富士フイルムは2017年9月7日、ファンミーティングイベント「FUJIKINA 2017 東京」に合わせて、ミラーレス一眼カメラの新モデル「X-E3」などの新製品発表会を開催。発表会では、今後登場するレンズのロードマップや新しいファームウェアなども発表された。ここでは当日に発表になった情報を整理してレポートしよう。
新モデルのX-E3。前面の操作性では前ダイヤルを追加された。内蔵フラッシュは省略となっている(※外付けフラッシュEF-X8が付属)
富士フイルム「Xシリーズ」のAPS-Cミラーレスには、ハイブリッドビューファインダーを採用する「X-Pro」シリーズ、一眼レフスタイルの「X-T」シリーズ、EVFを採用するレンジファインダースタイル「X-E」シリーズ、エントリー向けのシンプルな「X-A」シリーズの4ラインがあるが、今回発表になったのはX-Eシリーズの新モデルとなるX-E3。
X-E3の最大の特徴は、有効約2430万画素の「X-Trans CMOS III」センサーと、画像処理エンジン「X-Processor Pro」という、「X-Pro2」や「X-T2」と同じ画質性能を搭載しながら、Xシリーズ最小・最軽量ボディを実現したこと。ボディサイズは121.3(幅)×73.9(高さ)×32.4〜42.7(奥行)mmで、重量は約337g(付属バッテリー、メモリーカード含む)。EVFを搭載するAPS-Cミラーレスとしては非常に小型・軽量で持ち運びやすく、スナップシューティングに向いたカメラとなっている。
ボディをここまでコンパクトにできたのは、内部設計を徹底的に見直したことに加えて、操作性を大きく変更したことも大きい。ボディ左側にEVFを内蔵するスタイルは変わらないが、背面の十字ボタンを省略し、新たにタッチパネル液晶モニター(3.0型、104万ドット)を採用したのがトピック。タッチ操作をうまく活用する操作性となっていて、特に、上下左右のフリックでファンクションを呼び出せるのがユニーク。このほかにもダブルタップでライブビューの拡大/再生のズーム、タップ・ドラッグでAFエリアの選択やタッチAF、ピンチイン・アウトで再生画像の拡大・縮小、スワイプで画像のコマ送りといった操作も可能だ。EVFを覗きながらモニター上をドラッグして測距点を移動する、いわゆるタッチパッドAFにも対応している
なお、操作性では、十字ボタンの代わりとして、新設されたフォーカスレバーでメニューの移動や選択などの操作が可能な点も押さえておきたい。タッチ操作のみというわけではなく、項目の移動・選択はフォーカスレバーを使っても行えるようになっている。
タッチパネル液晶を採用し、十字ボタンは省略されている。フリック操作のファンクションは呼び出す機能をカスタマイズできる
フリックのほかにもダブルタップやタップ・ドラッグ、ピンチイン・アウトなどのタッチ操作に対応。タッチパッドAFの利用も可能だ
ボディ天面には、アルミ削り出しのシャッタースピードダイヤルと露出補正ダイヤルを装備。「アドバンストSRオート」に切り替えられるレバーも備わっている
AFは、画面中央の横50%、縦75%で像面位相差AFを利用できる91点(最大325点)システム。X-Pro2やX-T2と同等のシステムだが、最新のアルゴリズムを採用することで、Xシリーズとしては現時点でもっとも高性能なAFとなっているという。具体的には、画像認識アルゴリズムの改善によって、AF-Cの被写体追従性が大幅に向上。被写体の動く速度は2倍、サイズは1/2となっても補足できるようになったという。フォーカスエリア表示も高速化しており、従来は更新間隔が300〜500msだったが、X-E3では50ms(20fps)に向上した。
AFは画像認識アルゴリズムの改善で追従性がアップしたほか、フォーカスエリアの表示もより高速になった
このほか、4K/30p(100Mbps)の動画撮影機能を搭載。Xシリーズとして初めてBluetoothを搭載し、スマートフォンとの常時接続が可能となった。自動的の画像転送が行えるほか、リモート撮影やカメラ内の画像の閲覧もできる。
カラーバリエーションはブラックとシルバーの2色。市場想定価格はボディ単体が115,000円前後、標準ズームレンズ「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」が付属するレンズキットが155,000円前後(いずれも税別)。
ブラックのほかシルバーも用意される
X-E3の発表に合わせて、Xシリーズ用の交換レンズ「XFレンズ」の新モデル「XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro」も発表された。発売は2017年11月で、市場想定価格は168,500円(税別)。
中望遠のマクロレンズで、Xシリーズ用としては初の等倍撮影に対応。レンズ構成は、非球面レンズ1枚、EDレンズ3枚、スーパーEDレンズ1枚を含む12群16枚構成だ。フロントとリアの2つのフォーカス群の間隔を高精度に制御するフローティングフォーカス方式と、レンズの傾きを抑えるボールスライド方式によって高い解像感を実現したという。さらに、シフトブレに対応した補正効果5.0段分の手ブレ補正機能も搭載。リニアモーターを採用することで、高速かつ静音なAFも実現した。テレコンバーターを装着しての撮影も可能となっている。防塵・防滴・-10℃の耐低温構造を実現したのも特徴で、レンズ前玉には撥水・防汚性にすぐれるフッ素コーティングが施されている。
XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro。開放F2.8の高性能な等倍マクロレンズだ
さらに、XFレンズの開発ロードマップも更新。新たに、超広角ズームレンズ「XF8-16mmF2.8 R LM WR」と、望遠単焦点レンズ「XF200mmF2 R LM OIS WR」の2本がロードマップに加わった。XF8-16mmF2.8 R LM WRは、開放F2.8の大三元レンズの広角レンズで、35mm判換算で焦点距離12〜24mm相当の画角をカバーする。XF200mmF2 R LM OIS WRは、35mm判換算で焦点距離305mm相当の望遠レンズ。35mm判換算でいわゆる“サンニッパ”(300mm F2.8)に近いスペックを持つレンズとなっている。
左がXF8-16mmF2.8 R LM WR、右がXF200mmF2 R LM OIS WRのモックアップ
また、中判ミラーレスGFX用の交換レンズ「GFレンズ」の新レンズ「GF45mmF2.8 R WR」も発表された。35mm判換算で焦点距離36mm相当のF2.8の明るい広角レンズながら、重量490gの小型軽量化を実現したのが特徴。機動性にすぐれ、ストリートスナップやドキュメンタリーフォトに最適なレンズとなっている。また、GFレンズの開発ロードマップもアップデートされ、新たに、望遠単焦点レンズ「GF250mmF4 R LM OIS WR」と、1.4倍のテレコンバーター「GF1.4X TC WR」が加わっている。
GFレンズには広角レンズGF45mmF2.8 R WRが追加された
Xシリーズのファームウェアの更新についてもアナウンスされている。今回のアップデートは、X-Pro2、X-T2、X-T20、X100Fが対象となる。
X-Pro2には待望の4K動画撮影機能とPCリモート撮影機能が追加される。また、X-Pro2とX-T2については、X-E3に搭載された最新のAFアルゴリズム(画像認識アルゴリズムの改善で追従性能が向上)も適用される。さらに、X-Pro2/X-T2/X100FでProfotoなど他社製フラッシュの無線コントローター制御に対応することと、新開発のRAW現像ソフト「FUJIFILM X RAW STUDIO」に対応するのもトピック。FUJIFILM X RAW STUDIOについては、PCと対応のデジタルカメラをUSBケーブルで接続することで、カメラ内の画像処理エンジン「X Processor Pro」 を使用したRAW現像が行えるというもの。これまでカメラ内RAW現像で行ってきたことが、プレビューを見ながらPCで作業できるようになるのは、Xシリーズのユーザーにとって待望の機能と言えるだろう。なお、X-T20については、X-E3で採用されたタッチパッドAFの利用のみの追加となる。今回のアップデートではAFアルゴリズムの更新やFUJIFILM X RAW STUDIOの使用には対応しない。
最新ファームウェアの公開は、X-T2/X-T20が11月下旬、X-Pro2/X100Fが12月中旬の予定となっている。
また、GFXについてもファームウェアが更新となる。11月下旬公開予定の最新ファームウェアによって、他社製フラッシュの無線コントローター制御やFUJIFILM X RAW STUDIOの使用などが追加される。
2017年11〜12月に公開になる最新ファームウェアのアップデート内容。左からGFX、X-Pro2、X-T2、X100F、X-T20。〇が新たに追加される機能だ
カメラと接続することでRAW現像を行う専用ソフトFUJIFILM X RAW STUDIOも今後リリースとなる
Profotoは富士フイルム用の小型ワイヤレストランスミッター「Air Remote TTL-F」を2017年末に発売する予定だ
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣を持つ。フォトグラファーとしても活動中。