中判(ミディアム・フォーマット)と呼ばれる、「35mmフルサイズイメージセンサー」の約1.7倍となる大型のイメージセンサーを備えたカメラと言えば、いずれも高価で大型のプロ用機材ばかり。そこに新たな市場を切りひらくべく、富士フイルムが開発したのが、中判ミラーレスカメラの普及モデル「GFX 50R」です。
約5140万画素のミディアム・フォーマットセンサーを備え、最薄部46mm、公称重量775gと、中判カメラとしてはコンパクトかつ軽量な作りが特徴。また、実売価格は50万円台になると見られており、同社「GFX 50S」の実売価格が約70万円(価格.com最安価格。9月26日時点)、ハッセルブラッド「X1D-50c」が約110万円(同)であることを踏まえれば、「手頃な値段」です。
「GFX 50R」は中判ミラーレスカメラの普及機となるか!?
ドイツで開催されている世界最大級のカメラと写真のイベント「フォトキナ(Photokina)2018」で、富士フイルムが「FUJIFILM GFX 50R」の発表を行い、その実機を展示していたので、さっそくブースに行ってみました。
白基調のデザインで巨大なブースを展開する富士フイルム
「GFX 50R」の本体公称サイズは160.7(幅)×96.5(高)×66.4(厚さ)mm(最薄部46.0mm)で、防塵、防滴、低温環境下での使用に耐える設計。センサーは43.8×32.9mmのFUJIFILM G フォーマット、レンズ規格はFUJIFILM Gマウントです
操作用のダイヤル、ボタン類は右肩に集中して配置されています
「GFX 50S」とは異なるレンジファインダースタイル。EVFは0.5型の有機ELで画素数は約369万です
背面の液晶モニターは2軸チルト仕様
大きいか小さいかは何と比べるか次第。一般的なフルサイズのミラーレス機と比べると2回りくらい大き感じですが、中判カメラとしては抜群にコンパクト
「GFX 50R」で撮影した写真の展示も行われていました
「写真の写真」では伝わりにくいですが、現物を見るとやはりその解像感は圧倒的。スマホで撮影した写真になどありがちな、デジタル補正で生み出されたシャープさとは別格のクリーンな仕上がりは圧巻です
なお、「GFX 50R」はRAW現像ソフトウェア「Capture One」や「Adobe Lightroom」でのテザー撮影に対応するとのことです。
フォトキナ 2018の富士フイルムブースでは、将来のフラッグシップを担うであろう1億200万画素の中判センサーを搭載した中判ミラーレスカメラのコンセプトモデル「GFX 100 MEGAPIXELS」も展示されていました。
発売時期や価格などはまだ明らかにされていませんが、ボディ内手ぶれ補正や4K動画(4K 30p 10bit)動画に対応することがアナウンスされており、フォトグラファーだけでなくビデオグラファーも注目のモデルです
ミディアムフォーマット機でありながら、他社のフルサイズ一眼レフと同等のサイズを目指しているという意欲的な仕様
デザインの特徴は、レンズを挟むように描かれた平行な直線。富士フイルムのプレゼンテーションでは「別格感」と「登場感」と表現されていましたが、確かにシンプルながら強い存在感を放つたたずまいです
中判ミラーレスカメラでは世界初という、センサー全面に位相差画素を配置した高速・高精度AFを搭載し、高い動体追尾性能を実現。コンティニュアスAFにも対応するとのこと
こちらも中判カメラとしては世界初というボディ内ブレ補正機能を搭載。スタジオ内での三脚撮影だけでなく、屋外での手持ちでも使えるカメラを目指しています
会場には、実際に1億画素の「GFX 100 MEGAPIXELS」で撮影された写真も展示されていました。このサイズまでに引き伸ばせる、というだけでは中判カメラとしては普通ですが……
ここまで近づいても、きっちりとディテールが描かれています
人物に寄ると、眉毛や髪の毛の細かいラインまで見える解像度。風景や人物の撮影は当然のこと、工場や橋梁の点検などの産業用カメラとしての可能性も広がりそうです
正方形のスクウェアフォーマットを採用し、撮ってすぐカメラで印刷できるinstax(インスタックス)“チェキ”シリーズの新モデル「SQUARE SQ20」が9月25日に発表されましたが、こちらもフォトキナ 2018の会場に実機が展示されていました。
これまで通りのシンプルで丸みを帯びたデザイン。
新たに搭載されたモーションモード(最大15秒の動画撮影)では、コマ撮り動画のようにして連写撮影したシーンの中から好みの1枚を選んで印刷できます。スポーツや音楽ライブなど、動きの激しいシーンの撮影で活躍しそう
シャッターボタンを前面左右に2つ備え、右手でも左手でもシャッターを切れるデザイン。シリーズ初となるズーム機能(4倍)を搭載しています
ブースでは実際に記念写真を撮ってもらえるデモも行われていました
でき上がった写真がこちら。デジタル全盛の時代にあえて印刷するのは贅沢と言えるでしょう。仕上がりは、なんとも言えない味わいがありますね
メディア向け説明会での「弊社は写真ファースト。カメラファーストではないのです」という言葉通り、1億画素超の超ハイエンドから、古きよきインスタントカメラまで、さまざまな切り口で写真に取り組む富士フイルム。「フルサイズ戦国時代」の幕開けとも言われる2018年のフォトキナでも、あえてフルサイズ機はつくらず独自の路線を進む姿に魅力を感じました。
世界50か国以上を旅したバックパッカー。週刊アスキー編集部などを経て、AppBankに入社。「バイヤーたてさん」として仕入れとYouTubeを活用したコンテンツコマースに取り組み、上場時は広報として企業PRを担当。現在はフリーランスで活動中。