レビュー
日本市場向けにチューニングされた足回りがいい

ノーマルより売れている!トヨタ「カムリWS」が予想以上にスポーティーだった

トヨタの4ドアセダン「カムリ」に、「WS」と呼ばれるスポーティーグレードが2018年8月に追加された。現行の10代目カムリが発売されたのは2017年7月なので、わずか1年で新グレードを投入したことになる。このカムリWSの販売は好調で、2018年11月から直近の2019年4月まで、すべての月において(カムリ全体の)6割を超える受注を獲得しているほどだ。カムリは、ノーマルグレードよりもWSのほうが売れているのだ。

そんな人気のカムリWSの実力を検証するために、今回は400kmほどの試乗テストに連れ出してみた。

2018年8月に発売されたトヨタ「カムリWS」がノーマルグレードを凌ぐほどに売れている

2018年8月に発売されたトヨタ「カムリWS」がノーマルグレードを凌ぐほどに売れている

■トヨタ「カムリWS」のグレードラインアップと価格
※価格はすべて税込み
WS:3,672,000円
WS レザーパッケージ:4,341,600円

※以下は参考のためにノーマルグレードの価格
X:3,298,320円
G:3,531,600円
G レザーパッケージ:4,228,200円

外観だけでなく、中身もよりスポーティーで上質に

テレビCMなどでは“カムリスポーツ”と呼ばれていた、カムリWS。ちまたでは、カムリのマイナーチェンジと思われている節もあるが、前述のとおり追加グレードだ。カムリとカムリWSとの違いは、大きく2つ。デザインと足回りだ。

トヨタ「カムリWS」のフロントエクステリア

トヨタ「カムリWS」のフロントエクステリア

トヨタ「カムリWS」のリアエクステリア

トヨタ「カムリWS」のリアエクステリア

まず、デザインのテーマは「ICONIC CATAMARAN」。具体的には、双胴船(そうどうせん=2つの船体を甲板で平行に繋いだ船のこと)のような地面にしっかりと足をつけたようなイメージがポイントだという。具体的には、バンパーをもっとも外側にまで広げたCATAMARAN形状によって、ワイドスタンスを強調。加えて、アッパーグリルの突出した立体形状が走りのスポーティーさをイメージさせ、側面から繋がるサイドロッカーとの連続性によって、より低重心なプロポーションになっている。

トヨタ「カムリWS」のインパネ

トヨタ「カムリWS」のインパネ

トヨタ「カムリWS」のパドルシフト

トヨタ「カムリWS」のパドルシフト

トヨタ「カムリWS」のフロントシート

トヨタ「カムリWS」のフロントシート

内装は、シルバーの専用加飾やハイブリッド車ながらパドルシフト、カムリWS専用のスポーティーなシート表皮などがあしらわれていることが特徴だ。

トヨタ「カムリWS」では足回りのセッティングにも変更が施されている

トヨタ「カムリWS」では足回りのセッティングにも変更が施されている

足回りについては、大きなセッティングの変更が行われている。基本のハードウェアは共通ながら、より操縦安定性を重視し、特にライントレース性(思った通りにコーナーなどでクルマが曲がっていくこと)が高められている。もともと、ノーマルグレードのカムリでもライントレース性は高かったのだが、カムリWSではさらに思ったところに舵が一発で決まるようにセッティングされている。そのため、ショックアブソーバーを新たに開発するとともに、それにともなうブッシュ類やスタビライザー、電動パワーステアリングなどにチューニングが施されている。

「JBL」のスピーカーが採用されていることも、「カムリWS」の特徴のひとつだ

「JBL」のスピーカーが採用されていることも、「カムリWS」の特徴のひとつだ

サラウンドシステムに関しては「JBL」を採用。開発の初期からコラボレートすることで、スピーカーに最適なボディ構造が作り上げられた。

顧客の要望に応えるため、当初の予定に無かったカムリWSを投入

なぜ、WSグレードはカムリを発売してからわずか1年ほどで追加されたのだろうか。そのあたりを、トヨタMid-siz Vehicle Company MS製品企画チーフエンジニアの勝又正人氏に聞いてみよう。

「いま、トヨタは会社として大きく変わりつつあります。リアルタイムにお客様の声を取り入れ、カムリWSのようなまったく違う見栄えのもの、あるいは新たな機能を持ったものを開発していかなければいけません。そこで、カムリのようなグローバル車だからこそできる、大変短いスパンでの新商品の投入などチャレンジをしていきたいと思っていました。今回は、その国内導入のチャレンジ第1弾です」という。

同時に、「新型カムリを導入して1年後に、これだけ違うものを導入していくことは、企画の思いや予測、お客様のクルマに対する期待と多少ずれていたところがあったという反省もあります。実は、国内のカムリをデビューさせる際、いきなりここまでのものを出してしまったのでは、お客様はついて来られないだろうという判断が正直ありました。ところがふたを開けてみるとアメリカの仕様(スポーティーグレード)がなぜ日本にないのかという声を多くいただいたのです。そこで急遽、本来はなかった計画(WSグレードの追加)を進めました。その分、我々開発陣を含めた熱い思いのこもったクルマになっています」とコメントした。

さらに、「北米や中国で先行して販売しているクルマが、そのまま右ハンドルになって日本にデビューしたのではない」とし、あくまでカムリWSのデザインは海外のカムリと比較的近いが、乗り味に関しては日本独自のものであることを強調した。

ちなみに、このWSとは“ワールドワイド&スポーティー”を意味している。「北米や中国でも、スポーティーモデルの比率は半分を超えています。(海外ではSEやSSEなどと呼ばれ、これまでの国内と同じ仕様はLEやXLEという)。そこで、国内ではセダン市場が縮小していることもありますので、世界を代表するセダンを国内に導入し、その勢いを取り戻したいという思いからワールドワイド&スポーティーという名前にしました」と思いを述べる。

最後に、勝又さんは「カムリWSが出たことによって、ディーラーへの来店者が増えました。これだけ差別化をしていますので、これまでのカムリも台数が増え、かつカムリWSの人気も高い状況です」と語った。

ノーマルのカムリよりも締まった足回りが絶妙

トヨタ「カムリWS」のエンジンルーム

トヨタ「カムリWS」のエンジンルーム

では、さっそく走り出してみよう。搭載されるパワートレインは2.5リッター4気筒エンジンにハイブリッドシステムを組み合わせたもの。エンジンとモーターを合わせたシステムトータルでの最高出力は211psを発揮する。

実は、筆者は直前までレクサス「ES」に乗っており、高級車であるESからカムリWSへとすぐに乗り換えたので、静粛性や操作感などが少々気になりながらの走り出しとなってしまった。しかし、レクサスESは700万円オーバー、カムリWSは400万円強なので、その差があるのは当然。もちろん、パワーウインドウの作動音などもカムリWSのほうが大きい。しかし、そういった点を含めて300万円もの差があるかといわれると微妙だ。なぜなら、改めて400万円台のクルマとしてカムリWSを味わってみると、これがなかなかすぐれたクルマだからだ。

トヨタ「カムリWS」の走行イメージ

トヨタ「カムリWS」の走行イメージ

走りの面から話を始めると、これまでのカムリGグレードも十分なしなやかさと素直なハンドリングを備えた良車であった。ただし、スポーティーに走らせたり、高速道路で流れをリードするような走り方をすると、少ししなやかすぎるかなという印象があった。もっとも、購入年齢層を考えると妥当なところだったとは思う。

トヨタ「カムリWS」の走行イメージ

トヨタ「カムリWS」の走行イメージ

しかし、カムリWSはより積極的に運転を楽しめるクルマへと仕上げられている。特に、高速域でのライントレース性は高く、ほぼ思った通りにクリアできるので、前述したメーカーの思わく通り、運転がうまくなったような気にさせてくれる。また、そういった時に変にロールすることもないので、同乗者も安心して乗っていられるだろう。

高速道路での乗り心地は、若干硬く感じられるものの、その姿勢はフラットな印象。ロードノイズもそれほど大きく侵入してこないので、他社のセダンと比較してもカムリWSのほうがすぐれていると感じた。

トヨタ「カムリWS」の走行イメージ

トヨタ「カムリWS」の走行イメージ

ただし、直進安定性はあまり高いとはいえず、若干修正舵が求められる。これはフロア周りの剛性が若干足りないからのようで、実際にそういったところからの振動が感じられた。せっかくここまで足回りを仕上げたのだから、こういったところにもこだわってほしいと感じた。

トヨタ「カムリWS」のステアリングに備えられているレーダークルーズコントロールスイッチ

トヨタ「カムリWS」のステアリングに備えられているレーダークルーズコントロールスイッチ

高速道路では、積極的にレーダークルーズコントロールを使用してみた。先行車を捉える精度は高く、エラーもほとんどない。しかし、その先行車がいなくなると、一気に加速してその前のクルマとの車間距離を詰めるのは少々鬱陶しいので、このあたりは改善を希望したいところだ。

LDA(レーンディパーチャーアラート)をオンにするとメーター中央に表示される

LDA(レーンディパーチャーアラート)をオンにするとメーター中央に表示される

また、LDA(レーンディパーチャーアラート)のステアリング介入は若干弱め、あるいは少し鈍感であるばかりでなく、反応しないこともあるので注意が必要だ。

もうひとつ気になったのは、エンジンノイズだ。高速道路であっても、EVでの走行からエンジンが始動するというパターンを繰り返すのだが、そのときにエンジン回転が上がるため、そのノイズが気になってしまうのだ。これは、EV走行時の静粛性が高いため、余計に気になってしまうためだ。いわばぜいたくな悩みともいえるが、できるならばそのあたりは改善を望みたい。

カムリWSは、一般道を走らせていてもスムーズさ、そして締まった硬さの乗り心地の印象は変わらない。また、EV走行からエンジンが始動する際の違和感のなさは特筆ものと言える。音さえ気にしなければ、まったくと言っていいほどエンジンがかかったことはわからないはずだ。

スイッチ類は非常に使いやすく、ひとつひとつのスイッチもきちんとクリック感を持たせており、またスイッチそのものがある程度大きいのでわかりやすいというのも良心的だ。それはナビの操作性も同様で、画面タッチによるメニューの階層等もよく考えられている。

細かな点では、ステアリングスイッチの配置は適切なのだが、できれば明るい照明がついていてほしかったり、エアコンの中央のアウトレットに風を止めるスイッチがないのは不便を感じた。できれば左右別々で操作ができるとなおいいと思う。

最後に、燃費を記しておきたい。一般道では17.5km/L、高速では23.3km/Lを記録した。これならば、十分に納得できる数値と言えよう。

カムリは、北米と中国をメイン市場としたグローバル展開車だ。当然、日本とは比較にならないほどの販売台数なので、海外のマーケットを意識した開発がなされている。

では、日本市場には向いていないのかというとそんなことはなく、今回のカムリWSのように国内専用に足回りをセッティングしなおしたクルマを作り上げるあたりは、大いに評価したい。特に、もともとカムリは素性のいいクルマなので、そこにライントレース性を向上させて乗りやすさを兼ね備えたことは、喜ばしいかぎりだ。

ただし、直進安定性を含めた高速道路での長距離移動はもう一歩というところだ。その要因はボディ剛性にも関係しているので、このあたりが改良されればより一層乗り心地も向上し、長距離移動も含めた移動の楽しさが増してくると思われる。そういったことも含めて、レクサスESとはそこまで価格差はないように思えた。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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