キヤノンは2023年5月11日、コンパクトデジタルカメラの新モデル「PowerShot V10」を発表した。盛り上がりを見せるVlog(Video Blog)を撮影するのに適したカメラとして開発された、新機軸の製品だ。ユニークな撮影スタイルや機能などを詳しく紹介しよう。
キヤノン初のVlogカメラとして登場した「PowerShot V10」。カラーバリエーションはブラックとシルバーの2色
「PowerShot V10」は一般的なコンパクトデジタルカメラとは異なる特徴を持つ製品だ。そのユニークさを象徴しているのが撮影スタイル。カメラを縦に構えながら通常の横16:縦9比率の横長動画が撮影できるように設計されている。
スマートフォンのように本体を縦に持って撮影できるスタイルを採用
本機のボディサイズは63.4(幅)×90(高さ)×34.3(奥行)mm、重量は約211g(内蔵バッテリー、メモリーカードを含む)と小型・軽量。カバンやポケットの中に入れて持ち運びやすいサイズ感だ。
片手でカメラをホールドしながら撮影できるように設計されているのがポイントで、背面のボタン類は、片手で持ちながら親指で操作しやすいレイアウトを採用。撮影画面も親指でタッチしやすいようにシンプルで大きな表示のアイコンを採用している。
片手の親指操作でも扱いやすいボタンレイアウトを採用。シンプルで大きな表示のアイコンを採用するなど撮影画面も工夫されている
重量約211g(内蔵バッテリー、メモリーカードを含む)の小型・ボディを実現。ポケットに入れて持ち運べるサイズ感だ
液晶モニター(2.0型)は上方向にチルトすることが可能で、180度回転させると自動的に自分撮りモードに切り替わる。前面レンズの下に大きな録画ボタンを備えており、片手の親指操作で録画の開始・停止をスムーズに行えるのが使いやすい。
上方向に180度回転するチルト液晶を採用。180度回転させると自分撮りモードに切り替わる
自分撮り時に親指で押しやすい位置に録画ボタンがレイアウトされている
本機のユニークな機能として注目したいのが、本体下部に内蔵スタンドを搭載していること。ミニ三脚などを使わなくてもカメラのみで置き撮りが行えるのだ。スタンドは-30 度から+30 度の範囲で角度を調整できるので、少し上の角度から俯瞰した動画を撮ることも可能。料理のVlog撮影などでも使いやすいカメラと言えそうだ。
角度調整が可能な内蔵スタンドを搭載
スタンドは-30 度から+30 度の範囲で角度を調整できる
この画像のようにスタンドを利用することでより安定したホールド感が得られる
「PowerShot V10」の画質面では1.0型の大きな撮像素子を搭載するのがトピック。有効約1310万画素のCMOSセンサーで、映像エンジンには最新の「DIGIC X」を採用しており、夜間や室内の暗いシーンでもノイズの少ない動画を撮影することが可能。動画記録は4K/30pやフルHD/60pに対応している。
AFはコントラストAF方式で、人物の顔を検出・追尾する「顔追尾AF」に対応。商品レビューなどの撮影時に便利な「フレーム指定AF」(指定したフレーム内の被写体にピントを合わせるモード)も利用できる。
4K/30p動画の記録に対応
本機はレンズにもこだわっており、新開発の広角・単焦点レンズを採用。動画撮影時の画角は35mm判換算で焦点距離19mm相当と広く、手持ちで自分撮りを行う場合などにも扱いやすい。開放F値F2.8の高性能レンズで、広角レンズで発生しやすい歪みを抑えているのもポイントだ。
焦点距離19mm相当(35mm判換算、動画撮影時)の広角・単焦点レンズを採用
レンズは薄く、撮影時に繰り出さない仕様だ。左側面には、内蔵バッテリーの充電・給電やPCとの接続に利用するUSB Type-C端子が備わっている
コンパクトなボディながら、5.8mm径の大きなステレオマイクを採用しているのも見逃せない。同社のコンパクトデジタルカメラ「PowerShot G7 X Mark III」と比べてノイズの低減と高音質化を実現しており、正面の音を含め全方位の音をクリアに収録することができる。
大型のステレオマイクを内蔵
「PowerShot V10」は撮影機能も充実しており、動画撮影時に肌を滑らかに補正する「美肌動画」をキヤノンのデジタルカメラとして初めて搭載している。ナチュラルな加工で、補正効果は5段階から選択可能だ。撮影モードの1モードとして用意されている。
撮影モードとして「美肌動画」を用意。撮影モードは、「美肌動画」以外に、カメラまかせで撮影できる「オート動画」、自動的に電子手ブレ補正がオンになる「手ブレ補正動画」(※設定で手ブレ補正を切ることも可能)、「マニュアル露出動画」を選択できる
電子式の手ブレ補正機能を搭載(※利用時は画角が少し狭くなる)。「標準」と「強」から効果を選択できる
動画撮影時にユニークなフィルター効果を加えられる「動画カラーフィルター」を搭載するのも特徴だ。こちらも「美肌動画」と同様、キヤノンのデジタルカメラとしては初機能。ティール&オレンジのように映画のワンシーンのような印象的な効果が得られるフィルターが多数用意されている。
「動画カラーフィルター」は計14種類と多彩だ
このほか、本機は、3段分の減光効果を発揮する「動画オートNDフィルター」を搭載。スマートフォン用アプリ「Camera Connect」からの操作でライブ配信を手軽に行えるほか、UVC/UAC規格に対応しているためPCとUSB接続するだけでWebカメラとしても利用できる。
「動画オートNDフィルター」は、明るさに合わせて機能する「オート」と、常に効果が働く「オン」の2種類を選択できる
スマートフォン用アプリ「Camera Connect」を使ってライブ配信が可能
記録メディアはmicsoSDメモリーカード。底面には三脚ねじ穴が用意されている
右側面にHDMI端子(タイプD)と外部マイク入力端子を装備
設定メニューは「EOSシリーズ」などと同じデザインだ
ミニ三脚としても使用できる「トライポッドグリップ HG-100TBR」が付属するキットも用意される
キヤノンは「PowerShot V10」を商品化するにあたり、スマートフォンやカメラを使ってVlogを撮影している人を中心に徹底的なアンケート調査を行ったという。その結果を基に、Vlogユーザーが求めているものを突き詰めた結果、片手持ちの縦型スタイルや、高画質な1.0型センサー、焦点距離19mm相当の広角・単焦点レンズといった特徴に行き着いたとのことだ。顧客重視で作られたカメラと言ってもよく、日常的にVlogを撮影・投稿している人だけでなく、これからVlogの撮影を始めてみたいと思っている人からも注目を集める存在になりそうだ。
キヤノンオンラインショップの販売予定価格は、カメラ単体が59,950円、「トライポッドグリップ HG-100TBR」が付属するキットが65,450円(いずれも税込)。発売は2023年6月下旬の予定だ。
フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。