ニコンイメージングジャパンが2012年から不定期に開催している「ニッコールレンズフォトツアー」。人気のプロ写真家とともに国内外有数のフォトスポットに訪れ、日常生活ではなかなか経験することのない貴重な写真体験が行えるということで、毎回、全国のユーザーから非常に多くの応募が届いているそうだ。
ニッコールレンズフォトツアー自体は今年で通算5回目の開催となるが、数あるフォトツアーの中でも、毎回非常に多くの応募があり、第1回目の開催からずっと同じテーマで開催されているものがある。それが、ヘリコプターから撮影できる空撮ツアーだ。今回、4月8日に行われた大人気ヘリコプター空撮ツアーに同行取材させていただいたので、そのレポートをお届けしたい。
搭乗ヘリコプター「ユーロコプター AS355N」の前で記念の1枚
ヘリコプター空撮ツアーは非常に人気のあるツアーということで、昼の部と夜の部の2つのコースが用意されていた。いずれも東京のランドマークを空から巡るコースとなっており、昼の部は東京スカイツリー、夜の部は東京タワーを中心にコースが設定されている。今回、筆者は両方のツアーに同行させていただいた。
今回のツアーの集合場所は、ディズニーランドの最寄り駅である舞浜駅から車で10分ほどの場所にある浦安ヘリポート。ヘリコプタークルージングなどを手がけるエクセル航空が管理するヘリポートだ。
集合場所はエクセル航空が管理する浦安ヘリポート。ここから空撮用のヘリコプターが飛ぶ
昼の部の集合時間が11時ということで、取材の下準備も兼ねて10時には現地入りした。さすがに集合時間の11時には早いので参加者はまだこないだろうと思っていたのだが、筆者の現地入りとほぼ同時刻に最初のツアー参加者が会場入り。その後も集合時間のはるか前にもかかわらず、参加者が続々と会場に集まってきた。ツアー開始前からこれだけユーザーの熱気を感じるイベントというのはなかなかなく、大人気ツアーというのも大いに頷ける。
ニッコールレンズフォトツアーは、講師として参加する人気のプロ写真家がツアーの最初にコースの見どころや機材選びのポイント、撮影テクニックなどを解説するオリエンテーションが行われるのが恒例となっている。集合時間の11時が過ぎ、まずはこのオリエンテーションが行われた。
浦安ヘリポートのあるエクセル航空の会議室でオリエンテーションが行われた
今回のツアーで講師を務めたのは、航空写真家の加藤健志先生。ヘリコプターや小型プロペラ機などに乗って日本全国を飛び回り、年間300日近く空撮を行う航空写真のスペシャリストだ。
今回のツアーの講師を務めた航空写真家の加藤先生
オリエンテーションでまず説明があったのが、ヘリコプターの飛行ルート。昼の部は東京スカイツリーをメインにしたツアーということで、浦安から荒川上空を通過して目的地の東京スカイツリーを目指し、東京スカイツリー近辺に到着後は東京スカイツリーの周囲を旋回し、その後浦安ヘリポートに戻るという内容だ。飛行時の高度は約2500フィート(約762m)で、日本一高い建造物であるスカイツリーよりも高い位置から撮影できるという。
地図を持って東京スカイツリーに向かうルートでの見どころを紹介する加藤先生
続いて、ヘリコプター内での撮影方法と撮影機材についての説明が行われた。今回のフォトツアーで使用するヘリコプターを運航するエクセル航空では、一般向けにヘリコプタークルージングというサービスを提供しているが、こちらでは飛行中の安全確保のためにカメラ撮影はできても窓は必ず閉め切った状態だという。しかし、そこは日常生活ではなかなか経験することができない写真体験ができることをウリにしたニッコールレンズフォトツアー。今回は航空写真の専門家である加藤先生が同乗して安全確保をしっかりと行うことを条件に、窓を開けて撮影できるように特別に許可を出していただいたのだという。飛んでいるヘリコプターの窓を開けた状態で撮影できるというのは、加藤先生のような航空写真家でない限り、おそらく人生で1度あるかないかの体験だろう。
撮影機材については事前に持ち込んだ機材を使うとアナウンスされていたが、ツアーを主催するニコンイメージングジャパンのご好意により、「D850」や「D5」、「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」といった人気のモデルも貸し出し機材として用意された。飛行中のヘリコプターから物が落下することを防ぐため、ヘリコプターに持ち込めるカメラは1台のみ、体とカメラはストラップを使って必ず固定、フードやレンズキャップはすべて外した状態、ヘリコプター上でのレンズ交換は不可というお達しがあったことに加え、加藤先生から「空撮は昼も夜も単焦点レンズのほうがヌケがよくておすすめできるが、今回は短いフライトなので、いろいろな画角を試せるズームレンズのほうがいい。非常に大きな東京スカイツリーを画角におさめるなら、特に広角ズームがおすすめ」というアドバイスもあり、数ある貸し出し機材の中でも、特に「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」の貸し出し希望がかなり多かった。
大人気の「D850」や「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」も貸し出し機材として用意された
また、空撮において一番の天敵であるブレと、窓を開けた状態で撮影を行うことで急な風向きの変化でカメラが吹き飛ばされる可能性を未然に防ぐために、加藤先生お手製の撮影補助ツールも参加者全員に貸し出された。100円ショップで部材を購入し、今回搭乗するヘリコプター「ユーロコプター AS355N」のレールに合わせてつくった特注品だそうだ。三脚代わりにしっかりとブレを吸収するように、吊り下げ紐に伸縮性のあるゴム素材を使用するなど、空撮のプロフェッショナルならではの工夫が随所に盛り込まれていた。
お手製の撮影補助ツールの使い方を解説
撮影機材の準備が整った段階で、続いて撮影時のテクニックについての話となった。空撮の場合は動いている被写体を撮る流し撮りとは逆で、自らが高速に移動しながら被写体を撮るという状況になるため、メインの被写体の後ろが流れやすいという。この状況を抑えるためにはとにかくシャッタースピードを稼いでブレを押さえるのが効果的ということで、カメラ側の設定は、シャッタースピード優先モードにし、シャッタースピード1/800秒以上、ISO 400以上に設定するようにというレクチャーがあった。
ホワイトボードに書かれた空撮時におすすめのカメラ設定
座学が一通り終わったところで、今度は実際に搭乗するヘリコプターに移動。ヘリコプターへの搭乗方法やシートベルトの締め方、撮影補助ツールの取り付け方法などのレクチャーを受けた。参加したメンバー全員がヘリコプター初搭乗だったということで、本物のヘリコプターを前にみんな大興奮の様子。レクチャーの順番待ちの間も持ち込んだカメラで熱心に写真を収めていた。
今回のツアーで使用したヘリコプター「ユーロコプター AS355N」。今回のツアーでは、4人乗りの後部座席の中央に加藤先生が、両サイドの窓際に参加者がそれぞれ搭乗する形で行われた
フライト前の事前レクチャーの様子。実際にヘリコプターに乗り込み、シートベルトの装着方法や撮影補助ツールの取り付け方などをレクチャーしてもらった
そしていよいよ撮影ツアーが開始。昼の部は、参加者や加藤先生が搭乗する後部座席ではなく、パイロットの脇の席から取材させていただいた。
パイロットの脇の席に乗り込みツアーに同行させていただいた
海沿いに建造されたヘリポートから目的地の東京スカイツリーへは時速200km近いスピードで移動し、目的地が近くなったところで窓を開け、ついに本番的な空撮がスタート!プロペラの爆音が機内に流れ込む中、加藤先生はカメラの設定や撮影ポイントなどを参加者に熱心にレクチャーしていた。
目的地の東京スカイツリー向けて一気に向かうヘリコプター
窓を開けた空撮がスタート。加藤先生も熱心にレクチャー
こんなに窓を大胆に開けて撮影できることはそうそうない
筆者も昼の部は「D850」と「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」という組み合わせで空撮にチャレンジさせていただいたが、やはり日本一の高さを誇る東京スカイツリーを眼下に望むというのはこれまでにない感覚で新鮮だ。約15分のフライトはあっという間だったが、とにかく夢中でシャッターを切り続けた。高速に移動するヘリコプターの中から東京スカイツリーを撮影するというのは人生初で、メインの東京スカイツリーの垂直をしっかり取るというのがかなり難しかったが、なんとか撮影を終えることができた。
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR、70mm、F22、1/1000秒、ISO2500、WB:オート
撮影写真(8256×5504、22.2MB)
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR、70mm、F22、1/1000秒、ISO3200、WB:オート
撮影写真(5504×8256、21.5MB)
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR、24mm、F22、1/1000秒、ISO2200、WB:オート
撮影写真(8256×5504、26.8MB)
昼の部の全てのフライトが終わった後は、ニッコールレンズフォトツアー恒例となっている参加者の撮影した作品を使った講評会が行われた。撮影用のレンズに望遠ズームを選んで圧縮効果で東京スカイツリーの展望台より上の部分を大胆に切り取った作品や、雲の影をうまく使って印象的に仕上げた作品、東京スカイツリーに向かう海に浮かぶヨットを被写体にした作品など、同じ撮影コースを回っているのに、人によってまったく違う作品に仕上がっていた。参加メンバーも作品が切り変わるたびに“おぉ” “すごい”といった声が上がり、それぞれ刺激を受けていたのが非常に印象的だった。
講評会は加藤先生がそれぞれの作品のポイントを解説する形で進行
講評会は非常に和やかな雰囲気で行われた