レビュー
6MTのシフトを楽しもう

“最速”を目指した技術の粋! ホンダ「シビック タイプR」に山道で試乗

MT(マニュアルトランスミッション)好きの自動車ライター、マリオ高野です。

今回も、MTの変速操作が壮絶な快感として味わえる高性能スポーツモデルとして、ホンダ「シビック タイプR」に注目しました。

2020年秋にマイナーチェンジを実施し、クルマ全体がかなりアップデートされたものの、予定していた販売台数に達したことで、すでに新車で購入できなくなってしまいましたが、研ぎ澄まされた高性能へのリスペクトを込めて、あらためて山道で乗った印象を報告します。

高速走行時の安定性はきわめてハイレベル。高速巡航の気持ちよさもまた、サーキットでの速さを追求する恩恵のひとつです

高速走行時の安定性はきわめてハイレベル。高速巡航の気持ちよさもまた、サーキットでの速さを追求する恩恵のひとつです

「速さ」を最も重要視するクルマ

「タイプR」はホンダ入魂の高性能スポーツモデルで、今どき「速さ」を最重要ポイントとして開発するのが許される稀有な存在です。90年代に「NSX」や「インテグラ」に設定されたタイプRは、ほぼサーキット走行専用仕様とされ、日常性は最低限度のモータースポーツ競技向け車両でもありました。

シビック タイプRに関しても、現代でも基本的にはそのコンセプトを踏襲していますが、高性能化にともない高価格化したため、日常性もおおむね不満のないレベルに仕立てられています。エンジンがターボ化されて高価格された先代モデルから、日常ドライブも苦痛ではなくなりました(先々代モデルまでは、ファミリーカーとして使えないほどスパルタンでした)。

昔のシビック タイプRは「速さ」のために遮音材などを省いてまで軽量化を図りましたが、今のシビック タイプRは500万円近いクルマなので、コンフォート性も普通に確保されます。

高速巡航時の静粛性は、とりたてて高くはありませんが、運転が好きな人なら騒音で疲れるようなことはないでしょう

高速巡航時の静粛性は、とりたてて高くはありませんが、運転が好きな人なら騒音で疲れるようなことはないでしょう

それでも、志の高さは昔から変わっていません。1995年に発売されたインテグラ タイプRが「FF世界最速」と評価されて以来、ホンダは誇りを持ってその名声を守ることにこだわっています。

シビック タイプRも現在は、世界一過酷な難コースとして知られるドイツのニュルブルクリンサーキットでのラップタイムで「FF世界最速」の座を争い、ルノー「メガーヌR.S.」やフォルクスワーゲン「ゴルフ GTI」らのライバル車と、激しく競い合っているのです。自動車メーカーが威信をかけて市販車の「速さ」を競い合う姿に、ひとりのクルマ好きとして感動せずにはいられません。

2020年秋のマイナーチェンジでフロントグリルの開口面積を大きくし、フロントバンパースポイラーの形状を変更。これも速さの追求のため

2020年秋のマイナーチェンジでフロントグリルの開口面積を大きくし、フロントバンパースポイラーの形状を変更。これも速さの追求のため

シフトは日常操作でも気持ちいい

そんなシビック タイプRが磨いた「速さ」のための性能や装備は、クルマ好きを魅了してやまないものになっています。

たとえばMTのシフト操作。サーキットでタイムを詰めるには、手動変速よりもATのほうが有利なのは明らかながら、今もMTにこだわるホンダは、素早くかつ正確に変速操作ができるシフト機構を磨きました。その結果、左の手首を返すだけでシフト操作が完了するストローク量の少なさや剛性感を得るに至り、日常時のシフト操作も気持ちいいものになっているのです。

昔のタイプRのシフトノブはチタン製でしたが、今は削り出しのアルミ製。ティアドロップ形状とすることで、ノブの傾きに対するすぐれた認識性と操作精度を実現

昔のタイプRのシフトノブはチタン製でしたが、今は削り出しのアルミ製。ティアドロップ形状とすることで、ノブの傾きに対するすぐれた認識性と操作精度を実現

各ペダルはそれぞれ踏むことで大きな快感が得られるセッティングに仕立てられています。マイナーチェンジで、ブレーキはサーキット走行向けにさらに強化

各ペダルはそれぞれ踏むことで大きな快感が得られるセッティングに仕立てられています。マイナーチェンジで、ブレーキはサーキット走行向けにさらに強化

ステアリングの表皮にアルカンターラを採用するなど、内装の質感も低くありません。運転支援システムも備わるようになりました

ステアリングの表皮にアルカンターラを採用するなど、内装の質感も低くありません。運転支援システムも備わるようになりました

きわめてハイレベルな出力特性

エンジンはどんな回転域からでもアクセルを踏み足せば即座に強力なパワーを発揮するので、これも日常時の運転の快楽を増す大きな要素に。自然吸気時代のシビック タイプRのエンジンと比べると、高回転域のサウンドやフィーリングにはやや物足りなさを覚える瞬間もありますが、ターボ化によりきわめてハイレベルな出力特性が得られていると思えば、すべて納得。ネガ要素として指摘するほどのことではないと思えます。

先代からターボ化され、ついには320馬力を絞り出すまでパワーアップされた2L4気筒エンジン

先代からターボ化され、ついには320馬力を絞り出すまでパワーアップされた2L4気筒エンジン

高回転時のマフラーのサウンドは非常に刺激的。空力パーツは安定性を高めるためのさまざまな効果を発揮します

高回転時のマフラーのサウンドは非常に刺激的。空力パーツは安定性を高めるためのさまざまな効果を発揮します

ノーマル状態でもサーキットへGO!

操縦性においても、「速さ」を突き詰めたおかげできわめて高度なものになっており、ノーマルのまま本格的なサーキット走行が満喫できます。今どきの高性能車は極限的な領域での速さを追求しても、街乗りがイヤになるようなネガ要素はさほど出ないので、速さを突き詰めることは歓迎すべきことなんですね。それは路面への追従性を高めることでもあるので、意外と快適性が確保されるのです。これは昔のシビック タイプRでは得られない点でした。

20インチ、245/30の超扁平タイヤながら、運転モードを「コンフォート」にすると、乗り心地は決して悪くありません。「Rモード」にすると強く引き締まりますが、ダンピングが強力なので揺れが一瞬で収まるのが心地よいです

20インチ、245/30の超扁平タイヤながら、運転モードを「コンフォート」にすると、乗り心地は決して悪くありません。「Rモード」にすると強く引き締まりますが、ダンピングが強力なので揺れが一瞬で収まるのが心地よいです

このままサーキット走行に没頭できるシート。背中とお尻からクルマの挙動が感じ取りやすい設計に

このままサーキット走行に没頭できるシート。背中とお尻からクルマの挙動が感じ取りやすい設計に

デザインは好き嫌いが多少分かれそうですが、巨大な羽根も「速さのため」と思えば愛おしくなります

デザインは好き嫌いが多少分かれそうですが、巨大な羽根も「速さのため」と思えば愛おしくなります

世界のライバルたちと本気の勝負をして速さを追求。その副産物として、クルマ好きが気持ちよく感じられるフィールングと性能が得られる。ホンダのシビック タイプRはこれからもブレることなく、サーキットでの速さを追求し続けてほしいと願います。

この試乗の模様は動画でもご覧いただけます。

マリオ高野

マリオ高野

1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。

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シビック タイプRの製品画像
ホンダ
4.48
(レビュー82人・クチコミ3166件)
新車価格:458〜550万円 (中古車:94〜669万円
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