交換レンズ図鑑

小型・軽量な“Gマスター”が誕生! ソニー「FE 24mm F1.4 GM」実写レビュー

「FE 24mm F1.4 GM(SEL24F14GM)」は、ソニーの最高峰レンズ「Gマスター」では初となる広角・単焦点レンズ。開放F1.4/焦点距離24mmの大口径・広角レンズだが、このクラスのレンズとしては常識を覆すような小型・軽量化を実現した点で、2018年10月26日の発売から写真愛好家の間で話題と人気を集めている製品だ。2018年の年末時点でも、多くのショップで在庫がない品薄状態が続いている。今回、そんな人気レンズをフルサイズミラーレス「α7R III」と組み合わせて試用してみた。

発売から高い人気をキープしているFE 24mm F1.4 GM(カメラボディはα7R III)

発売から高い人気をキープしているFE 24mm F1.4 GM(カメラボディはα7R III)

開放F1.4ながら重量約445gの小型・軽量化を実現

ソニーは、高級レンズとして、「カールツァイスレンズ」「Gレンズ」「Gマスター」という3つのブランドをラインアップしている。カールツァイスレンズは独カールツァイス社との共同開発レンズで、高い解像力とコントラストが魅力。Gレンズは解像力とボケ味のバランスのよさでコニカミノルタ時代から人気の高いブランドだ。Gマスターは、ポジショニングとしてはGレンズの上位となる、ソニーのレンズラインアップの中で最高峰のプレミアムレンズとなっている。

Gマスターの特徴は、「解像力とボケ味を高次元で両立すること」を目指し、細かいところまで徹底的にこだわった設計によってクラス最高の描写性能を実現していること。エレメント開発や光学設計だけでなく、設計シミュレーション、検査・調整方法にいたるまで従来を超える高い設計基準を設けて開発されており、たとえば、解像力・コントラストの性能を評価するMTF曲線では、従来の10本/mmと30本/mmに加えて、50本/mmの空間周波数でも性能を測定するという高い基準を適用。ボケの設計では、理想的なボケ像が得られるように設計の初期段階からシミュレーションを重ね、強い輪郭が出ないように配慮しつつ、解像力とのバランスが最適になるよう個々のレンズを調整するという徹底ぶりだ。

Gマスターは2016年4月に第1弾モデルの標準ズームレンズ「FE 24-70mm F2.8 GM」が登場して以降、順調に拡充しており、2018年12月時点では広角から超望遠まで計8本をラインアップ。20万円を超える価格の製品が多く、けっして手軽に手に入れられるものではないが、どのレンズもすぐれた描写性能を持つ点で高い評価を得ている。

ただし、Gマスターは描写力を徹底追求するあまり、「Eマウントレンズとしては大きくて重い」というユーザーの声があるのも事実。そんなGマスターのネガティブな部分を覆しているのが最新モデルのFE 24mm F1.4 GMだ。開放F1.4の広角・単焦点レンズで、Gマスターらしい高い描写力を持ちつつ、圧倒的な小型・軽量化を実現した非常に見どころの多い製品に仕上がっている。

最大径は75.4mmでフィルター径は67mm。重量は約445g。開放F1.4の大口径レンズとしては小型・軽量な鏡筒に収まっている

鏡筒の長さは92.4mm。長さも比較的抑えられているのでハンドリングしやすい

鏡筒の長さは92.4mm。長さも比較的抑えられているのでハンドリングしやすい

まずはFE 24mm F1.4 GMの光学設計の特徴から見ていこう。Gマスターの高い基準に基づいた最新の光学設計によって、絞り開放から画面の中央だけでなく周辺まで高い解像性能を発揮するレンズに仕上がっている。もっとも注目したいのは、Gマスターのキーデバイスになっている超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズを2枚採用することで、像面湾曲や非点収差を徹底的に抑えた設計になっていること。周辺部で問題となるサジタルフレア(点光源の像のにじみ)の大幅な抑制も実現したとしている。くわえて、3枚のED(特殊低分散)ガラスを最適に配置し、大口径レンズで発生しやすい色収差を良好に補正。フレア・ゴーストを抑える、ソニー独自の「ナノARコーティング」もしっかりと採用している。

ボケ味にもこだわっており、球面収差に配慮した設計と、レンズ1本1本に対して行う製造工程での球面収差調整によって良質なボケ味を実現。0.01ミクロンという高い面精度を誇るXAレンズによって、光源に対する輪線ボケ(年輪ボケ)も低減した。ソニーの純正レンズとして最多となる11枚羽根の円形絞りを採用し、開放から少し絞ったところまでほぼ円形のボケ形状が得られるのもポイントだ。くわえて、マクロにも強く、最短撮影距離0.24m(最大撮影倍率0.17倍)の高い近接撮影能力を実現。被写体に近づいて「遠近感を強調しながら背景を大きくぼかす」という、大口径の広角レンズならではの表現が得やすいのも魅力だ。

AF駆動には、小型ながら従来比で約3倍の推力を持つ新開発の「DDSSM(ダイレクトドライブSSM)」を搭載し、高速・高精度かつ静粛なAFが可能。DDSSMやXAレンズの採用とあわせて、Eマウントのショートフランジバックを生かした光学設計によって、開放F1.4の大口径ながら最大径75.4mm/重量約445gという圧倒的な小型・軽量化を実現したのが、このレンズのもっともすごいところ。ほかの開放F1.4の24mmレンズは650〜800g近い重量であることからも、FE 24mm F1.4 GMの際立ったコンパクトさが伝わるはずだ。

このほか操作性も充実の内容で、クリックのオン/オフ切り替えが可能な絞りリングや、割り当てる機能をカスタマイズできるフォーカスホールドボタン、AF/MF切り替えのフォーカスモードスイッチを装備。MF時のフォーカスリングの操作感にもこだわり、リングの回転量に応じてリニアにフォーカス位置が移動する「リニア・レスポンスMF」も採用した。鏡筒は防塵・防滴に配慮した設計で、レンズ最前面には、指紋やほこり、水滴などが付着しにくいフッ素コーティングを施している。

絞りリングを搭載するなど操作性にもこだわった仕様を採用。フォーカスリングの操作感も良好だ

絞りリングを搭載するなど操作性にもこだわった仕様を採用。フォーカスリングの操作感も良好だ

機能を割り当てられるフォーカスホールドボタンを左側面に装備。右側面下部には、絞りリングのクリックをオン/オフするスイッチも備わっている

花形バヨネット式のフード「ALC-SH154」が付属する

花形バヨネット式のフード「ALC-SH154」が付属する

実写作例

※以下に掲載する作例は、α7R IIIとFE 24mm F1.4 GMを組み合わせてJPEG形式の最高画質(エクストラファイン)で撮影したもの(JPEG撮って出し)になります。

※サムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺900ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行っていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。

α7R III、F6.3、1/125秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(7952×5304、17.5MB)

日の出時に撮影した作例。朝陽で少しアンバーな色になった雲が反射する湖面が印象的だったので、湖面をメインにして撮ってみた。もう少し広角(16mmくらいの焦点距離)で湖面にレンズを近づけて遠近感を強調しても面白かったとは思うが、24mmという焦点距離は、この作例のように画面全体を破綻させずに安定した構図で広く撮るのに使いやすい画角だ。また、本レンズは開放から色収差が少なくシャープで、F2.8〜F4くらいまで絞れば周辺光量落ちも気にする必要がなくなるので、遠景をパンフォーカスで撮りたい場合にそれほど絞って使う必要がないのも押さえておきたいポイント。この作例ではF6.3を選択したがクリアで抜けのよい描写が得られた。シャドー側の階調が豊かで、早朝の雰囲気をうまく表現できたと思う。

α7R III、F1.4、1/500秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:ビビッド、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(7952×5304、38.2MB)

曇天の薄暗い状況で撮影した作例。絞りは開放F1.4を選択して、前ボケを生かして撮ってみた。仕上がり設定の「クリエイティブスタイル」は鮮やかなビビッドを選択してメリハリを出している。注目してほしいのは、開放で撮っているのにもかかわらずピント位置で非常にシャープな描写が得られていること。また、ボディ側の補正が効いているのだが、開放でも周辺光量が極端に落ちる感じがないのもいいところ。自然に減光していく感じなので作画に活用しやすいと思う。

α7R III、F1.4、1/3200秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:ディープ、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(7952×5304、17.9MB)

電話ボックスに貼りついたイチョウの葉を近接でスナップ撮影。本レンズは最短撮影距離が0.24mと短く、被写体に近づいて遠近感を生かして撮りやすいのも魅力だ。なお、薄く雲がかかる状況を生かして少し重いイメージに仕上げたかったため、クリエイティブスタイルは明度を抑えたディープを選択した。

α7R III、F1.4、1/2500秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:ビビッド、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(7952×5304、18.8MB)

この作例も開放で撮影した1枚。本レンズは焦点距離24mmの広角レンズだが、開放F1.4の大口径を生かして大きな背景ボケのある写真を撮ることができる。さすがに開放での近接撮影だとピント位置の前後で軸上色収差の影響が出る場合があり、特にこの作例のように輝度差が大きいと、前ボケ部分にマゼンタ、後ボケ部分にグリーンの縁取りがわずかに残る。ただ、RAW現像ツールで補正できるレベルなので、RAWで撮影して撮影後に仕上がりを追い込むのであれば気にする必要はないだろう。

α7R III、F2.8、1/125秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:ビビッド、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(7952×5304、17.3MB)

絞りをF2.8まで絞って近接撮影した1枚。もっと被写体に近づいて撮ることもできたし、開放にすればもっと大きなボケになったが、絵が崩れてしまうため、ある程度距離を取って少し絞って撮っている。本レンズは11枚羽根の円形絞りを採用しているので、少し絞っても円形のボケが得やすいのもポイント。被写体までの距離や背景の距離にもよるが、近接で撮る限りでは、F2.8くらいまでであれば円形のボケが得やすいと感じた。

α7R III、F1.4、1/20秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(7952×5304、24.6MB)

開放でイルミネーションを手持ち撮影した作例。ある程度被写体と距離のある状況で撮っているが、ボケの縁取りが少なく、とても滑らかなボケ味が得られた。被写体との距離によらず自然なボケ味で撮れるので、イルミネーションを手持ち撮影するのにも使いやすいレンズだと思う。また、この作例では、α7R IIIのボディ内手ブレ補正の効果で1/20秒のシャッタースピードで手ブレを抑えて撮ることができた。

α7R III、F1.4、10秒、ISO1250、ホワイトバランス:蛍光灯(温白色)、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、ソフトフィルター使用、JPEG
撮影写真(7952×5304、18.0MB)

コマ収差が大幅に抑えられているのも本レンズの特徴だ。この星景作例は開放で撮っているが、減光は見られるものの周辺部で点光源が流れるようなことはなく、しっかりと解像している。なお、この作例はソフトフィルターを使用して撮っている。

まとめ クラス最高の描写力を実現。シーンを選ばずに活用できる広角レンズ

FE 24mm F1.4 GMの魅力は、Gマスターの高い基準を満たす描写力を持ちながら、重量約445gの小型・軽量化を実現していることに尽きる。一般的に開放F1.4の大口径ともなると大きくて重い鏡筒になるが、このレンズは違う。開放F1.4とは思えないようなコンパクトさなので、持ち運びがまったく苦にならない。

描写面では、Gマスターらしく、高い解像力と自然なボケ味を両立している。開放からシャープな特性を発揮するうえ、縁取りが抑えられた良質なボケが得られる。さらに、コマ収差が抑えられており、画面全域で点光源の再現性が高いのも見逃せない特徴。開放F1.4の24mmレンズとしては、このクラス最高の描写力と言っても過言ではない。

AFは高速で静寂性が高い。フォーカスリングの操作感もよく、マニュアルでのピント合わせもやりやすい。描写力だけでなく操作性においても高級なレンズであることを感じさせる仕上がりだ。

2018年12月27日時点の価格.com最安価格は174,000円程度。高価ではあるが、それに見合う価値のあるレンズだ。「α7」シリーズユーザーで、特に風景写真で本格的な作品作りをしているのであれば持っておいて損はない。スナップで使うには少し画角が広いと感じるかもしれないが、ここまで携帯性が高いとスナップでの作品作りにも活用したくなる。大口径なので広角でのポートレートでも威力を発揮するレンズだ。画角的には風景写真向けではあるが、軽快に撮影できるのでシーンを選ばずに活用できるはずだ。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。

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