EOS M3は基本性能も大きく進化している。撮像素子に、新開発の有効約2420万画素CMOSセンサー(APS-Cサイズ)を採用。映像エンジンは最新の「DIGIC 6」で、感度は常用でISO100〜ISO12800に対応する(拡張でISO25600相当も選択可能)。連写性能は、最高約4.2コマ/秒(連続撮影可能枚数はJPEGラージ/ファイン:約1000枚、RAW:約5枚、RAW+JPEGラージ/ファイン:約4枚)。シャッタースピードは1/4000秒に対応する。
注目したいのはオートフォーカスシステムで、新しい「ハイブリッドCMOS AF III」を採用。センサー上に位相差AF画素を配置し、位相差AFとコントラストAFを組み合わせてオートフォーカスを行うという仕組みは、従来の「ハイブリッドCMOS AF II」と同じだが、位相差AFの画素(縦線検出センサーを採用)の配置を水平方向に高密度化することで、位相差AFの精度を高めたのがポイント。これにより、シーンによってはコントラストAFを使わずに位相差AFのみで合焦するようになり、オートフォーカススピードが大きく向上。初代モデルEOS Mと比べて約6.1倍、EOS M2と比べて約3.8倍の高速化を達成しており、静止画撮影時の速度向上だけでなく、動画サーボAFの追従性となめらかさも向上しているという。また、コントラストAFの制御を改善し、「DIGIC 6」の採用で処理能力が上がったことで、位相差AFとコントラストAFを併用する場合でも合焦速度は速くなっているとのことだ。測距点の数も、従来の31点から49点(7×7)にアップしている。なお、ハイブリッドCMOS AF IIIは、同時発表のEOS 8000DやEOS Kiss X8iにも採用されている。
ハイブリッドCMOS AF III対応の有効約2420万画素CMOSセンサーを採用し、オートフォーカス速度が大きく向上。ちなみに、測距輝度範囲の低輝度限界は、従来のEV1からEV2になり、体感できるかどうかは別にして、わずかにスペックダウンしている
感度はISO100〜ISO12800に対応。拡張でH(ISO25600相当)も選択できる
動画サーボAF。ちなみにメニュー画面のデザインはEOSシリーズのデジタル一眼レフとは少し異なっている
EOS M3 - ハイブリッドCMOS AF III 比較動画 【キヤノン公式】
撮影機能では、ハイエンドユーザーの利用を意識した機能がいくつか追加されている。AF/MFを切り替えられるMFボタンが新設されたほか、ピントが合った被写体の輪郭を色付きの線で強調するMFピーキング機能も追加されている。また、ボディ上部のマルチファンクションボタンなど、操作ボタンのカスタマイズにも対応。2軸タイプの電子水準器も利用できるようになった。
MFピーキング設定の画面。ピーキング表示のレベルと色を選択できる
操作ボタンのカスタマイズの画面
撮影モードには、初心者の撮影をサポートする「クリエイティブアシスト」という新しいモードが搭載された。従来の「クリエイティブオート」を置き換えるもので、同時発表された新型デジタル一眼レフも含めて、現時点ではEOS M3のみが持つ機能となっている。ぼかす〜くっきり(絞り値)、暗く〜明るく(露出補正)、弱い〜強い(ピクチャースタイルのコントラスト)、すっきり〜あざやか(ピクチャースタイルの色の濃さ)、寒色〜暖色(ホワイトバランス)、フィルター(OFF/白黒/セピア/青/紫/緑)といった項目のパラメーターを変更して、効果を確認しながら撮影ができる。また、クリエイティブアシストで設定した内容は、撮影設定情報としてカメラ内に6つまで保存可能。再生時には、項目ごとにアイコンで表示されている撮影情報を、絞り値やピクチャースタイル、ホワイトバランスなどの具体的な数値に切り替えられるのもポイントだ。各項目が実際にどのような設定に反映されるのかを理解して、スキルアップにつながることを狙っているという。さらに、他のEOS M3で撮影した画像データからクリエイティブアシストの設定を呼び出して、カメラ内に取り込むことも可能。気に入った写真の設定を自分のカメラに取り込んで、同じ設定で撮影ができるようになっている。
クリエイティブアシストの画面
タッチ操作でも各設定のパラメーターを変えられる
このほか、「クリエイティブフィルター」には、3段階の露出で3枚の写真を記録・合成する「HDR」が追加。撮影モードとして、静止画といっしょに約4秒前のシーンを動画で記録する「プラスムービーオート」も追加されている。Wi-Fi/NFCも搭載し、スマートフォンやプリンター、カメラなどとの連携にも対応する。
クリエイティブフィルターにHDRを追加
プラスムービーオートも利用できる
Wi-Fi/NFCも搭載する
EOS M3は、従来モデルのEOS M2と比べると別物のカメラになった。これまでのEOS M/EOS M2は、操作系を省略することでシンプルな使い勝手と携帯性を追及した、キヤノンとしてはチャレンジングなカメラであったが、EOS M3は、一眼レフユーザーの利用を想定して、カメラとしての使い勝手にこだわった製品となっている。画質スペック的には、同時発表となったEOS 8000D/EOS Kiss X8iとそん色ない内容になっているうえ、ダイヤルやグリップを採用し、操作性も大きく向上した。オートフォーカスもさらに高速化されており、他メーカーのミラーレス一眼上位モデルとも勝負できるカメラに仕上がったと言っていいだろう。
ラインアップされるのは、ボディ単体のほか、EF-M18-55 IS STMレンズキット(EF-M18-55 IS STM)、ダブルレンズキット(EF-M18-55 IS STM、EF-M22mm F2 STM)、ダブルズームキット(EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM、EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM)。キヤノンオンラインショップでの価格は、ボディ単体が56,800円、EF-M18-55 IS STMレンズキットが71,800円、ダブルレンズキットが85,800円、ダブルズームキットが96,800円(いずれも税抜)。性能を考慮するとコストパフォーマンスはなかなか高いのではないだろう。さらに、計25,000台の限定キットとして、外付けEVF「EVF-DC1」を追加したEVFキットを全ラインアップに用意。EVFキットの価格は+3,000円になっており、EVF単体の販売価格が3万円程度であることを考えると、お買い得なキットと言えよう。
なお、キヤノンはEOS M3の発売を記念して、「EOS M3デビューキャンペーン」を実施する。発売日〜2015年5月31日までの期間にEOS M3を購入した方を対象にしたキャンペーンで、先着5000名にボディジャケットやネックストラップ、オリジナルのレンズキャップケースをプレゼント。また、EOS M3とあわせて、広角ズームレンズ「EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM」とマウントアダプター「EF-EOS M」を購入した方には最大18,000円をキャッシュバックする。
写りのよさで定評のある広角ズームレンズ「EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM」を装着
単焦点レンズ「EF-M22mm F2 STM」の新色シルバーを装着。なお、ホワイトボディのダブルレンズキットには、このシルバータイプのレンズが付属する
コンパクトな望遠ズームレンズ「EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM」を装着
従来と同様、マウントアダプター「EF-EOSM」を装着してEFレンズを使用することもできる