旅を楽しむ、カメラを楽しむことをコンセプトに、フォトグラファーの河野鉄平(通称テッピー)が、カメラ片手に旅に出る連載企画「旅カメラ周遊記」。今回は、埼玉県坂戸市にある北浅羽桜堤公園で、早咲きの桜を撮影してきました! 桜を撮るコツを紹介しながら旅や公園の様子をレポートします。
明るい開放絞り値が魅力のタムロンのズームレンズ「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」を使用しました。ボディは、風景から動体までオールマイティーに活躍する、ニコンのフルサイズミラーレス「Z 8」です
掲載する写真作例について
写真はすべてJPEG形式(最高画質)で撮影しています。ヴィネットコントロール:標準、回折補正:オン、自動ゆがみ補正:オンに設定しています。
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F4、1/1600秒、ISO250、+1.3EV、ホワイトバランス:晴天(0、M0.25)、ピクチャースタイル:VIVID
撮影写真(8256×5504、13.5MB)
こんにちは、テッピーです。
今回は、早咲きの桜に会いに埼玉県坂戸市に行ってきました! 場所は北浅羽桜堤公園。ここは早咲き桜の名所です。例年、3月上旬から中旬にかけ、安行寒桜という大寒桜が公園内の越辺川沿いを彩り、多くの花見客で賑わいます。満開のタイミングを狙い、存分に桜の撮影を楽しんできました。
北浅羽桜堤公園は坂戸駅、北坂戸駅から公共バスで向かうことができます
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、35mm、F2.5、1/5000秒、ISO250、ホワイトバランス:晴天、ピクチャースタイル:VIVID
駅前にあった坂戸市のキャラクター「さかっち」。文字が消えていますが、坂戸よさこいをしているところのようです
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、71mm、F2.5、1/13000秒、ISO250、ホワイトバランス:晴天、ピクチャースタイル:VIVID
最寄りのバス停から歩いて10分ほどで、北浅羽桜堤公園に到着。咲き誇る桜並木が遠くからでも確認できます
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、85mm、F8、1/250秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:AUTO1、ピクチャースタイル:AUTO
今回使用した「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」は、準広角35mmから望遠150mmまでの焦点距離を開放絞り値F2〜F2.8の明るさでカバーするズームレンズ。ユニークなスペックのレンズを商品化するのがうまいタムロンらしいレンズと言えるでしょう。
そのスペックからポートレート撮影で使いやすいレンズとして人気が高いですが、近景から遠景まで風景写真を幅広く撮りたい場面でもとても扱いやすいです。広角端は35mmとやや狭めですが、今回訪れた北浅羽桜堤公園は十分引いて撮れたのでそれほど困ることはありませんでした。望遠側は150mmまであって、被写体にクローズアップできるだけでなく、圧縮効果も大変有効。奥行きのある桜の並木道もよりドラマチックに描写できます。
遠方に秩父連山を望みながら、中望遠83mmで。公園内には越辺川の右岸1.2kmに渡っておよそ200本もの安行寒桜が植樹されています
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、83mm、F11、1/100秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:晴天(0、M0.75)、ピクチャースタイル:VIVID
標準49mmで。土手を散歩する人の姿も多かったです
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、49mm、F4、1/1250秒、ISO250、+0.3EV、ホワイトバランス:晴天、ピクチャースタイル:VIVID
望遠端150mmで撮影。桜並木は望遠で撮るのに最適。この日は満開。たくさんの花見客で賑わっていました
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F2.8、1/800秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:曇天、ピクチャースタイル:AUTO
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、47mm、F3.2、1/640秒、ISO100、+1EV、ホワイトバランス:晴天(0、M1)、ピクチャースタイル:AUTO
「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」で目を引くのが、広角端F2/望遠端2.8という明るい開放絞り値です。35mmから150mmというズーム領域に対し、このスペックはとても新鮮です。開放絞り値は、50mmではF2.2、70mmではF2.5、75mm以降はF2.8というように、焦点距離に応じて変化します。
最短撮影距離は広角端が0.33m(最大撮影倍率1:5.7)で、望遠端が0.85m(同1:5.9)。もちろんマクロレンズほどではありませんが(そこまでを期待してはいけない)、十分寄れますし、フルサイズ機に装着する意味では、寄り切れない部分はクロップで補うことが可能です。
広角端35mmの最短撮影距離まで寄って開放F2で撮影しました。背景を広く取り込みながらダイナミックな描写が楽しめるのは広角ならではです
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、35mm、F2、1/800秒、ISO100、+1.7EV、ホワイトバランス:4500K(0、G1)、ピクチャースタイル:VIVID
こちらは望遠端150mmの最短撮影距離まで寄り、開放F2.8で撮影しました。被写界深度の浅いやわらかな質感が花びらの描写にマッチしています
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F2.8、1/2000秒、ISO250、+1EV、ホワイトバランス:晴天、ピクチャースタイル:VIVID
絞り開放付近の画質も良好です。繊細な花びらの質感もシャープに描き出してくれています。本レンズの筐体についても少し見てみましょう。
「Z 8」に「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」を装着。レンズフードを外した状態です。「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」はニコンZマウント用とソニーEマウント用があり、今回使用したニコンZマウント用は、重量1190gで全長は160.1mm(ソニー用は1165g、158mm)です。ちなみに、「Z 8」の重量は約910g(メモリーカードを含む、ボディキャップ、アクセサリーシューカバーを除く)なので、合わせると約2100gの重さになります
レンズ左側面にはAF/MFの切り替えスイッチのほか、機能の割り当てができるカスタムスイッチやフォーカスセットボタンなど、タムロン独自の部位も搭載されていて非常に多機能。深みのあるブラック塗装もポイントが高いです
USB Type-C対応のコネクターポートも搭載されています
勝手にレンズが繰り出すのを防ぐためのロックスイッチは右側面に。どのボタン/スイッチも指先で操作しやすい位置にあり、かつ誤作動しにくい設計になっているのも好感が持てます
なお、「Z 8」に関しては以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
北浅羽桜堤公園の安行寒桜は、ゆるやかにカーブを描きながら川沿いに続いています。端から端までゆっくり歩いて、往復1時間ほどかかるでしょうか。2000年(平成12年)に植樹されたそうです。
安行寒桜はその鮮やかなピンク色が特徴的。ずっと続く並木道で桜のトンネルができることもあって、家族写真やワンちゃんを撮っている人たちも多かったです。
ここからは、桜を上手に撮るコツを解説しながら、今回撮影した安行寒桜の写真を掲載していきます。
桜は花びらがとても繊細です。特に晴天時は、光の当たり方によっては花びらの質感がすぐに飛んでしまいます。光の選び方、露出の決定がとても大事なのです。直接花びらに光が当たりすぎないポイントをうまく探し、少しプラス補正しながら明るめに撮ってみましょう。
斜めから当たる光を使うことで、花びらに立体感が生まれています。青空が背景になるアングルで撮っているのもポイント。清々しい仕上がりです
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F4、1/640秒、ISO100、+1EV、ホワイトバランス:晴天(0、M0.25)、ピクチャースタイル:VIVID
こちらは逆光で透ける花びらを撮影。しっとり落ち着いた雰囲気で、上に掲載した写真とはまた違った桜の情景です
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F4、1/2500秒、ISO250、+1EV、ホワイトバランス:晴天(0、M0.25)、ピクチャースタイル:VIVID
背景を大きくぼかすことでキラキラした様子が印象的な1枚に。地面を背景に、青々とした緑色も格好のアクセントになっています
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F4、1/400秒、ISO100、+1EV、ホワイトバランス:晴天(0、M0.25)、ピクチャースタイル:VIVID
桜はピンク色のイメージが強いですが、意外と白色に近い被写体です。今回の安行寒桜は淡紅色ですが、思うような桜色で撮れない場合は、ホワイトバランスの微調整機能でマゼンタ(M)を加えてみると、花びらを鮮やかなピンク色で再現できます。今回の旅では、適宜マゼンタを加え、桜の花びらの色合いを淡いピンク色へと近づけています。
「Z 8」のホワイトバランスの微調整画面。ホワイトバランスの選択肢ごとに設定できます
マゼンタを加えて撮影。鮮やかなピンク色に仕上がっています。ここでは前ボケもポイント。ふんわりとした印象が増しています。前ボケを入れやすいのも桜撮影の特徴ですね
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F4、1/1600秒、ISO250、+1.3EV、ホワイトバランス:晴天(0、M0.25)、ピクチャースタイル:VIVID
こちらは青と緑を強めに設定して撮影。今度はクールな感じで桜の姿が撮影できました。ここでも前ボケが効いています
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F2.8、1/640秒、ISO100、+1.7EV、ホワイトバランス:4500K(0、G1)、ピクチャースタイル:VIVID
桜だけを撮っていると、どうしても似たような写真ばかりになってしまいます。マンネリ化してきたら、桜を副題にほかの要素を加え、“桜のある風景”を狙ってみましょう。
「桜×スイセン」。スイセンだけで撮るのではなく、桜が入ることで、季節感がぐっと強まります。アングルを下げ、見上げる視点で撮りました
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、43mm、F11、1/125秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:晴天(0、M0.75)、ピクチャースタイル:VIVID
「桜×後ろ姿」。リュックに花束を入れて歩くおばあちゃん。桜を背景に、絵になります
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F4、1/160秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:晴天(0、M1.5)、ピクチャースタイル:AUTO
「桜×見物客」。望遠端でダイナミックな圧縮効果を利用しながら撮影。北浅羽桜堤公園の桜は若木なので、背が低いのも特徴的です
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F2.8、1/1250秒、ISO250、+1EV、ホワイトバランス:晴天、ピクチャースタイル:VIVID
「桜×見物客」。こちらも望遠による圧縮効果を利用したものですが、地面すれすれのローポジションから狙いました。開放F2.8で撮ることで、地面で前ボケが生まれています
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F2.8、1/800秒、ISO100、+1.3EV、ホワイトバランス:晴天(0、M0.75)、ピクチャースタイル:VIVID
実は撮影日は強風で、桜の枝が大きく揺れまくるという、花を撮るにはなかなか骨の折れる状況でした。通常のAFモードではとてもピントが合わせられない!
こんなときに超絶便利なのが、コンティニュアスAFです。被写体が前後に動いてもピントを合わせ続けてくれるAFモードですが、これを設定すれば、桜の枝が揺れまくっても、常にピントを合わせながら撮影できます。
今回、寄りで撮ったカットはほぼ全てコンティニュアスAFで撮っています。スポーツなどの撮影で重宝する機能ですが、風で動く植物などの撮影でも効果があるので、ぜひ活用してみてほしいです。
写真なので“静かに咲いている”ように見えますが、実際は時折風速10m/s以上の風が吹き、ぐわんぐわん枝が揺れる中で撮った1枚。コンティニュアスAFを用いることで、クローズアップする際もピントが合わせやすくなります
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、84mm、F4、1/1250秒、ISO250、+1.3EV、ホワイトバランス:晴天(0、M0.25)、ピクチャースタイル:VIVID
動く枝を低速でブラしてみました。風の強い日はこうした動きのあるカットも撮影できます
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、35mm、マニュアル露出、F16、1/15秒、ISO64、ホワイトバランス:晴天(0、M0.25)、ピクチャースタイル:VIVID
今回、「Z 8」と組み合わせて「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」を使用しましたが、被写体検出の精度もよく、親和性の高さを実感。「Z 8」の能力を損なうことなく、引き出してくれました。
桜の木々に集まる野鳥もしっかり検出し、ピントを合わせながら撮影できました
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F2.8、1/1250秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:AUTO1、ピクチャースタイル:VIVID、カメラ内RAW現像処理(ホワイトバランスのみ)
Z 8、35-150mm F/2-2.8 Di III VXD、150mm、F2.8、1/800秒、ISO100、+1EV、ホワイトバランス:自然光AUTO、ピクチャースタイル:VIVID
今回は桜の撮り方を紹介しながら、旅先を巡ってみましたが、いかがだったでしょうか。坂戸市の北浅羽桜堤公園は、地元の人たちが散歩がてら訪れるような、知る人ぞ知る早桜の名所です。樹高の低い若木が多く、ピンク色の鮮やかな花びらが特徴。のどかな風景に鮮やかな桜の木々が印象的でした。
2024年の桜前線は平年並みのようです。本格的な桜シーズンにあわせ、この記事が桜を撮るときの参考になればうれしいです。
今回使用した「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」は高倍率ズームレンズではないものの、それに匹敵する高い倍率のズーム機能を持っていて、これ1本で何でも撮れてしまうのが魅力的でした。「Z 8」との相性もよかったし、全域で浅い被写界深度が利用でき、表現の幅も広いです。
ポートレートレンズとしての側面もある本レンズ。私のように風景も人物も撮るような人にとっては、期待を裏切らない頼もしいアイテムであることに間違いはなさそうです。
では、また次の旅でお会いしましょう!