交換レンズ図鑑
【連載】交換レンズ図鑑 第7回

キヤノン「EF50mm F1.8 STM」実写レポート! “撒き餌レンズ”がついにリニューアル!

約25年もの間、EOSユーザーから愛されてきた人気レンズ「EF50mm F1.8 II」がついにリニューアル! 「EF50mm F1.8 STM」として生まれ変わる。発売は2015年5月21日で、価格は19,500円(税別)。今回、短い時間ではあるが発売前にこの注目レンズを試すことができたので、実写作例を掲載してのレビューをお届けしよう。

新モデルEF50mm F1.8 STMを、35mmフルサイズ一眼レフ「EOS 6D」に装着したイメージ

新モデルEF50mm F1.8 STMを、35mmフルサイズ一眼レフ「EOS 6D」に装着したイメージ

こちらは、最新のAPS-C一眼レフ「EOS 8000D」に装着したイメージ。APS-C一眼レフで利用する場合、35mm判換算で焦点距離80mmの画角となる

開放F1.8の標準レンズとして3代目となる製品

今回紹介するEF50mm F1.8 STMは、「EFレンズ」の開放F1.8の標準レンズとしては、「EF50mm F1.8」「EF50mm F1.8 II」に続く3代目となる製品である。まずは、EF50mm F1.8シリーズの歴史、特に圧倒的な人気を誇った2代目のEF50mm F1.8 IIについて振り返っておこう。

初代モデルのEF50mm F1.8は、「EOS」シリーズの誕生とともに、1987年3月に発売された5群6枚構成のポピュラーな標準レンズだ。至近から無限までシャープな写りを実現し、距離目盛窓を採用するなど作りもしっかりとしており、一定の評価を得た。続いて、1990年12月に、2代目となる50mm F1.8 IIが登場。5群6枚構成の光学系はそのままに、オートフォーカス駆動のモーターをAFDモーターからDCモーターに変更したほかは、距離目盛窓をなくし、フォーカスリングを簡略化し、プラスチックマウントを採用するなど思い切った仕様変更を行うことで、軽量化と低価格化を狙った戦略的なレンズである。結果、50mm F1.8 II は、約25年の長きにわたって高い人気をキープ。キヤノンの単品販売レンズとして全世界ナンバーワンの売り上げを誇るロングセラーモデルとなった。

50mm F1.8 IIがここまで高い人気を集めた理由は、コストパフォーマンスに秀でていることに尽きる。EFレンズとしてもっとも安価となる実売1万円を切る価格(価格は12,000円、税別)ながら、開放F1.8の明るさ・ボケを楽しめるだけでなく、価格以上の価値を感じる、すぐれた描写力を持っているのである。ややチープな外観とのギャップも魅力のひとつで、多くのファンがいるレンズだ。また、手に入れやすい価格であるため、このレンズをきっかけに単焦点レンズの楽しさを知り、次々と新しいレンズに触手が伸びてしまう(欲しくなってしまう)“レンズ沼”への最初の1本になる製品でもある。そのため、50mm F1.8 IIは、ユーザーから“撒き餌レンズ”と表現されたほどである。

ただ、さすがに約25年が経過したことで、レンズに関する技術は大きく進歩しており、リニューアルを望む声も高まっていた。そんな声に応えるように、キヤノンは、3代目のEF50mm F1.8 STMをリリースしたのである。

「EF50mm F1.8 STM」の進化点

では、EF50mm F1.8 STMの特徴を見ていこう。EF50mm F1.8 IIからの進化点は以下のとおり。

EF50mm F1.8 STMの進化点

・外観デザインの向上
・金属マウントの採用
・STM(ギアタイプ)の採用
・フルタイムMFに対応
・最短撮影距離の短縮
・絞り羽根が5枚から7枚円形絞りに
・コーティングの最適化
・一体型フード(別売)の採用

EF50mm F1.8 STMの光学系は、EF50mm F1.8 IIを継承している。レンズ構成は5群6枚で、MTF曲線も従来と変わらない。基本的な描写力については従来と違いがないと考えていい。ただし、撮れるものがまったく同じかというとそれはちょっと違う。

EF50mm F1.8 STMは、製品名からもわかるように、ギアタイプのSTM(ステッピングモーター)を採用している。従来モデルのDCモーターと比べて、オートフォーカスの駆動音が静粛化され、動画撮影時にも、静かでなめらかなオートフォーカス撮影が可能となった。オートフォーカス合焦後にAFモードのままピント調整が可能なフルタイムマニュアルフォーカスにも対応する。加えて、モーターをSTM化したこともあって、光学系は変わらないものの繰り出し量が増え、最短撮影距離が45cm(レンズ面から36cm)から35cm(同26cm)に短縮(最大撮影倍率は0.15倍から0.21倍に向上)。絞り羽根も5枚から7枚円形絞りになり、円形のボケが得やすくなっている。さらに、コーティングが見直されており、デジタルカメラでの撮影に最適なスーパースペクトラコーティングを採用。従来よりもフレア・ゴーストの発生を抑制できるようになっている。メカ構造においては、不要な入射光をカットするフレアカットや、内面反射防止のための遮光線配置が施されるようになった。このように、光学系は従来と変わらないものの、撮影できる写真については、従来から違いが出るようになっている。

外観デザインについては、マウントが金属製になったほか、表面が梨地仕上げになるなど、従来よりも高級感が増した。金属製マウントを採用したことで、信頼性が上がったのは高ポイントだ。レンズのサイズは最大径69.2×長さ39.3mmで、重量は約160g。従来モデルの最大径68.2×長さ41mm/重量130gと比べて、金属製マウントの採用によって30g重くなったものの、全長は1.7mm短くなっている。操作性では、フォーカスリングの幅が広くなり、マニュアルフォーカスの操作がやりやすくなった。

このほか、別売オプションのフードも変更になった。従来はアダプターリングをスクリューインした後の装着であったが、EF50mm F1.8 STMでは、レンズ先端の形状が変更になり、バヨネットタイプで専用設計の一体型フード「ES-68」が取り付けられるようになった。

EF50mm F1.8 IIの光学系を継承。フィルター径は52mmから49mmに変更になっている

EF50mm F1.8 IIの光学系を継承。フィルター径は52mmから49mmに変更になっている

金属製マウントを採用。マウントには「MADE IN MALAYSIA」と表記されている

金属製マウントを採用。マウントには「MADE IN MALAYSIA」と表記されている

左がEF50mm F1.8 STMで、右がEF50mm F1.8 II。全長が1.7mm短くなった

左がEF50mm F1.8 STMで、右がEF50mm F1.8 II。全長が1.7mm短くなった

左が無限遠時で、右が最短撮影距離時。繰り出し量が増え、最短撮影距離は45cmから35cmに短縮された

左が無限遠時で、右が最短撮影距離時。繰り出し量が増え、最短撮影距離は45cmから35cmに短縮された

フォーカスリングの幅が広くなり、マニュアルフォーカスがやりやすくなった。フード取り付けの形状も変更になり、バヨネットタイプの一体型フード「ES-68」が取り付けられるようになった

バヨネットタイプのフード「ES-68」。EF50mm F1.8 STM専用設計のフードだ

バヨネットタイプのフード「ES-68」。EF50mm F1.8 STM専用設計のフードだ

実写作例

※以下に掲載する作例は、EOS 6DおよびEOS 8000DとEF50mm F1.8 STMを組み合わせて、JPEG形式の最高画質(L/ファイン)で撮影したもの(JPEG撮って出し)、もしくは、RAW形式のデータをJPEG形式に変換したもの(Digital Photo Professional 4.2.10でRAW現像)になります。撮影時点ではEF50mm F1.8 STMの補正データが用意されていなかったため、ボディならびにDigital Photo Professionalのレンズ光学補正はオフになっています。

※サムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺960ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行なっていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F1.8、1/500秒、EV0.0、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(5472×3648)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F1.8、1/2000秒、EV-0.7、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、RAW(明るさ調整を-0.67に変更。その他の設定は撮影時のままJPEGに変換)
撮影写真(5472×3648)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F2.8、1/250秒、EV0.0、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(5472×3648)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F1.8、1/200秒、EV+1.0、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(5472×3648)

EOS 8000D、絞り優先AE、ISO200、F5.6、1/80秒、EV-0.7、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(6000×4000)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F8、1/1000秒、EV-0.3、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(5472×3648)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F2.8、1/500秒、EV+0.3、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(5472×3648)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F8、1/160秒、EV-0.3、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(5472×3648)

EOS 8000D、絞り優先AE、ISO100、F4.5、1/1600秒、EV+1.0、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(3648×5472)

EOS 8000D、絞り優先AE、ISO100、F4.5、1/1600秒、EV+1.0、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(3648×5472)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F8、1/320秒、EV-1.3、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(5472×3648)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F8、1/320秒、EV-1.3、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(5472×3648)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F1.8、1/200秒、EV+0.3、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:オート、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(3648×5472)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F4、1/100秒、EV0.0、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:オート、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、JPEG
撮影写真(5472×3648)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO640、F4、1/50秒、EV+0.3、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、RAW(シャープネス設定をアンシャープマスクからシャープネスにし、強さを7.0に変更。その他の設定は撮影時のままJPEGに変換)
撮影写真(5472×3648)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F4、1/3200秒、EV-0.7、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、RAW(明るさ調整を-0.67に変更。その他の設定は撮影時のままJPEGに変換)
撮影写真(5472×3648)

EOS 6D、絞り優先AE、ISO100、F1.8、1/2000秒、EV+0.7、測光:中央部重点平均測光、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、高感度撮影時のノイズ低減:標準、オートライティングオプティマイザ:標準、高輝度側・階調優先:しない、レンズ光学補正(補正データがないため補正なし)、RAW(明るさ調整を+0.67に変更。その他の設定は撮影時のままJPEGに変換)
撮影写真(5472×3648)

描写力と使い勝手をレビュー

最短撮影距離が45cmから35cmに短縮されたこともあり、今回の実写レポートでは、最短撮影距離付近で撮影したものを含めて、比較的、被写体との距離が短い作例を多く掲載した。

EF50mm F1.8 STMを使ってみて、従来モデルのEF50mm F1.8 IIと大きく異なると感じたのは、絞り羽根が7枚円形絞りになったことで、より素直なボケ味が得られるようになったことだ。従来のEF50mm F1.8 IIは、ボケがやや硬いところがあり、コントロールしにくいところがあったが、比べると、EF50mm F1.8 STMは、円形ボケが得やすいだけでなく、ボケ方自体もやわらかくなっていて、ボケを生かした写真が撮影しやすくなっている。

さらに、逆光耐性も確実に向上していると感じた。今回は新しいレンズフードを装着しないで撮影したが、強い光源が入る場合でも、従来と比べて、ゴースト・フレアが発生しにくくなっていると思う。

また、従来モデルと同様、単焦点レンズらしいコントラストの高さは健在だ。解像感も申し分なく、F2.8よりも絞った状態であれば安定した描写が得られる。ただし、開放での描写については、ピント位置はそれなりにシャープだが、全体的にやや甘いところがあり、輝度差がある部分ではパープルフリンジやハロが発生する。開放だと周辺光量落ちも少し気になる。このあたりの特性は、光学設計が変わっていないため、従来通りといったところだろう。

使い勝手では、STMの採用により、オートフォーカスがかなり静かになった。他のSTMレンズと比べると、少しモーターの音が大きく、動きも伝わるようにも感じたが、従来のような大きな音や動きではなくなったので、その点ではストレスを感じなくなった。また、最短撮影距離が従来よりも10cm短くなったことも、使い勝手をよくしている部分だと感じた。EF50mm F1.8 IIでは「あと少し寄りたい」と感じることが多く、扱いにくいと感じることもあったが、EF50mm F1.8 STMでは、従来よりも被写体との距離感に余裕が持てる。10cmの短縮により、撮影距離に対してのストレスはかなり軽減されたと思う。

EF50mm F1.8 STMの価格は19,500円(税別)。価格.com最安価格(2015年5月14日時点)は16,000円程度(税込)となっている。 EF50mm F1.8 IIと比べると、倍近い価格となっているが、比べる製品が約25年前に発売されたものであることと、金属マウントやSTMを新たに採用したことを考慮すると、コストパフォーマンスの高さは継承されていると言っていいだろう。ちなみに、価格.comでEFレンズの最安価格を調べると、2015年5月14日時点でもっとも安いのがEF50mm F1.8 IIの9,000円程度で、次いでEF50mm F1.8 STMとなっている。EF50mm F1.8 IIの安さが光るところもあるが、新モデルのEF50mm F1.8 STMもかなりお買い得な製品であることがわかるはずだ。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

体力勝負ならそこそこ強い編集部デスク。カメラやAV家電を中心に製品のレビュー記事を担当しています。撮られるのは苦手ですが撮るのは好きです。

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