知っているとタメになるカメラ関連情報をお伝えする連載「曽根原ラボ」。第14回で取り上げるのは、デジタルカメラに付属するのが当たり前だと思っていた充電関連機器についてです。
今回このテーマを選んだのは、筆者が最近購入したソニーの「α7C II」に、充電関連機器がいっさい付属していなかったことがきっかけです。専用の充電器「バッテリーチャージャー」だけでなく、「USBケーブル」と「ACアダプター」も付属していませんでした。対応の充電関連機器を持っていない場合は、「結構高いカメラを買ったのに充電できない」という、ひと昔前では考えられないことが起こるわけです。
そこで本記事では、今後増えるかもしれない「充電関連機器が付属しないカメラ」で快適な充電ライフを実現するためには、何に注意して、何を用意すればよいのかを解説していきたいと思います。
ソニーのフルサイズミラーレスカメラ「α7C II」には充電関連の付属品が用意されていません。バッテリーを充電するにはUSBケーブルやACアダプターなどを自分で用意する必要があります(※画像内のUSBケーブル、ACアダプター、バッテリーチャージャーは筆者が別途購入したものです)
冒頭で触れたように、ソニーの「α7C II」には、バッテリーチャージャーはおろか、USBケーブルもACアダプターも付属していません。これはつまり、「カメラを買っただけではバッテリーを充電できませんよ」ということになります。
「α7C II」の製品内容は、カメラ、リチャージャブルバッテリーパック「NP-FZ100」、ストラップの3点だけ
ソニーの「α7シリーズ」に限っていえば、元々充電関連の付属品は、残念なことにあまり充実していないほうで、初代「α7」ではバッテリーチャージャーが付属していたものの、「α7 II」と「α7 III」ではマイクロUSBケーブルとそれを接続して使うACアダプターに変更。「α7 IV」になってUSBケーブルがUSB Type-C(Type-A to Type-C)タイプに変更されるという変遷をたどってきています。ちなみに「α1」「α9シリーズ」「α7Rシリーズ」「α7Sシリーズ」といった上位モデルには継続してバッテリーチャージャーが付属しています。
別売のバッテリーチャージャー「BC-QZ1」を買うという手もありますが、価格.com最安価格でも8,000円台(2024年7月9日時点)とお高目。できれば、USBケーブルとACアダプターで手軽に済ませたいところです
充電関連機器の付属品が縮小しているのはソニーに限らず他メーカーでも見られ、バッテリーチャージャーやUSBケーブルが付属しないケースが増えてきました。もしかしたら、充電関連機器が付属しないのは、今後、特に下位モデルで広がっていくかもしれませんね。
この現象の背景には、カメラを含めて普段使いの電化製品の多くでUSB Type-C端子の搭載が進み、「充電=USB Type-C」が共通化しつつあることがあげられます。スマートフォンやタブレットなどはUSB Type-Cでの充電が一般化していて、すでにUSB Type-Cケーブルやそれと組み合わせるACアダプターを持っているケースが増えています。こうした背景と、コスト面や環境への配慮もあって、カメラの付属品としてわざわざ充電関連機器を用意する必要がないというわけです。
最新のカメラならスマートフォンなどで使っているUSB Type-CケーブルとACアダプターを使ってそのまま充電できる、とはいうものの、「ケーブルもACアダプターを持っていない」ということはあります。また、使い回すことによって本来の性能が出ない(充電が遅い)ということも考えられます。
では、今、カメラ用の充電関連機器として、USB Type-CケーブルとACアダプターを選ぶ場合には何に注意すればよいのでしょうか? 非常に多くの製品が用意されているため、どれを選んでよいのかわからないという人もいることでしょう。
そうした人にずばりお伝えしたいのは、「USB PD」機器を選んでおけば間違いがないということ。難しいことを考えずに、USB PD対応をうたう製品を買えば問題なく充電ができるはずです。
USB PDとは「USB Power Delivery」の略で、USB Type-C端子での電力供給規格のひとつ。USB PDは理論上最大240W(48V/5A)の電力供給に対応しているので、高速に充電できるのが特徴です。最新のミラーレス(特に中上位機種)は多くがUSB PDに対応しているので、USB PD機器であれば従来よりも高速な充電が可能です。
「α7C II」など最新のミラーレスの多くは、USB PD対応のUSB Type-C端子を搭載しています
USB PD機器を使って高速充電を行う際に注意したいのは、カメラ、USBケーブル、ACアダプターのすべてにUSB PD対応が求められることです。購入時には、「USBケーブルとACアダプターはUSB PD対応で揃える」ことを忘れないでください。
ちなみに、USB PD機器を使って20Wで充電する場合と、USB PD非対応機器を使って4.5W(通常のUSB 3.2 Gen1/Gen2の最大値)で充電する場合を比較すると、USB PD機器のほうが約4.5倍速く充電が完了します。仮に、USB PD機器(20W)使用時の充電時間が3時間だとするとしたら、USB PD非対応機器(4.5W)では13時間20分ほどの時間がかかることになります。
先に、「USB PD機器を選んでおけば間違いがない」とお伝えしましたが、より安心した形で商品を選ぶのなら、カメラのUSB Type-C端子のスペック(電力供給に関する記載)をチェックしておきましょう。
カメラの製品ページやカタログ、マニュアルなどには、たいてい、対応するモバイルバッテリーの製品名や推奨のワット(W)数、ボルト(V)数/アンペア(A)数が書かれています。たとえば、「α7C II」では、製品ページの主な仕様欄には「USB PD機器は、出力が9V/3Aまたは9V/2Aに対応したものをお使いになることをお勧めします」と記載されています。
V×A=Wですので、「α7C II」では、9V×3A=27W〜9V×2A=18Wの出力に対応するUSB PD機器を推奨していることを意味しています。ここからは、だいたい20Wを目安にすればよいと判断できます。
必ずしも示されているW数で電力供給できることを保証しているわけではないので、推奨のW数はそこまで気にする必要はありませんが、頭に入れておいて損はないと思います。
筆者が所有している2本のUSB Type-C ケーブル。いずれもUSB PDに対応していますが、電力供給の仕様は異なっています。なお、後ほど説明しますが、上はUSB 3.2 Gen2で下はUSB 2.0とデータの転送速度でも違いがあります
筆者は「α7C II」の購入にあわせて、充電関連機器としてUSB PD対応のUSB Type-CケーブルとACアダプターを新たに購入しました。すでに同様の機器は所有しているのですが、そちらはほかの用途で頻繁に使っていますので、もうひとつ充電環境を増やしたいというのが狙いです。
USB PD対応のUSB Type-Cケーブルは、近所の家電量販店でオリジナルブランド品を購入しました。W数が見えるタイプのちょっといいケーブルです。最大60Wの電力供給に対応しているので、「α7C II」の目安(20W)をクリアしていますし、デジタルカメラの充電には十分すぎるスペックです。価格は1,408円でした。購入後に価格.comで60W対応のUSB Type-Cケーブルを探してみたところ、もう少し安いものがあるようでしたので、価格.comを使って購入すべきだったと後悔しています。
ちなみに、購入したUSB Type-Cケーブルは、USB PDに対応していますが、USB規格は古いタイプのUSB 2.0です。結構誤解されるところなのですが、USB PDという充電規格と、USB 2.0やUSB 3.2といったUSB規格は別の規格です。USB Type-Cケーブルだからといって必ずしも転送速度が速いわけではないので注意が必要です。
USB Type-Cケーブルを選ぶ際はUSB PDに対応しているかどうかをチェックしましょう。両端がType-C端子のUSB Type-Cケーブルは基本的に60Wの電力供給に対応していますが、安価な製品だと性能がはっきりしないものあります。やはり、しっかりとUSB PD対応をうたうものを選んだほうが無難です
購入したUSB Type-CケーブルのUSB規格はUSB 2.0です。データ転送用として使うには速度が遅いですね
USB PD対応のACアダプターは、エレコムの「MPA-ACCP6820BK」という商品を選びました。USB Type-C端子がひとつだけのシンプルな仕様ですが、ちゃんとUSB PDに対応していて、最大で、「α7C II」の目安である20Wまでの電力を供給できます。こちらは、価格.comでUSB PD対応のACアダプターを検索し、そのなかから希望に合うものを選びました。購入価格は1,345円(税込、当時の最安価格)と、思ったより安くてホクホクです。
価格.comでUSB PD対応のACアダプターを検索し、最安価格で購入しました。最大20Wまでの電力を供給できるので「α7C II」の目安をクリアしており、大きな問題がないと判断しました
ACアダプター本体の画像です。購入価格は1,345円とそれほど高価ではありませんでした。端子の種類や数によって価格は変わるので、自分の利用状況にあわせて仕様を選べばよいと思います
実際に、購入したUSB PD対応のUSBケーブルとACアダプターを使って、「α7C II」本体でバッテリーを充電してみたところ、約2時間半で空の状態から満充電となりました。今どきのデジタルカメラの充電時間としてはとても短く、十分に高速充電といってよいレベルでしたので、個人的には大満足です。
購入したUSB PD対応のUSBケーブルとACアダプターを使って、空の状態のバッテリーを充電してみたところ、おおむね2時間半で充電が完了しました。個人的には大成功といった気持ちです
この「約2時間半」という充電時間は、実のところ、ソニー「α7 IV」に付属する純正のUSBケーブルとACアダプターを使った場合よりも短いです(筆者は「α7 IV」も所有していました)。
というのも、「α7 IV」本体はUSB PDに対応しているものの、付属のUSB Type-CケーブルとACアダプターは、USB PDに非対応なのです(「USB BC 1.2」という規格に対応していますがUSB PDほどの性能ではありません)。理論上の話になってしまいますが、今回使用したUSB Type-Cケーブル/ACアダプターと比べると、大体2倍の充電時間が必要になります。
そう考えると、やはり充電関連機器は安易に使い回さないほうがよいという気持ちになります。今回、「α7C II」の購入にあわせてUSB Type-Cケーブル/ACアダプターを追加した筆者としては「大成功」といった感すらあります。
ソニーの「α7C II」を購入したら充電関連機器がまったく付属していなかった。ちょっと驚きでしたけど、USB Type-C端子が共通化しつつある時代を考えれば、今後こうしたカメラの販売形態は、案外普通になっていくのかもしれません。
USB Type-Cにはさまざまな規格が存在するため、カメラユーザーとしては、どのUSB Type-Cケーブル/ACアダプターを用意したらよいのか判断が難しいところがありますが、本記事で紹介したように、大事なのはUSB PDに対応するものに絞ることです。これさえ気をつければ、カメラがUSB PD対応であることが前提になりますが、2〜3時間程度でバッテリーを満充電にできるので、より快適な充電ライフを過ごせると思います。
USB Type-Cケーブル/ACアダプターを新規購入する際は、ぜひ価格.comで最安価格を調べてみてください。安く手に入れることができると思いますよ。