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重量級ボディにパナソニックの本気を見た! 「LUMIX S1R/S1」実機レポート

パナソニック初のフルサイズミラーレス「LUMIX S」シリーズが国内でも発表になった。有効4730万画素の高画素モデル「DC-S1R」(以下、S1R)と、高度な動画撮影が可能な有効2420万画素モデル「DC-S1」(以下、S1)の2機種が3月23日に発売になる。いずれもプロ機として開発されており、非常に充実したスペックを誇るカメラだ。短い時間ではあるが開発中のベータ機に触れることができたので、外観写真を交えながら主な特徴を紹介しよう。

高画素モデルのS1R。装着しているレンズはキットレンズとして用意される標準ズームレンズ「LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.」

安定性や信頼性にこだわったフルサイズ一眼レフ並みの大きなボディ

S1R/S1は、撮影時の安定性や操作性、信頼性など、プロ機として求められる性能を追求して開発されたフルサイズミラーレス。その分、大きくて重いボディとなっている。両モデルのデザインは同じで、サイズは約148.9(幅)×110(高さ)×96.7(奥行)mmで共通。撮影時の重量はS1Rが約1016g(バッテリー、SDメモリーカード1枚含む)、S1が約1017g(同)。1kgを超える重量級ボディとなっている。

S1RとS1はロゴの部分が異なる以外、デザインは共通。1kg超えの大きくて重いボディとなっている

S1RとS1はロゴの部分が異なる以外、デザインは共通。1kg超えの大きくて重いボディとなっている

S1R/S1に採用された新しいバッテリー「DMW-BLJ31」が重いというのもあるが、撮影時の重量を比較すると、縦位置グリップ搭載のマイクロフォーサーズ機「OM-D E-M1X」の約997gや、EVFを装着した状態の中判ミラーレス「GFX 50S」の約920gよりも重い。フルサイズ一眼レフの上位モデルと比べても、「EOS 5D Mark IV」の約890gよりも重く、「D850」の約1005g、「PENTAX K-1 Mark II」の約1010gと同じくらい。キヤノンとニコンのプロ機を除けば、撮影時の重量は、現時点で発売されているコンシューマー向けの一眼レフ・ミラーレスの中でもっとも重い。

大きくて重い分、ボディはしっかりとした作りだ。ボディ素材にマグネシウム合金フレームを採用するなどして高い落下・耐衝撃性能を実現したほか、接合部や操作部材にシーリング処理を施し、防塵・防滴性能を実現。-10 ℃の耐低温性能も備わっており、厳しい環境でのフィールド撮影にも耐えうる信頼性の高さを誇る。シャッター機構も40万回の動作試験をクリアした高剛性ユニットを採用。フラッシュ同調速度も1/320秒の高速対応となっている。

試作機をホールドしたフィーリングは、ミラーレスというよりも一眼レフに近い。大きくて握りやすいグリップを採用していることもあって、大きな望遠ズームレンズを装着した場合でもしっかりとホールドして、安定した構えで撮影できると感じた。

フルサイズ一眼レフに匹敵するくらいの、大きな形状のグリップを採用。しっかりと握ってカメラをホールドできる

ライカLマウント(口径51.6mm、フランジバック20mm)を採用。撮像素子は、ローパスフィルターレス仕様で、S1Rが有効4730万画素、S1が有効2420万画素

XQDカードとUHS-II対応のSD/SDHC/SDXCメモリーカードのダブルスロットを採用。XQDカードスロットはファームウェアアップデートでCFexpressカード(TypeB)に対応する予定

左側面に、シンクロ端子以外のインターフェイス類を装備。リモート端子、マイク端子、ヘッドホン端子、USB端子(USB3.1 Type-C)、HDMI端子(HDMI Type A)が並ぶ。USB 端子は充電・給電(撮影しながらの充電)が可能。Power Delivery(USB PD)にも対応している

バッテリーには新開発の「DMW-BLJ31」を採用。撮影可能枚数はXQDカード利用時/SDメモリーカード利用時、ならびにモニター利用時/ファインダー利用時で異なっているが、S1Rが約340〜380枚、S1が380〜400枚となっている

底面。滑り止め用の凹凸パターンは採用されていないようだ

底面。滑り止め用の凹凸パターンは採用されていないようだ

プロ機ならではの充実の操作性。ファインダーの見えも良好

豊富なボタン・ダイヤル類を配置した操作性もプロ機ならではの部分。上面左側にドライブモードダイヤルと撮影モードダイヤルを、右側には前後ダイヤルを装備。背面には、フォーカスエリアをダイレクトに移動できる、8方向操作とプッシュ操作に対応したジョイスティックが備わっている。各種ボタン・ダイヤルの操作を無効にするロックレバーや、登録しておいた設定に即座に変更できるファンクションレバーも用意し、細かいところまでダイレクトに設定を変更できるプロ仕様の操作性となっている。背面のダイヤル一体型の十字キーが小さく押した感じが弱いのが気になったが、ボタンやダイヤルの操作感のよさは、一眼レフのプロ機に並ぶものだと感じた。シャッターボタンのストロークは比較的浅く、レスポンスよく撮ることができる。

試してみて大きな進歩を感じたのが電子ビューファインダー(EVF)だ。約576万ドット/倍率0.78倍という高精細で大きな見えもさることながら、周辺までクリアな見えを実現しており、視認性がとても高い。マイクロフォーサーズ機「LUMIX G9 PRO」では周辺の歪みが少し気になったが、S1R/S1はプロ機だけあって、光学系にもこだわりを感じるファインダーに仕上がっている。

大きなボディだけあって背面のレイアウトは余裕がある。動画ボタンが少々窮屈な感じはするが、押しやすい位置にボタンが並んでいる

フォーカスモードレバー、AF ONボタン近くにジョイスティックを装備。フォーカスエリアをダイレクトに移動できる

ボディ上面右側には各種撮影情報を確認できるサブモニターを搭載。シャッターボタン近くにWBボタン、ISOボタン、露出補正ボタンが並ぶ。触れただけでそれとわかるようにISOボタンには小さな突起が入っている。電源はレバー式のスイッチ

上面左側に一体型のドライブモードダイヤル/撮影モードダイヤルを搭載。ロックレバーも備わっている

上面左側に一体型のドライブモードダイヤル/撮影モードダイヤルを搭載。ロックレバーも備わっている

ファンクションレバーは前面下部に装備

ファンクションレバーは前面下部に装備

グリップ近くにファンクションボタンが2つ並ぶ。下にレイアウトされたファンクションボタンはプレビューボタンも兼ねている

約576万ドット/倍率0.78倍の高性能EVFを採用。周辺までクリアで見やすいファインダーだ。120fpsのフレームレートにも対応している

液晶モニターはタッチパネル対応の3.2型(約210万ドット)の3軸チルト式

液晶モニターはタッチパネル対応の3.2型(約210万ドット)の3軸チルト式

メニュー画面も刷新。メインタブとサブタブに分けたデザインを採用したうえ、メニューの構成や順序も見直されている

Qメニュー(クイックメニュー)のデザインも変更になった。ライブビューの有無を選択することもできる

Qメニュー(クイックメニュー)のデザインも変更になった。ライブビューの有無を選択することもできる

フルサイズ一眼カメラ初の4K/60p記録に対応。S1は4K HDR撮影も可能

マイクロフォーサーズ機でいち早く4K/60p記録を実現するなど、パナソニックのミラーレスは動画に強いのが魅力。S1R/S1は一眼レフも含めてフルサイズ一眼カメラとして初めて4K/60p記録を実現している。

S1R とS1は動画撮影の仕様が異なっており、S1のほうが高機能。S1はSuper35mm画角での4K/60p撮影(4K/60p 4:2:0/8bit)が可能。MP4 HEVC モードにも対応し、HLG(Hybrid Log Gamma)方式での4K HDR撮影(4K/30p 4:2:0 10bit)も可能だ。さらに、有償アップグレードによって4:2:2 10bitのHDMIモニタリングスルーに対応する予定(※ただし、4K/60p 4:4:4 10bit時はボディ内同時記録が不可)。有償アップグレードでのLog撮影(V-Log)もサポートする予定だ。4K/60p記録時の連続撮影時間は最大29分59秒、4K/30p記録時は時間制限なしとなっている。

S1R/S1ともに4K/60p記録に対応

S1R/S1ともに4K/60p記録に対応

S1はHLG方式での4K HDR撮影が可能

S1はHLG方式での4K HDR撮影が可能

S1にはHDR撮影用のフォトスタイル「2100ライク(HLG)」が用意されている

S1にはHDR撮影用のフォトスタイル「2100ライク(HLG)」が用意されている

S1Rは1.09倍クロップでの4K/60p記録に対応(※ただし、ピクセルビニング:画素加算での記録になる)。4K/60p 4:2:0/8bitのボディ内記録はS1と同じだが、S1とは異なり、HLG方式での4K HDR撮影(4K/30p 4:2:0 10bit)には非対応。有償アップグレードでの4:2:2 10bitのHDMIモニタリングスルーやLog撮影(V-Log)にも対応していない。連続撮影時間も最大15分に抑えられている。

ハイレゾモードやHLGフォトなど多彩な機能を搭載

このほかのS1R/S1の主な性能・機能を以下に箇条書きでまとめておこう。AFCの追従連写のコマ数がそれほど多くないこと以外は、非常に高い性能と多彩な機能を持つフルサイズミラーレスとなっている。

・5.5段分(レンズ補正連動時は6.0段分)のボディ内5軸手ブレ補正
・約0.08秒の高速AF(空間認識技術による225点コントラストAF)
・顔・瞳認識AFや動物認識AF
・AF低輝度限界-6EV
・AFC時約6コマ/秒、AFS時約9コマ/秒連写のメカシャッター連写
・S1R最大撮影コマ数:RAW40枚以上、RAW+JPEG35枚以上、JPEG50枚以上
・S1最大撮影コマ数:RAW90枚以上、RAW+JPEG70枚以上、JPEG999枚以上
・6K PHOTO(約18M 30コマ/秒)、4K PHOTO(約8M 60コマ/秒)
・ハイレゾモード(S1R最大約187M相当、S1最大約96 M相当)
・HLGフォト(HLG方式のハイダイナミックレンジ画像を記録する機能)
・幅広いアスペクト比対応(3:2、4:3、16:9、1:1、65:24、2:1)

ハイレゾモードはセンサーをシフトしながら8回連続で撮影を行い、カメラ内で自動合成することで高解像画像を生成する機能。シャッターディレイや被写体ブレの処理(残像として残すか、残像を抑制するかを選べる)を選択できる

HLGフォトはダイナミックレンジの広いHLG階調のHDR静止画を生成する新機能。撮影モードとしてスタンダードのほかモノクロームも用意。画像サイズはS1Rが5760×4320/2880×2160、S1が5312×3984/2880×2160から選べる

コントラストと彩度を抑えた「フラット」をフォトスタイルに新搭載

コントラストと彩度を抑えた「フラット」をフォトスタイルに新搭載

S1RとS1は、細かいところでは電子シャッター時の最速シャッタースピードが異なる。S1は最速1/8000秒だがS1Rは最速1/16000秒に対応している

まとめ 高画質撮影を徹底追求する方から選ばれるカメラ

ミラーレスはミラー構造がないため一眼レフに比べて小型・軽量化できるのが特徴ではあるが、S1R/S1はコンパクトさを目指して開発されたフルサイズミラーレスではない。サイズ・重量を度外視したというわけではないだろうが、小型・軽量化よりもプロ向けとして必要な性能・機能の実現を優先したカメラだ。その分、大きくて重いボディとなっており、重量はフルサイズ一眼レフの上位モデルと変わらない。マイクロフォーサーズで高性能な小型・軽量ミラーレスを開発してきたパナソニックとしては、これまでのイメージを大きく変えるカメラとなっている。操作性や信頼性にこだわったプロ用とはいうものの、フルサイズ一眼レフの上位モデルと変わらない大きくて重いボディは賛否を呼びそうだ。

発売前ではあるが2019年2月21日時点の価格.com最安価格は、S1Rのボディ単体が46万円程度、S1Rの標準ズームレンズキットが56万円程度、S1のボディ単体が31万円程度、S1Rの標準ズームレンズキットが42万円程度。お世辞にも手に入れやすい価格とは言えず、パナソニックが本気でプロ機として開発したことがうかがえる価格設定だ。

S1R/S1は、静止画だけでなく動画も含めて、スポーツやネイチャー系の撮影を行うプロならびにハイアマチュアの新しい選択肢として注目を集めるだろう。ただ、ハイアマチュアにとってはここまでの性能は求めないという方も少なくないと思う。ライカLマウントを採用しており、既存のマイクロフォーサーズユーザーがレンズを含めてシステムを一新する必要があるのも敷居の高いところで、フルサイズミラーレスでの高画質撮影を徹底追求する方から選ばれるカメラになりそうだ。

パナソニックがフルサイズミラーレスの第1弾モデルとしてここまで本格的なモデルをリリースすることは、市場を活性化するという点でインパクトがある。パナソニックだけでなく、ライカとシグマを含めたLマウントアライアンスの今後の動きにも注視したい。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。

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