ゴールデンウィークが間近に迫り、日差しにも初夏を感じるようになりました。これから夏にかけて、旅行やアウトドアに出かけるという方も多いことでしょう。今回の特集は、旅行で気軽に使用するカメラとして高倍率ズームコンデジをご提案。かばんに入れて持ち運ぶのが苦にならない小型・軽量ボディなので「スマートフォンとは別にお出かけ用のカメラが欲しいけれど大きくて重いのは嫌……」という方も選びやすいと思います。光学30倍以上のズーム性能を持つ4モデルを厳選しました。
今回ピックアップしたキヤノン「PowerShot SX730 HS」(左下)、パナソニック「LUMIX DC-TZ90」(左上)、ニコン「COOLPIX A900」(右下)、ソニー「サイバーショット DSC-WX500」(右上)。いずれも光学30倍を超えるズームレンズを搭載しています
高倍率ズームコンデジは、手のひらサイズのコンパクトなボディながら、広角から超望遠までズームを使って撮影できるのが特徴です。お花畑など目の前に広がる風景をワイドに写すことも、動物園の動物など近づけないところにいる被写体を大きく写すこともできます。
本特集では光学30倍を超えるズーム性能を持つ高倍率ズームコンデジをご紹介しますが、まずは、以下の作例で“光学30倍”の威力をご覧ください。すべて三脚は使わずに手持ちで撮影したものになります。
光学1倍(24mm相当)
パナソニックのLUMIX DC-TZ90を使って海辺の風景を広角端(24mm相当)で撮影した作例です。中央右下あたりに東京タワーが見えます
光学12倍(290mm相当)
上の作例を撮影した位置から東京タワーに向けて光学12倍程度にまでズームアップして撮ってみました
光学30倍(720mm相当)
光学30倍(720mm相当)だと東京タワーにここまでズームできます
60倍(1440mm相当)
デジタルズームで光学30倍の2倍となる60倍(1440mm相当)にするとさらに大きくなります。陽炎で東京タワーが少し揺れているものの細かいところまで写せています
光学1倍(24mm相当)
広角端(24mm相当)でツツジの山を撮っています
光学30倍(720mm相当)
上の作例を撮った位置で光学30倍(720mm相当)にしてツツジを撮るとこうなります。背景が大きくボケました
60倍(1440mm相当)
さらに60倍(1440mm相当)にするとツツジの花が画面いっぱいに大きくなりました
60倍(1440mm相当)
60倍(1440mm相当)だとカメラのみで月をここまで大きく写せます
本特集で紹介する高倍率ズームコンデジは、一眼レフやミラーレスの交換レンズで言うところの35mm判の焦点距離に換算して、広角は24mm相当、望遠は720mm相当を超える画角での光学ズーム撮影が可能です。
さらに、画像劣化を抑える画像処理によって、光学ズームの望遠端の倍となるデジタルズーム域でも解像感を保ったまま撮れることもウリにしています。さすがに画質はそのままというわけにはいかないものの、光学30倍ならデジタルズームで60倍までは画質をある程度キープして撮ることができます。
撮像素子の大きさが異なるため単純に比べられるものではありませんが、一眼レフやミラーレス用の交換レンズでは、1本で広角24mmから望遠720mm以上の焦点距離をカバーするものはありませんし、望遠700〜800mmで撮れる超望遠レンズというと軽くても1kg程度の重さがあります。かたや高倍率ズームコンデジの重量は300g程度。レンズを交換しなくても、手のひらサイズのコンパクトなカメラ1台で広角から超望遠までまかなえる利便性の高さが、一眼レフやミラーレスにはない魅力となっています。
ただし、画質については、さすがに大型の撮像素子を搭載する一眼レフやミラーレスに大きく及びません。一眼レフやミラーレスと比べると特に高感度の画質に差があって、暗いところではノイズがのりやすくなります。
その点を理解して使えば、携帯性とズーム性能にすぐれる高倍率ズームコンデジは旅行用として使い勝手のいいカメラになります。何かと荷物が増える旅行では、できるかぎり余計なものは持ち歩きたくないもの。小型・軽量な高倍率ズームコンデジなら、かばんの中に入れてもかさばらず、使いたいときにサッと取り出して気軽に使えます。また、旅行で訪れる観光地の中には立ち入り禁止の場所も多くありますが、その場合でも外からズームアップして撮れるのはとても便利ですよ。
PowerShot SX730 HSのシルバーモデル。カラーバリエーションはシルバーとブラックの2色
今回紹介する4モデルの中で最大のズーム倍率となる光学40倍ズームレンズ(広角24mm〜望遠960mm)を搭載する最新モデル(※2017年5月下旬発売)。約300gの軽量ボディを実現しているのも特徴です。望遠撮影用の機能として、専用ボタンを押すことでいったんズーム倍率を下げて被写体を見失うことを防ぐ「フレーミングアシスト(探索)」を利用できるのも便利。さらに、Bluetooth(Bluetooth low energy)に対応し、スマートフォンとの常時接続が可能。一度ペアリングを行えば、カメラを操作することなくスマートフォンからの操作でWi-Fi接続が行えます。
PowerShot SX730 HS、80倍(35mm判換算1920mm)、ISO640、F6.9、1/800秒
PowerShot SX730 HS、80倍(35mm判換算1920mm)、ISO1600、F6.9、1/400秒
●主なスペック
・撮像素子:有効約2030万画素 裏面照射型CMOSセンサー(1/2.3型)
・光学ズーム:40倍(35mm判換算24〜960mm)
・最短撮影距離:広角端約1cm、望遠端約200cm(レンズ先端より)
・感度:ISO80〜3200
・動画:フルHD(1920×1080/60p)対応
・モニター:3.0型チルト可動式(約92.2万ドット、自分撮り可)
・記録メディア:SDメモリーカード(UHS-I対応)
・最大撮影可能枚数:約250枚
・ワイヤレス機能:Wi-Fi/NFC/Bluetooth
・サイズ:110.1(幅)×63.8(高さ)×39.9mm(奥行)
・重量:約300g(バッテリー、メモリーカード含む)
なお、モニターが固定式になり、自分撮りには対応しないものの、PowerShot SX730 HSと同じ光学40倍ズームを搭載する2016年モデル「PowerShot SX720 HS」も併売されています。新モデルのPowerShot SX730 HS は2017年5月下旬の発売なので、「このゴールデンウィークにどうしても使いたい!」というのであればPowerShot SX720 HSを選んでください。
LUMIX DC-TZ90のブラックカラー。ブラックとシルバーのカラーバリエーションが用意されています
広角24mm〜望遠720mmの光学30倍ズームレンズを搭載する最新モデル(※2017年6月15日発売)。重量が約322gと今回の4モデルの中ではやや大きめのボディですが、コントロールリングと電子ビューファインダーを装備するのがほかにはない特徴。今回の4モデルの中で唯一タッチパネルにも対応しています。多機能なのも魅力で、4K/30p動画記録や、4K画質で30コマ/秒の高速連写が可能な「4Kフォト」、複数の画像を合成してピントの合った範囲を広げた写真を作る「フォーカス合成」、ボディ内RAW現像なども搭載。上級者向けの機能が充実したカメラとなっています。
LUMIX DC-TZ90、光学30倍(35mm判換算720mm)、ISO1600、F6.4、1/125秒
LUMIX DC-TZ90、60倍(35mm判換算1440mm)、ISO1250、F6.4、1/125秒
●主なスペック
・撮像素子:有効約2030万画素 高感度MOSセンサー(1/2.3型)
・光学ズーム:30倍(35mm判換算24〜720mm)
・最短撮影距離:広角端約3cm、望遠端約200cm(レンズ先端より)
・感度:ISO80〜3200(拡張ISO6400)
・動画:4K(3840×2160/30p)、フルHD(1920×1080/60p)対応
・モニター:3.0型チルト可動式(約104万ドット、タッチパネル、自分撮り可)
・記録メディア:SDメモリーカード(UHS-I対応)
・最大撮影可能枚数:約380枚
・ワイヤレス機能:Wi-Fi
・サイズ:112.0(幅)×67.3(高さ)×41.2mm(奥行)
・重量:約322g(バッテリー、メモリーカード含む)
なお、LUMIX DC-TZ90の発売は2017年6月15日と少し先になっています。PowerShot SX730 HSと同様、ゴールデンウィークでの使用するのであれば、固定式モニターで「自分撮りモード」も非搭載となる2016年モデル「LUMIX DMC-TZ85」を選んでいただければと思います。
COOLPIX A900のカラーバリエーションはブラックとシルバー。画像はブラックモデル
約299gの軽量ボディに、広角24mm〜望遠840mm対応の光学35倍ズームレンズを搭載するモデル。サイズとズーム倍率のバランスがいいのが特徴の1台です。機能面でも、超望遠ズーム時に見失った被写体をズームバックして捉え直す「クイックバックズームボタン」などの使いやすさにこだわった機能を搭載。動画は4K/30p記録(最大約7分)に対応しています。さらに、Bluetooth(Bluetooth low energy)によるスマートフォンとの常時接続に対応し、撮影画像の自動転送も可能です。
COOLPIX A900、70倍(35mm判換算1680mm)、ISO800、F6.9、1/2000秒
COOLPIX A900、70倍(35mm判換算1680mm)、ISO110、F6.9、1/250秒
●主なスペック
・撮像素子:有効約2029万画素 裏面照射型CMOSセンサー(1/2.3型)
・光学ズーム:35倍(35mm判換算24〜840mm)
・最短撮影距離:広角端約1cm、望遠端約200cm(レンズ先端より)
・感度:ISO80〜1600/3200
・動画:4K(3840×2160/30p)、フルHD(1920×1080/60p)対応
・モニター:3.0型チルト可動式(約92万ドット、自分撮り可)
・記録メディア:SDメモリーカード(UHS-I対応)
・最大撮影可能枚数:約250枚
・ワイヤレス機能:Wi-Fi/NFC/Bluetooth
・サイズ:113(幅)×66.5(高さ)×39.9mm(奥行)
・重量:約299g(バッテリー、メモリーカード含む)
DSC-WX500のブラックカラー。レッドとホワイトも用意されている
広角24mm〜望遠720mm対応の光学30倍ズームレンズを搭載しながら、今回の4モデルの中でもっとも軽い約236gの軽量ボディを実現した小型・軽量モデル。ポケットに入るサイズ感で、持ち運びやすさという点では光学30倍以上のズームレンズを搭載するモデルの中でナンバーワン。さらに、コンパクトボディながら大容量バッテリーの採用により、撮影撮影枚数約400枚を実現しているのも特徴。撮影した写真からバランスのとれた構図にカメラが自動で切り出す「オートフレーミング」などの独自機能も備わっています。
サイバーショット DSC-WX500、光学30倍(35mm判換717mm)、ISO640、F6.3、1/250秒
サイバーショット DSC-WX500、光学30倍(35mm判換720mm)、ISO100、F6.4、1/250秒
●主なスペック
・撮像素子:有効約1820万画素 裏面照射型CMOSセンサー(1/2.3型)
・光学ズーム:30倍(35mm判換算24〜720mm)
・最短撮影距離:広角端約5cm、望遠端約250cm(レンズ先端より)
・感度:ISO80〜3200(マルチショットNR時はISO6400/12800可)
・動画:フルHD(1920×1080/60p)対応
・モニター:3.0型チルト可動式(約92.1万ドット、自分撮り可)
・記録メディア:SDメモリーカード(UHS-I対応)、メモリースティック
・最大撮影可能枚数:約400枚
・ワイヤレス機能:Wi-Fi/NFC
・サイズ:101.6(幅)×58.1(高さ)×35.5mm(奥行)
・重量:約236g(バッテリー、メモリーカード含む)
なお、ソニーの光学30倍ズームコンデジのラインアップでは、有機ELファインダーやGPSを搭載する「サイバーショット DSC-HX90V」と、GPS搭載の「サイバーショット DSC-HX60V」も用意されています。
最後に、今回紹介した4モデルの選び方をまとめます。
ズーム倍率とボディサイズのバランスのよさで選ぶならキヤノンのPowerShot SX730 HSか、ニコンのCOOLPIX A900がいいと思います。PowerShot SX730 HSは光学40倍ズーム、COOLPIX A900は光学35倍ズームに対応しており、どちらもコンパクトながら超望遠ズーム撮影が可能です。また、いずれも、ズーム撮影時に被写体を見失うことを防ぐ機能を搭載していますが、使ってみるとこれがとても便利。使いやすさにも配慮したカメラになっています。
機能性で選ぶなら、電子ビューファインダーを装備するパナソニックのLUMIX DC-TZ90に注目してください。ほかの3モデルと比べるとボディは少しだけ大きくなりますが、「4Kフォト」に代表される高速性を生かした撮影機能をふんだんに搭載しており、多彩な撮影が楽しめる1台になっています。
持ち運びやすさを重視するならコンパクトなソニーのサイバーショット DSC-WX500がいいでしょう。光学30倍以上のズームレンズを搭載するコンデジとしては最小・最軽量で、今回紹介したほかの3モデルと比べて、ひとまわり小さくて軽いボディになっています。
フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。