レビュー
北欧テイストの内外装に加え、ユニークなパワートレインも魅力的

「V60 リチャージプラグインハイブリッド T6」試乗で見えてきた、ボルボの電動化戦略

2030年までに、すべての販売車種を「BEV」(バッテリーのみで動く電気自動車=ピュアEV)にすると宣言した「ボルボ」。すでに2020年末には、日本で販売されている全モデルの電動化(プラグインハイブリッド、またはマイルドハイブリッド)を達成している。そして今回、ボルボが「Recharge(リチャージ)」と呼ぶプラグインハイブリッド車を一同に集めた試乗会を、石川県の金沢で開催した。そこで今回は、ボルボのRechargeモデルの試乗レビューとともに、そこから見えてきた今後のボルボの戦略などもあわせてひも解いてみたい。

なぜ、「V60 Recharge Plug-in hybrid T6 AWD Inscription」を選んだのか

今回、筆者が試乗したのは「V60 Recharge Plug-in hybrid T6 AWD Inscription」。車両本体価格は799万円(税込、オプション除く)

今回、筆者が試乗したのは「V60 Recharge Plug-in hybrid T6 AWD Inscription」。車両本体価格は799万円(税込、オプション除く)

V60の製品画像
ボルボ
4.61
(レビュー58人・クチコミ1480件)
新車価格:499〜919万円 (中古車:21〜698万円

まず、今回の試乗会では「Rechargeモデルの中から、希望の車種をリクエストする」という方法が採られていた。そこで、筆者が選んだ車種は、「V60 Recharge Plug-in hybrid T6 AWD Inscription」(以下、V60 Recharge)だ。V60 Rechargeを選んだ理由としては、(グローバル基準と言われればそれまでだが)日本の道路事情を踏まえても、全幅があまり大きな車種は好みではなかったことからだ。もちろん、単純に全幅だけの問題ではなく、最小回転半径や運転席からの視界など、チェックすべき項目はいくつかあるだろう。だが、V60は立体駐車場への入庫をなるべく楽にすることを含め、日本市場における使い勝手を向上させるために、全幅を1,850mmまでに抑えることが開発要件のひとつとして設定されていた。都市型SUVと言われる「XC40」ですら、全幅は1,875mmとV60よりも大きい。V60と同じプラットフォームを使う「S60」の2モデルも、V60と同様の全幅に抑えられており、個人的にもその点について高く評価していたためである。

ユニークなパワートレインを搭載

V60 Rechargeに搭載されているパワートレインは、2L直4 スーパーチャージャー付直噴ターボで、これにリア駆動の電気モーターが組み合わせられている

V60 Rechargeに搭載されているパワートレインは、2L直4 スーパーチャージャー付直噴ターボで、これにリア駆動の電気モーターが組み合わせられている

試乗するV60 Rechargeに搭載されているエンジンは、2L直4 スーパーチャージャー付直噴ターボだ。最高出力は186kW(253ps)/5,500rpm、最大トルクは350Nm(35.7kgm)/1,700〜5,000rpmを発生させる。これに、フロント(フライホイールに直結)には最高出力34kW/2,500rpm、最大トルク160Nm/0-2,500rpm、リア(完全独立)には65kW/7,000rpm、最大トルク240Nm/0-3,000rpmのモーターが組み合わせられている。つまり、2つの過給器と2つのモーターをガソリンエンジンに搭載し、ドライブシャフトを持たずに後輪をモーターのみで駆動させるという、ユニークかつ贅沢なパワートレインなのである。

なお、ボルボのプラグインハイブリッド車が“TWIN ENGINE”と呼ばれていたときに設定されていた「T8」(T6と比べてハイパワーなエンジンを搭載)は、現在のラインアップからは外れている。T8は、V60よりも車重のある(130kg増)「XC60」などに設定された。なお、T6はV60の中では最上級グレードに位置づけられている。

五感に響くたたずまいと、心躍るインテリア

V60 Rechargeのボディサイズ(全長×全幅×全高)は、4,760×1,850×1,435mmで、ホイールベースは2,870mm。ちなみに、試乗車のボディカラー「クリスタルホワイトパール」は12万円のオプション設定で、外光に対して塗装内の粒子が反射することで、ボディラインなどの陰影がきれいに表現される

V60 Rechargeのボディサイズ(全長×全幅×全高)は、4,760×1,850×1,435mmで、ホイールベースは2,870mm。ちなみに、試乗車のボディカラー「クリスタルホワイトパール」は12万円のオプション設定で、外光に対して塗装内の粒子が反射することで、ボディラインなどの陰影がきれいに表現される

全幅が1,850mmに抑えられているとは言え、V60のたたずまいは欧州ライバルメーカーのステーションワゴンなどとはひと味もふた味も異なる、独特のオーラを放っている。

ボルボ車のデザインアイデンティティーである「スカンジナビアンデザイン」が採用されたインテリア。シンプルながら上質なたたずまいは、欧州他メーカーには真似のできない、独自の世界観を持っている

ボルボ車のデザインアイデンティティーである「スカンジナビアンデザイン」が採用されたインテリア。シンプルながら上質なたたずまいは、欧州他メーカーには真似のできない、独自の世界観を持っている

そして、ドアを開けるとまず目に飛び込んでくるのは、ボルボのデザインアイデンティティーである「スカンジナビアンデザイン」による洗練されたインテリアと、Inscriptionグレードに設定されている上質な「パーフォレーテッド・ファインナッパレザーシート」だ。そのシートに身をゆだねるだけで、エンジンをかける前にもかかわらず、気分が高揚してくるのがわかる。ちなみに、Inscriptionグレードには、快適性を向上させるリラクゼーション機能や、夏などに重宝するベンチレーション機能が搭載されており、これらは一括してセンターディスプレイで操作することができるのも便利だ。

思った以上の静粛性の高さと、滑らかな走りに驚く

走り始めてまず感じたのが、静粛性の高さである。V60 Rechargeでは、「Hybrid」モードを選べば、何も意識せずともエンジンとモーターを常に効率よく制御してくれる。そして、電気モーターのみで走行することができる「Pure」モードを選ぶと、その走りはより新鮮なものになる。Pureモードではリア駆動になるが、電気モーターのみで180km/hの走行をも可能にするほどのパフォーマンスを持っているのだ。また、動力性能は決して過激なものではないのだが、どの速度域からでもスッとペダルを踏み込むだけで、十分以上の加速を見せてくれる。さらに、電気自動車でありがちな「ヒューン」といったモーター音も抑えられており、聞こえてくるのはロードノイズや風切音程度で、かなりの静粛性の高さに驚く。それどころか、EV走行のあまりの滑らかさに「もっと、Pureモードで走りたい!」という欲求にかられるほどであった。ちなみに、電気モーターのみで走行できる距離は48.2km(WLTCモード)と、航続距離自体はそれほどでもないのだが、後述する「Charge」機能などを併用することによって、常にEV走行の楽しみを享受することができる。

「Charge」機能などをうまく活用しよう

V60 Rechargeの充電システムは、200Vのいわゆる「普通充電」を基本としており、CHAdeMOを含めた「急速充電」には対応していない。普通充電のメリットは、インフラ整備の構築が比較的容易であることだ。逆に、デメリットとしては充電時間に対して充電量がそれほど多くない点だ。だが、今回は金沢を起点にかなりの距離を走ったのだが、普通充電器のインフラが思ったよりも多かったことや、フル充電ではなくてもトイレ休憩の際などの時間をうまく活用するだけでも、ある程度の充電はできるように思えた。

充電スポットに寄らずとも、エンジンを回して発電することで、バッテリーへ充電ができる「Charge」機能が便利であった

充電スポットに寄らずとも、エンジンを回して発電することで、バッテリーへ充電ができる「Charge」機能が便利であった

そして、もっともありがたかったのは、エンジンを積極的に回してバッテリーへの充電を促す「Charge」機能だった。Charge機能そのものは、プラグインハイブリッド車としては特に珍しい機能ではないのだが、高速道路を走行している際にはCharge機能を使って充電量を増やし、市街地などではPureモードに切り替えてEV走行するなど、シーンによって走行モードを活用することで、エンジンと電気モーターを効率よく使うことができる。

余談だが、実は筆者もプラグインハイブリッド車を所有しているのだが、自宅マンションの駐車場に入る際にはエンジンがかからない「EVモード」にしている。早朝や深夜にエンジンがかかるのは迷惑、とまでは言わなくとも、近隣住民に対するちょっとした配慮からだ。また、今回は使わなかったのだが、バッテリーを使用しない「Hold」機能を活用すれば、さらに効率的に走ることができる。要は、充電機能やドライブモードの使い方次第で、V60 Rechargeのよさをさらに引き出すことができるわけだ。

乗り心地は、2トンを超える車重でありながらも軽快な走りであることや、40扁平タイヤながらしなやかな接地感、さらにバッテリーを搭載していてもラゲッジの積載性に影響をおよぼさないプラットフォームの設計なども含めて、その印象はとてもいいものであった。

なお、V60 RechargeはADAS領域においても、運転支援システムの「IntelliSafe(インテリセーフ)」はトップクラスの安全性能を誇っており、「パイロット・アシスト(車線維持支援機能)」や「全車速追従機能付きACC」におけるスムーズな加減速や人の感覚に近いステアリングの動きなど、この分野における先駆者として、ドライバーに安心と快適を与えてくれるものだった。

今後のインフォテインメント戦略に期待

V60 Rechargeを含むボルボ車に搭載されている「インフォテイメントシステム」については、細かなアップデートによって、発売当初に比べると機能の追加やタッチパネル操作時のレスポンスなど、さまざまな点において間違いなく向上していると言えるだろう。

いっぽう、CASE時代においては、ボルボ車には通信モジュールが搭載されていないのがネックに思える。つまり、「Sensus Connect(センサス・コネクト)」と呼ばれるインテリジェントシステムを活用してテレマティクスを利用するためには、アクセスポイントとして使えるテザリング可能なスマートフォンなどが必要になるのだ。だが、ボルボは次の一手を用意している。前述のスマートフォンなどを用意することができれば、「Volvo on Call(ボルボ・オン・コール)」アプリを使うことなどによって、コネクテッド端末として利用できるようになるのだ。

さらにボルボは、現在車両に搭載されているナビゲーションシステムを、今後はGoogleと共同開発した最新鋭のインフォテイメントシステムへと順次アップデートしていくという点も見逃せない。2021年秋頃には日本へ導入されると話題の新型フルEV「C40 Recharge」には、Googleの「Android Automotive OS」が専用カスタマイズされて搭載されるはずだが、その前に「XC60」や次期型「XC90」などへの搭載が予想される。

最後に、V60 Rechargeのおすすめグレードだが、フルにボルボの世界観を堪能したければ今回のInscriptionグレードになるが、V60 Rechargeには新たに「Inscription Expression」と呼ばれるグレードも設定された。同グレードは、T6におけるエントリーモデルという位置づけだが、実際の装備自体は十分満足できるもので、今回試乗したInscriptionと比較すると、115万円も安い。PHEVの新鮮な走りを、リーズナブルな価格で体験したいのであれば、Inscription Expressionがベストチョイスと言えるだろう。

ボルボは、前述した「C40 Recharge」から、サブスクリプションを活用した新たなカーライフの提案や、デジタル化を一気に推し進めることを発表している。そのため、V60 Rechargeなど現在のRechargeモデルのラインアップは、まだまだ序章に過ぎないのかもしれないが、それでも十分以上と言えるほど、ボルボの世界観と電動モデルならではのさまざまな魅力を味わうことができた。日本の電動化自動車市場において、今後はボルボが台風の目になることは間違いないだろう。

高山正寛

高山正寛

ITS Evangelist(カーナビ伝道師)/カーコメンテーター/AJAJ会員/20-21日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。1959年生まれ。リクルートで中古車情報誌「カーセンサー」の新車&カーAV記事を担当しフリーランスへ。ITSや先進技術、そしてカーナビ伝道師として純正/市販/スマホアプリなどを日々テストし布教(普及)活動を続ける。

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ボルボ
4.61
(レビュー58人・クチコミ1480件)
新車価格:499〜919万円 (中古車:21〜698万円
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