くなった最上部にジョイントを装着。そして、そのままマグ400lmの中へ。すると、外側がチタン、内側がステンレスの“保温マグ”になるのだ。

このような状態でスタックする。ジョイントなしでも重ねられるが、少々ガタついて不安定になるだけでなく、マグとマグの間にできた空間から温まった空気が抜けてしまうので保温効果が発揮されない

マグリッドをかぶせれば、保温力はより向上。マグリッドには飲み口が付いているので、このまま飲むことができる

飲み物を入れてから手で持つと、じんわりと熱を感じる。熱湯を入れた直後でも熱くなりすぎることはなく、素手で気楽に持てるのがいい

この「組み合わせて使う保温マグ」という発想はユニークだ。もともと外側と内側の金属の壁の間を空洞にして保温性を高めた「ダブルウォールマグ」はメジャーな存在だし、樹脂製であれば2つ重ねて使える保温カップも販売されていたが、壁の間が中空になったダブルウォールマグは火にかけると金属の膨張によって破損し、樹脂は溶けてしまう。「サーモスタッククッカーコンボ」のように、火にかけられる金属マグを2つ組み合わせて保温カップにするという発想の製品は初登場ではないだろうか。ただ、多くの金属製のダブルウォールマグのように空洞部分の断熱性が極度に高い真空にはなっていないため、保温力は限定的である。それでも、あまり長い時間でなければ十分に温かい飲み物を楽しめるのだから、悪くはない。

【組み合わせ方2】
コジー+マグ750ml+マグリッド(750ml用)

保温しながら使う方法は、もうひとつある。マグにマグリットをかぶせ、専用のコジーを装着するというシンプルな使い方だ。

黒いターポリンでできたコジーの内側には、熱をキープするアルミ蒸着シートが装備されている。また、コジーの縫い目は防水処理されており、もしもマグのまわりにお湯が付いたままコジーに入れても、縫い目から浸透して直接手に触れてしまうようなことはない

マグリッドをかぶせたマグ750mlをコジーの内側に入れた状態。調理直後の熱いマグを入れても溶けることはなく、安心して使える

コジーをかぶせれば、素手で持っても熱くはない。この時は参鶏湯風のスープに白米を入れたお粥のようなものを作ったが、完食まで10分程度、最後まで熱いまま食べることができた

マグリッドをかぶせたまま飲めるコーヒーやお茶とは違い、食事の際はマグリッドを外さねばならず、保温性を高めるためのパーツとしてのマグリッドには、あまり存在意義がないと思うかもしれない。だが、初めにマグ750mlでメインの料理を作り、それを保温しながら別のマグであらためてスープを作るなど、コジーとマグリッドを組み合わせて保温力を発揮する場面はいくつも考えられるだろう。

収納の構造にもひと工夫あり!

次に、収納性をチェックしよう。製品名にスタックという言葉が入っているとおり、「サーモスタッククッカーコンボ」は、すべてのパーツをスタッキング可能だ。要するに、口径が大きいものの中に口径の小さいものを順に入れて重ねて収納できるのだが、ここにもちょっとした工夫がなされている。マグリッド750ml内にマグリッド400mlを収める時に上下を逆さまにして入れると、マグリッド750mlの底面の凸部にマグリッド小の凹部がぴったり合い、ガタつきがなくなるのだ。それにより、持ち運ぶ際に金属同士がぶつかって生まれるイヤな音が少し軽減されるわけである。

コジーをかぶせたマグ750mlに、さまざまなものを収納したマグ400mlを反対向きに入れる時のイメージ。このようにはせず、上下を同じ向きにした普通の状態でも収納できる

収納が完了すれば、もちろんコジーのサイズに。10.5(直径)×12.5(高さ)pという大きさだ

収納が完了すれば、もちろんコジーのサイズに。10.5(直径)×12.5(高さ)pという大きさだ

コジー上部のネットの高さには余裕があり、マグの上に小型ガスカートリッジ(110サイズ)を載せて一緒に収納することもできる。わかりやすさを重視するため、写真ではネットを完全にかぶせていないが、口を絞るとちょうどガスカートリッジの上で固定できる

「サーモスタッククッカーコンボ」は3つのマグが中心だが、いつもすべてを持っていく必要はない。状況に応じてマグ750mlとマグリッド(750ml用)だけにしたり、マグ400mlとマグ350mlのみにしたりといった使い方も考えられる。マグ自体を保温する必要がない調理であれば、コジーを省くこともできるだろう。パーツが多く、少々複雑な道具だけに、使い方はユーザーに任されている面が強いのである。

ところで、アウトドアで使うクッカーは、その内部を収納スペースとして使うのが、山での当たり前のテクニックだ。では、「サーモスタッククッカーコンボ」では、どのようになるのか。以下は、僕が試してみた例である。

もっとも小さいマグ350mlの場合。垂直に立てたバーナーヘッドの横にナイフ付きのマルチツールと折りたたみ式のスプーン、リフターを入れても、まだ余裕がある。2分割できるアウトドア用の箸も入れたかったが、高さがオーバーしてしまった

1番大きなマグ750mlの場合。上からは見えにくいが、最下部に110サイズのガスカートリッジが入っており、その上にバーナーヘッド、スプーン、マルチツール、リフターを収納。隙間に調味料やライターなども入れられそうだ

同じくマグ750mlに、日帰り登山の定番的昼食である日清「カップヌードル」を入れてみたところ、わずか2〜3oだけ口径が合わず、入らない。これが収納できれば、やわらかな容器をつぶさずに持ち歩くことができ、とても便利なのだが……

クッカー内への収納は主だった機能とは言えないかもしれない。だが、山好きの方ならご存知のように、ガスカートリッジを別に持つか、クッカー内部に入れられるのかで収納性は大きく変わる。その点、「サーモスタッククッカーコンボ」は、マグ750mlのみであれば110サイズのガスカートリッジを内側に収められる。それよりも小さいマグには入らないが、もともとソロ向けの小型クッカーなのだから仕方がない。

それよりも、好奇心から試してみた日清「カップヌードル」がほんの少しのところで入らなかった点は非常に惜しかった。無理に押し込むと容器の縁が折れ曲がり、ハマって取れなくなるのである。あと3mmほど内径を大きくし、これがきれいに収まり、かつ引っかからずに出せるようなサイズ感なら、それだけで買いたくなる人も多かったに違いない。なにしろ世の中には、まさにカップヌードルがぴったり入るように設計されたクッカーも実在しているほどなのだから。本当にわずかな差でしかなく、ほとんど収納できているといえなくもないが、マグリッド(750ml)できちんとフタをし、カップヌードルを守り切れないのは残念であった。

それぞれのマグでお湯を沸かしてみる!

ここからは実際に火にかけた様子をお見せしていきたい。以下は、それぞれのマグをバーナーに置いた状態と、沸騰させてから内部を俯瞰した状態だ。

マグ400mlよりもマグ350mlのほうが高さがあるため、目の錯覚で350mlのほうが大きく見えるかもしれない。いずれも口径は小さく、バーナーヘッドのゴトクに載せた時には、ずれ落ちないように注意しなければならない

沸騰させた時の様子。口径が小さいのでバーナーの火が底面ではなく側面にまわりがちで、熱を受け止めきれない。これはほかのメーカーのモデルでも避けられない、小型クッカーの宿命だ

今回のテストでは、素材が異なるそれぞれのマグの沸騰時間を計測しようと考えていた。しかし、底面の口径が異なるうえに、形状自体も小さく、バーナーの火をしっかり受け止められないので計測してもあまり意味がないと気付き、中止してしまった。それに、マグによって入れられる水量も異なるため、やはり単純に沸騰時間を比較しても無意味なのである。しかし、少しでも目安になるように、調理の際にもっとも出番が多そうなマグ750mlの沸騰時間を計測してみた。その結果、気温18℃/水温11℃/水量500mlで沸騰するまでにかかった時間は約3分10秒(使用したバーナーは、SOTO「アミカス」)。ただ、バーナーの火力を強くしても底面が小さなクッカーには火力が伝わり切らないため、最大火力にしていないこともあり、あまり参考にはならないかもしれない。

ところで、マグ750mlには側面に500mlまでの目盛りがあり、マグ350mlは250mlまでの目盛りが付いている。ここまでの水量であれば、沸騰させてもお湯があまり吹きこぼれないということを意味しているに違いない。実際、沸騰を続けていても、いくらか水滴は飛び散ったものの、お湯があふれて手に負えないような状況にはならなかった。興味深いのは、マグ400mlだけは目盛りがついていないということ。これだけ省略する理由がわからない。僕の憶測では、チタンという金属は加工するのに大きな手間と費用がかかり、意外ともろい素材でもあるので目盛りのくぼみを付けると強度も下がる。そこで、あえて省略したのではないか、ということ。意外と当たっているかもしれない。

調理での使い勝手を確認してみる!

3種類の金属を使い分けた「サーモスタッククッカーコンボ」だが、調理にはどの素材が向いているのかも考えたい。一般的に「登山用」のクッカーに使われているのは、アルミかチタンだ。アルミは熱伝導率が高く、クッカー全体に熱が回りやすいので、焦げ付きにくい特徴がある。また、比較的安価だ。いっぽう、チタンは熱伝導率が低いため、火が当たったところばかり熱くなり、焦げやすい。そしてアルミよりも軽量だが、少々高価だ。

つまり、「調理しやすい」「価格控えめ」がアルミのメリットで、「それほど軽くはない」のがデメリットとなる。それに対し、チタンはなんといっても「軽量」であることが大きなメリットだ。熱伝導率が低いため、お湯や料理が接している部分以外は熱くなりにくく、クッカーに口をつけやすいという意外なメリットもある。その半面、「焦げやすい」「価格が高い」のがデメリットだ。もっとも、チタンが焦げ付きやすいといっても、フリーズドライ食品やカップラーメン用にお湯を沸かす時に焦げ付くわけではなく、使い方次第である。

その点、ステンレスは安価で頑丈だが、とにかく重く、そのデメリットが大きすぎる。そのため、人力で荷物を運ばねばならない登山用に開発されたものはほとんど存在しない。基本的には、山道を歩かないで済ませられるキャンプ用クッカーの素材なのだ。それをなぜ、「サーモスタッククッカーコンボ」の一部に採用したのかはわからない。アルミでもチタンでもよかったのではないか。3種類の金属を使うというおもしろさから採用したという可能性もあるが、なにか僕には想像がつかないメリットがあるのかもしれない。

ともあれ、そんなことを考え合わせると、いくらか手の込んだ調理にはアルミのマグ750mlを使い、お湯沸かしにはチタンのマグ400mlということになる。チタンのマグでお湯を沸かせば、ステンレスのマグ350mlにお湯を移してコーヒーを作るのもラクであろう。ステンレスのマグはカップとしての用途だけでもよさそうな気もする。

アルミ製のマグ750mlであれば、具材が入ってドロリとしたスープを長時間沸騰させてもほとんど焦げ付くことはない

チタン製のマグ400mlも、さらりとした液体ならば内部でよく対流するため、焦げ付きの心配はない。お茶を煮出すくらいなら気にしないでいい

これらのマグには持ち手がついていない。その代わりに使うのがハンドルともいわれる「リフター」だ。軽量化のためなのか非常に小さいが、使用時に支障があるわけではない。メイン素材はアルミだ。

リフターの大きさは、8.8cm。手の大きな人はもう少し大振りのほうが使いやすいかもしれないが、必要十分である

3種のマグのすべてにリフターは適合するが、チタン製のマグ400mlは口の部分が薄いため、少々ガタつく。少し不安になるが、外れて落としそうになることはない

このリフターは、マグにマグリッドをかぶせた状態でも使える。加熱後、保温したままでマグをラクに移動できるのはよい点だ。しかし、保温時のマグリッドの使い勝手には改良の余地があるように思える。パッキンを使ってマグから外れにくくしたのはいいが、それがあまりにもしっかりとしているので、むしろ外れにくくて難儀するのだ。片手のリフターで押さえながら、もういっぽうの手で外そうとしてもなかなか力が入らず、そのうちに指先が触れてヤケドしそうになる。これはなかなか厄介で、僕は火からおろしたばかりで熱いマグには、マグリッドでしっかりフタをするのをやめてしまった。軽く載せる程度にしておかないと、めんどうなことになりかねないからである。マグリッドの形状を、もっと指をかけやすいものにするなどの工夫がプラスされれば、より使いやすくなりそうだ。

マグリッドをかぶせたままリフターを使う時は、マグリッドがマグの縁にかぶさっている場所ではなく、縁が露出しているところをつかむ

マグリッドが外れにくくて力を入れていたところ、パッキンごと外れてしまった。低温時はこのようなことは起きないが、高温時はパッキンが熱でゆるんでしまうからだろう

山行を終えて

シンプル・イズ・ベストという言葉があるが、その視点から見ると「サーモスタッククッカーコンボ」は対極にある製品かもしれない。だからと言って悪いわけではなく、さまざまな工夫やアイデアがちりばめられていて、いわゆる「使って楽しい」という方向のクッカーといえそうだ。そもそもシンプルに使いたければ、この中からクッカーひとつだけ選んで持っていけばいいだけの話なのである。

改善点がないわけではない。前述のように、マグリッドはもう少し使いやすい形状であってほしい。できれば、加熱時にもフタとして使える素材だけで作られていれば、熱効率を高められ、調理時間と燃料節約につながるだろう。また、マグ350mlの素材がステンレスでなければ、もっと軽量にできるとも思う。あとは、日清「カップヌードル」がきちんと入れば……。僕は別にカップヌードルのファンではなく、山中で食べることもほとんどないのだが、あれだけ登山者に受け入れられている食品を無視するのはもったいない。同様のサイズ感で作られている他のカップ入り食品のことを考えても、あと数mmだけマグリッド750mlの口径が大きくなるとよさそうだ。

このように、いくつかの改善点はあるものの、現状の製品であっても、日帰り登山からテント泊までソロ向けのクッカーとしてさまざまな使い方が想像され、ポテンシャルは高い。そして、最後の最後に付け加えれば、実は価格も魅力的なのである。マグ3つに加えて多様な付属物が付き、メーカー希望小売価格8,000円(税別)であれば、手元にひとつ置いておきたくなるのではないだろうか。

高橋庄太郎

高橋庄太郎

テント泊での登山を中心に1年の半分近くは野外で過ごす、山岳/アウトドアライター。好きな山域は北アルプス。「山道具 選び方、使い方」など、著書も多数。

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