「ソニーストア」は、オンラインとオフライン(リアル店舗)の両方でソニーが展開する直営店だ。全国5か所(銀座、札幌、名古屋、大阪、福岡天神)のリアル店舗は、販売店としてだけでなくショールームやイベント会場の機能も有しており、ファンやユーザーにとってソニーの最新情報をキャッチできる重要な場所でもある。
今回、「ソニーストア札幌」のリニューアルオープン(2023年7月20日)を取材してきたのでそのレポートをお届けしよう。今後のソニーストアの展望が見えてくる、新しい取り組みを発見できた。
場所を移転してリニューアルオープンしたソニーストア札幌。約100平方メートルのスペースにカメラやテレビ、オーディオ機器、スマートフォンなど多くのソニー製品が展示・販売されている。従来は2フロアだったが、新店舗は間口が広い1フロアに集約された
2023年7月20日に開業した、マンション一体型の新しい複合商業施設「moyuk SAPPORO」(モユク サッポロ)。150年の歴史を持つ、札幌最古の商店街「狸小路商店街」に面する地下2階/地上28階の施設で、ソニーストア札幌の新店舗はこの施設の3階に位置している。ちなみに、「moyuk」はアイヌ語で「タヌキ」を意味する言葉とのこと
ソニーストア札幌のリニューアルで特に注目したいのが、動画制作をサポートする「動画体験コーナー」が新設されたこと。「動画クリエイターの創作活動を支援」を目指した取り組みで、撮影から編集・配信まで、最新の機材やツールを使ってひと通りのことが体験できるようになっている。
ストア内に「動画体験コーナー」を新設。撮影、編集、配信の3つのブースが用意されている
「動画体験コーナー」は、カメラやツールに触れられるだけでなく、専門スタッフ「動画マスター」と会話できるのがユニーク。「動画マスター」は動画関連の知識が豊富で、顧客のニーズに合わせた機材選びを提案したり、編集や配信のやり方を解説したりと、動画撮影・制作に関する悩みや相談に応じてくれるとのことだ。
編集ブースでは、クリップ管理ツール「Catalyst Browse」や、動画編集ソフト「DaVinci Resolve」を体験できる
配信ブースでは、スイッチャーやミキサーなどを用いてYouTube配信を疑似体験できる
動く鉄道模型を撮影できるセットも用意
「動画体験コーナー」は、ソニーストア札幌を皮切りに、2023年9月中にほかの店舗にも設ける予定。スピード感を持って進め、2023年の年末までに5店舗すべてに展開することを目指しているとのことだ。
ソニーストアでは、スタッフを販売員ではなく「スタイリスト」と呼んでいる。これは、顧客に寄り添い信頼されるパートナーとして「顧客の生活をスタイリングする」という思いが込められているという。
さらに、スタイリストの専用ページを用意し、LINEアカウント経由で各スタイリストの接客予約が行えるのも特徴。各スタイリストのページには、「フォトマスター」検定のほかにも、ソニー社内で独自の基準を設けている「動画マスター」や「ゲーミングマスター(※ゲーミングギアのプロ)」「サウンドマスター」「テレビ設定マスター」といった“得意ジャンル”が表記されており、どのスタイリストがどのジャンルに強いのかがわかりやすくなっている。
ソニーストア札幌では、店舗のリニューアルに合わせてスタイリストの名刺を刷新。リピートで指名しやすいように、名刺に接客予約ページのQRコードを記載するようになった。
名刺もリニューアル。得意ジャンルと、接客予約ページのQRコードが記載されている
ソニーストア札幌の新店舗で特徴的なのは間口がとても広いことだ。パッと見渡したときにどこに何があるのかがわかりやすく、店舗の中にも入りやすい印象を受けた。
これは、間口が広いことに加えて、商品を展示する台にひと工夫施されているのが大きい。リニューアルに合わせて展示台の高さを低くしたことで、店内の見通しがよくなっているとのことだ。
さらに、展示台に台車を付ける改良を施し、店内のレイアウト変更が容易になったのもポイント。これによって、店内のスペースを広く使ったイベントを実施しやすくなったという。より大きなイベントが開催されることに期待してもよさそうだ。
高さを抑えた新しい展示台。台車付きで移動しやすいように工夫されている
ソニーストアのリアル店舗は、ソニーの新しい商品にいち早く触れられるのも特徴だ。
ソニーストア札幌では、ほかの店舗と同様、APS-Cミラーレスカメラ「α6700」など話題の新商品が多数展示されていて、手に取って試すことができた。また、「ブラビア」シリーズのエリアでは、大画面テレビとサウンドバーを使ったホームシアターシステムを体験できるようになっていた。
2023年7月28日に発売される、APS-Cミラーレスカメラの新モデル「α6700」が展示されていた
望遠ズームレンズの新モデル「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」も用意。ズーム全域で最大撮影倍率0.5倍のハーフマクロ撮影が可能だ
8種類の収音モードをダイヤル操作で切り替えられる、新しいショットガンマイクロホン「ECM-M1」
ストア内には、「αシリーズ」ユーザー向けのサービスをワンストップで提供する「α Plaza」も用意されている。一般のユーザーにとっては、最新のカメラやレンズをいち早く試せる場だ
「ブラビア」シリーズのエリアは、大画面テレビとサウンドバーと組み合せたホームシアターシステムの体験コーナーが用意されていた
同じ画面サイズで有機ELテレビと液晶テレビの画質を比較できるコーナーも
「ブラビア」シリーズの実寸大用紙を持ち帰られるユニークなサービスも
立体映像(3DCG)を裸眼で見られる空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」
ソニーのゲーミングギアブランド「INZONE」の展示。ゲーミングヘッドセットを実際に試せる
開放型の新しいモニターヘッドホン「MDR-MV1」も用意されていた
2023年7月21日発売の新型ホームシアターシステム「HT-AX7」。フロントスピーカーと、着脱可能な2基のワイヤレスリアスピーカーで構成されたユニークな製品だ
「Xperia」シリーズの最新スマートフォンも並んでいた
ストアの入口では「aibo」がお出迎え
ソニーストア札幌は、リニューアルオープンの特典として、10,000円(税別)以上を購入した人を対象に、SONYのロゴが入った金色タンブラー&アイスストーンのセットをプレゼントするキャンペーンを実施している
ソニーストア札幌では、リニューアルオープンを記念し、元プロ野球選手の斎藤佑樹さんの写真展「斎藤佑樹 写真展 〜On the Mound〜」をストア内のギャラリーで開催している。オープン初日にスペシャルゲストとして斎藤さんが登場し、この写真展の詳細を紹介してくれた。
スペシャルゲストとして登場した斎藤佑樹さん
ソニーストアでは斉藤さん自身2回目の写真展で、今回のモチーフは「マウンド」。甲子園のマウンド、実家の庭、中学校のマウンド、家族から見たマウンドなど、幼いころに野球を始めたときからプロ野球選手を引退した現在まで、さまざまな思いを背負いながら見つめてきたマウンドを、斎藤さんならではの視点で作品にまとめている。
今回の写真展について説明する斎藤さん
今回の写真展では、写真作品だけでなく、動画作品も展示されている。動画には、昔の自分に似た雰囲気の少年に出演してもらったという。撮影・制作は斎藤さんを中心にチームで行ったとのこと。今後は動画撮影にも力を入れ、自身で編集にもチャレンジしてみたいと語った。
なお、本写真展は、以下のスケジュールで、全国のソニーストアでも巡回開催される。
・2023年7月20日(木)〜8月9日(水) ソニーストア札幌
・2023年8月30日(水)〜9月12日(火) ソニーストア銀座
・2023年9月16日(土)〜9月22日(金) ソニーストア大阪
・2023年11月25日(土)〜12月14日(木) ソニーストア福岡天神
・2023年12月23日(土)〜2024年1月11日(木) ソニーストア名古屋
「斎藤佑樹 写真展 〜On the Mound〜」の様子
斎藤さんが、ソニーのカメラを初めて本格的に使い始めたのは、プロ野球選手時代にピッチングフォームの確認用に購入した「サイバーショット RXシリーズ」だったとのこと。ハイスピード撮影機能がフォームのチェックに役立ったという。
その後、フルサイズミラーレス「α7シリーズ」を購入し、引退のタイミングでシステムを一式揃え、現在はフラッグシップモデル「α1」を愛用。レンズもかなり持っていて、普段の撮影では大口径・標準ズームレンズ「FE 24-70mm F2.8 GM」や標準レンズを使うことが多いという。今回の写真展の作品は、大口径・中望遠レンズ「FE 135mm F1.8 GM」をメインに使用して撮影したとのことだ。
なお、斎藤さんは、今回のタイミングで「ソニーストア スペシャルパートナー」に就任している。今後、ソニーストアを通じて、写真・動画撮影の奥深さや楽しさを伝える活動をスタートするとのこと。
ソニーストア札幌の新店舗は、新しい複合商業施設「moyuk SAPPORO」(北海道札幌市中央区南2条西3丁目20番)の3階に位置している。
「moyuk SAPPORO」の低層階には、ソニーストア札幌以外にも注目のショップ・施設がいくつか入っているが、そのなかでも話題を集めているのが、ソニーストア札幌のひとつ上、4〜6階にオープンした都市型水族館「AOAO SAPPORO」(アオアオ サッポロ)だ。
この水族館は、「人と水との関わり」に関する体験を提供することを目指し、ペンギンなど250種4000点の生き物を展示するだけでなく、水族館の裏側であるバックヤードを公開したり、広大な海の世界にいるような没入感が味わえるデジタルアートを用意したりと、最新型の水族館らしい遊び心のある仕掛けをいくつも用意している。
館内はどこでも飲食可能なのも特徴で、6階のショップ「シロクマベーカリー&」ではクロワッサンやビールが販売されている。座って休める場所が豊富に用意されており、ネット環境とコンセントが完備したコワーキングスペースもある。
また、館内はフラッシュを使わなければ自由に撮影が可能。新しい水族館だけあってネイチャーアクアリウムなど写真映えするスポットがいくつもあって、それらを体験しながらカメラで記録できるのも楽しみのひとつと言えそうだ。
営業時間は10〜22時(最終入場は21時)。入館料は時期によって異なっており、大人が2,200円もしくは2,000円、子どもが1,100円もしくは1,000円、幼児が200円(いずれも税込)。
なお、ソニーストア札幌では、「AOAO SAPPORO」とのコラボレーションイベントを定期的に開催する予定とのこと。直近では、2023年8月に、「夏休みの自由研究 親子で作る水族館ムービー」と題したイベントを開催する。このイベントは、「αシリーズ」のミラーレスカメラを使って親子でVlogの撮影・制作を体験できるというもの。詳細は以下のページをご確認いただきたい。
ソニーストア札幌イベント情報【夏休みの自由研究 親子で作る水族館ムービー】
ソニーストア札幌の新店舗がある複合商業施設「moyuk SAPPORO」は、現在札幌市が進めている再開発事業の一環として、札幌市民にはなじみが深い「旧サンデパート」の跡地に建てられた大型ビルだ。札幌市の中心に位置する、まさに新しいランドマークである。北海道初出店・初進出のテナントや都市型水族館「AOAO SAPPORO」などがあって幅広い世代が楽しめる施設なので、ソニーストア札幌にもこれまで以上に多くの人が訪れることだろう。
今回の取材レポートで特に押さえておきたいのは、ソニーストア札幌に新設された「動画体験コーナー」だ。他社のツールを含めて動画撮影・制作を行ったり、機材の購入や使い方について「動画マスター」に相談したりと、一歩踏み込んだ体験ができる場である。記事内でも触れたように、ソニーストアは、この新しいコーナーを2023年中に全店舗に設置することを目標に掲げている。
ソニーのイメージング事業は「αシリーズ」などで動画撮影機能に力を入れているが、それに合わせるように、ソニーストアでも動画制作の裾野を広げる場を設けるわけだ。単に機材を試せるだけでなく、動画制作全体をサポートするのが特徴で、将来的には困ったときの駆け込み寺としても活用できるようになるかもしれない。
リニューアルされたソニーストア札幌では、「動画体験コーナー」以外にも、自宅のリビングで利用するようなセッティングでホームシアターを楽しめるコーナーがあったり、上階の都市型水族館「AOAO SAPPORO」とのコラボイベントを開催したりと、モノだけでなくコトでも顧客をサポートしていく姿勢がうかがえた。こうした札幌店での取り組みを生かし、ソニーストアは今後、イベントを含めて「体験できる場」としてさらに進化していくことだろう。
そして、今回の取材を通して感じたのは、「やっぱりソニーストアは面白い!」ということ。ソニー商品の販売店としてだけでなく、ショールームとしての機能が充実しているし、スタイリストと会話しているだけでも、新しい気づきが見つかるような感覚が得られる。ソニーのファンやユーザーでなくても楽しめる場所なので、ぜひ気軽に足を運んでみてほしい。
「moyuk SAPPORO」のオープニングセレモニーでは、関係者や斎藤佑樹さんによるテープカットが行われた
セレモニーには「狸小路商店街」のマスコット兼宣伝係長「だっこポン」も登場
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣を持つ。フォトグラファーとしても活動中。