レビュー
フルサイズセンサー搭載、4K/120fps、10bit 4:2:2撮影ができる!

ソニー「α7S III」:動画向けミラーレスカメラの最高峰モデルを先行レビュー

ソニーのミラーレス一眼カメラの動画向けフラッグシップ となる“S” シリーズ に、約5年ぶりとなる新モデル「α7S III(ILCE-7SM3)」 が発表されました。市場想定価格は409,000円前後(税別)で、2020年10月9日発売予定。高感度撮影とダイナミックレンジにすぐれ、センサーシフト式の手ブレ補正や自撮り用のバリアングル液晶モニターなど、動画制作者が求める機能が満載の1台として大幅にパワーアップしています。

今回はその実機を発売に先駆けてソニーから借りられたので、外観のフォトレビューや実際に動画を撮影した結果をレポートしていきます。

なお、予約受付はすでに開始されていますが、供給には遅れが生じている模様です。ソニーによれば、予想を上回る注文数のため納期は未定とのこと。動画をメインとするユーザーにとっては、待ちに待った新たな「S」の登場だけに人気であることがうかがえます。

なお、今回の記事では、筆者が映像を主に制作していることから「α7S III」の動画撮影機能にフォーカスしてレビューをしています。写真撮影についてのレビューではありませんので、ご了承の上、読み進めていただければ幸いです。

ソニー「α7S III」外観フォトレビュー

ソニー「α7S III」をひと言で表すなら「ビデオグラファーの夢がつまったカメラ」と言えるでしょう。フルサイズの裏面照射CMOSセンサーを搭載し、ダイナミックレンジは15+ストップ、4K/120fps、10bit 4:2:2での撮影が可能です。また、ソニーのフルサイズミラーレスカメラとしては初めて、自撮り方向に向けられるバリアングル液晶モニターを採用しています。

業務用シネマカメラ級、あるいはシネマカメラ“超”級とも言えるスペックは、2020年時点におけるミラーレスカメラには「これ以上は望めないだろうな……」と思わせられる圧倒的なスペックです。

録画ボタンの配置やバリアングル液晶モニター(いずれも詳細は後述)などの重要な変化はあるものの、外観は「α7 III」などのデザインをおおむね継承したものとなっています

録画ボタンの配置やバリアングル液晶モニター(いずれも詳細は後述)などの重要な変化はあるものの、外観は「α7 III」などのデザインをおおむね継承したものとなっています

本体とバッテリー、記録メディアを合わせた重量は約699gです。この写真で装着しているレンズ「FE 24-70mm F2.8 GM」の重量は約847gのため、合計では1546gとなります。

本体とバッテリー、記録メディアを合わせた重量は約699gです。この写真で装着しているレンズ「FE 24-70mm F2.8 GM」の重量は約847gのため、合計では1546gとなります

動画の録画ボタン(写真中の赤丸)がシャッターボタンの脇に移動しています。Vloggerなどが自撮りをする際にカメラの前(レンズ側)から操作する場合でも押しやすい位置です

動画の録画ボタン(写真中の赤丸)がシャッターボタンの脇に移動しています。Vloggerなどが自撮りをする際にカメラの前(レンズ側)から操作する場合でも押しやすい位置です

「メニュー」と「C3」ボタンの位置は「α7 III」などと同じく左肩にあります

「メニュー」と「C3」ボタンの位置は「α7 III」などと同じく左肩にあります

記録メディアはSDXCメモリーカードとCFexpress Type Aカードに対応するデュアルスロット仕様で、同時記録やリレー記録が可能です。なお、Type B のCFexpressカードはサイズが異なるため使用できません

記録メディアはSDXCメモリーカードとCFexpress Type Aカードに対応するデュアルスロット仕様で、同時記録やリレー記録が可能です。なお、Type B のCFexpressカードはサイズが異なるため使用できません

側面にはHDMIポート(出力)、マイク端子、ヘッドホン端子、給電しながらの連続撮影に対応するUSB Type-Cポート、マイクロUSBポートを搭載

側面にはHDMIポート(出力)、マイク端子、ヘッドホン端子、給電しながらの連続撮影に対応するUSB Type-Cポート、マイクロUSBポートを搭載

マイクの入力端子はモニターを自撮り用の向きにした際に干渉しない位置にあります。細かいところですが、自撮りを多用するVloggerにはうれしいポイント

マイクの入力端子はモニターを自撮り用の向きにした際に干渉しない位置にあります。細かいところですが、自撮りを多用するVloggerにはうれしいポイント

HDMIケーブルを挿した状態でも、モニターの可動域を極力制限しないように作られています。HDMI出力をしながらこのモニターを使うケースがどれほどあるかは別として、細部へのこだわりを感じる設計です

HDMIケーブルを挿した状態でも、モニターの可動域を極力制限しないように作られています。HDMI出力をしながらこのモニターを使うケースがどれほどあるかは別として、細部へのこだわりを感じる設計です

メニュー表示は縦3列に変更。モニターはタッチ操作に対応しています

メニュー表示は縦3列に変更。モニターはタッチ操作に対応しています

ソニー「α7S III」の動画撮影レビュー

今回のテスト撮影ではMPEG-H HEVC/H.265を採用した「XAVC HS」ファイルフォーマットで撮影をしました。また、特に記載がない限りは4K/24pで撮影をしています。

今回、「α7S III」で撮影した映像データの解像度やフレームレート、ビットレートなどが高く、非力なマシンでは再生すらままなりません。ファイル形式が高圧縮のH.265になったおかげでデータ容量こそ増えてはいないものの、サクサクと作業をするためにはハイスペックなマシンが必要になります。

そこで、今回はASUS JAPANに協力を仰ぎ、こちらのデスクトップPCと4Kディスプレイをお借りしました。

編集に使用したデスクトップPC「ROG STRIX GL12CX-I7KR2070」と「Pro Art PA32UCX 32インチ」

編集に使用したデスクトップPC「ROG STRIX GL12CX-I7KR2070」と「Pro Art PA32UCX 32インチ」

PCの主なスペックは、CPUが第9世代 インテル 「Core i7 9700K」、メモリー16GB、 ストレージはSSD256GB/HDD1TBで、 グラフィックボードがNVIDIA「GeForce RTX 2070」です。

また、ディスプレイはIPSパネルを採用した32インチの4K(3840×2160ドット)モデルで、応答速度は5ms、コントラスト比は1000000 :1 のHDR対応となっています。

本来はゲーミング用のマシンですが、高性能なCPUは動画のレンダリングにも有効で、GPUは編集ソフトによるノイズリダクションやブレ補正などを使用する際に活躍してくれるため、動画編集マシンとしても活躍してくれます。

ソニー「α7S III」の発熱について

高解像度での撮影となると気になるのは発熱の問題です。「α7S III」は、仕様上は4K動画の録画時間の制限などはありませんが、過熱により自動的に停止しないかテストを行いました。なお、撮影の設定は4K/24pです。

テスト時の室温は約26°〜27°の間で、機材のセッティングをしていると少し額が汗ばむ温度でした

テスト時の室温は約26°〜27°の間で、機材のセッティングをしていると少し額が汗ばむ温度でした

「自動電源OFF温度」の設定は「高」に設定しています

「自動電源OFF温度」の設定は「高」に設定しています

テストの結果、発熱の影響でカメラが停止することはなく、撮影したデータにノイズが乗ることもありませんでした。約2時間28分の撮影を行った時点でSDXCカードがフルになり、撮影が停止。ちなみに、バッテリーも残量ほぼゼロという状態でした。この時点でカメラの背面やグリップを触ると、生温かくはあるものの「熱い」という感覚はありませんでした。

また、後日4K/120fpsでの撮影を日中に行いましたが、この時も発熱の問題は起きていません。炎天下の砂漠などの過酷な条件ではどうなるかわかりませんが、一般的な気候での使用であればオーバーヒートに悩まされることはまずなさそうです。

ソニー「α7S III」の手ブレ補正

手ブレ補正を「オン(オート)」にした状態で撮影を行うと、立ち止まった状態では滑らかな映像が撮れたものの、歩きながらの撮影はいまいちな結果でした。移動しながらの撮影でスムーズな映像を撮りたい場合はジンバル(スタビライザー)を使用するのがベターでしょう。

両手でしっかりとカメラを保持して、静止した状態では滑らかな映像が撮影できます。なお、使用したレンズは「FE 24-70mm F2.8 GM」でした

両手でしっかりとカメラを保持して、静止した状態では滑らかな映像が撮影できます。なお、使用したレンズは「FE 24-70mm F2.8 GM」でした

歩きながらの撮影では強く揺れを感じるコマがありました。手ブレ補正オフの映像と比べると揺れが軽減されていることは明らかでしたが、滑らかな映像とまでは言えない結果です

歩きながらの撮影では強く揺れを感じるコマがありました。手ブレ補正オフの映像と比べると揺れが軽減されていることは明らかでしたが、滑らかな映像とまでは言えない結果です

なお、実際に撮影した映像は、本記事冒頭にある動画からご覧いただけますので、記事とあわせてチェックしてください。

ソニー「α7S III」のオートフォーカス

「α7S III」のオートフォーカス性能は極めて優秀で、基本的には「撮りたいものにカメラを向けるだけでピントが合う」というレベルです。今回のテストでは人物と風景の撮影を行いましたが、その状況では速度、精度ともに良好でした。

テスト時の設定は上の写真の通りです

テスト時の設定は上の写真の通りです

カメラにとって一番簡単な「真正面を向いた人」ではしっかりと瞳を認識しフォーカスを合わせ続けています。このあたりは、もはや「朝飯前」でこなしてくれる印象

カメラにとって一番簡単な「真正面を向いた人」ではしっかりと瞳を認識しフォーカスを合わせ続けています。このあたりは、もはや「朝飯前」でこなしてくれる印象

顔を隠しても人物を認識してくれ、背景にピントが抜けることはありません。また、激しく前後に動いたり、フレーム外から素早く入ったりするなどのイレギュラーな動作をしてもしっかりと顔にフォーカスが合い続けていました

顔を隠しても人物を認識してくれ、背景にピントが抜けることはありません。また、激しく前後に動いたり、フレーム外から素早く入ったりするなどのイレギュラーな動作をしてもしっかりと顔にフォーカスが合い続けていました

顔が半分隠れるような状態で木の裏に隠れると人物として認識されなくなり、フォーカスが背景に移動しています。ここまでやらなければ人物を見失わない精度の高さには驚きです

顔が半分隠れるような状態で木の裏に隠れると人物として認識されなくなり、フォーカスが背景に移動しています。ここまでやらなければ人物を見失わない精度の高さには驚きです

なお、瞳AFを含む「α7S III」のオートフォーカスは4K/60fps、120fpsなどの高解像度、ハイフレームレートでも作動します

ソニー「α7S III」暗所撮影

低照度の撮影では、ISO 12800でも低ノイズでディテールがある程度保持された映像が撮影できました。ISOを102400まで上げるとさすがにノイズは目立ちますが、緊急時には十分使用できるという印象です。なお、下記の映像のスクリーンショットはすべて撮って出しで、ノイズリダクションなどの後処理はしていないデータです。

薄暗がりに車があるというシチュエーションでの撮影。ISO 400では真っ暗でほとんど何も見えません

薄暗がりに車があるというシチュエーションでの撮影。ISO 400では真っ暗でほとんど何も見えません

ISO 12800でも実用範囲の映像が撮影できました

ISO 12800でも実用範囲の映像が撮影できました

ISO102400。テスト撮影のため、あえてISO値のみを変更しているので車は白飛びしていますが、背景に薄暗く映っていたプロジェクターの映像まではっきりと撮影できています

ISO102400。テスト撮影のため、あえてISO値のみを変更しているので車は白飛びしていますが、背景に薄暗く映っていたプロジェクターの映像まではっきりと撮影できています

ソニー「α7S III」のハイフレームレート撮影

「α7S III」は4K(約10パーセントクロップ)/120fpsのハイフレームレート動画を200Mbps、10bit 4:2:2で内蔵のSDXCメモリーカードへ記録可能となっています。YouTubeなどでトレンドの「シネマティック(映画のような)表現」ではハイフレームレート撮影とカラーグレーディングが多用されるので、そういったニーズにもマッチする進化です。αシリーズは長らく8bitでの撮影に限定されてきましたが、ここにきてついにその制約がなくなったことを歓迎するユーザーは多いでしょう。

ポストプロダクションでカラーグレーディングをするのに十分なビットレートとビットデプスで撮影ができます

ポストプロダクションでカラーグレーディングをするのに十分なビットレートとビットデプスで撮影ができます

4K/120fps、10bit 4:2:2での撮影(無補正)

4K/120fps、10bit 4:2:2での撮影(無補正)

コントラストとカラー補正済みのサンプル

コントラストとカラー補正済みのサンプル

極端な修正をした例。暗くした場合

極端な修正をした例。暗くした場合

なお、撮影地はニューヨークではなくお台場です。

また、「α7S III」はHDMIから16bit/RAWの映像データを出力し、外部レコーダで記録可能です。しかし、ソニーに問い合わせたところ「現時点では対応するレコーダーは市販されていない」という回答でした。Atomosは「Neon 8K MCU」などでソニーの「FX9」から出力された16bit/RAWデータを記録できるとしていますが、記事作成時点においては「α7S III」への対応については公式の発表は行なっていないようです。というわけで、「α7S III」は16bit/RAWでの撮影によりポストプロダクションでの編集の幅を広げる可能性を持っていますが、現時点では市販品では記録する方法がないため“解放される時を待つ秘奥義”状態となっています。これについては、機会があれば追って検証をする予定です。

いまさら聞けない!
ソニー「α7S III」の基本

Q:8K撮影ができるの?
A:8K撮影はできません。8K撮影ができる市販のミラーレス一眼カメラはキヤノンの「EOS R5」のみです(記事作成時点、業務用シネマカメラを除く)。

Q:どんな人向けのカメラ?
A:動画撮影をおもに行うユーザーで、4Kハイフレームレートでの撮影がしたい人、暗い場所で撮影をすることが多い人、編集時に色味などにこだわって調整したい人向けのカメラです。

Q:「α7」シリーズ中の位置付けは?
A:ソニーの「α7」シリーズは35mmフルサイズセンサーを搭載し、Eマウントを備えたデジタル一眼カメラシリーズです。大きく分けて、コンパクトさが強みの「α7C」、バランス型の「α7」、高解像度モデルの「α7R」、暗所耐性が高く動画撮影機能にフォーカスした「α7S」の4種類がラインアップされています。

ちなみに、モデル名の最後についている「III」などの数字は世代を示しているので、「α7S III」は「α7 S」シリーズの「3世代目のカメラ」ということになります。

Q:有効画素数1210万って少なくない?
A:2020年に発売されるミラーレスカメラの中では少ない部類に入ります。また、「iPhone 11 Pro」が1200万画素なので、「スマホと同じなの?」と思うかもしれません。しかし、カメラの性能は画素数がすべてではありません。むしろ、センサーサイズが同じなら画素数を少なくすることでダイナミックレンジを広くし、ノイズを抑えられるように設計することができます。少ない画素数は巨大なサイズで印刷する写真の撮影などには向きませんが、暗所での撮影やポストプロダクションでの自由度を重視するならアドバンテージにもなるのです。

Q:ウェブカメラとしてテレビ会議やライブ配信に使える?
A:可能です。「α7S III」をウェブカメラの代わりにするには専用の無料ソフトウェア「Imaging Edge Webcam」が必要で、対応するのはWindows10(64bit)を搭載したPCです。

「α7S III」から出力した映像を「Imaging Edge Webcam」でWindows PCに取り込み、無料ソフトの「OBS スタジオ」からYouTubeへライブ配信した映像

「α7S III」から出力した映像を「Imaging Edge Webcam」でWindows PCに取り込み、無料ソフトの「OBS スタジオ」からYouTubeへライブ配信した映像

なお、HDMI入力に対応したビデオキャプチャデバイスがあれば「Imaging Edge Webcam」を使用しなくても「α7S III」のHDMIから出力した映像をPCやMacで読み込み可能です。

まとめ&感想

「α7S III」はウェディング、不動産、イベント、企業PRなどの撮影をするビデオグラファーや映像にこだわりたいVlogger(YouTuber)に最適なカメラと言えるでしょう。

広いダイナミックレンジや正確なオートフォーカスのおかげで労せずきれいな映像が撮影でき、10bit 4:2:2で撮影したデータはポストプロダクションでの作り込みにも耐えられるクオリティです。また、映像の“スパイス”としてハイフレームレートでの撮影をすることも可能ですし、外付けのレコーダーやマイクもストレスなく接続でき、自撮り用のバリアングル液晶モニターまであるとなれば、「文句なし」と言っても過言ではありません。予算が許すなら中途半端な性能のカメラを動画用に買うよりこの1台を買ったほうが幸せになれるだろうな、と強く思えるカメラでした。

あえて弱点を探すなら8K動画が撮影できないことかもしれません。しかし、大多数の映像制作者やクライアント、あるいは視聴者にとって「8Kはまだまだ先」というのが実際の肌感ではないでしょうか?

高精度でCGとの合成をしたい場合や大きくトリミングする前提で4Kの映像が欲しい場合などを除き、「8Kが必要」という状況のイメージが湧かないというのが正直なところです。いっぽうで、無理に8K動画に対応をさせることで価格が上がったり、オーバーヒートを起こしやすくなったりするなら、「8Kに対応しない」という選択をするほうが賢明であるとすら思えます。

というわけで、「α7S III」はこの金額で買えるカメラとしては、最高峰の性能かつすぐれたバランスを持つ製品となっているので、こだわりの映像を撮影したい方は必ず、絶対にチェックするべき1台です。

Mr.TATE(Masahira TATE)

Mr.TATE(Masahira TATE)

世界50カ国以上を旅したバックパッカー。週刊アスキー編集部などを経て、AppBankに入社。「バイヤーたてさん」として仕入れとYouTubeを活用したコンテンツコマースに取り組み、上場時は広報として企業PRを担当。現在はフリーランスで活動中。

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