キャンプなどのアウトドアで、火を使ってごはんを炊くことに慣れていないビギナーでも失敗しづらいと評判のいい「ゼブランライスオーブン」を使ってみました。炊飯中に火力を調整しなくても上手にごはんが炊けるという、その実力はどれほど!?
「ゼブランライスオーブン」は、アウトドアコーヒーギアブランド「Zebrang(ゼブラン)」を展開するハリオと、ダッチオーブンなど多くのアウトドア用品を手掛ける南部鉄器の老舗「及源鋳造」が製造協力して作った鋳鉄(ちゅうてつ)製ライスクッカー。蓄熱性が高く、鍋全体へ均一に熱が伝わるため、炊きムラが抑えられ、遠赤外線効果でふっくらとしたごはんが炊き上がります。
サイズは約199(幅)×165(奥行)×162(高さ)mm。ふたの形状には、蒸気が対流しやすいように、鍋と同じように丸みを帯びたドーム状を採用しているそう。ダッチオーブンやスキレット同様、鋳鉄ならではのザラッとした質感も特徴的です
ただし、火にかけて炊くライスクッカーの場合、おいしいごはんが炊ける性能を備えていても、火加減や火にかける時間を誤れば吹きこぼれたり、焦げたりして上手に炊けないことがあります。そうした失敗を簡単に防げるのが「ゼブランライスオーブン」の強み。最初から最後まで中火で加熱するだけで、上手にごはんが炊き上がります。さらに、炊き上がり間近であることを音で知らせてくれるホイッスルも付いているので、少し目を離していても火を止めるタイミングを逃す心配はありません。
ふたの上部にあるステンレス製のホイッスルが、炊き上がり時に出る大量の蒸気で鳴る仕組み
さっそく「ゼブランライスオーブン」で、ごはんを炊いてみましょう。炊飯できる容量は1合もしくは2合。今回は、2合炊いてみます。
別の容器で研いだお米を30分程度(冬場は1時間程度)水に浸した後、ザルなどで水を切ってから入れます。「ゼブランライスオーブン」で直接洗米すると傷が付く可能性があるため推奨されていません。ボウルなどを使いましょう
鍋の内側には2本の水位線があるので、2合の場合、上側のラインに合わせて水を入れます
後は、ふたをしてコンロに載せて中火で加熱するだけ。なお、本体の重量が約3.1kgあり、2合分の米と水を入れると4kg近くになります。そのため、ゴトクが大きく、安定感のあるコンロを使うといいでしょう
中火といってもどのくらいの火力にするか迷ったときは、鍋底の平坦な部分に火が当たるくらいを目安にしてください。日中だと屋外では火が見えにくい可能性もあるので、コンロのつまみをどのくらい回せばいいのか自宅で事前に確かめておくと安心でしょう
加熱を始めて約6分後にホイッスル音が鳴りだしました。屋外で動画を撮影できなかったため、室内で炊飯したときの様子となりますが、ホイッスル音はそれほど大きくないので隣のキャンパーに迷惑をかけることはなさそう(下の動画参照)。ちなみに、ホイッスル音が鳴り始めると、蒸気とともにおねば(お米のでんぷん)が穴から少し噴き出しますが、ふたをした部分からあふれ出るほどには噴きこぼれませんでした。
ホイッスル音は、炊き上がりを告げる合図ではありません。ホイッスル音が鳴っても加熱を続け、1分経ったら火を止めます。そして、次は蒸らし工程。ふたをしたままコンロから下ろして15分蒸らしたらできあがりです。
本体は非常に熱いので、移動したり、ふたを開けたりするときは必ず手袋などを使用しましょう。大きめの持ち手が付いているので、手袋をしていても持ちやすいです
しっかり蒸らした後、ふたを開けてみると、お米がひと粒ずつ立ち、ふっくらとしたごはんが炊き上がっていました
しゃもじでほぐして余分な水分を飛ばします。この時点で、ベチャッとした感じはありません
食べてみると、粒立ちがよく、それでいてもっちり感もあります。甘みがあって、とってもおいしい! 冷めてもおいしかったので、夕食で食べきれなかったら、おにぎりにして朝食に食べてもよさそう
土鍋もそうですが、火にかけて炊飯するものは、ごはんが焦げなかったとしてもごはん粒が鍋にこびり付き、洗い物に苦労するイメージがあります。「ゼブランライスオーブン」はどのような感じでしょうか。
今回、「ゼブランライスオーブン」で炊飯した後の鍋内はこんな感じ。取扱説明書のとおりに使えば、少しごはん粒が残る程度で済みそう
通常はホイッスル音が鳴ってから1分後に火を消して蒸らしますが、1分で火を止めずに、さらに5分ほど加熱すると、おこげが作れます。ただし、これも状況によって変わるようで、筆者が試したときにはこの加熱時間ではおこげはできませんでした。1分+8分でおこげができたので、おこげが食べたいときは加熱時間を何度か試す必要がありそう。でも、そういうアナログな感じも楽しい!
自分好みのおこげの濃さになる加熱時間を研究するのも一興
「ゼブランライスオーブン」で炊飯を何度か試していて、ホイッスル音が鳴らないときがありました。取扱説明書によると、通常は加熱を始めて5〜8分後にホイッスルが鳴りますが、状況によっては鳴らないことがあるそう。実際、風速5m/sの予報が出るほどの強風の日に試したときは、風で火力が安定しなかったせいか、蒸気が噴き出すまでに15分ほどかかり、ホイッスル音も鳴りませんでした。屋外では風の影響を受けるため、筆者と同じような状況になる可能性はあります。
ホイッスル音が鳴らない場合は、噴き出る蒸気や沸騰の音を目安にしましょう。上で紹介した動画のとおり、ホイッスルが鳴るタイミングでたくさんの蒸気が穴から出て、沸騰する音もよく聞こえるようになります。なので、蒸気が出始めて少し待ってもホイッスル音が鳴らないときは、蒸気がはっきり見えたタイミングや沸騰の音が激しくなってきたタイミングを「ホイッスル音が鳴ったタイミング」とすればOK。筆者はその方法で、蒸気をホイッスル音の代わりとし、そこから1分加熱して火を止め、15分蒸らして炊飯しましたが、ホイッスル音が鳴ったときと遜色ないおいしいごはんが炊けました。
当然、具材を入れた炊き込みごはんも作れます。一般的な炊飯器では、具材を入れるときは最大炊飯量(2合)で炊飯できないので、「ゼブランライスオーブン」でもお米の量は1合にしました。
具材と調味料を入れた以外は、普通のごはんを炊くのと同じ方法で炊飯すればOK。見るからにおいしそうな炊き上がりです
炊き込みごはんはベチャッとしやすいのですが、ほどよい粒感と粘りがあり、食感もおいしい! 醤油などの調味料を入れたので多少おこげがあるかなと期待していたのですが、おこげはできていませんでした(笑)
一般的なダッチオーブンなどと同じ鋳鉄製ということは、煮込み料理もおいしく作れるはず! それを確かめるべく、鶏とトマトのスープ煮を作ってみました。作り方は取扱説明書には載っていないので、加熱時間などは筆者のオリジナルです。
普通の鍋と同じように材料を入れます
ふたをして中火で加熱します。炊飯とちょっと違うのは、ホイッスルが鳴ったら弱火にして5分加熱したこと。その後、火を止めて余熱で15分加熱しました
鋳鉄のすぐれた蓄熱性を利用し、余熱でゆっくり加熱したおかげで、鶏肉はやわらか。味の染み込みもバッチリです。弱火で長時間煮込んだように、トマトの青臭さも消えていました
ここでのレビューのとおり、「ゼブランライスオーブン」は室内でも使用可能。材質は鉄なので、ガスコンロだけでなく、IH調理器でも使えます。
鋳鉄製のライスクッカーなので、使用前にシーズニング(油ならし)が必要。洗剤を使わずにタワシで水洗いしてから本体を火にかけて乾かし、その後、油をなじませます。少々手間がかかるので、キャンプなどに持っていく前に家で行っておくといいでしょう。
本体を火にかけて乾かした後の工程では、火力を弱火にし、鍋の中に油をひいてクズ野菜を炒めるとまんべんなく油がなじみます。この作業は2〜3分くらいでOK。その後、火を止めて鍋の中のクズ野菜を取り出してから鍋を冷まします。冷めたら軽く水洗いして水気を拭き取り、再度、火にかけて乾かしたら完了
鍋の外側は、布やキッチンペーパーを使って油をなじませます。ふたを加熱する際にはオーブンを使用。160度に設定し、2分間加熱した後、同様に油をなじませます。その際、ホイッスルは取り外しておきましょう
使用後のお手入れも、洗剤は使用禁止。洗剤を使うと油で作った皮膜が取れ、サビたり焦げ付きやすくなったりしてしまうからです。タワシで水洗いして、シーズニングと同じ方法で水気を飛ばしてから少量の油を塗りましょう。面倒に思えますが、慣れてしまうと洗剤で洗うよりも楽に感じますよ。
洗剤を使わなくてもきれいに落ちます
ホイッスル音が鳴らないときには少々焦りましたが、取扱説明書のとおりに蒸気の見え方や沸騰の音を目安にすれば失敗せずにごはんが炊けたので、そこまで心配しなくてもよさそう。それよりも、炊飯中に火加減を調整しなくてもいい楽さが最高にいい。それでいて、炊き上がったごはんがおいしいのだから大満足です。
ただ気温が低いと、すぐにごはんが冷めてしまいます。筆者が撮影した日の気温は約10度。炊き上がった後、そのまま30分ほど置いておいたら冷めてしまいました。冷めてもおいしいのでそこまで不満ではないのですが、肌寒い時期は温かい料理と温かいごはんが食べたい。なので、保温できるケースをオプションで販売してほしいです。
公式オンラインストア価格は18,700円(税込)と、ほかのライスクッカーに比べると「ゼブランライスオーブン」は少々高価ですが、日本の伝統製法で作られた南部鉄器製で、ふたには新潟県・燕三条の金属加工の技が生かされたメイド・イン・ジャパン。火加減いらずの楽さ、炊き上がったごはんのおいしさを総合すると、決して高くはないと思います。