レビュー
プラス0.2Lが生み出す余裕の走り!

排気量アップ!価格据え置きでトルクフルな「デミオ」1.5Lガソリンモデルへ試乗

ディーゼルエンジンに注目が行きがちなマツダだが、ガソリンエンジンも手を抜いていない。今回、「デミオ」のガソリンエンジンが1.3リッターから1.5リッターへと排気量がアップしたことによって、ゆとりのあるスムーズな走りと実用燃費の向上を追求したという。そこで、さっそく500kmほどテストに連れ出してみた。

マツダ「デミオ」のガソリンエンジンが1.3リッターから1.5リッターへと排気量アップした

マツダ「デミオ」のガソリンエンジンが1.3リッターから1.5リッターへと排気量アップした

1996年、初代デミオがデビューして以来、「コンパクトカーだからこそ」の価値を守り、「コンパクトカーだから」と妥協をせず、「コンパクトカーなのに」を追求してきたという。そして、現行となる4代目デミオではクラスの概念を打ち破ることを志し、2014年9月にデビューした。

デミオは、マツダが販売するクルマの中で最も小さい。「だからこそ、妥協しません。最も小さいクルマであるにもかかわらず、世界基準でしっかりと作り込まれたデミオは、マツダブランドへの入り口を担う、世界に誇れるコンパクトカーです」とコメントするのは、マツダ商品本部 デミオ開発主査の和田宜之さんだ。そして、初めてクルマに乗るような方にとって“My First Mazda”でありたいと語る和田さん。

「自分のために選んだ、初めてのクルマ。運転の基本、ドライブの楽しみ方、すべてをこのデミオから学んでほしい。そんな思いをこめて、今回の商品改良では、再びコンパクトカーの既成概念を打ち破る挑戦をしました」と、今回のデミオ改良モデルへの意気込みを話してくれた。

マツダ「デミオ」の「SKYACTIV-G 1.5」1.5リッターガソリンエンジン

マツダ「デミオ」の「SKYACTIV-G 1.5」1.5リッターガソリンエンジン

今回の改良で注目のエンジンについては、「小排気量のほうが燃費に有利であるという既成概念に挑戦すべく、ガソリンエンジンのSKYACTIVE-G 1.3に変えて、進化したSKYACTIVE-G 1.5を搭載しました」と説明する。SKYACTIVE-G 1.5では、パワーとトルクが増大したことにより、ゆとりのあるスムーズな走りを実現。同時に、燃焼やポンピングロスを改善し、機械抵抗低減、サーマルマネージメントなど進化した技術を搭載することで、燃費を向上させていると言う。

上質な特別仕様車“ミスト・マルーン”に試乗

マツダ「デミオ」の特別仕様車「ミスト・マルーン」フロントイメージ

マツダ「デミオ」の特別仕様車「ミスト・マルーン」フロントイメージ

マツダ「デミオ」の特別仕様車「ミスト・マルーン」リアイメージ

マツダ「デミオ」の特別仕様車「ミスト・マルーン」リアイメージ

デミオは、これまでも“スタイルコレクション”と呼ばれる特別仕様車を、毎年発売している。そして今回のミスト・マルーンでは、上質な大人の世界観が表現されている。

「これまでのコンパクトカーにおけるインテリア空間の、既成概念を打ち破る質感の高さに挑戦しました。手間をかけたキルティングを肌触りのよい生地にあしらい、深みを感じるディープレッドとさわやかなブルーステッチによるアクセントで、上質さとコンパクトカーらしい遊び心で満たされた特別な空間を演出しています」と和田さん。「余裕のある上質な走りとともに、もっと乗りたい、いつまでも乗り続けたい気持ちになっていただけるはずです」と思いを語った。

しなやかな乗り心地と十分なエンジンパワーを持つ1.3リッター

今回は幸いにも、1.3リッターガソリンエンジンにも短時間ながら試乗する機会を得たので、その印象を交えながらレポートする。試乗グレードは「13S ツーリングLパッケージ」で、4WD仕様であった。

マツダ「デミオ」の1.3リッターガソリンエンジンを搭載した「13S ツーリングLパッケージ」

マツダ「デミオ」の1.3リッターガソリンエンジンを搭載した「13S ツーリングLパッケージ」

1.3リッターのデミオに乗り始めて最初に感じたのは、「本当に1.5リッターが必要?」という疑問であった。たしかに、上り坂や高速道路での追い越し時には思った以上にアクセルを踏まなければキックダウンが効かずに少々不満を感じるのだが、それはアクセルを意識的に踏めば済む。それ以上に、デミオの初期モデルに見られた足が突っ張るような硬さが少なくなり、乗り心地がしなやかなのだ。また、トランスミッションとエンジンのマッチングも素直で、エンジンパワーを使いこなしている。1.3リッターのデミオを試乗して、十分な仕上がりを感じた。

ハイパワーな1.5リッターはやや元気すぎ!?

マツダ「デミオ」1.5リッターエンジン搭載モデルの試乗イメージ

マツダ「デミオ」1.5リッターエンジン搭載モデルの試乗イメージ

では、1.5リッターのデミオに乗り換えてみよう。その第一印象は、当然ながら1.3リッターよりはるかにトルクフルになり、乗りやすくなったということだ。極端に言えば、1.3リッターで踏み込んでいたアクセルの量が、半分くらいになったといえば伝わるだろうか。特に、前述した上り坂や高速道路での追い越し時の不満は完全に払拭された。このパワーは、もはやストレスフリー、いや、クラスを感じさせないコンパクトカーとして十分な仕上がりと言えるだろう。

マツダ「デミオ」1.5リッターエンジン搭載モデルの試乗イメージ

マツダ「デミオ」1.5リッターエンジン搭載モデルの試乗イメージ

しかし、トランスミッションとのマッチングについてはやや不満も残る。郊外路や高速道路での上り坂で徐々に速度が落ちていくためにアクセルを踏み込むと、あるところで一気に2速くらいシフトダウンして加速が始まるため、パワーがあふれ過ぎてぎくしゃくした走りになってしまう。そのあたりは、もう少し細かい制御が望ましく感じた。

1.5リッターエンジンは、どちらかというと“回りたがり”な印象を受ける。ディーゼルエンジンとの差別化という点で、あえてこのようなセッティングで元気な印象を与えているのかもしれない。ただし、冒頭で述べた“初めてのクルマ”としては乗りにくく、多くのクルマを乗り継いできた人にとっても違和感につながりかねない。ファイナルを含めたギヤ比さえ見直せば、うまくトルクを利用したスムーズな走りが期待できるエンジンと感じた。

ボディ剛性をさらに高めれば、すばらしい乗り心地になるはず

そのほか、気になる点としてはボディ剛性が挙げられる。ボディ周りや、ステアリングの取り付け剛性が低いのだ。信号待ちなどでアイドリングしていても、足回りからブルブルとした振動がアクセルペダルへと伝わってくる。特に、これは助手席のフロア周りで顕著であった。

マツダ「デミオ」1.5リッターエンジン搭載モデルの試乗イメージ

マツダ「デミオ」1.5リッターエンジン搭載モデルの試乗イメージ

また、ステアリングは段差を超えたときなどにコラム全体が揺れてしまう。こういったことはマツダ車全体でも見られることで、ボディが衝撃を受け止められないことから、そのぶん足回りもストロークさせてしなやかさが提供できなくなるのだ。もし、そのまましなやかさを出すためにストロークさせるようにすると、足回りもボディもショックを吸収できず、ふわふわとした乗り心地になってしまう。

ボディをしっかりと作り込むということは、お金はかかってしまうが乗り心地には多大な影響を与える。前述したとおり、初期モデルと比較すればはるかに乗り心地はよくなっている。日本のコンパクトカークラスではベストと言っていいだろう。しかし、だからこそボディ剛性をよりしっかりさせることで、はるかにすばらしい乗り心地と走りが手に入れられると期待してしまうのだ。

同様に、ステアリングの取り付け部の剛性も重要だ。この部分がしっかりすることで、直進安定性が向上し、長距離がとても楽になるのだ。この点も、ぜひ改良してもらいたいポイントだ。

高速道路では、アダプティブクルーズコントロールを積極的に活用した。ステアリングの右側にあるスイッチを押してオンにし、セットボタンを押せばそれで完了だ。完全停止まで行わないのは残念だが、解除になるときは警告音が鳴るのでそのときは気付くだろう。作動は時に反応が鈍くなることはあるものの、押しなべてスムーズな印象だった。

内外装ともに秀逸なデザイン

マイナーチェンジや商品改良というと、必ずといっていいほど内外装の変更がなされるものだ。しかし、マツダの場合はよほどのことがないかぎりそこに手を付けることはない。それは、もともとの完成度が高いことと、新旧を見た目で判断させたくないという良心によるものだ。

したがって、今回のデミオでも手は付けられていない。エクステリアでは凝縮感が感じられ、サイドの前後に入るキャラクターラインはクルマに力強さを与えている。いっぽう、左後方の視界は決して良好とはいえないので、ぜひボディに手を入れる際は改良を望みたい。

マツダ「デミオ」の特別仕様車「ミスト・マルーン」のインテリア

マツダ「デミオ」の特別仕様車「ミスト・マルーン」のインテリア

また、インテリアにおいても同様だ。しつらえのよいインテリアの雰囲気はこのセグメントでは味わえないもので、落ち着いていながら、横方向に広さを感じさせるデザインだ。特に、特別仕様車のインテリアは上品で所有欲を満足させるものといっていい。

ダイヤル式のヒーターコントロールなど、使い勝手はわかりやすく配されており、最近はやりのタッチ式スクリーンよりもよほど使いやすい。

しかし、ステアリングスイッチの配置は疑問が残る。

ステアリングの左側に配されているボタンは、
(1)音量調整と音声入力
(2)ラジオなどの選局ボタンとinfoボタン
だ。infoボタンを押すと、3連メーターの一番右に平均燃費などが表示され、長押しするとリセットされる。
いっぽう、その右側のメーターの上部には押し込むことで3連メーターの左側に表示されるトリップメーターをリセットするボタンがある。つまり、左のスイッチで右画面を操作し、右のボタンで左画面を操作するという、ちぐはぐな印象をドライバーに与えるのだ。事実、操作するときの視線も戸惑いがちであったので、これはぜひ改善を求めたい。

また、ラゲッジルームに関してだが、開口部が少し高めで、かつ深さがあるので、重いものの出し入れは難渋する。もう少しこの辺りは工夫を求めたい。

今回の改良のポイントである燃費だが、

市街地:13.7km/L(WLTCモード:15.0km/L)
郊外:18.4km/L(WLTCモード:19.4km/L)
高速道路:21.2km/L(WLTCモード:21.2km/L)

という結果であった。今回、1.3リッターの燃費を計測していないので比較はできないが、市街地ではWLTCモード並みにもう少し伸びてほしいものの、それ以外のシチュエーションでは十分満足できる値といえる。

今回の改良では、デミオのよさをさらに引き出したといっても過言ではない。排気量が大きくなったことで、若干非力に感じていたこともなくなり、より乗りやすくなった。さらに価格も改良前と同じということなので、お買い得感も満載だ。コンパクトハッチの中ではもっともおすすめしたい1台である。

しかし、ひとつ懸念も示しておきたい。マツダ全体の考えとして、そのときの最新の技術を積極的に導入しようというものがある。これはこれで大いに評価すべき点なのだが、もし新車を購入して、1年で改良が入ってしまったらそのオーナーはどう思うだろうか。しかも、それが非常に魅力的な改良であった場合には。今回は、エンジンの排気量アップという簡単には解決できず、かつメリットの大きい内容だ。それが、たった1年で改良が施されたとしたら、「最初からやってほしかった」と思わないだろうか。

そういったことも含め、マツダはそろそろ改良前のユーザーに対してのフォローを始めてもいい時期にきていると思う。いまマツダを購入しているユーザーは、かなり指名買いが多いはずだ。マツダのデザインに惚れ、走りに惚れたユーザーなのだから、ぜひユーザーのことを大切に考えていってもらいたい。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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