交換レンズ図鑑

人気の望遠Lズーム“12年”の進化を検証! キヤノン「EF70-200mm F4L IS II USM」レビュー

軽量な望遠Lズームレンズとしてロングセラーとなったキヤノン「EF70-200mm F4L IS USM」が約12年ぶりにリニューアル。II型の新モデル「EF70-200mm F4L IS II USM」が2018年6月28日に登場した。ここでは、この新モデルの進化を徹底検証。手ブレ補正や描写力が従来モデルからどう変わったのかをレポートする。

キヤノンの新しい望遠Lズームレンズ、EF70-200mm F4L IS II USM

キヤノンの新しい望遠Lズームレンズ、EF70-200mm F4L IS II USM

手ブレ補正などが進化した、“小三元レンズ”の望遠ズームレンズ

一眼カメラで本格的な撮影を楽しんでいると、描写力にすぐれた高性能なレンズが欲しくなるというもの。その際、広角から望遠までの幅広い焦点距離で「描写に妥協したくない」という方にとって悩ましいのが、“大三元レンズ”と“小三元レンズ”のどちらを選ぶかということだろう。

麻雀の役を由来とした俗称なのだが、大三元レンズは、ズーム全域で開放F値がF2.8の広角/標準/望遠ズームレンズ3本のことを意味する。小三元レンズは開放F4の3本だ。大三元レンズは、開放F2.8の大口径に代表されるように性能を徹底的に追求した設計になっている。その分、サイズが大きく、価格も高額なものが多い。いっぽうの小三元レンズは、大三元レンズと比べて開放F値は大きいものの、より小型・軽量で安価なのが特徴。コストパフォーマンスの高さで人気を集めている。

今回紹介するEF70-200mm F4L IS II USMは、70〜200mmの焦点距離/開放F4通しの、いわゆる小三元レンズの望遠ズームレンズだ。「大三元レンズと比べて小型・軽量で高性能な手ブレ補正を搭載する」という従来モデルの特徴を継承しつつ、最新のLレンズらしい着実な進化を遂げている。主な進化点は以下の通り。

・手ブレ補正の性能向上(4.0段分→5.0段分)
・ISモード3の追加。流し撮りモード搭載カメラへの対応
・SSCなどコーティングの見直し
・最短撮影距離が1.2mから1mに短縮
・9枚羽根円形絞りの採用
・フッ素コーティングの追加
・防塵・防滴性能の向上

手ブレ補正は、従来モデルで約4.0段分(キヤノン基準)だった補正効果が約5.0段分(CIPA基準)に向上。あわせて、最新レンズらしく、露光中のみ手ブレ補正を行う「手ブレ補正モード3(ISモード3)」が追加された。

基本的なレンズ構成は従来モデルと変わらず、蛍石レンズ1枚、UDレンズ2枚を含む15群20枚構成を継承。SSC(スーパースペクトラコーティング)など、コーティングの見直しにより、従来よりもフレア・ゴーストの低減を実現した。さらに、最短撮影距離を1.2mから1mに短縮したほか、絞り羽根は従来から1枚増え9枚円形絞りとなった。

信頼性も向上しており、レンズの最前面・最後面に、汚れを拭き取りやすいフッ素コーティングを追加。防塵・防滴性能や耐久性も向上しているという。

左が新モデル、右が従来モデル。新モデルのサイズは80(最大径)×176(長さ)mmで重量は約780g。旧モデルは76(最大径)×172(長さ)mmで約760g。従来モデルとほぼかわらないサイズ感だが、新モデルのほうがわずかに大きい。フィルター径は67mmから72mmに変更となった

従来モデルと同様、ズーム操作ならびにフォーカス時に鏡筒の長さが変わらないインナーズーム/インナーフォーカスを採用

側面に各種スイッチを装備。手ブレ補正のスイッチには、手ブレ補正モード3(ISモード3)が追加された

側面に各種スイッチを装備。手ブレ補正のスイッチには、手ブレ補正モード3(ISモード3)が追加された

レンズフード「ET-78B」が付属。ロック解除ボタンが追加された

レンズフード「ET-78B」が付属。ロック解除ボタンが追加された

ET-78Bのフード内側は、植毛加工から溝付加工に変更になった

ET-78Bのフード内側は、植毛加工から溝付加工に変更になった

●主な仕様
・焦点距離:70〜200mm
・レンズ構成:15群20枚
・絞り羽根枚数:9枚(円形絞り)
・最小絞り:32
・最短撮影距離:1m
・最大撮影倍率:0.27倍
・フィルター径:72mm
・サイズ:80(最大径)×176(全長)mm
・重量:約780g
・手ブレ補正効果:約5.0段分

手ブレ補正はどのくらい性能が向上した?

EF70-200mm F4L IS II USMは手ブレ補正効果が約4.0段分(キヤノン基準)から約5.0段分(CIPA基準)に向上している。この性能差は、実際にどのくらいの違いがあるのだろうか。新旧モデルで撮り比べて検証してみた。

検証は、カメラボディに「EOS 5D Mark IV」を使用し、広角端70mmと望遠端200mmで実施。10m程度離れた位置にある被写体に対して、1段ずつシャッタースピードを遅くしながら新旧モデルで10枚撮影(※ワンショットで1枚ずつシャッターを切る)。これを3回続けて(各シャッタースピードで計30枚の写真を撮って)、ピクセル等倍でチェックして手ブレが気にならない成功写真の枚数をカウントし、成功写真の割合を算出した。なお、撮影は両足で立った状態でカメラをホールドしてファインダーをのぞきながら行った。

結果は、70mm、200mmともに、新モデルEF70-200mm F4L IS II USMのほうが手ブレの補正効果が高くなった。より遅いシャッタースピードでの手ブレ補正効果を確認できたが、注目してほしいのは1〜3段分程度の補正効果となるシャッタースピードでの性能が向上していること。70mmでは1/10秒という遅いシャッタースピードでも60%の成功率で、200mmでは1/100秒で80%、1/50秒でも66.7%という高い成功率となったのは驚きだ。

なお、手ブレ補正ユニットの「ジー」という動作音は、新モデルではかなり抑えられている。静かなところで撮影していても動作音が気になることはなかった。

新旧モデルの描写力を比較

新旧モデルでレンズ構成は従来モデルと変わらないものの、製品ページのMTF曲線を見ると、新モデルEF70-200mm F4L IS II USMのほうがレンズ性能が高く、解像力/コントラストともにすぐれていることが読みとれる。コーティングの見直しなどによって写りが向上していると予想できるが、実際の描写はどう変わったのだろうか。

ここでは、絞り値別に同じ被写体を同じ撮影設定で撮り比べた比較作例(カメラボディ:EOS 5D Mark IV)を用いて、新旧モデルの解像力を比較してみる。70mmと200mmそれぞれの焦点距離で、作例の中央部と周辺部を等倍で切り出した画像を掲載しよう。

70mmでの解像力(F4〜F8)

70mmで撮影した比較作例のサムネイル。被写体距離はおよそ8m。緑枠が中央部、赤枠が周辺部として切り出した部分となる

200mmでの解像力(F4〜F8)

200mmで撮影した比較作例のサムネイル。被写体距離はおよそ20m。緑枠が中央部、赤枠が周辺部として切り出した部分となる

上の切り出し画像を見ると、70mmでは絞り開放(F4)から違いが出ている。新モデルのほうが周辺だけでなく中央でもシャープ。F8まで絞るとそれほど違いが出なくなるが、開放付近では新モデルのほうが解像力にすぐれる結果だ。200mmだと絞り開放では差がないものの、F5.6になると細かいところで新モデルのほうがシャープに写っている。周辺でも、新モデルのほうがわずかに流れが少なく、安定した描写となった。なお、切り出し画像では伝わりにくいが、全体的に新モデルは従来モデルよりもコントラストが高く、抜けのよい描写が得られたことも報告しておきたい。周辺光量落ちも新モデルでは改善されているようだ。

続いて、70mmの絞り開放で夜景を撮影した比較作例の切り出し画像を掲載しよう。こちらの夜景作例では遠景ということもあってか新旧モデルで解像力にそれほど大きな差は見られない。ただ、周辺を見ると、旧モデルでは強い光源部でわずかに色のにじみが目立つ結果となった。

70mm/絞り開放で撮影した夜景の比較作例のサムネイル。緑枠が中央部、赤枠が周辺部として切り出した部分

70mm/絞り開放で撮影した夜景の比較作例のサムネイル。緑枠が中央部、赤枠が周辺部として切り出した部分


次に、逆光耐性をテストした結果を報告しよう。以下の画像は、太陽を画面に入れた構図で焦点距離70mm、絞り値F11で撮影した比較作例から一部分を縮小・切り出したものになる。コーティングが見直された新モデルのほうがフレア・ゴーストが目立たない結果となった。

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