白物家電事業の売却が決定するなど、構造改革の真っただ中にある東芝。液晶テレビ「REGZA」を中心とした映像事業については、国内向け製品の開発・販売の継続が発表されていたが、本日2016年4月19日、4K対応REGZAの新モデルとして「Z700X」シリーズと「M500X」シリーズが発表された。東芝の事業継続に対する本気度が伝わってくる内容の新製品で、今年で10周年を迎えるREGZAブランドとしては久しぶりとなる新製品発表会も開催されている。ここでは、高画質・高機能な「Zシリーズ」の新モデルZ700Xの特徴を中心にレポートしよう。
4K REGZAの新モデルZ700Xシリーズ。55V型、49V型、43V型の3モデルがラインアップする
REGZAブランドとしては久しぶりとなる新製品発表会が開催された
REGZAのZシリーズといえば、高画質・高機能な液晶テレビとして、ハイビジョンテレビ時代から人気の高いシリーズだ。今回リリースされたZ700Xは、高画質で評判のZ20Xの下位に位置づけられる製品だが、Z20Xの技術・機能を数多く搭載しており、Zシリーズの名に恥じない4Kテレビに仕上がっている。
Z700Xの最大の特徴は、液晶パネルに広視野角なIPSパネルを採用すること。東芝は、ハイビジョンテレビにはIPSパネルを積極的に採用してきたものの、Z20XなどのZシリーズの4Kテレビには、84V型の大画面モデルを除いてVAパネルを採用してきた。その理由は、解像度の上がった4Kテレビにおいて、東芝の考える高コントラストで広色域な画質を実現するにはVAパネルのほうが有利だからだ。だが、今回のZ700Xでは、新たに反射防止層を配置して映り込みを減らすなどの技術革新によって、IPSパネルでもZシリーズらしい高画質が実現できたとしている。
実際に、VAパネルを採用するZ20Xと、IPSパネルのZ700Xで同じ映像を再生して画質を比較することができたので、その印象をレポートしよう。黒の締まりやコントラスト感はZ20Xのほうが上回るように見えたが、Z700XもIPSパネルとしては白浮きが抑えられており、かなり肉薄している印象。REGZAらしい豊かな色表現力を持つ4Kテレビだと感じた。視野角の広さはZ700Xのほうが有利なので、リビングで多くの人が見るような使い方であれば、横や斜めからでも十分な画質が得られるZ700Xのほうがフィットすると感じた。
反射防止層を配置して映り込みを低減した、新開発のIPSパネルを採用。視野角が広いだけでなく、高コントラストな映像も再現できるとしている
さらにZ700Xは、Z20Xの高画質化技術を数多く継承しているのもポイント。東芝がこだわる全面直下(直下型)LEDバックライトを採用するのはもちろんのこと、LEDのエリアコントロールにも対応する。映像処理エンジンもZ20Xと同じ高性能な「4KレグザエンジンHDR PRO」で、64色軸による高精度な色空間変換を使って最明色(物体色の限界)を超えない自然で豊かな色を再現する「広色域復元プロ」や、映像の圧縮特性を推定して高輝度領域を復元することで、通常のコンテンツもHDR映像のような立体感・奥行き感に仕上げる「アドバンスドHDR復元プロ」、全面直下LEDバックライトを緻密に制御して映像の残像感を低減する「4Kクリアダイレクトモーション480」といった独自技術をふんだんに搭載。従来よりもダイナミックレンジが大幅に拡大するHDRフォーマット(Ultra HD Blu-rayのHDR信号)の映像入力にも対応している。
東芝の4K液晶テレビの特徴でもある全面直下(直下型)LEDバックライトを採用
64色軸カラーイメージコントロールによって色表現領域を拡大する「広色域復元プロ」。この技術によって、鮮やかな印象ながらも自然な色合いを実現する
「アドバンスドHDR復元プロ」は、圧縮された高輝度領域を復元するのがポイント。ハイライトの抜けがよく、クリアな画質を実現する
画質性能の主要なところでZ20Xと異なっているのは、パネルがIPSであることと、LEDバックライトのエリアコントールの性能。Z20Xは、点灯時間に加えて電流駆動による輝度制御を行うことで、高輝度・高コントラストを実現する「直下型LEDハイブリッドエリアコントロール」になっている。また、Z20Xは4K放送対応のスカパー!チューナーを内蔵しているが、Z700Xは非搭載となる。
高画質に加えて、Zシリーズの大きな魅力になっているのが録画機能。Z700Xは、Z20Xと同様、外付けの対応USB HDDを接続することで地デジ6chの番組をまるごと録画できる「タイムシフトマシン」機能を搭載している。
Z700Xでは、Z20Xと同じように、オンエア中の番組をボタン1つでオープンニングにさかのぼって視聴できる「始めにジャンプ」、放送済みの番組が番組表と同じUIで表示される「過去番組表」、タイムシフトマシンの録画番組や通常録画番組の中から見たい番組がすぐに探せる「ざんまいスマートアクセス」(※ボイス機能は非対応)といった機能の利用が可能。さらに、タレントやジャンル、趣味などのテーマに沿って、放送前の番組、録画番組、ネット動画、シーンなどを横断検索できる「みるコレ」にも対応している。
地デジ6chのまるごと録画が可能なタイムシフトマシンに対応。始めにジャンプ、過去番組表といった機能を利用できる
レグザクラウドサービス「TimeOn」のメインサービスとなる「みるコレ」のホーム画面。「みるコレ」では、特定のタレントやジャンルなどでコンテンツを検索して表示する「みるコレ パック」と呼ばれるセットが用意されており、ユーザーはこのパックをお気に入りに追加して利用する
また、タイムシフトマシン用のチューナー(地上デジタルチューナー×6基)を活用する機能として、放送中の番組や録画番組を視聴しながら、放送中の地デジ番組を画面上に最大6ch同時表示できる「まるごとチャンネル」に新たに対応。同じようなマルチ画面表示機能は過去に「CELL REGZA」が搭載していたが、Z700Xでは、各番組のサムネイルが2コマ/秒で表示される仕様となっている。
このほか、録画機能では、視聴・通常録画用に地上・BS・110度CSデジタルチューナーをそれぞれ3基搭載しており、「BSも地デジも見ながらW録」に対応する。
「まるごとチャンネル」の利用画面。2コマ/秒のサムネイル表示になるものの、地デジを最大6ch同時に表示することができる
約0.6フレーム(約10msec)の低遅延を実現し、格闘ゲームやFPSをより快適にプレイできる「4Kゲーム・ターボ」も搭載
スピーカーには、少ない容積で豊かな低音を実現する「ラビリンスバスレフ型ボックス」で構成された「レグザパワーオーディオシステム」を採用。さらに、純正の外付けオーディオシステムであるレグザサウンドシステム「RSS-AZ55」と組み合わせることで、テレビのスピーカーも同時に活用するシンクロドライブ方式によって、さらなる高音質を実現する
Netflix、YouTube、dTVなどの動画配信サービスに対応。NetflixやひかりTV 4Kの4K HDRコンテンツの視聴も可能だ(※一部サービスはソフトウェアアップデートで対応予定)
4K REGZAの新しいスタンダードモデルM500Xシリーズ。58V型、50V型、40V型の3モデルがラインアップする
東芝は、Z700Xにあわせて、4Kテレビのスタンダードモデル「G20X」シリーズの後継に位置付けられる「M500X」シリーズもリリースした。G20Xは4Kテレビとしてトップクラスの省エネ性能で人気のモデルだが、M500Xは、その省エネ性の高さは継承しつつ、基本性能とデザインを刷新したニューモデルとなっている
液晶パネルはVAパネルで、エッジ型のLEDバックライトを採用。エリアコントロールには非対応だが、バックライトの明るさに加えて、映像のガンマなどのパラメーターを制御する「ダイナミックグローバルディミング」を搭載している。映像処理エンジンは「4KレグザエンジンHDR」で、倍速パネルではないもののLEDバックライトの明滅で映像のボケ感を低減する「4Kダイレクトモーション120」を新たに追加。HDRフォーマットの入力にも対応する。タイムシフトマシンは非対応となるが、地上・BS・110度CSデジタルチューナーをそれぞれ3基搭載しており、「BSも地デジも見ながらW録」が可能。「ざんまいスマートアクセス」や「みるコレ」の利用も可能だ。
また、オーディオシステムが強化されており、スピーカーをテレビの前面に配置する「レグザダイレクトオーディオシステム」を採用するのもトピック。58V型、50V型、40V型の3サイズが用意されているが、40V型はブラックに加えて、ホワイトカラーモデルも選択できる。東芝によると、国内で販売される4Kテレビとしては初のホワイトモデルとのこと。
40V型にはホワイトカラーモデルも用意されている
REGZAは、今回の新製品の登場によって、4Kモデルのラインアップが再編されている。Zシリーズは、高コントラストなVAパネルを採用するZ20Xと、広視野角が特徴のIPSパネルを採用するZ700Xの2ラインになり、スタンダードからエントリーはM500Xが担うことになる。Zシリーズが画質面で特徴の異なる2ラインとなったのがポイントで、モデル数はやや絞られたものの、製品選びの幅は従来よりも広がった印象だ。
価格は、Z700Xの55V型「55Z700X」が30万円前後、49V型「49Z700X」が26万円前後、43V型「43Z700X」が22万円前後。M500Xは、58V型「58M500X」が25万円前後、50V型「50M500X」が20万円前後、40V型「40M500X」が17万円前後(いずれも税別)と、4Kテレビとしてはかなり戦略的な価格設定になっている。この価格設定からも東芝の本気度が伝わるはずだ。発売はZ700Xが4月21日、M500Xが6月下旬となっている。
なお、Z700Xについては、テレビ本体にあわせて純正のUSB HDDとサウンドシステムRSS-AZ55をすべて購入(※同一の販売店で購入した場合のみ有効)した方を対象に、30,000円がキャッシュバックされるキャンペーンが実施される。
4K REGZA新ラインアップの機能比較表
Z700Xでは、テレビ本体とUSB HDD、サウンドシステムをすべて購入した方を対象にしたキャッシュバックキャンペーンが実施される
発表会では8K解像度のパネルを搭載する8K REGZAが参考出品されていた。「レグザエンジンHDR PRO」を4基使って描写しているとのこと。再編成型超解像と自己合同性超解像の多段構成によって、2K/4K映像も高画質な8K映像として表示する
体力勝負ならそこそこ強い編集部デスク。カメラやAV家電を中心に製品のレビュー記事を担当しています。撮られるのは苦手ですが撮るのは好きです。