レビュー
GRブランドでチューニングされたヴィッツの実力を探る

トヨタ ヴィッツGR 試乗/一般道もサーキットも楽しめる“クールハッチ”!

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トヨタが2010年から展開していたスポーツカーブランド、「GRMN」「G’s」。それを受け継ぐ形で、2017年9月からスタートした新ブランドが「GR」だ。

2017年9月、トヨタはスポーツカーブランドとして新たに「GR」シリーズを投入すると発表した。第一弾として「ヴィッツ」「プリウスPHV」「ハリアー」「マークX」「ヴォクシー」「ノア」6車種のGRモデルが発売された。

2017年9月、トヨタはスポーツカーブランドとして新たに「GR」シリーズを投入すると発表した。第一弾として「ヴィッツ」「プリウスPHV」「ハリアー」「マークX」「ヴォクシー」「ノア」6車種のGRモデルが発売された。

GRでは、ノーマル車をベースに独自のモディファイを施したスポーツコンバージョンモデルを販売している(将来的にはオリジナルのスポーツモデルも展開予定となっている)。

GRシリーズは、手軽なチューニングでスポーティーな走行を気軽に楽しめる「GRスポーツ」、パワートレインやドライブトレインにも手が入った量産型スポーツカーの「GR」、そしてエンジンまでチューニングが施された台数限定の「GRMN」の3つのラインアップで構成されている。

トヨタ「ヴィッツ GR」のイメージ

トヨタ「ヴィッツ GR」のイメージ

トヨタの人気コンパクトカー「ヴィッツ」は、GRMN、GR、GRスポーツと3種類のGRシリーズがすべてラインアップされており(GRMNは150台限定)、トヨタのGRシリーズとして、かなり力を入れている車種と言えるだろう。そして今回は、その中の「ヴィッツGR」の試乗レビューをお届けしたい。

ちなみに、正式名称は「ヴィッツGRスポーツ GR」。なぜこんなややこしい名称なのかというと、これはトヨタ社内ルールの問題で、「ヴィッツGRスポーツ」をベースとしてさらに袈装を行っているからなのだそうだ。だが、一般的には「ヴィッツGR」という呼称で構わないだろう。

ヴィッツ GRの価格は、2,303,640円(税込)。「ヴィッツ GRスポーツ」は2,087,640円(税込)なので、その価格差は216,000円。だが、ヴィッツGRでは、後述するZFザックス製ショックアブソーバーの採用や、10速シーケンシャルシフトマチック(GRスポーツは7速)の採用など、多くの違いが見られる。

トヨタ「ヴィッツ GR」のフロントエクステリア

トヨタ「ヴィッツ GR」のフロントエクステリア

トヨタ「ヴィッツ GR」のフロントフェイス

トヨタ「ヴィッツ GR」のフロントフェイス

エクステリアはフロント、リアともにGR専用バンパーが採用されている。特にフロントフェイスは、GRブランドのアイコンとなる「ファンクショナル・マトリックス・グリル」が採用されている点が特徴的だ。

トヨタ「ヴィッツ GR」のリアエクステリア

トヨタ「ヴィッツ GR」のリアエクステリア

トヨタ「ヴィッツ GR」のテールランプ

トヨタ「ヴィッツ GR」のテールランプ

いっぽう、テールゲートやランプ類のデザインはマイナーチェンジ前のヴィッツのリア周りが踏襲されている。実はこれ、「従来モデルのデザインのほうがスポーティーさがある」と言う判断から“あえて”変更しなかったそうだ。

トヨタ「ヴィッツ GR」のインパネ

トヨタ「ヴィッツ GR」のインパネ

トヨタ「ヴィッツ GR」のフロントシート

トヨタ「ヴィッツ GR」のフロントシート

センターにタコメーターが配されている、トヨタ「ヴィッツ GR」専用のシルバープレートアナログメーター。

センターにタコメーターが配されている、トヨタ「ヴィッツ GR」専用のシルバープレートアナログメーター。

フロントシートはGRスポーツと同様のスポーツシートだが、メーターはセンターにタコメーターがレイアウトされたGR専用メーターが採用されており、「86」ゆずりの小径本革巻3本スポークステアリングや、アルミペダルもGR専用となっている。

「ヴィッツG’s」の時代は、ブラックとレッドで解りやすいスポーティーさを特長としたインテリアであったが、GRはブラックとシルバーのコーディネイトにすることで、スポーティーなだけでなく、質感も考慮されているそう。

GRの車体は、ノーマルよりもスポット溶接個所を増したボディそのものはGRスポーツと共通だが、フロントサスペンションやセンタートンネル、リアフロアに剛性アップのパーツが加えられていたり、剛性だけでなく前後バランスも最適化されていたりする点が異なる。

トヨタ「ヴィッツ GR」にはZFザックス製ショックアブソーバーにポテンザ「RE050A」タイヤが装着されている。

この体幹を鍛えた車体に、GR専用チューニングのサスペンションが採用されている。スプリングは、ノーマルと比べてフロントが10mm、リアが10mmローダウンされ、「86」にも採用されているしなやかな動きとキレのいいダンピングが特徴のZFザックス製ショックアブソーバーが組み合わせられている。

さらに、ポテンザ「RE050A(205/45R17)」の採用や、5MT車にはヘリカルLSDの標準装備(GRスポーツの5MT車にはメーカーオプション[32,400円(税込)])も相まって、走りの正確さや安心感を高め、トータルパフォーマンスにすぐれた「奥深い乗り味」を実現している。

トヨタ「ヴィッツ GR」には、ノーマルヴィッツと同じ1.5リッターNAエンジンが搭載されている。

トヨタ「ヴィッツ GR」には、ノーマルヴィッツと同じ1.5リッターNAエンジンが搭載されている。

エンジンそのものは、ノーマルヴィッツの1.5リッターNAエンジンから変更はなく、トランスミッションは5速MTとCVTから選択することができる。

そして注目は、CVTで全日本ラリー参戦のノウハウや知見が織り込まれた「スポーツモード」がプラスされていることだ(GRスポーツにスポーツモードはない)。

トヨタ「ヴィッツ GR」の試乗走行イメージ

トヨタ「ヴィッツ GR」の試乗走行イメージ

実際にヴィッツGRへ試乗すると、5ナンバーサイズのコンパクトなボディと1,050kg(CVT仕様)の車重を生かしたひらりと動く軽快さが絶妙に感じられた。

動きに渋さや雑味はなく、しなやかなストローク感に適度なロールスピードのサスペンション、さらにポテンザ「RE050A」の組み合わせによって、一般道はもちろん(昨年、試乗した)サーキットのようなハイスピードな領域でも、爽快なハンドリングと安心感あるリアのスタビリティが両立された、バランスの取れた攻めの走りを楽しむことができる。このスポーティーな乗り味は、ノーマルのヴィッツではまず得られない楽しさだ。

だが、あくまでスポーツ一辺倒ではなく、一般道や高速道路では引き締められてはいるが不快ではなく「しなやかな硬さ」で、快適性もまずまず納得できるレベルだ。

トヨタ「ヴィッツ GR」の試乗走行イメージ

トヨタ「ヴィッツ GR」の試乗走行イメージ

そういう意味で言えば、目を三角にして攻めると言うよりは、ほどよく汗をかけるスポーツ性という意味では、ホットハッチと言うよりも「クールハッチ」と言う言葉がぴったりだろう。さらに上にGRMNが存在することを考えても、この「ヴィッツ GR」の味付けは絶妙なセットアップだと思う。G’s時代から2回の進化・熟成を経て、現行ヴィッツのスポーティーモデルとしては、もはや完成形に近いと感じられた。

トランスミッションについては、もちろん今では貴重な5速MTを駆って「限られたパワーを上手に使って走る」と言う楽しみ方もあるが、筆者のお勧めは実は「CVT」である。

トヨタ「ヴィッツ GR」のシフトノブ

トヨタ「ヴィッツ GR」のシフトノブ

CVTは、ノーマルモードでは普通だが、スポーツモードに入るとレスポンスアップやステップシフト(10速)、ハイギアへの変速制限制御がプラスされる。特に、ハイギアへの変速制限制御は効果的で、コーナー脱出からアクセルON時といった状況でもエンジン回転が上がるまでの“間”がなくなり、すばやい加速に移れるのが嬉しい。

ステップ制御の小気味よいシフトアップはもちろん、エンジンの美味しい領域を離さないため、CVTでも「気持ちいい走り」「ドライバーの意思に沿った走り」に近づくことができる。もちろん、ダイレクト感などにはまだ課題はあるが、「CVTでもいいかも!?」と思えるほどの仕上がりである。

トヨタ「ヴィッツ GR」イメージ

トヨタ「ヴィッツ GR」イメージ

ヴィッツGRは、普段使いもしっかりとこなしつつ、楽しく「運転のイロハを覚える」「腕を磨く」にはピッタリな1台だろう。

だが、ヴィッツGRの出来のよいシャシーや気持ちよく走れるCVTに対して、唯一のウィークポイントは、すごくパワフルでもなく、官能的でもなく、いたって普通の1.5リッターNAエンジンだ。個人的には、初代ヴィッツGRMNに搭載されていた1.5リッターターボエンジンくらいが、ヴィッツGRのシャシーとのバランスを考えると適正だと思う。

このあたりはトヨタのエンジンラインアップの課題のひとつとして、おそらく開発陣も認識しているはずなので、次期モデルで解決してくれるに違いない。

山本シンヤ

山本シンヤ

自動車メーカー、チューニングメーカー、自動車雑誌の編集長などを経て独立。これまでの経験を活かし、造り手と使い手のかけ橋となるよう「自動車研究家」を名乗って執筆活動中。最先端技術やドライビングメカニズムなどを得意とする。

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