旅とカメラは人生を彩るスパイスのようなもの。そして、旅とカメラは相性も抜群。旅を楽しむ、カメラを楽しむことをコンセプトに、フォトグラファーの河野鉄平(通称テッピー)が、カメラ片手に旅に出る連載企画。今回は、世界遺産の富岡製糸場で有名な群馬県の富岡市に向かいました。
旅のお供は、ソニー「α6700」とシグマ「10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary」。今回は気軽にのんびりと超広角ズームレンズ1本での旅路です
掲載する写真作例について
写真はすべてJPEG形式(最高画質)で撮影しています。Dレンジオプティマイザー:オート、周辺光量補正:オフ(一部オート)、倍率色収差補正:オート、歪曲収差補正:オートに設定しています。
こんにちは、テッピーです。
今回の旅先は群馬県の富岡です。富岡といえば、世界遺産にも登録されている富岡製糸場が有名です。これは当時盛んだった生糸の生産拠点として造られたものでした。富岡製糸場はもちろん今回の旅でいちばん楽しみにしているメインスポット。それ以外にも、富岡の町中もゆるりとじっくりスナップしていきました。
富岡製糸場へは上信鉄道の電車で向かいます。上州富岡駅が最寄りの駅で、JR高崎駅からは40分ほどで着きます
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5.6、1/250秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:VV2
撮影写真(6192×4128、19.3MB)
とてもデザイン的でおしゃれな上州富岡駅。富岡製糸場の木骨煉瓦造りを参考に造られたものだとか
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、10mm(35mm判換算15mm相当)、F5.6、1/1000秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:VV2
撮影写真(6192×4128、25.2MB)
上州富岡駅にあった繭をモチーフにした掛け時計。これも富岡製糸場で扱われていた生糸の繭に由来するものでしょう
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、10mm(35mm判換算15mm相当)、F5.6、1/2000秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:VV2
撮影写真(6192×4128、22.1MB)
富岡市のイメージキャラクター「お富ちゃん」も駅前にいます
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5.6、1/1250秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:VV2
撮影写真(6192×4128、20.7MB)
この旅では建物を中心にスナップしたいと思っていたので、超広角ズームレンズ「10-18mm F2.8 DC DN」はピッタリの1本です。本レンズは35mm判換算で焦点距離15〜27mm相当の画角をカバーする、開放F2.8通しの大口径ズーム。最短撮影距離は11.6cm(広角端)、最大撮影倍率は1:4(広角端)で接写に強いことも特徴です。今回は「α6700」に取り付けたのでソニーEマウント用を使いましたが、ライカLマウント用と富士フイルムXマウント用もラインアップされています。
本レンズ最大の魅力は、コンパクトなフォルムに高性能がしっかり詰まっていることです。私が使ったソニーEマウント用のサイズは72.2(最大径)×64.0mm(全長)で、重量は約255g。「α6700」とも相性抜群で、携行性にすぐれているため、まるで自分の一部のように軽快に扱いながら撮影に臨めます。
ちなみに、レンズの名称“Contemporary”は、高性能で小型・軽量を表すシグマのプロダクトラインを示しています。
レンズフードを外した状態。小型・軽量の「α6700」ともしっくりなじみます。なお、「α6700」は重量約493g(バッテリー、メモリーカードを含む)ですので、レンズを含めた総重量は約748g。「α6000シリーズ」のカメラボディは軽量かつフラットなフォルムがひとつ大きな特徴です
付属のレンズフードは、プッシュオン式の花形フードを採用。回して取り付けるバヨネット式ではなく押し込むタイプで、簡単操作で装着できます
シグマらしいおしゃれなデザインと手触りも個人的には魅力です。レンズ構成は10群13枚、絞り羽根枚数は7枚、最小絞りはF22です
「Contemporaryシリーズ」を表す“C”のマークが筐体に入っています
カメラボディ「α6700」についても少し解説を。APS-Cサイズの撮像素子を採用する高性能モデルで、有効約2600万画素の裏面照射型「Exmor R」CMOSセンサーと最新の画像処理エンジン「BIONZ XR」を搭載しています。こちらも小さなボディに高性能がぎゅっと詰まった1台。ボタンやダイヤルの数が少なく、シンプルな操作性も魅力ですね。
なお、「α6700」の内容については、以下の記事にも詳細が載っているのでご覧ください。
上州富岡駅から富岡製糸場までは、徒歩で10〜15分ほどの距離です。散策しながら向かっていきます。平成を飛び越えて、昭和の雰囲気の漂う街並みはとてもフォトジェニック。いっぽうで、きれいに整備された道路や建物も多く、いろいろな表情を持つ町だなと思った次第。広角レンズの効果を生かしながら、スナップしていきます。
駅前にある富岡倉庫。元々は明治期に造られたもので、繭などの保存、乾燥のために使われていたそうです。今は交流拠点としてリニューアルされ、建物内にはカフェやお土産物店などが入っています
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5.6、1/800秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:VV2
雰囲気のある倉庫の壁にパースを強調しながらぐっと寄る。こうした切り取り方も広角レンズならではです
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、10mm(35mm判換算15mm相当)、F11、1/200秒、ISO100、-1.0EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:FL
町中はモノクロがよく合う被写体が多いです。ちなみに、カメラメニューにある「レンズ補正」内の歪曲収差補正はオートの設定がおすすめ。広角レンズのため、結構歪みが大きく出ます。このカットは歪曲収差補正が有効になっている写真です
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、10mm(35mm判換算15mm相当)、F11、1/30秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:BW
先ほどの写真に対し、歪曲収差補正をオフにして撮影しました。だいぶ周囲の歪みが大きいです
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、10mm(35mm判換算15mm相当)、F11、1/30秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:BW
「10-18mm F2.8 DC DN」は接写も得意。今回の撮影は基本的に周辺光量補正をオフにし、意図的に周辺部を減光させて絵作りしました。これは特に絞り開放付近を利用しながら接写する際などに効果が大きく出ます。周辺光量補正も「レンズ補正」内から設定変更できます
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、10mm(35mm判換算15mm相当)、F2.8、1/250秒、ISO100、-1.3EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:BW
富岡製糸場までの近道を発見! とてもレトロな小道です
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、17mm(35mm判換算26mm相当)、F5.6、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:VV2
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、17mm(35mm判換算26mm相当)、F2.8、1/400秒、ISO100、-0.7EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:VV2
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、17mm(35mm判換算26mm相当)、F2.8、1/800秒、ISO100、-0.7EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:VV2
ほどなくして富岡製糸場に到着。うかがった日は平日ということもあって、一般客だけでなく、社会科見学の小・中学生などもたくさんいらっしゃっていて、とても賑わっていました。
エントランスを入ってすぐに見えてくる東置繭所。ここに繭を保管していました。人のいないタイミングを狙ってすかさず1枚。フランスによる技術を用いた木骨レンガ造りが美しいです
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、10mm(35mm判換算15mm相当)、F8、1/320秒、ISO100、-0.7EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:VV2
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、10mm(35mm判換算15mm相当)、F8、1/640秒、ISO100、-0.7EV、ホワイトバランス:AWB、クリエイティブルック:FL
富岡製糸場は1872年に設立された官営模範工場。150年以上前に造られたものがきれいに保存され、こうして残っていることに驚かされました。第二次世界大戦で被害を受けなかったことに加え、戦後も当時の管理会社が保存に尽力したことが良好な状態で保存できた大きな要因です。
この一帯「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産として登録されているわけですが、古い建物群は国宝や重要文化財に、敷地は国の史跡に指定されています。この一帯の希少性はこうしたところからもうかがえますね。
繰糸所内の自動繰糸機。壮観です。こういう情景は超広角で遠近感を出しながら撮りたいです。寄り引きを工夫することで、全景から近景まで幅広くさまざまな様子が切り取れます
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、10mm(35mm判換算15mm相当)、F4、1/60秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:FL
モノクロで撮っても絵になります
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、13mm(35mm判換算20mm相当)、F2.8、1/30秒、ISO640、-0.3EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:BW
ぐっと主題に近づくことで、独特の臨場感が表現できるのも広角レンズの魅力です
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、13mm(35mm判換算20mm相当)、F2.8、1/30秒、ISO640、-0.3EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:BW
繰糸所の作業は、窓から入る自然光で室内を明るくしながら行っていたといいます。ですので、太陽の光が燦々と入る小高い立地を選んで建てられました
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、10mm(35mm判換算15mm相当)、F2.8、1/1600秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:BW
今回の旅では、冒頭でも述べたとおり、建物を撮るので広角レンズをチョイスしたのですが、富岡製糸場は大きな建築物が多く、10mm(35mm判換算15mm相当)の超広角が本当に役立ちました。狭い室内景観も広くとらえることができますし、F2.8の開放絞り値を利用することで表現の幅も広がります。
西置繭所。こちらでも繭を保管していました
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、10mm(35mm判換算15mm相当)、F8、1/320秒、ISO100、-0.7EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:ST
手前に見えるのは鉄水溜で巨大な水槽です。400トンもの水を溜めておくことができたそうです
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5.6、1/800秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:VV
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5.6、1/800秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:BW
レンガの真ん中の印は、当時建設中にレンガを焼いた職人さんたちが付けたものだそうです。印を探しながら、建物を眺めるのも楽しいですね
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5、1/80秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:ST
見学していて知ったのですが、場内には宿舎や社宅もあって、製糸場が単に“仕事場”であっただけでなく、“生活する場所”にもなっていたことに驚きました。こうした宿舎や社宅も場内に残されています。昭和30年代の社宅で暮らす家族や子どもたちの写真を見て、当時の暮らしをそのまま感じることができるのがすてきだなと思いました。
場内に保存されている社宅。当時の様子を想像しながら見て回るのは楽しいです
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、18mm(35mm判換算27mm相当)、F3.5、1/1250秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:ST
富岡製糸場にも「お富ちゃん」がいました
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、18mm(35mm判換算27mm相当)、F8、1/400秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:日陰、クリエイティブルック:SH
ちょうど早咲きの梅の花を発見。このように被写界深度を浅くして、ピンポイントで写す場面では、ややピントが合いにくかったです。こんなときはMFを活用したいです。難なく撮影できます
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、17mm(35mm判換算26mm相当)、F2.8、1/2500秒、ISO100、-0.7EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:SH
製糸場のすぐ横には、鏑川が流れています。そもそも富岡に製糸場ができたのは、元からこの地域で養蚕業が盛んだったからだとか
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、17mm(35mm判換算26mm相当)、F2.8、1/1600秒、ISO100、-0.7EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:SH
3時間ほど滞在し、帰路へ。出入り口には赤いポストが立っていました
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、18mm(35mm判換算27mm相当)、F8、1/200秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:ST
帰りもぷらぷら散策しながら駅まで向かいます
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、10mm(35mm判換算15mm相当)、プログラムオート、F8、1/1000秒、ISO100、-0.7EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:FL
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、18mm(35mm判換算27mm相当)、F2.8、1/4000秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:FL
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、18mm(35mm判換算27mm相当)、F11、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:ST
駅の途中で遅めのお昼に。とても王道的な支那そばをいただきました
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、16mm(35mm判換算24mm相当)、F2.8、1/125秒、ISO100、-0.7EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:FL
駅のホームに到着すると、さっそく電車が! とっさに設定を切り替えて連写! 「α6700」は被写体認識も安定していますし、この辺のピント合わせの精度、速さはさすがです
α6700、10-18mm F2.8 DC DN、18mm(35mm判換算27mm相当)、F2.8、1/3200秒、ISO100、-0.7EV、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:FL
今回は富岡製糸場を中心にスナップしていきましたが、いかがだったでしょうか。製糸場は当初、1時間ほど滞在すれば十分かな……と思っていましたが、3時間も滞在してしまう結果に。
本編の中でもお話しましたが、製糸場の歴史がそのまま当時の生活を反映する内容で、見て回っていてちょっとしたロードムービーを見たような気分になりました。富岡製糸場は1987年まで操業していたということですから、その歴史に幕を下ろしたのは本当につい最近なんですね。周辺の町並みもスナップしていて楽しかったです。こうした観光スポットの周辺には、良質なスナップエリアが隠れているものです。
「α6700」と「10-18mm F2.8 DC DN」は、建築物を主題にスナップする撮影では最強の組み合わせでした。軽くてどんどん撮ってしまいます。当然ながら、小さいからといって画質が悪いわけでもなく、非常に高画質で高精細。汎用性の高さを感じます。
最後に今回使用した「10-18mm F2.8 DC DN」の広角端10mmの使い方について補足を。冒頭でも述べたように本レンズは35mm判換算で焦点距離15〜27mm相当の画角をカバーします。超広角の10mm(15mm相当)は、ラインのはっきりした画面で用いると効果的です。ダイナミックに遠近感が強調でき、動きのある絵作りが楽しめます。いっぽう、風景を広く取り込む分、画面が間延びしやすい傾向も。安易に使うと失敗します。寄り引きを意識しながら空間が間延びしないように利用したいです。
望遠端18mm(27mm相当)は、ほぼよい入れ込み方が魅力の焦点距離です。そういった意味では、まず18mmから試してみて、必要に応じて少しずつ画角を広げていく。これも広角ズームレンズをうまく使いこなすためのテクニックです。ぜひ参考にしてみてください。
では、また次の旅でお会いしましょう!