旅を楽しむ、カメラを楽しむことをコンセプトに、フォトグラファーの河野鉄平(通称テッピー)さんが、カメラ片手に旅に出る連載企画。今回は、世界遺産の町として知られる岩手県の平泉へ。平安時代に造られた歴史的建築物を堪能してきました。
今回の旅のお供は、ラージフォーマットのミラーレスカメラ、富士フイルム「GFX100 II」。有効約1億200万画素のCMOSセンサー(サイズ:43.8×32.9mm)を採用しています。このカメラで平泉の史跡を高画質に切り取っていきます。レンズは主に「GF55mmF1.7 R WR」を使用。35mm判換算で44mm相当の単焦点レンズです
掲載する写真作例について
すべてJPEG形式(Lサイズ、スーパーファイン)で撮影しています。
こんにちは、テッピーです。
あっというまに年末ですね。皆さまはどのようにお過ごしでしょうか?
さて、今回の旅先は、岩手県南西部に位置する平泉です。平安時代末期にこの地で栄えた奥州藤原氏による遺構が数多く残る土地で、これらの史跡や名勝は2011年にユネスコの世界遺産に登録されています。ここでは、当時の繁栄を垣間見ることができる中尊寺や毛越寺(もうつうじ)を中心に町を巡っていきます。
起点となるJRの平泉駅。一ノ関駅から東北本線で約10分の距離です。平泉駅から徒歩でおのおのの史跡をスナップしていきます
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F2、1/1300秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、39.4MB)
駅のロータリー付近でこちらを見つめる不思議な物体を発見……
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F1.7、1/420秒、ISO80、ホワイトバランス:日陰、フィルムシミュレーション:ACROS、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、37.1MB)
平泉の旅で「GFX100 II」を使用しようと考えたのは、豊かな階調表現を実現するラージフォーマットのカメラが、趣ある歴史的建造物を写すのにぴったりではないかと思ったからです。撮影は11月中旬。紅葉の時期にも重なり、自然風景と絡めながら情感豊かに町を撮影できそうです。
まずは、平泉駅から毛越寺を目指します。ゆっくり歩いて15分ほどの距離です。
道端の風景をスナップしながら向かいましたが、やはりラージフォーマットはすてき。豊かなボケやドラマチックな立体感は、ファインダーから眺めているだけでも息を呑みます。写欲がどんどん掻き立てられます。
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F2、1/110秒、ISO80、ホワイトバランス:日陰、フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、44.7MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F3.6、1/75秒、ISO80、ホワイトバランス:6000K、フィルムシミュレーション:クラシックネガ、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(8736×11648、41.4MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F2、1/40秒、ISO80、ホワイトバランス:6000K、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、43.2MB)
先に掲載した花・植物の作例を見てもわかるように、ラージフォーマットで撮影した写真には、フルサイズにはない広がりのある世界観・臨場感が、その画質にありありと現れています。
今回使用した「GFX100 II」は、2023年9月発売の最新モデル。従来モデルの「GFX100」や「GFX100S」との決定的な違いは、新開発の撮像素子「GFX 102MP CMOS U HS」と最新の画像処理エンジン「X-Processor5」が搭載されていることです。これによりAF精度が大幅に向上したほか、連写速度も最高約8コマ/秒を実現するなど、大きな進化を遂げました。
今回の撮影ではAFや連写性能については、そこまで深掘りできませんでしたが、新搭載の先端テクノロジーの影響は、むしろ新たに利用可能になった低感度側の常用感度や手ブレ補正機能にインパクトを感じました。このあたりの詳細は記事の後半で取り上げます。
ボディサイズはEVF装着時で152.4(幅)×117.4(高さ)×98.6(奥行)mm。重量は同じくEVF装着時で1030g(バッテリー、メモリーカードを含む)。ラージフォーマットのカメラとしては薄型で、携行しながら撮影しやすいサイズ感です
本機を利用する際はEVFにも注目してほしいです。倍率1.0倍、解像度は約944万ドットで、ファインダーからの眺めは驚くほどクリアで高精細です。ファインダーを使って撮ることが多い人にとって、これは非常に重要なスペック。臨場感のある見え方で、使いやすかったです。なお、EVFは着脱式。取り外して、EVFなしでも撮影が行えます
天面のサブディスプレイも大きくて見やすいです。表示内容の切り替えもできて、撮影スタイルに応じて選択できます。レリーズボタン近くの3連ファンクションボタンも便利。利用頻度の高い機能を割り当てられます
背面ボタンもシンプルで好感が持てます。フォーカスレバーもしっかり搭載。コマンドダイヤルは背面とレリーズボタン近くの2か所に。撮影時の主要機能は右上の「Q」ボタンから設定できます
液晶モニターは236万ドットの3軸チルト式。縦構図にも対応します
ローポジションから被写体を狙いました。こうした縦構図での描写も、3軸チルト式であればしっかり画作りできます。なお、この作例では花に蜂が止まっています。拡大表示しても解像感が十分。こういうところに、ラージフォーマットの威力をまざまざと見せつけられる思いです
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F2、1/220秒、ISO80、ホワイトバランス:6000K、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(8736×11648、44.1MB)
モードダイヤルには6個のカスタムモードが搭載され、好きな内容で登録可能。今回はいくつかのフィルムシミュレーション別に、コントラストなどを微調整したものをカスタム登録してみました
カスタム登録して利用したフィルムシミュレーションの「ACROS」。カメラ内でトーンカーブをハイライトトーン+1、シャドウトーン+1にして、コントラストを自分好みに調整しました
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F8.0、1/30秒、ISO80、ホワイトバランス:日陰、フィルムシミュレーション:ACROS、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、42.6MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F6.4、1/70秒、ISO80、ホワイトバランス:日陰、フィルムシミュレーション:ACROS、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、46.6MB)
なお、「GFX100 II」に関しては、以下のレビューも参考にしてみてください。
旅は、平泉駅から毛越寺に移ります。
毛越寺は850年に慈覚大師円仁によって開山されたと伝わる由緒あるお寺。この毛越寺最大の見どころが浄土庭園です。浄土庭園は、極楽浄土の世界を庭園として表現したもの。毛越寺の浄土庭園は平安時代の様式をそのままに残し、規模も大きく雄大です。
毛越寺の浄土庭園。ちなみに、浄土庭園は回遊式。ぐるっと庭園を巡りながら、さまざまな景色を楽しめるのが大きな魅力です
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F2、1/680秒、ISO200、ホワイトバランス:5200K、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、45.7MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F4.0、1/27秒、ISO80、ホワイトバランス:6000K、フィルムシミュレーション:クラシックネガ、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、54.7MB)
先に少し述べましたが、低感度側の常用感度が広がったことも(ISO80から利用できる)、「GFX100 II」の大きな進化点です。ラージフォーマットなので、より広いダイナミックレンジと低ノイズを狙ってISO80を多用したくなります。
しかし撮影を行った日は、時折小雨がぱらつくようなあいにくの空模様。そもそもシャッタースピードが遅くなりがちでしたが、「GFX100 II」は最大8段分の補正効果を発揮するボディ内手ブレ補正機能を搭載しています。通常であれば感度を上げて撮影するような場所でも、ISO80を利用しながら撮影できたことは驚きです。手持ちでどんどん撮れてしまいます。
絞り込んで撮影。1/2.8秒という遅いシャッタースピードでも、手ブレの影響を抑えて撮影できました。樹木と地面のシャープな解像感が気持ちいいです
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F11、1/2.8秒、ISO80、ホワイトバランス:6000K、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、56.1MB)
こちらも1/5秒という低速です
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F11、1/5秒、ISO80、ホワイトバランス:日陰、フィルムシミュレーション:ACROS、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、44.3MB)
注目したいのは、こうした精度の高い手ブレ補正がラージフォーマットのカメラで行えていることです。通常のフルサイズ以下のデジタル一眼カメラを使用しているときと同様の感覚でスナップできます。
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F8、1/14秒、ISO200、ホワイトバランス:5200K、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、65.2MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F2.8、1/38秒、ISO80、ホワイトバランス:日陰、フィルムシミュレーション:ACROS、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、42.5MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F1.7、1/58秒、ISO200、ホワイトバランス:5200K、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、46.8MB)
毛越寺を後にし、中尊寺へ。こちらも毛越寺と同じく、850年に慈覚大師円仁によって開山されたと言われていますが、12世紀のはじめに奥州藤原氏初代清衡公によって大規模な造営が行われ、現在の形が築かれていったのだとか。
境内は広く、かつ思った以上に勾配が急で、結構ハアハア息をつきながら進んでいきました。月見坂という長い坂道を登った先に本堂が見えてきます。その先に有名な黄金の阿弥陀堂である「金色堂」があります。
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F1.7、1/150秒、ISO400、ホワイトバランス:6000K、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード、ダイナミックレンジ:200%
撮影写真(11648×8736、53.2MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F4.0、1/25秒、ISO400、ホワイトバランス:6000K、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード、ダイナミックレンジ:200%
撮影写真(11648×8736、63.6MB)
ここまでの写真を見ていただいてご承知のとおり、今回の旅では「GF55mmF1.7 R WR」が大活躍しました。と言いますか、このレンズには、一度使い出したら、なかなか手放せない自然さ(レンズ交換する必要を感じさせない)があります。
本レンズは「GFX100 II」と同じタイミングで発売となった最新レンズで、35mm判換算で44mm相当という、スナップでも非常に扱いやすい画角です。開放値は単に明るいだけでなく解像感もしっかりあり、ラージフォーマットならではのダイナミックなボケが、さまざまな表現を可能にします。
「GF55mmF1.7 R WR」との組み合わせ。レンズのサイズは約94.7(最大径)×99.3(全長)mmで、重量は約780g。絞り羽根は円形絞りの11枚で、最大撮影倍率は0.17倍
絞りリングは設定方法を3種類から選択可能。目盛りで自由に設定できるほか、コマンドダイヤルでの設定が可能になるCポジション、カメラが自動で撮影条件に適した絞り値を選択するAポジションから選べます
今回の旅では、広角撮影用に開放F4通しの超広角ズームレンズ「GF20-35mmF4 R WR」も携行しました。サイズは約88.5(最大径)×112.5(全長)mmで、重量は約725g。利用しやすいサイズ感です。絞り羽根は円形絞りの9枚で、最大撮影倍率は0.14倍(望遠端)
開放値で撮影。ピントのあった面はシャープで解像感十分。焦点距離44mm相当の画角は汎用性があって、スナップ向きです
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F1.7、1/30秒、ISO400、ホワイトバランス:6000K、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード、ダイナミックレンジ:200%
撮影写真(8736×11648、55.9MB)
絞り値F4で撮影。センサーサイズが大きいため、絞っても奥行きのある場所では、豊かなボケ感を演出できます
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F4.0、1/25秒、ISO400、ホワイトバランス:6000K、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード、ダイナミックレンジ:200%
撮影写真(11648×8736、51.0MB)
こちらも手持ちで撮影しています
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F2.8、1/6.5秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、54.8MB)
「GF20-35mmF4 R WR」を用いて、広角端16mm相当で撮影。自然な遠近感で情景をダイナミックにとらえられます。自然風景、建築物の撮影で本領を発揮するアイテムでしょう
GFX100 II、GF20-35mmF4 R WR、20mm(35mm判換算16mm相当)、F16、2.3秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド、ダイナミックレンジ:100%、三脚使用
撮影写真(11648×8736、57.9MB)
GFX100 II、GF20-35mmF4 R WR、20mm(35mm判換算16mm相当)、F4.0、1/25秒、ISO800、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、56.7MB)
「GFX100 II」では、仕上がり設定「フィルムシミュレーション」に「REALA ACE」が新たに追加されたのも大きなポイントです。正確な色再現と、メリハリのある階調表現が楽しめるモードですが、やや彩度が弱まるのも特徴。今回は光が乏しく、やや色みもくすみがちだったため、あまり使用する機会はありませんでした。ここでは参考までに、「PROVIA/スタンダード」と「ASTIA/ソフト」との比較を掲載します。
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F2、1/80秒、ISO80、ホワイトバランス:5200K、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、40.7MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F2、1/80秒、ISO80、ホワイトバランス:5200K、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、41.7MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F2、1/80秒、ISO80、ホワイトバランス:5200K、フィルムシミュレーション:REALA ACE、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、39.7MB)
まだ「REALA ACE」のフィルムが購入できた時代、私もよくこのフィルムを使っていましたが、非常に滑らかな階調表現だったことはとても印象に残っています。フィルムの「REALA ACE」の感度はISO100でしたので、そういった意味でもこのフィルムシミュレーションは、低感度で使いたいモードですね。
日が暮れるタイミングに合わせて高感度で撮ってみました。「GFX100 II」の常用感度の上限はISO12800ですが、ISO3200までは思った以上にノイズが少なく実用的でした。感覚的には高感度側はISO800〜3200程度の間が目安になりそうです
GFX100 II、GF20-35mmF4 R WR、35mm(35mm判換算28mm相当)、F9、1/9秒、ISO3200、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、62.4MB)
中尊寺の境内では期間限定で夜のライトアップが行われていました(2023年のライトアップはすでに終了しています)
GFX100 II、GF20-35mmF4 R WR、35mm(35mm判換算28mm相当)、F11、8秒、ISO200、ホワイトバランス:蛍光灯3、フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド、ダイナミックレンジ:100%、三脚使用
撮影写真(11648×8736、64.9MB)
GFX100 II、GF20-35mmF4 R WR、20mm(35mm判換算16mm相当)、F11、14秒、ISO80、ホワイトバランス:蛍光灯2、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、ダイナミックレンジ:100%、三脚使用
撮影写真(11648×8736、64.6MB)
GFX100 II、GF20-35mmF4 R WR、35mm(35mm判換算28mm相当)、F4、1/13秒、ISO1600、ホワイトバランス:蛍光灯2、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(11648×8736、50.2MB)
ラージフォーマットのカメラは画質だけでなく、階調の豊かさやボケの美しさなどにも多大な魅力があります。このセンサーサイズだからこそ生み出せる、スケールの大きな表現にチャレンジできるわけです。
「GFX100 II」の最大の魅力は、こうしたラージフォーマットカメラの特性に、機動力や携行性の良さが加わっていることです。スナップカメラとしても利用価値が高いと感じました。特に、手ブレ補正機能は非常に優秀。暗い場所での撮影が多かったこともありますが、このクラスのカメラで手ブレを気にせず手持ちで撮れるというのは、驚くべきことです。高画質でしっかりとらえるべく、今回の撮影では三脚も持参していましたが、その出番は数えるほどしかありませんでした。
被写体検出機能は「X-T5」「X-H2」譲りです。一般的なポートレートや動物、乗り物であれば、十分効果を発揮し、精度が高いです。今回の旅でも、画角に入る人物や自動車など、それほど大きくない被写体に対しても、しっかり追尾しAFを合わせ続けてくれました。瞳へのピント合わせも正確です。
いっぽうで、AF性能が向上しているとはいえ、激しく動く被写体や決定的な瞬間を逃したくない場面では、パフォーマンスは落ちます。スナップシーンで言えば、近くで走り去る電車や激しく動き回る動物、昆虫などは、現在のAF性能では満足できません。センサーサイズがフルサイズ以下のデジタル一眼カメラに、撮影機会を譲ったほうがよさそうです。
ただ、そもそもラージフォーマットのカメラにそこまでの働きを求めるのも酷かもしれません。使う側もそこまで期待しないのではないでしょうか。ラージフォーマットカメラならではの表現を撮る側も模索したいです。
楽しみなのは、「GFX100 II」の発売で、より少ない画素数でコンパクトな「GFX50」シリーズが、今後どんな進化を遂げていくのかということ。富士フイルムの送り出すラージフォーマットのカメラへの期待は、ますます高まる気がします。
平泉は少し天気が悪かったですが、カメラの個性にも多いに助けられて渋くも味わい深い写真が数多く残せました。四季折々で撮れる風景が変わるのもこの界隈の魅力。時期を見て、改めて足を運んでみたいです。