旅とカメラは人生を彩るスパイスのようなもの。そして、旅とカメラは相性も抜群。旅を楽しむ、カメラを楽しむことをコンセプトに、フォトグラファーの河野鉄平(通称テッピー)が、カメラ片手に旅に出る連載企画。今回は福島県・猪苗代町、雄大な磐梯山が眺められる素敵なハーブ園を訪れました。
今回の旅のお供は、富士フイルム「X-T5」。「Xシリーズ」第5世代の名機です。標準ズームレンズ「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」と標準マクロレンズ「XF30mmF2.8 R LM WR Macro」の組み合わせで旅路を巡ります。
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掲載する写真作例について
すべてJPEG形式(画像サイズ:L、画質モード:FINE)で撮影しています。
こんにちは、テッピーです。
猪苗代は福島県北部、会津地方に位置しています。南に猪苗代湖があって、北に磐梯山がそびえ立つ、豊かな自然が大きな魅力の長閑な町です。近くに桧原湖や秋元湖、五色沼湖沼群もあって写真撮影にもとてもおすすめ。東京からそれほど離れていないこともあって、私もこれまで幾度となく足を運んできました。
今回のメインスポットである猪苗代ハーブ園では、磐梯山や猪苗代湖を一望しながら季節に合わせてさまざまな花々を楽しめるのが特徴です。特に、このハーブ園で異彩を放ち、人気の撮影スポットなのがアンブレラスカイです。これ、一度撮ってみたかったのです!
猪苗代ハーブ園のアンブレラスカイは、水面にアンブレラを映し込みながら、幻想的に撮れるのが魅力。ちょっとこれを狙いに行ってみようと思ったわけです。
猪苗代へは郡山駅からJR磐越西線で向かいます。都内から高速バスで向かう方法もあります
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、18mm(35mm判換算27mm相当)、F8、1/150秒、ISO200、ホワイトバランス:AUTO、フィルムシミュレーション:PROVIA
撮影写真(7728×5152、18.5MB)
JR磐越西線の車窓から。磐梯山がよく見えます
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、18mm(35mm判換算27mm相当)、F8、1/180秒、ISO400、ホワイトバランス:AUTO、フィルムシミュレーション:Velvia
撮影写真(7728×5152、17.2MB)
ハーブ園で撮影した写真を見ていく前に、今回使用した「X-T5」について解説しましょう。
本カメラは、APS-Cサイズの撮像素子を搭載するミラーレスカメラです。有効画素数は約4020万画素。一眼レフスタイル「X-Tシリーズ」の最新モデル(2022年11月発売)です。
最大の特徴は、第5世代の撮像素子「X-Trans CMOS 5 HR」と画像処理エンジン「X-Processor 5」を積んでいること。4000万画素を超えるAPS-Cセンサーというのは相当にインパクトがあります。画質はもちろんのこと、AFの被写体検出機能も非常にすぐれていて、さまざまな被写体を狙い通りに追尾できます。
そして、オシャレなデザインも大きな魅力でしょう。静止画撮影に主眼を置くことで、前モデル「X-T4」よりもひと回り小型・軽量化されています。3つの操作ダイヤルは、これまでの「X-Tシリーズ」を踏襲したもの。このあたりのアナログ感もいいですね。
「X-T5」+「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」。今回の撮影は、まずこの標準ズームレンズとの組み合わせで撮っていきました。カメラボディのサイズは129.5(幅)×91(高さ)×63.8(奥行)mmで、重量は約557g(バッテリー、メモリーカードを含む)
液晶モニターは3方向のチルト式。ここには掲載していませんが、横位置だけでなく、縦位置にも対応。ローアングルの撮影で重宝します
ダイヤルは感度ダイヤル、シャッタースピードダイヤル、露出補正ダイヤルの3つ。感度はISO125から常用できるようになりました(前モデル「X-T4」ではISO160)
被写体検出は、動物全般に鳥やクルマなど6種類から選択できます。もちろん、人物の顔や瞳の検出機能も搭載しています
富士フイルムのデジタルカメラの代名詞「フィルムシミュレーション」は19種類。仕上がりイメージや被写体に合わせてうまく選択したいです
猪苗代ハーブ園へは、猪苗代駅から無料のシャトルバスを使って向かいました。車で10分程度の距離です。猪苗代駅周辺はレトロな雰囲気がとてもフォトジェニックな場所。ハーブ園を見た後にスナップすることにしました。
素朴な佇まいの猪苗代駅。小さくてかわいらしいです
猪苗代ハーブ園へは、猪苗代駅から無料のシャトルバス(要予約)で。これはその車窓からの風景。田んぼと磐梯山が雄大に広がります
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、21mm(35mm判換算32mm相当)、F4、1/950秒、ISO400、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia
撮影写真(7728×5152、20.1MB)
猪苗代ハーブ園に到着! ややイメージと違って、エントランスは素朴な印象。このハーブ園は、ホテルリステル猪苗代の敷地内にありますが、宿泊客でなくても入場料を払えば(大人450円)、誰でも訪ねることができます
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5、1/480秒、ISO400、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia
撮影写真(7728×5152、22.1MB)
園内に入りビニールハウスを通っていくと、大量のハート型のバルーンがお出迎え。その先にアンブレラスカイがあります。訪れた日は平日で、オープンと同時に入ったので、人も少なくじっくり撮影できました。
ハートのアーチをくぐります
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5、1/280秒、ISO400、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia
アンブレラスカイに到着! 誰もいなかったので、じっくり撮影できました。まずは、縦位置で垂直水平を意識しながら。天気や時間帯によって光の入り方が変わるため、同じシーンでもさまざまな切り取り方ができそうです
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5、1/320秒、ISO400、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia
撮影写真(5152×7728、24.4MB)
天井から下がったカラフルな傘たち
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、55mm(35mm判換算83mm相当)、F4.5、1/1500秒、ISO400、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia
撮影写真(7728×5152、24.4MB)
広角端で銅像にぐっと近づき、背景に傘を入れ込んで撮ってみる
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、18mm(35mm判換算27mm相当)、F2.8、1/2200秒、ISO400、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia
撮影写真(7728×5152、19.3MB)
地面に落ちた傘の影を露出アンダー目に撮ってみる
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、55mm(35mm判換算83mm相当)、F8、1/5000秒、ISO400、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia
撮影写真(5152×7728、22.6MB)
撮影しているところを背後から。この場所は、人を絡めて撮るのも面白いですね
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5、1/75秒、ISO250、ホワイトバランス:蛍光灯2、フィルムシミュレーション:Velvia
時間を変えて撮ってみました。結構な時間、いすわってしまいました……
X-T5、XF30mmF2.8 R LM WR Macro、30mm(35mm判換算45mm相当)、F4、1/300秒、ISO400、ホワイトバランス:水中、フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ
撮影写真(7728×5152、22.9MB)
アンブレラスカイを撮り、ハーブ園へ。向こうに猪苗代湖が見えます。10万平方メートルの敷地にハーブが約400種類栽培されているそうです
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、55mm(35mm判換算83mm相当)、F8、1/680秒、ISO400、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi
冒頭でも述べましたが、「X-T5」はAPS-Cサイズの撮像素子ながら有効約4020万画素という高画素が非常に魅力的。自然風景も高精細に描き出してくれます。
絞り値F8で撮影。私の訪れた6月はポピーやラベンダーがきれいに咲き誇っていました。近景から遠景まで、非常にシャープな仕上がりです
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、23mm(35mm判換算35mm相当)、F8、1/150秒、ISO125、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia、カラークローム・エフェクト:強
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、55mm(35mm判換算83mm相当)、F8、1/300秒、ISO200、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia、カラークローム・エフェクト:強
撮影写真(7728×5152、24.7MB)
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、36mm(35mm判換算54mm相当)、F8、1/340秒、ISO125、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ、カラークローム・エフェクト:強
撮影写真(7728×5152、19.0MB)
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、36mm(35mm判換算54mm相当)、F8、1/180秒、ISO64、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ、カラークローム・エフェクト:強
撮影写真(7728×5152、18.7MB)
前モデル「X-T4」の低感度側の常用感度はISO160スタートでしたが、「X-T5」はISO125から利用できます。低感度側の拡張感度はISO64から利用可能。上の2枚の写真は「X-T5」のISO125とISO64で撮り比べたものですが、ISO64は輪郭部に気になるようなにじみもなく、実用性はかなり高い印象。明るい場所での低速描写などで効果を発揮しそうです。
ちなみに園内では、著名なカナダ人彫刻家による十二支の巨木彫刻が見られます。前作例の彫像もそのひとつ
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、55mm(35mm判換算83mm相当)、F5、1/2000秒、ISO320、ホワイトバランス:蛍光灯2、フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ、カラークローム・エフェクト:強
撮影写真(7728×5152、18.0MB)
今回、ハーブ園でメインに使用した「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」についても少し解説します。
本レンズは35mm判換算の焦点距離で広角27mm相当から中望遠84mm相当までの画角をカバーする、使い勝手のよい標準ズームレンズです。最大撮影倍率は0.15倍(望遠端)。手ブレ補正機能の効果は3.5段分です。寄り引きの自由度が高く、背景ボケもきれい。価格.com最安価格は62,090円(税込、2023年7月31日時点)で、描写力のよさを考慮するとリーズナブルな価格なのもうれしいです。
本レンズの広角端の開放絞り値はF2.8。このスペックの特徴をうまくいかして背景ボケを作りたいところです。奥行きのある場所であれば、寄り引き次第でこれだけ大きなボケを背景に演出できます
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、18mm(35mm判換算27mm相当)、F2.8、1/400秒、ISO200、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia
撮影写真(7728×5152、19.2MB)
小さな昆虫も、このくらいまで大きく写せます。「X-T5」のAF精度が高く、動体も気持ちよく撮影できました
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、55mm(35mm判換算83mm相当)、F4、1/2000秒、ISO200、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia
撮影写真(7728×5152、18.4MB)
望遠側の開放絞り値はF4で、それほど明るいわけではありませんが、ここでも寄り引きを工夫することで浅い被写界深度を実現できます
X-T5、XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、55mm(35mm判換算83mm相当)、F4、1/600秒、ISO320、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia
撮影写真(7728×5152、17.9MB)
ハーブ園で花々を撮るために使用した「XF30mmF2.8 R LM WR Macro」は、35mm判換算で焦点距離46mm相当の画角。つまり、本レンズはマクロレンズと標準・単焦点レンズの両側面を持ち合わせているのが大きな特徴と言えます。ハーブ園の後は、猪苗代駅周辺をスナップしましたが、本レンズでそのほとんどを撮影しました。それだけ使い勝手がよかったです。
ちなみに、「X-T5」と「XF30mmF2.8 R LM WR Macro」は同じ時期に発売されています。マクロで寄った際のピント面の解像感には目を見張りますが、これは「X-T5」によるところが大きいと感じました。「X-T5」を用いることで、本レンズの能力が最大限に発揮されているわけです。
「X-T5」に「XF30mmF2.8 R LM WR Macro」をセットしたところ。コンパクトで携行しやすいフォルムです
絞り開放で撮影。やわらかさの中に解像感がしっかりあります。木漏れ日の玉ボケも美しいです
X-T5、XF30mmF2.8 R LM WR Macro、30mm(35mm判換算46mm相当)、F2.8、1/400秒、ISO400、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia、カラークローム・エフェクト:強
撮影写真(5152×7728、18.9MB)
X-T5、XF30mmF2.8 R LM WR Macro、30mm(35mm判換算46mm相当)、F5.6、1/105秒、ISO400、ホワイトバランス:電球、フィルムシミュレーション:Velvia
撮影写真(7728×5152、16.2MB)
X-T5、XF30mmF2.8 R LM WR Macro、30mm(35mm判換算46mm相当)、F2.8、1/400秒、ISO400、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia
撮影写真(5152×7728、17.1MB)
「X-T5」は3方向チルト式のモニターを採用しているので、こうした小さな植物もローアングルからストレスなく狙えます
X-T5、XF30mmF2.8 R LM WR Macro、30mm(35mm判換算46mm相当)、F2.8、1/850秒、ISO125、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia、カラークローム・エフェクト:強
撮影写真(7728×5152、17.8MB)
猪苗代ハーブ園での撮影を終えて、猪苗代駅に戻ります。周辺には野口英世記念館などもあります
X-T5、XF30mmF2.8 R LM WR Macro、30mm(35mm判換算46mm相当)、F8、1/800秒、ISO200、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:Velvia、グレイン・エフェクト:強度-強/粒度-大
遅いお昼に喜多方ラーメンをいただきました
X-T5、XF30mmF2.8 R LM WR Macro、30mm(35mm判換算46mm相当)、F5.6、1/15秒、ISO400、ホワイトバランス:蛍光灯1、フィルムシミュレーション:クラシッククローム、グレイン・エフェクト:強度-強/粒度-大<
最後にぶらりと猪苗代の街並みをスナップ。こうした撮影でも「XF30mmF2.8 R LM WR Macro」は大活躍。気軽に思うまま、目の前の情景と対峙できます
X-T5、XF30mmF2.8 R LM WR Macro、30mm(35mm判換算46mm相当)、F8、1/1600秒、ISO400、ホワイトバランス:AUTO(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:クラシッククローム
X-T5、XF30mmF2.8 R LM WR Macro、30mm(35mm判換算46mm相当)、F2.8、1/480秒、ISO400、ホワイトバランス:AUTO(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:クラシッククローム
撮影写真(7728×5152、19.6MB)
X-T5、XF30mmF2.8 R LM WR Macro、30mm(35mm判換算46mm相当)、F11、1/340秒、ISO400、ホワイトバランス:AUTO(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:ACROS、グレイン・エフェクト:強度-強/粒度-大
撮影写真(7728×5152、23.0MB)
X-T5、XF30mmF2.8 R LM WR Macro、30mm(35mm判換算46mm相当)、F11、1/1100秒、ISO400、ホワイトバランス:AUTO(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:ACROS、グレイン・エフェクト:強度-強/粒度-大
X-T5、XF30mmF2.8 R LM WR Macro、30mm(35mm判換算46mm相当)、F8、1/300秒、−ISO200、ホワイトバランス:日陰、フィルムシミュレーション:ETERNA、グレイン・エフェクト:強度-強/粒度-大
猪苗代は何度か足を運んだことのある場所でしたが、ハーブ園に行ったのは初めて。ハーブ園はホテルの中にあるため、今度は宿泊を兼ねてのんびり巡ってみたいなと思いました。ちなみに、園内は季節ごとに見られる植物が変わりますし、アンブレラスカイも開催期間が決まっています。お立ち寄りの際は、事前に情報を確認のうえ、足をお運びください。
今回携帯した「X-T5」はスタイリッシュなボディがほんとにかっこよかったです。最新の画像処理エンジンのインパクトも大きく“APS-C機の最先端”を見た思いです。今回は2本のレンズをピックアップしましたが、いろいろな「Xマウントレンズ」と組み合わせてさまざまな画作りにチャレンジできそうです。
さあ、夏本番で暑い日が続きますが、体調に気をつけながら写真を撮っていきましょう! では、また次回の旅まで!
フォトグラファー。写真家テラウチマサト氏に師事後、2003年独立。ポートレートを中心に活動。2022年1月に新著『上手い写真は構図が9割』(玄光社)発売。ポーラミュージアムアネックス(2015年/銀座)など写真展も多数。Profoto公認トレーナー。
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