イベントレポート
5月24日から一般公開スタート!

テレビ放送の未来を先取り! NHK「技研公開2018」の見どころをチェック

東京・世田谷にあるNHK放送技術研究所が、一般に研究成果を披露する「技研公開2018」が5月24日〜27日に開催される。一般公開に先駆けて行われたプレスプレビューから、8Kスーパーハイビジョン、そして高画質化を中心に放送の次世代を感じさせる出展を紹介しよう。

5月24日より一般にも公開される「技研公開2018」

5月24日より一般にも公開される「技研公開2018」

実用化に向けて着々と開発が進む8K関連技術。8K4倍速のスローモーションシステムも披露

実用間近な発表内容としてNHK技研は2018年から20年の3か年計画を発表。8K高画質や3Dなど表現力を高める「リアリティイメージング」、放送と通信が連携する「コネクテッドメディア」、AI技術を用いた番組制作やユニバーサルサービスの「スマートプロダクション」を、3つの柱として掲げている。

NHK放送技術研究所長の黒田徹氏から2018年から20年の3か年計画が語られた

NHK放送技術研究所長の黒田徹氏から2018年から20年の3か年計画が語られた

8K関連ハードウェアでは「シート型8K有機ELディスプレイ」が出展。昨年までは4枚のパネルによる8K表示だったが、今年は88型のガラスシート1枚で88型有機ELディプレイを完成させた。パネルはLG製だが駆動回路やインターフェイスはNHKとアストロデザインが共同開発。

なお、有機EL関連ではフレキシブルディスプレイの実用化を目指した「大気安定で長寿命な逆構造有機ELデバイス」を開発。こちらは日本国内の有機ELメーカーと共に有機ELデバイスとの共同研究だ。

88型の8K有機ELディスプレイを披露

88型の8K有機ELディスプレイを披露

「大気安定で長寿命な逆構造有機ELデバイス」を出展

「大気安定で長寿命な逆構造有機ELデバイス」を出展

逆構造とすることで耐久性にすぐれたフィルムを利用可能になる

逆構造とすることで耐久性にすぐれたフィルムを利用可能になる

8K/120Hz放送の開始(今年12月の放送は8K/60Hzが予定されている)に向けた開発では、世界初の「8K120Hz映像符号化・複合装置」も披露。4Kエンコーダー12台で100Mbpsにエンコード処理を行う。実用化は2020年頃がターゲットとなる見込みだ。8K/120Hzに向けた番組制作システムも開発が進行中しており、8K放送に向けた環境づくりも本格化している。

放送局の送り出し時に利用する8K/120Hz対応のHEVCリアルタイムエンコーダー「8K120Hz映像符号化・複合装置」

「フルスペック8K中継制作システム」はカメラ、記録装置、スイッチャー、文字剛性装置、フレームシンクロナイザー、映像モニター、波長多重伝送装置を搭載

「8K番組素材の移動伝送技術」はマラソンや駅伝など移動生中継を8Kスーパーハイビジョンで実現する無線伝送装置。適応型送信制御MIOで最大145Mbpsの8K伝送が行える

「IP制作のための8K伝送技術」は、8K素材を軽圧縮して、低遅延でIPネットワーク転送を可能とする仕組み

「IP制作のための8K伝送技術」は、8K素材を軽圧縮して、低遅延でIPネットワーク転送を可能とする仕組み

「8K4倍速のスローモーションシステム」も開発。1.25インチ3300万画素センサーのカメラで8K/240fps撮影。同時に60fpsスローモーション再生にも対応

3板式8K4倍速カメラヘッド。出展されていたのはモックアップで本物はロシアW杯に出張中

3板式8K4倍速カメラヘッド。出展されていたのはモックアップで本物はロシアW杯に出張中

NHK技研が以前から継続して取り組んでいる裸眼3Dによる「30万画素三次元映像システム」も披露。多視点画像を14台もの4Kプロジェクタを背面から投射し、30万画素(732×432ドット)の映像を表示する。

「30万画素三次元映像システム」は複数プロジェクタと表示光学系で約10万画素から約40万画素へ向上

「30万画素三次元映像システム」は複数プロジェクタと表示光学系で約10万画素から約40万画素へ向上

裸眼3Dとしては解像度が向上。横方向の視野角も広い

裸眼3Dとしては解像度が向上。横方向の視野角も広い

地デジのスーパーハイビジョン化、新帯域の21GHz帯衛星放送も研究中

今年12月には衛星による「NHK 8K SHV」の放送もスタートするが、気になるのが”地デジ”の将来。技研では総務省の研究委託として「地上放送高度化技術」の研究を進めている。

展示では新しい誤り訂正符号の採用や信号構造の見直しなどにより、大幅に性能が向上した暫定的な伝送方式を策定。MIMO伝送を用いた方式では1チャンネルあたりの伝送容量を62.8Mbpsに引き上げる事ができ、次世代の符号化コーデックと組み合わせれば地デジで8K SHV放送も視野に入る。

2018年11月より東京と名古屋で実験をスタートしているが、まだ規格化段階にも入っておらず、実用化は2025年頃以降となるだろう。

「地上放送高度化技術」として地上波によるスーパーハイビジョン放送の研究も進む

「地上放送高度化技術」として地上波によるスーパーハイビジョン放送の研究も進む

2018年11月より伝送方式の実験がスタート

2018年11月より伝送方式の実験がスタート

音声にはMPEG-H 3D Audioコーデックとオブジェクトベース音声を採用

音声にはMPEG-H 3D Audioコーデックとオブジェクトベース音声を採用

もうひとつの次世代放送が「21GHz帯域衛星システム」だ。昨年打ち上げられたBSAT-4a衛星経由で今まで利用されてこなかった21GHz帯で放送電波を受信するもので、実際にBS衛星放送の約8倍になる300MHzの帯域周波数を利用可能で伝送容量は247Mbpsとケタ違の高画質化も可能だ。12/21GHz周波数・偏波共用受信アンテナも開発している。

まったく新規の帯域となる「21GHz帯域衛星システム」

まったく新規の帯域となる「21GHz帯域衛星システム」

2030年から2040年には「ダイバースビジョン」の時代が到来

最後に、2030年から2040年を想定して到来を予告し、「技研公開2018」が中心に据えたのがテレビという形を越えた、AR・VR機器も含め多様な視聴や体験を実現する「ダイバースビジョン」。実用化の遠い技術も多いが、NHKが自らテレビという形の脱却を目指している事は興味深い。

「ダイバースビジョン」では同一コンテンツを表示・再生デバイスに異存しないフォーマットで配信

「ダイバースビジョン」では同一コンテンツを表示・再生デバイスに異存しないフォーマットで配信

テーブル上では三次元ディスプレイで上映

テーブル上では三次元ディスプレイで上映

スマホ・タブレット端末でも裸眼3Dによる視聴に対応

スマホ・タブレット端末でも裸眼3Dによる視聴に対応

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

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