ニコンは2019年10月10日、ミラーレスカメラの新モデル「Z 50」を発表した。同社としては初となるAPS-Cサイズの撮像素子を採用するミラーレス(以降、APS-Cミラーレス)で、注目度の高い製品だ。今回、短い時間ではあるがZ 50の実機にいち早く触れることができたので、ファーストインプレッションを交えながら特徴を紹介しよう。
ニコン初のAPS-Cミラーレスとして登場するZ 50。装着しているレンズは、ボディと同時発表の標準ズームレンズ「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」
ついに、ニコンからAPS-Cミラーレスが発表になった。フルサイズミラーレスを手がける他メーカー(ソニー、キヤノン、パナソニック)は「最初にAPS-Cミラーレス(パナソニックはマイクロフォーサーズ機)、その後にフルサイズミラーレス」という展開で大型撮像素子のミラーレスを商品化してきているが、ニコンの場合、ミラーレスの展開は2011年に1インチセンサー採用の「Nikon 1」シリーズを立ち上げ、次いで2018年にフルサイズミラーレスを発売しているため、これまでAPS-Cミラーレスはラインアップに含まれていなかった。APS-Cミラーレスはボディのコンパクトさと高画質を両立できる点でエントリー層から写真愛好家まで幅広く人気を集めている。ニコンファンにとっては待望のカメラが登場したと言えるだろう。
そんなZ 50の特徴を端的に言うと「コンパクトで高画質というAPS-Cミラーレスのメリットを生かしつつ、Z 7やZ 6譲りのすぐれた操作性を兼ね備えている」ということになる。細かいところまでしっかりと作り込まれた、ニコンらしいカメラとなっている。
画質関連のスペックを見ると、撮像素子には有効2088万画素のCMOSセンサー(DXフォーマット、23.5×15.7mm)を、画像処理エンジンには最新の「EXPEED 6」を採用し、感度はISO100〜51200(1/3ステップ)に対応。上位モデルのような細かい減感・増感には非対応だが、拡張でHi1(ISO102400)とHi2(ISO 204800相当)も用意されている。有効画素数がAPS-C一眼レフの上位モデル「D500」や「D7500」から据え置きになっている点が気になる方もいるかもしれないが、画像処理エンジンが「EXPEED 6」になったうえ、大口径・ショートフランジバックのZマウントシステムを採用し、光学性能にすぐれた「Zマウントレンズ」を使用できるのは大きな進化点だ。
大口径・ショートフランジバックのZマウントシステムを採用
仕上がり設定「ピクチャーコントロール」の調整機能に、Z 7やZ 6と同様、細かい模様や線に対して効果のあるミドルレンジシャープが追加された
子絞り時の解像感の低下を補正する回折補正も搭載している
色合いや階調、彩度などを作り込んだ独創的な効果が得られる、計20種類の「クリエイティブピクチャーコントロール」も搭載。適用度を10段階から選べる
続いて、Z 50のボディデザインや操作性の特徴を見ていこう。
ボディは中央にEVFを配置した一眼レフスタイルで、液晶モニターはチルト式の3.2型タッチパネル液晶(約104万ドット)となっている。EVFには0.39型・約236万ドットの有機ELパネルを採用し、倍率は1.02倍(APS-C換算)で、アイポイントは19.5mm(接眼レンズ面中央から)。APS-Cミラーレスとしては標準的なスペックのEVFだが、光学系にこだわったことで周辺まで高解像で歪みの少ないファインダーに仕上がっている。さらに、深くて握りやすい形状のグリップを採用することで上質なホールド感を実現したのも特徴。その他、ボタンやダイヤル類は右手側に集中している点などを見ても、Z 7やZ 6のスタイルをコンパクトにまとめた印象のボディとなっている。
指がかりがよく、しっかりと握れるグリップを採用。コンパクトなミラーレスとしてはホールド感にすぐれるカメラだ
0.39型・約236万ドットの有機ELファインダーを搭載。背面のボタン類では、拡大ボタン、縮小ボタン、DISPボタンが物理ボタンではなく、モニター右側にタッチキーとしてレイアウトされているのがユニーク
チルト式の3.2型タッチパネル液晶モニター(約104万ドット)を採用
上面右側に撮影モードダイヤルや静止画/動画の切り替えレバーなどを搭載。撮影モードダイヤルは、ダイヤルの内側に選択している位置を示すマークが付くデザインになっている
Z 50のボディサイズは約126.5(幅)×93.5(高さ)×60(奥行)mmで、重量は約450g(バッテリーおよびメモリカードを含む)。EVF搭載のAPS-Cミラーレスとしてクラス最小・最軽量というわけではないが、EVF(電子ビューファインダー)やホールド感にすぐれたグリップを搭載していることを考慮すると十分にコンパクト。マグネシウム合金を使用することで堅牢性を確保したうえ、防塵・防滴にも配慮した設計になっているのも魅力だ。
DXフォーマット用の「Zマウントレンズ」の第1弾として用意されるのは、レンズキットに付属する標準ズームレンズ「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」と望遠ズームレンズ「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」の2本。いずれもレンズを繰り出して使用する沈胴式で、すぐれた描写力を持ちながら、一眼レフ用の同等品と比べて小型・軽量化を実現している。特にNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRは沈胴時の長さが32mmと短く、重量も約135gと軽い。Z 50と組み合わせた際のバランスは非常にいい。
NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRのサイズは約70(最大径)×32(沈胴時の長さ)mmで、重量は約135g。コンパクトなZ 50にマッチする小型・軽量レンズだ。レンズ構成はEDレンズ1枚、非球面レンズ4枚を含む7群9枚。最短撮影距離は焦点距離によって異なり、焦点距離16mm時で0.25m、焦点距離24mm時で0.2m、焦点距離50mm時で0.3m。手ブレ補正機構の効果は4.5段分となっている
NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VRをZ 50に装着したイメージ。こちらもNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRと同様、沈胴式レンズとなっている。サイズは約74(最大径)×110(沈胴時の長さ)mmで重量は約405g。レンズ構成はEDレンズ1枚を含む12群16枚。最短撮影距離は焦点距離によって異なり、焦点距離50mm時で0.5m、250mm時で1.0m。手ブレ補正機構の効果はNIKKORレンズとして現時点で最高となる5段分を実現している
左側面に外部マイク入力、USB(Micro-B端子)、HDMI(Type D)を搭載。USB経由での充電にも対応している
従来と互換性がないのは残念だが、対応バッテリーは新型の「EN-EL25」になった。撮影可能コマ数はファインダー使用時で約280枚、モニター使用時で約320枚。記録メディアはSDメモリーカード(UHS-I対応)となっている
Z 50のAFシステムは、像面位相差AFとコントラストAFを組み合わせた209点のハイブリッドAF。AFの低輝度限界は-2EV(ローライトAF時-4EV)だ。動きのある人物でも瞳を検出してピントを合わせ続けてくれる「瞳AF」にも対応している。今回、短い時間ではあるがAFを試した限りでは、Z 7やZ 6に近いイメージで、AF-S時の速度・精度にすぐれる印象。ピント合わせの迷いが少なく、比較的暗い被写体に対しても正確にピントを合わせてくれた。
連写性能は、14bit RAW記録時は約9コマ/秒のコマ速に制限されるものの、AF・AE追従で最高約11コマ/秒を実現。連続撮影可能コマ数はJPEG記録時で最大100コマ、14bit RAW記録時で最大30コマとなっており、連写の持続性も十分に確保されている。
AFエリアモードはシングルポイントAF、ダイナミックAF、ワイドエリアAF(S)、ワイドエリアAF(L)、オートエリアAFの5種類
高速連続撮影(拡張)時にAF・AE追従で最高約11コマ/秒の高速速度を実現している
シャッター方式はオート、メカニカルシャッター、電子先幕シャッターの選択が可能。ただし、キットレンズとして用意される2本のズームレンズに関しては、設定によるのかもしれないが、試した限りはメカニカルシャッターを手動で選択できないようになっていた(※NIKKOR Z 35mm f/1.8 Sでは選択できた)。また、電子シャッター動作のサイレント撮影も搭載しており、サイレント撮影での連写も可能。対応するシャッタースピードはサイレント撮影も含めてすべてのシャッター方式で最速1/4000秒となっている。
測光やAFの動作は、Z 7やZ 6と同様、絞り開放からF5.6までは実絞り測光でAFも実絞りのまま測距。F5.6を超えるとF5.6固定での測光・測距となっているようだ。
Z 7やZ 6と同様、Z 50のシャッター方式の設定には、状況に応じてメカニカルシャッターと電子先幕シャッターを切り替えるオートが用意されている。2本のキットレンズと「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」で試した限り、オート時は、シャッタースピードが1/250秒までは電子先幕シャッター、1/320秒以上の高速シャッターになるとメカニカルシャッターの動作になるようだ
このほか、Z 50の動画撮影はクロップなしでの4K UHD/30p記録に対応。クリエイティブピクチャーコントロールを使って動画を撮ることも可能だ。また、無線機能としてWi-FiとBluetoothを搭載。スマートフォン用アプリ「SnapBridge」を使って、撮影した画像をスマートデバイスに転送することができる。