ソニーは2024年11月19日、ミラーレスカメラ「αシリーズ」の新しいフラッグシップモデル「α1 II」を発表した。従来モデル「α1」の発売(2021年3月)から4年近く経過して登場する後継機ということで、AFや操作性などが着実に進歩している。その特徴を速報でお届けしよう。
「αシリーズ」の新しいフラッグシップモデル「α1 II」。数多くのアップデートが施されている
「α1 II」の特徴としては、まずAFに注目してほしい。「α1」から有効約5010万画素のメモリー内蔵積層型CMOSセンサー「Exmor RS」と画像処理エンジン「BIONZ XR」を継承しつつ、被写体認識専用の「AIプロセッシングユニット」を追加することで、さらに使いやすいAFシステムに進化を遂げている。
「AIプロセッシングユニット」は、2022年11月発売の「α7R V」に初めて搭載されて以降、「α6700」や「α7C II」「α9 III」などに続々と採用。ソニーの最新モデルではおなじみの技術だ。この技術を搭載することで、ディープラーニングを含むAI処理による高精度な被写体認識「リアルタイム認識AF」が可能になる。
「α1 II」は、「AIプロセッシングユニット」の追加によって、従来モデルから主に以下の点がアップグレードされている。
・静止画/動画の両方で「人物」「動物」「鳥」「昆虫」「車/列車」「飛行機」の被写体認識に対応
・オートでの被写体認識が可能
・「人物」の瞳の認識性能が約30%向上
・「動物」の認識性能が約30%向上
・「鳥」の認識性能が約50%向上
「人物」は、姿勢推定技術を用いて処理を行うことで、顔が見えないシーンなどの認識性能が向上。「動物」の瞳/頭/体も認識しやすくなっているという。被写体認識の内容自体はグローバルシャッター方式を採用する「α9 III」と同等だが、ソニーのミラーレスでは初めてオートでの被写体認識に対応するのがトピックだ。
「人物」「動物」「鳥」「昆虫」「車/列車」「飛行機」の被写体認識に対応。「オート」も選択できる
「オート」設定では認識対象を絞ることが可能。被写体別にトラッキングの乗り移り範囲、維持特性、認識感度、部位などを細かく設定できる
フォーカスエリアの「スポット」に「XL」「XS」を追加され、計5つのサイズから選択できるようになった
サイズと縦横比をカスタマイズできる「カスタムフォーカスエリア」も利用できる
「α1 II」の連写速度は従来モデルと同じで、電子シャッター時にブラックアウトフリーでの最高約30コマ/秒連写が可能。トリミング耐性にすぐれる有効約5010万画素の高画素でこのコマ速を実現しているのがポイントだ。
従来モデルからは、シャッターボタンを押す前の動きを記録できる「プリ撮影機能」と、連写速度を素早く切り替えられる「連写速度ブースト」が追加されている。このあたりの機能性は「α9 III」と同等だ。
「プリ撮影機能」は最高約30コマ/秒の連写速度で最大1秒前までさかのぼれる。さかのぼる時間は0.03秒〜1.0秒の間で細かく設定できる
「連写速度ブースト」はカスタムボタンに設定して利用する。機能を割り当てたカスタムボタンを押すことで連写速度が切り替わる仕組みだ
初期設定では、ボディ前面に新設されたカスタムボタン(C5)に「連写速度ブースト」が登録されている
「α1 II」の画質面では、最大約15ストップの広ダイナミックレンジなどの特徴はそのままにノイズリダクションが進化。プロの声を反映し、画像のディテールを損なわない効果的なノイズリダクションによって、特に中・高感度域での低ノイズを実現しているという。
このほか、人物撮影時のAEアルゴリズムや、オートホワイトバランスの精度・安定性も向上。オートホワイトバランスは、特に日陰シーンでより正確な色が得られるようになったとのことだ。さらに、RAW関連機能として、約1億9900万画素の画像を生成できる「ピクセルシフトマルチ撮影」と、低ノイズな画像を生成する「ノイズ低減用撮影設定」を搭載。いずれもPC用の純正ソフト「Imaging Edge Desktop」上で合成処理を行う機能だ。
「α9 III」に搭載した「ノイズ低減用撮影設定」が追加された。「ピクセルシフトマルチ撮影」とともに、「コンポジットRAW撮影機能」にまとめられている
ボディ内5軸手ブレ補正は、従来モデルの5.5段から、中央8.5段/周辺7.0段に補正効果が大幅に向上。「αシリーズ」として最高性能を誇っている。
「α1 II」は、基本的に「α9 III」と共通のボディを採用している。従来モデルと比べると、グリップ形状とシャッターボタン周りの形状が見直されたことで、フィット感がよくなり、より自然なホールド感でシャッターを切れるようになった。
グリップは全体的に丸みが増し、指の当たる部分の角度も見直された。シャッターボタン周りも少し角度が付くように変更されている
ボディ上面。「α9 III」と同じレイアウトだ
約944万ドット/倍率約0.90倍の電子ビューファインダー(EVF)。アイピースカップは、標準タイプの「FDA-EP19」のほかに、遮光性にすぐれた「FDA-EP21」も付属する(※本ページに掲載している製品画像はすべて「FDA-EP21」を装着しています)
チルト式/バリアングル式を切り替えられる4軸マルチアングルモニター(3.2型/約210万ドット、タッチパネル対応)を採用
従来モデルと同様に、CFexpress Type AカードとSDカード(UHS-II対応)に対応するデュアルスロットを採用
このほか、動画撮影は、静止画撮影時と同様に「リアルタイム認識AF」の利用が可能になった。電子手ブレ補正を併用する「ダイナミックアクティブモード」、被写体を同じ位置に保持して構図を安定される「フレーミング補正」、カメラが被写体を追尾・クロップして自動的に構図を変更する「オートフレーミング」といった、ソニーの独自機能もひと通り搭載している。
動画撮影時に強力に手ブレを補正する「ダイナミックアクティブモード」を利用できる
「α1 II」は、ソニーが従来モデル「α1」をリリースしてから約4年の間に積み上げてきたものを余すことなく詰め込んだフラッグシップモデルだ。高精度な被写体認識を追加したほか、「α9 III」と同等の操作性も採用しており、プロ機としての完成度が大きく向上している。
「α1 II」の市場想定価格は約99万円前後。従来モデルは、発表当初の市場想定価格が約90万円前後、ソニーストアの最新価格が99万円(いずれも税込)なので、「α1 II」は妥当なプライスと言っていいのではないだろうか。受注開始は2024年11月26日10時、発売は2024年12月13日が予定されている。
開放F2通しの大口径・標準ズームレンズ「FE 28-70mm F2 GM」も登場。ズーム全域で単焦点レンズに迫る画質を実現しながらも重量は約918gに抑えられている。市場想定価格は約50万円前後(税込)